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七章 元通り
15.一世一代の
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「放送で、‥声だけの発表で、「終戦宣言」をする。ん? 終戦‥? 違うか、「引退宣言」? 」
インテリショタなカツラギが、首をひねる。
いちいちあざと可愛い‥と思うのは多分気のせいじゃないだろう。
‥こいつ、結構策士だな。‥イヤ策士なのは知ってたけど、ここまで「方法選ばない」タイプだったのか‥。クズっぷりは健在だな。
周りでハートがキュンキュンなカツラギ信者たちが
「カツラギ様は引退なんてなさいません! たとえ、神との約束である今期の賢者でなくなっても、カツラギ様は私たちの賢者です(←? )」
「そうです! カツラギ様がカツラギ様であることに、変わりはありません! (← )」
「私たちのカツラギ様への愛も変わりません(← )」
カツラギの周りで、ワイワイ言ってる。
‥えええ、カツラギ信者、アタマ、大丈夫? なんか、何言ってるかわかんなくなってるけど‥。
それにカツラギ、「いい言葉が思いつかないな」みたいな顔してるけど‥それも、どうでもいいよ。
「宣言する」。その一言だろ?
さっさとしろ。
それで、音声は‥
‥カツラギ信者が保管してあった、カツラギの声コレクションから俺が再現した「カツラギの声データによる、カツラギの声」コ●ン君でいうところの「変声器」ってやつ。
‥カツラギ、凄い枚数の写真(ココでは、念写だが)だけじゃなく、音声迄保管してあるんだよ。‥ホント、なんか、信者怖い。
カツラギ、服とか何枚かなくなってないよね? 大丈夫だよね?
それよか、‥飲んだコップとか保管されてないよね? そこからDNAとか抽出されてないよね??
‥全部あり得そうで怖いよ‥。
いかがわしいことして汚れたシーツとかとってあったら‥流石に引くわ~。
隣でアララキは、「もう全然興味ありません」って顔してるし、なんなら「やめれば? 偽の声とか‥ある意味国民をだましてるじゃん? 」とか言ってるし。‥なんで、お前は止めさせたいんだ。
俺は何となく記憶があやふやなんだけど、フミカが俺に爆弾発言をしたあと‥カツラギが俺にとどめを刺してきて‥そのついでにアララキに何か言ったみたいなんだよな。
俺なんかを邪まな目で見る奴が、アララキ以外にいるか。
って俺が当たり前の事言ったあと、カツラギが
「今まではな」
って。
「サカマキが嫌われてたのって、‥高位魔法使いだから」
って。
高位魔法使いじゃなくなったら、‥皆は俺のことあんなに嫌わなくなるんだろうか?
村にいた時みたいに、普通に接してくれるようになるんだろうか?
だけど、「はい、今からこの子は高位魔法使いじゃなくなりますよ」って、今まで忌み嫌ってた俺のこと、「だから、嫌わないであげてね」っていって‥果たして、受け入れてもらえるんだろうか?
例えばだよ?
「はい、この縁起の悪い髑髏の置物、明日っからは縁起のいい「七福神の置物」ってことにするから、「縁起悪い」とかいっちゃだめだよ」
って言われても、「いや、だけど、これ縁起の悪い髑髏の置物だし‥」って感じだよね。
白を黒だって人に納得させる話術‥賢者の力? ‥がカツラギにあったとしても、やっぱり、白は白で黒にはならない。
裸の王様って物語を地球で読んだことがあった。
王様は騙されて「賢い人には見える服」を着て、得意になってるんだ。周りの皆も「裸だな」って思ってるんだけど、賢い人には見える服が見えないってことは、馬鹿ってことになる‥馬鹿って思われるの嫌だな、って「素晴らしい服ですね」って言うんだ。そしたら、その王様を見た子供が「王様なんで裸なん? 」って聞いて、‥ああアホなん、俺らやったやん、って。
‥どんなに白を黒だって言い張って、皆も「そういうことにしよ」って思ったところで、白は白。
‥てか、白を黒って言うって、なんか「無罪の人を有罪にする」って感じで嫌だな。
あ‥話が脱線した。
‥茶番だよね。所詮。って話。
「虐めは止めましょう。かっこ悪いです。人間として最低です。今日この瞬間から、サカマキ君はいじめられっ子じゃなくなりました」
って宣言して、いままで虐めてた側の人が急に変わるか? って話だ。同和映画なら「実は俺たちも、皆の手前‥お前の事悪く言ってただけなんだ。‥お前の肩もったら俺が今度は虐められるって思って‥。悪かった俺たちが」っていう派が出てきて、虐めてたグループが次第に追い込まれて「悪かったよ‥」ってなる‥んだろうが(いつの時代の同和映画だ)、実際は、「取扱注意人物」になるだけだろう。「こいつに変に話しかけて、「また虐めてる」とか言われてもややこしいから、話しかけないで置こうぜ」‥平和的に、丸無視って奴だ。先生に見られたら「しかとしてる」とか言われても嫌だから、凄い緊張して、取り敢えず話しかける‥っていうね。
今回の俺の立場ってそれじゃない?
賢者に王様、‥偉いさんに「虐めは今日で終わりです」宣言されて、国民は形式上従うっていうね‥。
「‥あの、俺‥」
って話しかけた時には、カツラギはいなかった。アララキも一緒な様だ。
放送するための部屋に移動したって、フミカから聞いた。「何を考え込んでたんだ? 百面相して忙しそうだったけど」とも。
そこに、風魔法での放送が城内に響いた。
カツラギの、以前のカツラギの声だった。目の前に、以前のカツラギがいる様な気がして‥自然に涙が流れてフミカが俺の背中をそっと撫ぜてくれた。
「‥カツラギだな」
って、フミカもちょっと泣いてるみたいだった。
「皆さん、お久しぶりです。‥私は、賢者のカツラギです。賢者としてここにきて、もう10年近くになります。
賢者は、ご存じかと思いますが、高位魔法使いの相方として、神に使命を与えられ生まれてきます。
高位魔法使いの使命は、魔物の討伐で、賢者は、そのサポートをするのが仕事です。
魔物と言っても、下級の魔物‥日常的に出現する魔物とは違います。何十年か周期に定期的に表れる特別な魔物です。‥万物を知る賢者と言いながら、その出現を阻止する術は私も含め、歴代の賢者にも分からなかったのですが、私たち賢者には、「魔物が誕生した」こと「魔物の出現した場所」そして、魔物を倒す唯一の人物である「高位魔法使いの居場所」が分かりました」
カツラギの静かで、落ち着いた声がまるで目の前でカツラギが話している様に聞こえて、俺は思わず目を閉じた。
瞼の裏に、カツラギの姿が見えた気がした。
プラチナブロンズの髪、タンザナイトの瞳の背の高いカツラギ。
シニカルに微笑む、秀麗な俺の兄黄‥。
アララキとカツラギ‥俺が最も信用していて‥大好きな兄貴たち。
カツラギは誰よりも賢くって、俺の自慢の兄黄だった。
「私と、高位魔法使いであるサカマキも先人たちと同じように、使命を全うするために今まで‥魔物と戦ってきました。賢者と高位魔法使いは、‥特別な魔物‥自分が生れてくる原因となった因縁の魔物と戦うことのみが仕事なのです。‥今までの間違いはそこにあったのです」
城内のあちこちから、「どういうことだ? 」「‥いや、仰っておられることは分かる‥」というような声が聞こえて来る。
「つまり、賢者と高位魔法使いは、その時限りで、次の周期の別の魔物相手には‥全く無関係なのです。歴代の高位魔法使いが、別の魔物討伐の際に命を落としていたのは、それが原因だったのです。その魔物、彼の狩るべき魔物ではなく、また、その賢者は彼の賢者じゃなかったからなのです。
‥先の高位魔法使いが次の周期の魔物の出現時に生き残っていた場合、‥分かりにくいので、前世代の高位魔法使いを前高、賢者を、前賢、次世代のそれをそれぞれ、後高、後賢とすると、後賢があらたな魔物の出現を城に報告しに来た時、彼の後高を探し始める前に、前高と前賢がいた場合、前賢と協力して、前高でもって新たな魔物に対応しようとする‥、その場合、前賢の対処策や前高のスキルが新たな魔物に対応していないので‥作戦は失敗に終わる。
失敗することもある‥これは、高位魔法使いの名誉の死傷だとされてきたが、そんなことは本来ないんです。ある訳が無いことなんです。
つまりその間違いといのが、‥前高と前賢は、あくまでも先の魔物討伐でその役目を終えていたということなのです」
周りが静まり返っている。
その中で、サカマキは「カツラギ節炸裂だな。あいつ、今いきいきしてるんだろうな。説明とか、主張とか大好きだもんな」とぼんやり思っていた。フミカも、‥多分そんな感じだったんだろう。
カツラギ信者? 大半が(放送室的なところに)演説する生カツラギを見に行って、‥見に行けなかった組は目を瞑って感涙しながら聞いてるみたいだ。
‥見に行けなかった組、悔しそうじゃなかったかって? そんなの‥言うまでも無いよ‥。
「‥少し考えれば分かることだったと思います。だけど、我々は今まで高位魔法使いに敬意を払わなさ過ぎた。高位魔法使いの働きを‥感謝しなさ過ぎた。戦いが終わったことを‥その労をねぎらって、‥私たちは彼に敬意を払うべきだった。そして、戦いが終わったことを皆に告げて、彼を開放すべきだった。
皆に告げることで、賢者であると‥高位魔法使いであると宣言したなら、‥皆に引退を宣言して、その任を自ら退くべきである。私はそう思う。だから、私は実行する。
自らの引退と、サカマキの解放。そして、それ以上にサカマキに感謝を‥伝えます。
サカマキ‥ありがとう。
そして、‥お疲れ様。
私たちの使命は、終わりました。私はもう、賢者ではなく、サカマキも高位魔法使いではなくなりました」
長い、終結宣言が終わった。
暫くの沈黙の後、
「‥アララキです。
彼‥カツラギには引き続き、学者棟の筆頭‥室長として働いてもらい、その豊富な知識を役立てて欲しいと願います。そして、サカマキには‥国内最強の魔法使いである彼には、筆頭魔法使いとして、伴侶兼王専任護衛となってもらいたいと思います」
ん?
あんたさっき、さらっと伴侶って言った?
「‥成程、いい手だな。サカマキは自分の物だって宣言することによって、今から現れ続けるであろうライバルに牽制しておこうってことか」
「相変わらずそつがないな」
とは、ナツカとフミカ。
ナツカの膝にフミカが座っているが、座っているバカカップルっていうより‥
‥お父さんと娘。
いや、お父さんと娘は、アララキとフミカが一緒にいるときがMAXだけどな。なんせそっくりだから。
アララキの言葉は続いて
「私たちの間には、もう既に子供もいる。サカマキにモーションをかける者は、私に戦いを挑んでいる者と解釈します」
で、終結した。
‥アララキ、あんなだけど、剣の腕も立つし、魔法も(俺ほどじゃないけど)使えるからな~。戦いを挑みたくないよな~。
だけど、‥だから、なんで俺なんかにアプローチする奴が出ると思うんだよ‥。
お前だけだっちゅうの。
俺は、呆れたし恥ずかしかったけど‥なんだかくすぐったい気持ちになったんだ。
‥今この瞬間に、「高位魔法使いの呪い」が解けて、皆の俺に対する見方がもう目に見えて変わっているとは‥俺はこの時は、知る由もなかった。
インテリショタなカツラギが、首をひねる。
いちいちあざと可愛い‥と思うのは多分気のせいじゃないだろう。
‥こいつ、結構策士だな。‥イヤ策士なのは知ってたけど、ここまで「方法選ばない」タイプだったのか‥。クズっぷりは健在だな。
周りでハートがキュンキュンなカツラギ信者たちが
「カツラギ様は引退なんてなさいません! たとえ、神との約束である今期の賢者でなくなっても、カツラギ様は私たちの賢者です(←? )」
「そうです! カツラギ様がカツラギ様であることに、変わりはありません! (← )」
「私たちのカツラギ様への愛も変わりません(← )」
カツラギの周りで、ワイワイ言ってる。
‥えええ、カツラギ信者、アタマ、大丈夫? なんか、何言ってるかわかんなくなってるけど‥。
それにカツラギ、「いい言葉が思いつかないな」みたいな顔してるけど‥それも、どうでもいいよ。
「宣言する」。その一言だろ?
さっさとしろ。
それで、音声は‥
‥カツラギ信者が保管してあった、カツラギの声コレクションから俺が再現した「カツラギの声データによる、カツラギの声」コ●ン君でいうところの「変声器」ってやつ。
‥カツラギ、凄い枚数の写真(ココでは、念写だが)だけじゃなく、音声迄保管してあるんだよ。‥ホント、なんか、信者怖い。
カツラギ、服とか何枚かなくなってないよね? 大丈夫だよね?
それよか、‥飲んだコップとか保管されてないよね? そこからDNAとか抽出されてないよね??
‥全部あり得そうで怖いよ‥。
いかがわしいことして汚れたシーツとかとってあったら‥流石に引くわ~。
隣でアララキは、「もう全然興味ありません」って顔してるし、なんなら「やめれば? 偽の声とか‥ある意味国民をだましてるじゃん? 」とか言ってるし。‥なんで、お前は止めさせたいんだ。
俺は何となく記憶があやふやなんだけど、フミカが俺に爆弾発言をしたあと‥カツラギが俺にとどめを刺してきて‥そのついでにアララキに何か言ったみたいなんだよな。
俺なんかを邪まな目で見る奴が、アララキ以外にいるか。
って俺が当たり前の事言ったあと、カツラギが
「今まではな」
って。
「サカマキが嫌われてたのって、‥高位魔法使いだから」
って。
高位魔法使いじゃなくなったら、‥皆は俺のことあんなに嫌わなくなるんだろうか?
村にいた時みたいに、普通に接してくれるようになるんだろうか?
だけど、「はい、今からこの子は高位魔法使いじゃなくなりますよ」って、今まで忌み嫌ってた俺のこと、「だから、嫌わないであげてね」っていって‥果たして、受け入れてもらえるんだろうか?
例えばだよ?
「はい、この縁起の悪い髑髏の置物、明日っからは縁起のいい「七福神の置物」ってことにするから、「縁起悪い」とかいっちゃだめだよ」
って言われても、「いや、だけど、これ縁起の悪い髑髏の置物だし‥」って感じだよね。
白を黒だって人に納得させる話術‥賢者の力? ‥がカツラギにあったとしても、やっぱり、白は白で黒にはならない。
裸の王様って物語を地球で読んだことがあった。
王様は騙されて「賢い人には見える服」を着て、得意になってるんだ。周りの皆も「裸だな」って思ってるんだけど、賢い人には見える服が見えないってことは、馬鹿ってことになる‥馬鹿って思われるの嫌だな、って「素晴らしい服ですね」って言うんだ。そしたら、その王様を見た子供が「王様なんで裸なん? 」って聞いて、‥ああアホなん、俺らやったやん、って。
‥どんなに白を黒だって言い張って、皆も「そういうことにしよ」って思ったところで、白は白。
‥てか、白を黒って言うって、なんか「無罪の人を有罪にする」って感じで嫌だな。
あ‥話が脱線した。
‥茶番だよね。所詮。って話。
「虐めは止めましょう。かっこ悪いです。人間として最低です。今日この瞬間から、サカマキ君はいじめられっ子じゃなくなりました」
って宣言して、いままで虐めてた側の人が急に変わるか? って話だ。同和映画なら「実は俺たちも、皆の手前‥お前の事悪く言ってただけなんだ。‥お前の肩もったら俺が今度は虐められるって思って‥。悪かった俺たちが」っていう派が出てきて、虐めてたグループが次第に追い込まれて「悪かったよ‥」ってなる‥んだろうが(いつの時代の同和映画だ)、実際は、「取扱注意人物」になるだけだろう。「こいつに変に話しかけて、「また虐めてる」とか言われてもややこしいから、話しかけないで置こうぜ」‥平和的に、丸無視って奴だ。先生に見られたら「しかとしてる」とか言われても嫌だから、凄い緊張して、取り敢えず話しかける‥っていうね。
今回の俺の立場ってそれじゃない?
賢者に王様、‥偉いさんに「虐めは今日で終わりです」宣言されて、国民は形式上従うっていうね‥。
「‥あの、俺‥」
って話しかけた時には、カツラギはいなかった。アララキも一緒な様だ。
放送するための部屋に移動したって、フミカから聞いた。「何を考え込んでたんだ? 百面相して忙しそうだったけど」とも。
そこに、風魔法での放送が城内に響いた。
カツラギの、以前のカツラギの声だった。目の前に、以前のカツラギがいる様な気がして‥自然に涙が流れてフミカが俺の背中をそっと撫ぜてくれた。
「‥カツラギだな」
って、フミカもちょっと泣いてるみたいだった。
「皆さん、お久しぶりです。‥私は、賢者のカツラギです。賢者としてここにきて、もう10年近くになります。
賢者は、ご存じかと思いますが、高位魔法使いの相方として、神に使命を与えられ生まれてきます。
高位魔法使いの使命は、魔物の討伐で、賢者は、そのサポートをするのが仕事です。
魔物と言っても、下級の魔物‥日常的に出現する魔物とは違います。何十年か周期に定期的に表れる特別な魔物です。‥万物を知る賢者と言いながら、その出現を阻止する術は私も含め、歴代の賢者にも分からなかったのですが、私たち賢者には、「魔物が誕生した」こと「魔物の出現した場所」そして、魔物を倒す唯一の人物である「高位魔法使いの居場所」が分かりました」
カツラギの静かで、落ち着いた声がまるで目の前でカツラギが話している様に聞こえて、俺は思わず目を閉じた。
瞼の裏に、カツラギの姿が見えた気がした。
プラチナブロンズの髪、タンザナイトの瞳の背の高いカツラギ。
シニカルに微笑む、秀麗な俺の兄黄‥。
アララキとカツラギ‥俺が最も信用していて‥大好きな兄貴たち。
カツラギは誰よりも賢くって、俺の自慢の兄黄だった。
「私と、高位魔法使いであるサカマキも先人たちと同じように、使命を全うするために今まで‥魔物と戦ってきました。賢者と高位魔法使いは、‥特別な魔物‥自分が生れてくる原因となった因縁の魔物と戦うことのみが仕事なのです。‥今までの間違いはそこにあったのです」
城内のあちこちから、「どういうことだ? 」「‥いや、仰っておられることは分かる‥」というような声が聞こえて来る。
「つまり、賢者と高位魔法使いは、その時限りで、次の周期の別の魔物相手には‥全く無関係なのです。歴代の高位魔法使いが、別の魔物討伐の際に命を落としていたのは、それが原因だったのです。その魔物、彼の狩るべき魔物ではなく、また、その賢者は彼の賢者じゃなかったからなのです。
‥先の高位魔法使いが次の周期の魔物の出現時に生き残っていた場合、‥分かりにくいので、前世代の高位魔法使いを前高、賢者を、前賢、次世代のそれをそれぞれ、後高、後賢とすると、後賢があらたな魔物の出現を城に報告しに来た時、彼の後高を探し始める前に、前高と前賢がいた場合、前賢と協力して、前高でもって新たな魔物に対応しようとする‥、その場合、前賢の対処策や前高のスキルが新たな魔物に対応していないので‥作戦は失敗に終わる。
失敗することもある‥これは、高位魔法使いの名誉の死傷だとされてきたが、そんなことは本来ないんです。ある訳が無いことなんです。
つまりその間違いといのが、‥前高と前賢は、あくまでも先の魔物討伐でその役目を終えていたということなのです」
周りが静まり返っている。
その中で、サカマキは「カツラギ節炸裂だな。あいつ、今いきいきしてるんだろうな。説明とか、主張とか大好きだもんな」とぼんやり思っていた。フミカも、‥多分そんな感じだったんだろう。
カツラギ信者? 大半が(放送室的なところに)演説する生カツラギを見に行って、‥見に行けなかった組は目を瞑って感涙しながら聞いてるみたいだ。
‥見に行けなかった組、悔しそうじゃなかったかって? そんなの‥言うまでも無いよ‥。
「‥少し考えれば分かることだったと思います。だけど、我々は今まで高位魔法使いに敬意を払わなさ過ぎた。高位魔法使いの働きを‥感謝しなさ過ぎた。戦いが終わったことを‥その労をねぎらって、‥私たちは彼に敬意を払うべきだった。そして、戦いが終わったことを皆に告げて、彼を開放すべきだった。
皆に告げることで、賢者であると‥高位魔法使いであると宣言したなら、‥皆に引退を宣言して、その任を自ら退くべきである。私はそう思う。だから、私は実行する。
自らの引退と、サカマキの解放。そして、それ以上にサカマキに感謝を‥伝えます。
サカマキ‥ありがとう。
そして、‥お疲れ様。
私たちの使命は、終わりました。私はもう、賢者ではなく、サカマキも高位魔法使いではなくなりました」
長い、終結宣言が終わった。
暫くの沈黙の後、
「‥アララキです。
彼‥カツラギには引き続き、学者棟の筆頭‥室長として働いてもらい、その豊富な知識を役立てて欲しいと願います。そして、サカマキには‥国内最強の魔法使いである彼には、筆頭魔法使いとして、伴侶兼王専任護衛となってもらいたいと思います」
ん?
あんたさっき、さらっと伴侶って言った?
「‥成程、いい手だな。サカマキは自分の物だって宣言することによって、今から現れ続けるであろうライバルに牽制しておこうってことか」
「相変わらずそつがないな」
とは、ナツカとフミカ。
ナツカの膝にフミカが座っているが、座っているバカカップルっていうより‥
‥お父さんと娘。
いや、お父さんと娘は、アララキとフミカが一緒にいるときがMAXだけどな。なんせそっくりだから。
アララキの言葉は続いて
「私たちの間には、もう既に子供もいる。サカマキにモーションをかける者は、私に戦いを挑んでいる者と解釈します」
で、終結した。
‥アララキ、あんなだけど、剣の腕も立つし、魔法も(俺ほどじゃないけど)使えるからな~。戦いを挑みたくないよな~。
だけど、‥だから、なんで俺なんかにアプローチする奴が出ると思うんだよ‥。
お前だけだっちゅうの。
俺は、呆れたし恥ずかしかったけど‥なんだかくすぐったい気持ちになったんだ。
‥今この瞬間に、「高位魔法使いの呪い」が解けて、皆の俺に対する見方がもう目に見えて変わっているとは‥俺はこの時は、知る由もなかった。
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