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七章 元通り
1.アララキは桜子にジェラシーを感じ、正樹のことは若干恐れているらしい。
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「俺は取り敢えず地球に帰る。桜子が心配だからな」
サカマキは空間収納に収納していた服を出して、頭からかぶる。
服は勿論「地球用」のトレーナーだ。この世界のズボンは、地球でいうトレーナーのズボンとそう変わらない。布を織って切って縫い合わせるという技術を地球「出身」の誰かが伝えたんだろう。だけど、機能性を重視するこの世界では、それがファッションにと発展するようなことはなかった。
あくまで、身体を覆うってだけのものだ。
ゴム(※ 伝えた転生者にゴムを作る技術まではなかったのだろう。確かに、ゴムを採取してから‥とかいう工程、よくわからない)の代わりに紐でウエストを調節するようになっているが、そう見た目には変わらない。サカマキも、ズボンはあっちでも変わらずここと同じものを使っていた。
「サカマキには珍しい色だね。その服」
頭から服をかぶったため、若干乱れた髪を手櫛で整えてやると、サカマキが視線だけ僕を見上げてちょこっと首を傾げ「ああ、そういえばそうだね」と頷いて、
「いいだろ? 」
って微笑む。
桜子に買ってもらったらしい。しかも、「そろそろちょっと季節外れ」だから「衣替えして新しい服を買いに行かないといけない」ってこの前桜子と一緒に服を見に行ったが、結局買わずに帰って来たらしい。(話してることがすっかり地球人だなって思って聞いててちょっと面白かった)
今度は絶対僕と買いに行こう。
一緒に服を選ぶなんてこっちでは絶対無いからワクワクするね。
こっちの服屋にはそんなに種類が無いんだ。
服の形は一パターンだけで、‥長さだとかサイズだとかが違うだけなんだ。色は「役人の職業カラーと紛らわしいから」そんなに濃い色の服はない。若干色がついてるかな‥位のものだ。草木染だから、色もほんのりっていうのが多い。
役員カラーの濃い染物は、手間もかかっているし、使用されている染料も高いんだ。その分お値段も高くなるってわけ。
こっちは季節が無いから、国民は(特に男は)サイズが合わなくなったり破れた時くらいしか服は新調しない。皆同じ格好なのが当たり前だから、「服装にこだわらない奴だな」とか言われることもなくて、楽だ。
あ、でも国民に制服が義務付けられてる‥とかじゃないよ?
ただ、服はそういうもん、って感覚しかないってだけ。お洒落、って嗜好品だよね。生活に最も必要なことから優先順位が決まるわけだから、自然と後回しになるもんなんだろうね。
だけど、僕は面倒臭くなくていいと思うよ。
時間もお金も節約できるってくらいにしか思わない。(きっと、前世の僕もそう服装に拘りが無いタイプだったんだろう)
ここでもお洒落な人ってのは、普通にいる。(僕には驚きでしかないが、いる。転生者かな? ←偏見)
だけど、彼らはお洒落を「日常生活」にはあまり持ち込まないんだ。男の人は特に、OFFはOFF。仕事時は、制服、ってきっぱり分けてる。制服にお金をかけるなんて、そんな勿体ないし、面倒くさいことしない、みたいなところがある。
王都で働いている役員の制服は支給だから買うことはないんだ。
職場に行く時は、職業カラーを身に着けて、自室では麻の貫頭衣だけ着てるって人が多いかな。男は99%そう。ほんの一部のお洒落な男や女性は、めいめい自分の好きな服を着てるようだ。(売ってないから、自分で作ったり、器用な人に頼んだりしてるんだろうね。そういうのも含めて凄いと思う‥)
仕事で使わず、給料は総て私生活とOFFの時に使う。それが、王都民の一般的なライフスタイルだ。僕らがまだ役職にも就いていなかった若手の頃は、そう高くなかった給料が出ると、お酒を買ってきて仲間内で飲み会をしたな~。(今の若い子も大概がそうだけど、しっかりしてる子は将来の結婚資金にって、貯金をしてるみたいだね。)‥今思い出しても、若い頃の僕にはそんな建設性なかったなあ~。
OFFでのお金の使い方‥だけど、地球と交流が盛んになってきたせいか、特に女性が地球のファッションを取り入れるっていうのが流行ってるみたい。服屋の中にも、そういう流行にいち早く乗ってるものが、若者に支持されたりしてるみたい。だけど、それもプライベートの時のみで、職場では相変わらず白い(生成り)の貫頭衣+職業カラーだ。これからもそれは変わらないだろう。
流行りから最も遠くにいそうなサカマキが「地球ファッション」かぁ。
「緑色似合うね」
ってさりげなく後ろから抱きしめたら、ふわんとした柔らかい微笑みを浮かべ、さりげなく僕の腕から抜けながら
「だろ。桜子が選んでくれたんだ」
っていい笑顔。
桜子桜子、って、ちょっと嫉妬してしまうよ。流石に。
だけど、言わないよ。‥鬱陶しい嫉妬男にはなりたくないからね。
でも、ちょっと顔に出てたみたいで、サカマキは「どうした? 」って心配そうな顔で僕を覗き込んできた。
‥さっきの黒目の色違いサカマキとは違う‥いつものサカマキ。
若干、歩み寄ってくれたかな‥って感じの、サカマキ。
(色違いと普通のサカマキは)自分の意志で自由に切り替えられるんだろうか? って程、ナチュラルだったけど、‥多分「落ち着いたら元に戻った」って感じなんだろう。もしかしたら、黒目のサカマキの時の記憶は今のサカマキにはないかもしれないね。
‥もう黒目のサカマキと会うことはない。
そんな気がした。
「また桜子の中に入るの? 」
‥言い方‥。
サカマキが呆れた顔でアララキを見る。
「うん。正樹のいない昼間だけな。夜は‥正樹が帰ってきたら、正樹ならどのようにしたって桜子を守るだろう」
なんせ、ヤンデレで、桜子にゾッコン(死語)だから。
正樹は正直苦手だけど、桜子に関しての事については信用できる。
桜子のことは正直僕は‥どうでもいいんだけど、サカマキは桜子が大好きだ。
‥桜子に何かあったら、サカマキが悲しむから、一応は気にしてる。
だけど‥
「僕、ちょっと正樹は苦手なんだ‥」
‥あ、つい口に出して言っちゃった。
ふふ、とサカマキが微笑む。
「それな。でも、‥あれが普通‥なのかもしれないな。桜子みたいに「誰にでも優しい」ってのは‥稀なのかもしれないな」
「あそこ迄極端なのは‥でも‥珍しいんだろうね。極端っていえば、正樹も極端だよ。なんていうか‥独占欲がすごい‥ってか‥」
‥その言葉、そのままお前にブーメランな。
サカマキは思ったがあえて口には出さなかった。
ヤンデレに自覚は期待できないし‥、なんかのスイッチ押しちゃってもメンドクサイし。
‥ホント、メンドクサイ地雷が多くって、気を遣うわ~。
サカマキはちょっと苦笑いする。
「‥まあ、それっ位の方が桜子を任せられて安心ってね。うん。まあ、とにかく行ってくるわ‥」
ふう、ってサカマキが小さくため息をつく。
僕は首を傾げてしまった。
「え。僕も行くけど」
‥行ってくるじゃなくて、「行こう」でしょ?。
‥ですよね~。
そういうと思いました~。
って顔? サカマキがなんか微妙な顔してる。(そういう顔も可愛いね! )
「時間の進み方って問題があるから、そう長い間はいられないぞ」
そう。
時間の進み方が全然違う。
だから、魔物も地球に常駐しないし、happynationの兵士も地球滞在時間は短い。
生粋のhappynation人は、時差ボケの酷い奴を起こすらしい。フミカやカツラギはどうなんだろ。生粋のhappynation人じゃないから大丈夫‥とかあるのかな。
‥俺は、神獣だからそういうの平気。長生きだし。ああそうか、カツラギは分からんが、フミカも半分とは言え神獣だから平気だな、きっと。
サカマキは、移動の準備をしながらそんなことを考えていた。
アララキがサカマキを抱きしめた腕に力を入れる。
「頑張って‥はやく片付けちゃお? はやく‥一緒に住みたい」
サカマキは
いつもだったら、鬱陶しいって腕を払っちゃうだろうけど‥
「‥そう、だな」
ちょっと躊躇はしたものの、結局、おずおずとアララキの背中に腕を回す。
あったかい。
気持ちいい。
‥愛おしくて仕方が無い。
‥あ~俺、どうしちゃったんだろ。
アララキが愛しくて仕方ないなんて‥
‥愛しくて、離れたくなくて‥触れたら嬉しくって、もっと触れてて欲しくて仕方ないなんて‥
もう、俺、一体どうしちゃったんだろう。
自分の気持ちの変化についていけないサカマキだった。
サカマキは空間収納に収納していた服を出して、頭からかぶる。
服は勿論「地球用」のトレーナーだ。この世界のズボンは、地球でいうトレーナーのズボンとそう変わらない。布を織って切って縫い合わせるという技術を地球「出身」の誰かが伝えたんだろう。だけど、機能性を重視するこの世界では、それがファッションにと発展するようなことはなかった。
あくまで、身体を覆うってだけのものだ。
ゴム(※ 伝えた転生者にゴムを作る技術まではなかったのだろう。確かに、ゴムを採取してから‥とかいう工程、よくわからない)の代わりに紐でウエストを調節するようになっているが、そう見た目には変わらない。サカマキも、ズボンはあっちでも変わらずここと同じものを使っていた。
「サカマキには珍しい色だね。その服」
頭から服をかぶったため、若干乱れた髪を手櫛で整えてやると、サカマキが視線だけ僕を見上げてちょこっと首を傾げ「ああ、そういえばそうだね」と頷いて、
「いいだろ? 」
って微笑む。
桜子に買ってもらったらしい。しかも、「そろそろちょっと季節外れ」だから「衣替えして新しい服を買いに行かないといけない」ってこの前桜子と一緒に服を見に行ったが、結局買わずに帰って来たらしい。(話してることがすっかり地球人だなって思って聞いててちょっと面白かった)
今度は絶対僕と買いに行こう。
一緒に服を選ぶなんてこっちでは絶対無いからワクワクするね。
こっちの服屋にはそんなに種類が無いんだ。
服の形は一パターンだけで、‥長さだとかサイズだとかが違うだけなんだ。色は「役人の職業カラーと紛らわしいから」そんなに濃い色の服はない。若干色がついてるかな‥位のものだ。草木染だから、色もほんのりっていうのが多い。
役員カラーの濃い染物は、手間もかかっているし、使用されている染料も高いんだ。その分お値段も高くなるってわけ。
こっちは季節が無いから、国民は(特に男は)サイズが合わなくなったり破れた時くらいしか服は新調しない。皆同じ格好なのが当たり前だから、「服装にこだわらない奴だな」とか言われることもなくて、楽だ。
あ、でも国民に制服が義務付けられてる‥とかじゃないよ?
ただ、服はそういうもん、って感覚しかないってだけ。お洒落、って嗜好品だよね。生活に最も必要なことから優先順位が決まるわけだから、自然と後回しになるもんなんだろうね。
だけど、僕は面倒臭くなくていいと思うよ。
時間もお金も節約できるってくらいにしか思わない。(きっと、前世の僕もそう服装に拘りが無いタイプだったんだろう)
ここでもお洒落な人ってのは、普通にいる。(僕には驚きでしかないが、いる。転生者かな? ←偏見)
だけど、彼らはお洒落を「日常生活」にはあまり持ち込まないんだ。男の人は特に、OFFはOFF。仕事時は、制服、ってきっぱり分けてる。制服にお金をかけるなんて、そんな勿体ないし、面倒くさいことしない、みたいなところがある。
王都で働いている役員の制服は支給だから買うことはないんだ。
職場に行く時は、職業カラーを身に着けて、自室では麻の貫頭衣だけ着てるって人が多いかな。男は99%そう。ほんの一部のお洒落な男や女性は、めいめい自分の好きな服を着てるようだ。(売ってないから、自分で作ったり、器用な人に頼んだりしてるんだろうね。そういうのも含めて凄いと思う‥)
仕事で使わず、給料は総て私生活とOFFの時に使う。それが、王都民の一般的なライフスタイルだ。僕らがまだ役職にも就いていなかった若手の頃は、そう高くなかった給料が出ると、お酒を買ってきて仲間内で飲み会をしたな~。(今の若い子も大概がそうだけど、しっかりしてる子は将来の結婚資金にって、貯金をしてるみたいだね。)‥今思い出しても、若い頃の僕にはそんな建設性なかったなあ~。
OFFでのお金の使い方‥だけど、地球と交流が盛んになってきたせいか、特に女性が地球のファッションを取り入れるっていうのが流行ってるみたい。服屋の中にも、そういう流行にいち早く乗ってるものが、若者に支持されたりしてるみたい。だけど、それもプライベートの時のみで、職場では相変わらず白い(生成り)の貫頭衣+職業カラーだ。これからもそれは変わらないだろう。
流行りから最も遠くにいそうなサカマキが「地球ファッション」かぁ。
「緑色似合うね」
ってさりげなく後ろから抱きしめたら、ふわんとした柔らかい微笑みを浮かべ、さりげなく僕の腕から抜けながら
「だろ。桜子が選んでくれたんだ」
っていい笑顔。
桜子桜子、って、ちょっと嫉妬してしまうよ。流石に。
だけど、言わないよ。‥鬱陶しい嫉妬男にはなりたくないからね。
でも、ちょっと顔に出てたみたいで、サカマキは「どうした? 」って心配そうな顔で僕を覗き込んできた。
‥さっきの黒目の色違いサカマキとは違う‥いつものサカマキ。
若干、歩み寄ってくれたかな‥って感じの、サカマキ。
(色違いと普通のサカマキは)自分の意志で自由に切り替えられるんだろうか? って程、ナチュラルだったけど、‥多分「落ち着いたら元に戻った」って感じなんだろう。もしかしたら、黒目のサカマキの時の記憶は今のサカマキにはないかもしれないね。
‥もう黒目のサカマキと会うことはない。
そんな気がした。
「また桜子の中に入るの? 」
‥言い方‥。
サカマキが呆れた顔でアララキを見る。
「うん。正樹のいない昼間だけな。夜は‥正樹が帰ってきたら、正樹ならどのようにしたって桜子を守るだろう」
なんせ、ヤンデレで、桜子にゾッコン(死語)だから。
正樹は正直苦手だけど、桜子に関しての事については信用できる。
桜子のことは正直僕は‥どうでもいいんだけど、サカマキは桜子が大好きだ。
‥桜子に何かあったら、サカマキが悲しむから、一応は気にしてる。
だけど‥
「僕、ちょっと正樹は苦手なんだ‥」
‥あ、つい口に出して言っちゃった。
ふふ、とサカマキが微笑む。
「それな。でも、‥あれが普通‥なのかもしれないな。桜子みたいに「誰にでも優しい」ってのは‥稀なのかもしれないな」
「あそこ迄極端なのは‥でも‥珍しいんだろうね。極端っていえば、正樹も極端だよ。なんていうか‥独占欲がすごい‥ってか‥」
‥その言葉、そのままお前にブーメランな。
サカマキは思ったがあえて口には出さなかった。
ヤンデレに自覚は期待できないし‥、なんかのスイッチ押しちゃってもメンドクサイし。
‥ホント、メンドクサイ地雷が多くって、気を遣うわ~。
サカマキはちょっと苦笑いする。
「‥まあ、それっ位の方が桜子を任せられて安心ってね。うん。まあ、とにかく行ってくるわ‥」
ふう、ってサカマキが小さくため息をつく。
僕は首を傾げてしまった。
「え。僕も行くけど」
‥行ってくるじゃなくて、「行こう」でしょ?。
‥ですよね~。
そういうと思いました~。
って顔? サカマキがなんか微妙な顔してる。(そういう顔も可愛いね! )
「時間の進み方って問題があるから、そう長い間はいられないぞ」
そう。
時間の進み方が全然違う。
だから、魔物も地球に常駐しないし、happynationの兵士も地球滞在時間は短い。
生粋のhappynation人は、時差ボケの酷い奴を起こすらしい。フミカやカツラギはどうなんだろ。生粋のhappynation人じゃないから大丈夫‥とかあるのかな。
‥俺は、神獣だからそういうの平気。長生きだし。ああそうか、カツラギは分からんが、フミカも半分とは言え神獣だから平気だな、きっと。
サカマキは、移動の準備をしながらそんなことを考えていた。
アララキがサカマキを抱きしめた腕に力を入れる。
「頑張って‥はやく片付けちゃお? はやく‥一緒に住みたい」
サカマキは
いつもだったら、鬱陶しいって腕を払っちゃうだろうけど‥
「‥そう、だな」
ちょっと躊躇はしたものの、結局、おずおずとアララキの背中に腕を回す。
あったかい。
気持ちいい。
‥愛おしくて仕方が無い。
‥あ~俺、どうしちゃったんだろ。
アララキが愛しくて仕方ないなんて‥
‥愛しくて、離れたくなくて‥触れたら嬉しくって、もっと触れてて欲しくて仕方ないなんて‥
もう、俺、一体どうしちゃったんだろう。
自分の気持ちの変化についていけないサカマキだった。
応援ありがとうございます!
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