Happy nation

文月

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六章 Happy nation

8.何個かの間違い。

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 僕は今まで何個もの間違いをしてきた。

 生きていく上で、間違いは、よくある。それは問題はない。
 間違えに気付いて、その都度修正すればいいんだ。
 問題は、その間違いに気付かない事。
 ‥だから、時々は振り返って「何か見落としはないかな」って自分の生活を顧みなければいけない。

 間違えで一番多いのは、勘違いで、勘違いって、慢心から来ることおおいよね。
 思えば、転生した当時から、僕は慢心による勘違いをしてきた。


 記憶を持ったまま転生。
 ‥新しい人生イージーモードじゃん?
 前世でも困ったことは無かった。今度は前世での知識がある分、もっとイージーに「幸せな生活」が出来るよね。
 って思っていた。
 だって、見かけは子供、頭脳は‥の某アニメの主人公と同じだ。
 あの子供は、某博士の「チート」アイテムで、子供の体力のなさを補いつつ、持ち前の頭脳を利用して無双とまでは行かないけど、不自由ない生活‥以上の生活を送れてるじゃないか。(そんな目立つことをしても、何処からも特に目をつけられることもなく、‥だ)

 だけど違ってた。

 僕と彼との決定的な違いは、某博士がいないこと‥と、生きていく環境が違うことだった。
 ここには、今まで使ってきた便利な道具なんてない。
 使いこなす能力はあっても、だ。ないなら作ればいいだろうが‥作る技術がない。材料もないし、そもそも仕組みがわからない。 
 異世界転生にはチートがあるだろう! ‥って思ってたけど、それもどうやら‥ないようだ。じゃあ、知識は? って、‥どうやらここでは役に立ちそうにない。「何か使えそうな知識は無いか‥」って焦れば焦る程、連立方程式とか‥生活には使えそうにないものだけしか浮かんでこない。(使えるのかもしれないが、使い方はわからない)

 僕は、結構直ぐに自分の勘違いに気付き、‥でもすぐには立ち直れず、ちょっと落ち込んだ。

 前世の記憶は、転生先での「有利なスキル」なんかじゃなかった。
 勘違いしてた僕は、例えるなら‥素人演芸の舞台に「そこそこ動けるアマチュア俳優」が、ゲストで出演して、「てんで素人」の役者たちに対してて「胸をかしてあげるよ」的な優越感に浸ってたって状態?
 だけど、馬鹿にしてた素人演劇は固定客がついてて、「ここの味」みたいなものが初めからできてて、アマチュア俳優の出る幕なんてなかった‥みたいな。
 観客も、
 あいつ、演劇かじってるね? だけど、だから何? みたいな感じじゃね? (笑)
 って笑うんだ。

 ‥舐めてたんだ。
 異世界なんて、地球と比べて文明も発達してない世界じゃない? 楽勝楽勝って‥。
 マッチしかない世界に、ライター見せたらビビるんじゃね? って意気込んだところで‥手元にライターはない。
「こういうの有るんだぜ?! 」
 って言っても
「へ~(笑)どこに? 」
 って本気にしてもらえない。

 丸腰で異世界は、イージーじゃない。

 肉食動物とか怖いし、(魔獣なんてもっと怖い! )
 食べる物さえ自分で集められないし、‥無人島生活か! 。て感じで‥
 物理的な面でもう、「これは違うな」ってね。
 ‥とにかく、今までの知識とか全然使えないって感じ。こうなったら、下手に「知ってるよ」感出したら、鼻持ちならないガキみたいに見られるな‥って、そしたら、「こいつなんか腹立つな、知ってる‥出来るって思うなら勝手にしろよ」って嫌われて、見捨てられたら‥終わりだな‥。
 それからの僕は「何も知りません、教えてください」って受け身の姿勢にシフトチェンジしたっていうね。

 変なプライドで死にたくない。

 反省してます。異世界舐めててすみませんでしたって。
 でも、「僕は素人とは違う」って選民思想みたいなものは‥心の中にずっとあったんだろうね。
 演技ってのをを知ってるのは自分だけだから、自分がこの舞台を引っ張ってあげなきゃって。畑違いとはいえ、何か自分の知識なり経験が活かせるときが来るだろうって。
 そんな機会を虎視眈々と狙ってたね。
 子供なんか、恋愛対象になるわけないし‥だのに、精神年齢で同じような年の子みても、「え? なんかババアじゃん? 」じゃないけど‥なんか違うな~って思えた。
 小学生くらいの子供(僕の今の見た目年齢)と、大学生くらいの相手(僕の実際年齢)が付き合う‥とか、犯罪臭する。
 こっちの恋愛って、年の差婚とかもいるけど、個人の特殊性癖(ロリコンとかね)とかそういうの遊び‥じゃないけど‥そういうの‥少ない気がする。
 真面目なんだ。
 結婚して、子供つくってっていう考え方が地球よりずっと強い気がする。子供を作っては‥違うかな。同性婚もないこともない。
 ‥とにかく、基本的に‥みんな恋愛っていうのに、真面目なんだ。
 カツラギなんかは、結構地球でいう「プレーボーイ」って感じだったけど、でも、お相手も「割り切った」人としか付き合ってなかった。初心で、何も知らない子を騙くらかして‥とかいうのはなかった。
 子供なんか、以ての外だった。(結構ストライクゾーンは広かったみたいだけど、だ)

 子供は性的な目で見る対象じゃない。
 子供は、健全な環境で育てるべき。

 健全な青少年育成。素晴らしい世界だと思う。
 だから、見かけは子供な僕は恋愛はまだすることないって‥あいつとの約束は「またの機会」ってわきに寄せて‥新しい環境に慣れるため必死になった。
 それに精一杯で、結構、忘れかけも‥してたんだ。正直。
 そんな時、サカマキに会った。
 一目惚れだったわけじゃない。だけど、何か今までと違ったんだ。
 初めてサカマキが人型をとった時だったかな‥
 整った容姿に、誰も寄せ付けないような孤高の魂‥冷たい視線。
 正直、‥ベタな表現だけど、雷が落ちたみたいな感じだった。
 容姿だけじゃない。
 人に全く慣れてないから、媚びることがない。中々懐かない‥心を開かない。だけど、根気強く構い倒したら、やっとちょっと近づいてくるようになった。‥野生動物の餌付けみたいなもんだ。中々上手くいかないから、懐くと可愛いみたいな、ね。
 自分がひねくれてるって自覚位ある。
 きっと、すぐに懐いてたら‥皆に懐く様な愛想のいい動物だったら、あんなに興味を持たなかっただろう。
 やっと懐いた、僕だけの野生動物。しかも、それは、磨けば光りそうな宝石の原石だっていうね。

 ‥気が付いたら、夢中になってた。

 自分が‥「転生者」だって、ホントは子供じゃない‥ってことなんか忘れてた。
 (人生、二回目だっていうのに)サカマキと同じ「一回目」の人生みたいに、「若い頃」を謳歌しちゃったんだ。一回目と同様、「「若さ」っていうより「バカさ」だよね」って感じの傲慢で鼻持ちならない若者生活を謳歌しちゃってたんだ。

 ‥好きな子育てる‥とか「光源氏計画」か。‥とんだ変態オヤジだな。過去の自分にはドン引きだ。

 だが、むっつりな変態で、しかも執念深いドン引きオヤジな(自嘲‥てか、自覚)僕は、執念の末‥初恋を見事実らせて、サカマキと結ばれて、子供も生まれた。
 今まで「恋なんて誰とでも出来る」って思ってたのに、それは間違えだったって「初めて気づいた」
 一つの事に‥一人の人にこんなに自分が執着するなんて思いもしなかった。
 自分がこんなに一つの事に真剣になれるなんてれ思いもしなかった。
 脇目も振らず、って言葉がぴったりくるくらい、僕はもうガムシャラだった。
 強く成れるようにガムシャラに努力して、もう馬鹿みたいにサカマキサカマキって付きまとって、時には「うまいこと」言って騙くらかして‥ここぞってタイミングも逃さなかった。‥フミカの事だ。あんなチャンスでもなかったら、僕はサカマキとあんな関係にはなれてなかった。あれは、我ながらうまいことやった。
 
 今思えば‥。
 
 サカマキとの出会いは、あいつがお膳立てしたのかもしれない。
 「賭け」を思い出した今ならそう思える。
「どんなに愛しても、愛を返してくれない。そんな相手」
 の条件に、サカマキはぴったり合うから。
 確かに、サカマキは僕に愛を返したりなんかしなかった。僕だけではなく、誰にもだ。
 だけど、僕はサカマキに恋に堕ちた。サカマキがどうであれ、僕は気にせずサカマキを愛した。

 僕は(賭けすら忘れてたんだけど)有言実行したってことだ。

 ‥でも、あいつはそれでも僕を‥僕の言う愛ってものを‥信じられなかった。
「じゃあ‥相手が君以外の人のこと好きになったら? 」

「そりゃ、仕方が無いでしょう。‥その子の幸せを祈る。そうしか、出来ないでしょ? そして、影ながらその子のことを守るよ」
 を確かめようとしているんだ。
 
 ‥でもそれは、実現出来てるのかな? 
 だって、相変わらず、サカマキは「誰のことも好きじゃないまま」だ。
 あえて言うなら、桜子にはちょっと心を許してるかな? 
 ‥恋じゃない、その感情でさえ、ちょっと憎らしいね。

 ‥僕は、僕が思った以上に嫉妬深くって、独占欲が強いタイプらしい。

 僕の性格、僕の行動。
 結構蛋白で、器用で、ゴーイングマイウェイな生活を送るタイプだって思ってた。
 だけど、違ってた。
 僕は色々「見間違えていた」
 だけど‥見間違えて‥勘違いしてるのは、僕だけだろうか? 

 ‥勘違いしてるのは僕だけじゃない。あいつもきっと、僕を‥僕って人間を見誤っている。
 そして、‥恋ってものを分かってない。

 例えば、(相手が理解できないとしても)好きなら好きって言わないと恋も愛も始まり様が無い。
 やる前に諦める‥とか絶対にない。
 ぶつかって振られて、でも‥気持ちは変わらなくって‥
 そういうのやってないのに諦める‥とか、ない。
 まして、ぶつかってボロぼりになってもいないのに、悩むとか‥ない。
 ‥不器用で‥、寂しい奴だよなァ「あいつ」って。
 
 愛しても無駄だって分かっててもやめられない。

 この人がいい。
 この人じゃなきゃ嫌だ。

 恋愛は、妥協でも、同情でもない。
 神だろうが、神に愛された男「perfectman」だろうが、
 ‥恋愛は「一人ではできない」。


 意地っ張りで、人の事信じ切れる程自分に自信たっぷりじゃなくって。
 寂しがり屋なのに、普段は絶対「傍に居て」って自分じゃ絶対言えない。
 最高に可愛い可愛い‥僕の野生動物。
 

 そろそろ、堪忍して僕の元に堕ちておいで。
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