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四章 物語の主人公
30.問題はいっぱいあるんだけど、ただ僕たちのことについては、何の問題もない
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(好きな子虐めたからキライっ! とか‥)
(好きな子と、「仮初」とは言え「夫婦」だなんて、嫌! とか‥)
‥知ってる。
僕が正樹の事「好きになれない」のは、大人げない理由からだってこと。
あいつは僕よりずっと若いし、あんな童顔だけど、家族を持って立派に「お父さん」をしている。
‥正樹は、きっと僕よりずっと「大人」だ。
責任も‥家族に対する愛情もある「立派な」大人だ。
だけど、僕は正樹が大人だってことに嫉妬しているわけではない。
正樹の性格が「好きになれない」って言ってるわけでもない。そんな、ろくに知りもしないくせに、正樹の事全否定とか‥失礼だろ? 流石に僕だってそんなことはしない。
正樹が何かを間違っているわけでもない。
正樹は正樹の家族を守っている。正樹にとって大切なのは、桜子と自分の息子。
その大事な桜子が、「何だかおかしい」ってなったら、心配するのは当たり前だし、そこに来て「原因かもしれない可能性」のあるものが出現したら「もしかしたら」って思うは‥おかしくない。
だけどまあ‥あの言い方は気にくわない。
「乗っ取る」とか、‥あの言い方が気にくわない。
そりゃ、こっちの都合もあったけど、もともとは、死ぬかもしれなかった桜子をサカマキが助けた。乗っ取る‥どころか、代わりに生命を「維持してあげた」んだ。(カツラギたちの)仮の魂の置き場にして‥(桜子の出産によって)転生の手助けをさせたのはそれの対価だ。
近頃は‥戦えない桜子に代わって、ボディーガードをしているんだ。‥感謝をするなら分かるけど「乗っ取る」とか悪霊扱い‥
‥お前、一体何様だよ。
だけど、‥仕方が無いか。地球人にとっては、Happy nationの人間は宇宙人‥地球外生命体にも近い「得体のしれない」ものだ。
得体が知れないから、疑う。
何も、間違ってはいない。‥正しい。
正しいとか、正しくないとか‥そんなこと‥だけど、どうでもいい。
正しかろうが正しくなかろうが、僕にとっては、そんなことは問題はない。
‥ただ単純に
サカマキが、誰かのせいで嫌な思いしたり、悩んだり、悲しんだり‥それが嫌だ。
サカマキのこころに印象を残したのが、嫌だ。
今回みたいに‥泣かせた(泣いてはいない)‥嫌な印象をサカマキが正樹に対して持ったのは、‥でもマシだった(注:サカマキは、正樹に対して嫌な印象を持ったわけではない)。もし、サカマキが正樹に微笑みかけていたら、‥僕は正樹を憎んで‥殺してしまいたいって思ったかもしれない。
‥後は、あれだな。
正樹が大事なのは桜子で、「サカマキじゃない」って言ったこと。直接そういったわけじゃないけど、そういうようなこと言った。
ああいう言い方されると、傷つくよね。
もし僕が目の前で、「お前なんかどうでもいいけど、桜子を傷つけないで」とか言われたらショックだろう。
区別ってか、差別ってか‥そういうことじゃないんだけど、
差をつけられるのって、
気分がいいもんじゃない。
勿論、正樹がサカマキも大事とか言ってたら、もう絶対殺してたけど、そういうことじゃないってわかるよね??
‥わかってる、
ああいうしか仕方が無かったって‥
だけど‥
兎に角、気に喰わなかったんだ。
僕が、正樹のことを好きになれないのは、きっとカツラギのことも(ちょっと位は)あるんだと思う。
正樹が、僕らの友人の事を、自分の息子だって言うから。‥そう扱うから。
でも‥これも、何処もおかしくなんかない。
正樹にとって、カツラギは翔でしかない。
正樹は、カツラギなんて知らない。
‥僕たちも正樹に何も言うつもりはない。
だから、これから先も、正樹はそのことを知らないだろう。(知ったところで、信じるはずもないわけだし)
自分の知らないところで、勝手なことされて、勝手に恨まれて‥正樹にとってはいい迷惑だろう。
「どうした? 黙り込んで? 何か考え事か? 」
カツラギが僕を覗き込む。
口調は、今までと何ら変わらない。だけど、知らない子供の声だ。
子供の頃のカツラギの声とは違う、高い声、丸くって大きな‥茶色い目。丸みを帯びた頬。艶のある黒髪。
カツラギだって思って見てるから、カツラギなんだけど、‥全くの別人だ。
魔力を感じないのは、‥だけど、カツラギは魔力量が少なかったから以前とそう変わりはない。
彼から感じる賢者の特徴である、紫の輝く魂‥(検査機を使わなくても、これ程近かったら分かる)それは、何も変わらない。寧ろ、‥それだけが、目の前の子供がカツラギだと確信できる唯一の「目印」だった。
母親である桜子を前にしているからか、チャラくて鬼畜でドSなクズ発言を封印しているらしいカツラギは‥酷く違和感がある。(寧ろ、違和感しかなくってイライラする)
これって、あの「ビジネスモード」だ。あっちにいるときも、僕たちといるとき以外は、カツラギはこんな感じだった。
かわい子ぶりっ子してるってわけじゃないよ? もちろん。
顔に相応しい態度を装ってたって話だ。
家族にそんな感じって‥。
「‥なんだその同情の眼差し‥」
僕を見る絶対零度の侮蔑の視線が「ぼうっとして‥時差ボケの先取りでもしてるのか」って語ってる。よかった‥この子はカツラギだ。こんな、底冷えしそうな視線する子供他にはいないもん(いたら嫌だよ)
地球人になっても、両親の愛に包まれて生活しても、カツラギはカツラギだ。それがちょっと嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「あ、大変。もうこんな時間。じゃあ、サカマキさん、フミカちゃん。またね! ええと‥アララキさんも、失礼します」
僕にまだ慣れていないらしい桜子が、ぎこちない笑顔を僕に向けた。
僕は、もう習慣どころか条件反射になってしまっている「万能な笑顔」を桜子に向ける。
サカマキは、ふわっと優しい自然な笑顔で桜子に手を振り、フミカはニヒルな‥いつもと同じ笑顔で軽く手をあげた。‥こいつ、自分が幼児だってこと忘れてないか。そんな渋い笑顔の子供嫌だぞ。
フミカといい、カツラギといい‥顔見知り相手だとはいえ、外で気を抜いて子供らしい演技を忘れのはよくない。
カツラギとフミカはこの世界にとってどういう存在なんだろうか。
カツラギは、人間なんだろうけど、‥正規の方法で産まれてきたわけではない。その影響は、今後どのように出て来るのだろうか‥。
身体は、確実に人間だ。その遺伝子に「カツラギの記憶」「賢者としてのスペック」みたいなものが加わったくらいで、外見的特徴は正樹と桜子だ。(ってか、ほぼ正樹)身体能力は、正樹かな? そういう、「両親のいろいろな特徴を受け継いでいる」のは、普通の人間と変わらない。
でも、「桜子と正樹の子供として」神の加護を受けた魂‥神から与えられた魂ではない。
タイミングもそう。
神が決めたタイミングじゃない。‥神が決めたタイミングと重なると、カツラギの魂(核)が、その魂に押し出されてしまうから、神が決めたタイミングより早く着床するようにプログラミングしたらしい。(って、サカマキが言っていた)
カツラギの魂‥。
神に殺され‥見放された魂。
本来ならば他の魂と同様に輪廻に再び取り込まれ、記憶その他をクリアにされる予定だった魂。
それを、神に逆らい、無理矢理人間にした。
‥どういう存在だか分からないのは、‥フミカの方が「ヒドイ」かもしれない。
魂の状態は、カツラギと同様、神に疎まれ、‥見捨てられた魂だ。
そして、母親が神に呪われた「遺伝子を残すことが出来ない高位魔法使い」。
‥神に最も望まれていない子供だ。
フミカの身体は‥。
カツラギ以上にイレギュラーだ。
母親であるサカマキが「遺伝子を残すことが出来ない高位魔法使い」なので、フミカの遺伝子は、僕のものだけだ。そして、フミカそのものの性質‥戦士としての性質だ。
フミカの魂に魔法耐性が無かったからか、彼女の魔力は、僕よりすっと少ない。
魔法の申し子であるサカマキの子供だと思ったら、‥なんとも、物足りない。
それが‥でも、神の決めたことなんだ。
神の駒は、チートで使い勝手が良くって、「一代限り」。
能力だけは、‥でいいんじゃない? 「能力が遺伝しない」で良くない? 容姿は遺伝してもはいいんじゃない? ああ、でもそうか‥。神は、本当に何も残したくないんだ。
高位魔法使いJrが、高位魔法使いの能力を持たずに生まれる → 高位魔法使いじゃないから無条件に嫌悪されない → 結婚するのに何の抵抗もない。 → 顔だけは「高位魔法使い」の孫ができる。その顔を見ても、人々は嫌悪感を抱かない。‥そうこうしている内に、人々から高位魔法使いに対する無条件の嫌悪感がなんとなく‥で消えていく。それが、困る。
高位魔法使いは、一代限り。
ピンポイントに、目的のためだけに作り出して、目的が済めば「無かったもの」にしたい。
過ぎたる強力な力は、害にしかならないから。
確かに。神は、道具であり、(道具だからこそ)チートな高位魔法使いの遺伝子を後世に残さないって言ってる。でも、作らせないっていうなら、生殖機能そのものをなくすんじゃない?
つまり、「作らせないって私は言わないけど、どうせ作らないでしょ? 高位魔法使いとか、あなたたち嫌いじゃない。作れないんじゃなくて、‥作る機能を私が与えなかったんじゃなくって、作る相手がいるかが問題なわけでしょ? 作らなかったのは、それはそっちの意思だよ? 」って‥話なんだろうか? 神は高位魔法使いとの間に、人は誰も子供なんて作りたいと思わないだろうって決めつけていた。
今までその神の予想を違える人間はいなかった。
高位魔法使いと子を成す行為をした人間がいなかった。
恋愛感情が分からず、性欲のない彼らは、もしかしたら‥生理現象としての「そういうもの」もなかったのかもしれない。‥それ位の違いが神によって与えられていたのかもしれない。(たまった精液を排泄物と同様に定期的に排泄する的な? 何ら性的な感情もなく、だ)‥それは、分からない。
もしかしたら‥彼らは、誰も愛することもなく愛されることもなく、だけど「性的な快楽」として、自身でそれを慰めていたかもしれない。だとしたら‥それは、なんとも悲しい話だ‥。
思わず眉間に皴が寄った。
でも、‥多分そうなんだろう。「生理現象として」男性器が反応しない事には、ヤルことが出来ない。
「‥‥‥」
‥『あの野郎』‥。
僕は、怒りで身体がかっと熱を持ったのが分かった。
「アララキ。で、さっきの話の続きなんだけど」
サカマキが僕に話しかけようとするのを、フミカが止めた。
「サカマキ。なんかあいつさっきから変に考え込んでるみたいだから、話しかけても無駄じゃないか? おい、アララキ、今日はもう帰れ。遅くなったらあっちに帰った時、大変なんだろ? 王様が長期不在ってのもよくないぞ」
ぽん、とフミカがサカマキの肩をたたく。
「そうだな。そうしろ、お前も疲れてるんだよ。ちょっと休め」
反対の肩をサカマキが叩く。
と、僕はその腕をぱしっと取った。
「?! 」
ぎょっとした顔をするった可愛いサカマキ。(何この顔、可愛い)きょとんとしてる。‥可愛い。
「生殖機能はある。生殖すること自体は、禁忌ではない‥」
きょとんとした可愛いサカマキに僕は、にっこり微笑みかけて呟いた。
「は? 」
聞き返したのは、フミカだ。
サカマキはまだ固まっている。
そんなサカマキの両手を包み込んで
「僕らの愛には何の問題もない。寧ろ、いいことばっかりだ。
皆が高位魔法使いのフィルターでもって、サカマキを嫌っているから、僕は他の誰かにサカマキを奪われずに済んだ。
桜子ちゃんが、カツラギしか受け付けられず、そしてタイムリミットが迫っていたから、サカマキはたまたまそこにいた僕を子作りの相手として選んでくれた。サカマキにとっては、誰でも良かったんだろう。サカマキには恋愛感情なんてないから。だけど理由なんてどうでもいいんだ。他の誰でもなく、サカマキが僕を選んでくれたってことが重要なんだ。
そして、フミカが産まれた。
サカマキにそんなことしていいのは、僕だけ。
だから、サカマキとこれから家族を増やしていけるのも、僕だけ。僕は、サカマキと家族そろって暮らして‥それから、増やしていきたいんだ。
フミカも兄弟が多い方がいいでしょ? 」
うっとり顔でアララキが、幸せ家族計画を、幼子(フミカ)の前で明け透けに言う。
これって、ちょっとした性的虐待だよね!!
両親の濡れ場とか想像したくないぞ。‥ましてや、その両親共が親友っていうね‥。
フミカは、顔面蒼白で絶句し、
「そんな事態はもう、ない! 俺は、もうアララキとあんなことはしない! 」
フリーズからとけたサカマキは赤面して叫んだ。
「ああ! アララキと‥っというか、誰とも! だ! アララキ以外とあんなことするなんて想像もつかん! 」
‥サカマキ、それ中途半端にアララキ喜ばしてるよ‥。
そのあと、サカマキは無言で狂喜乱舞したアララキに無茶苦茶抱きしめられて、(転移で)どこかに連れ去られた。
‥我に、妹か弟が出来るのやもしれん。前世(?)は一人っ子だったから‥なんか、嬉しいな。(※現実逃避)
(好きな子と、「仮初」とは言え「夫婦」だなんて、嫌! とか‥)
‥知ってる。
僕が正樹の事「好きになれない」のは、大人げない理由からだってこと。
あいつは僕よりずっと若いし、あんな童顔だけど、家族を持って立派に「お父さん」をしている。
‥正樹は、きっと僕よりずっと「大人」だ。
責任も‥家族に対する愛情もある「立派な」大人だ。
だけど、僕は正樹が大人だってことに嫉妬しているわけではない。
正樹の性格が「好きになれない」って言ってるわけでもない。そんな、ろくに知りもしないくせに、正樹の事全否定とか‥失礼だろ? 流石に僕だってそんなことはしない。
正樹が何かを間違っているわけでもない。
正樹は正樹の家族を守っている。正樹にとって大切なのは、桜子と自分の息子。
その大事な桜子が、「何だかおかしい」ってなったら、心配するのは当たり前だし、そこに来て「原因かもしれない可能性」のあるものが出現したら「もしかしたら」って思うは‥おかしくない。
だけどまあ‥あの言い方は気にくわない。
「乗っ取る」とか、‥あの言い方が気にくわない。
そりゃ、こっちの都合もあったけど、もともとは、死ぬかもしれなかった桜子をサカマキが助けた。乗っ取る‥どころか、代わりに生命を「維持してあげた」んだ。(カツラギたちの)仮の魂の置き場にして‥(桜子の出産によって)転生の手助けをさせたのはそれの対価だ。
近頃は‥戦えない桜子に代わって、ボディーガードをしているんだ。‥感謝をするなら分かるけど「乗っ取る」とか悪霊扱い‥
‥お前、一体何様だよ。
だけど、‥仕方が無いか。地球人にとっては、Happy nationの人間は宇宙人‥地球外生命体にも近い「得体のしれない」ものだ。
得体が知れないから、疑う。
何も、間違ってはいない。‥正しい。
正しいとか、正しくないとか‥そんなこと‥だけど、どうでもいい。
正しかろうが正しくなかろうが、僕にとっては、そんなことは問題はない。
‥ただ単純に
サカマキが、誰かのせいで嫌な思いしたり、悩んだり、悲しんだり‥それが嫌だ。
サカマキのこころに印象を残したのが、嫌だ。
今回みたいに‥泣かせた(泣いてはいない)‥嫌な印象をサカマキが正樹に対して持ったのは、‥でもマシだった(注:サカマキは、正樹に対して嫌な印象を持ったわけではない)。もし、サカマキが正樹に微笑みかけていたら、‥僕は正樹を憎んで‥殺してしまいたいって思ったかもしれない。
‥後は、あれだな。
正樹が大事なのは桜子で、「サカマキじゃない」って言ったこと。直接そういったわけじゃないけど、そういうようなこと言った。
ああいう言い方されると、傷つくよね。
もし僕が目の前で、「お前なんかどうでもいいけど、桜子を傷つけないで」とか言われたらショックだろう。
区別ってか、差別ってか‥そういうことじゃないんだけど、
差をつけられるのって、
気分がいいもんじゃない。
勿論、正樹がサカマキも大事とか言ってたら、もう絶対殺してたけど、そういうことじゃないってわかるよね??
‥わかってる、
ああいうしか仕方が無かったって‥
だけど‥
兎に角、気に喰わなかったんだ。
僕が、正樹のことを好きになれないのは、きっとカツラギのことも(ちょっと位は)あるんだと思う。
正樹が、僕らの友人の事を、自分の息子だって言うから。‥そう扱うから。
でも‥これも、何処もおかしくなんかない。
正樹にとって、カツラギは翔でしかない。
正樹は、カツラギなんて知らない。
‥僕たちも正樹に何も言うつもりはない。
だから、これから先も、正樹はそのことを知らないだろう。(知ったところで、信じるはずもないわけだし)
自分の知らないところで、勝手なことされて、勝手に恨まれて‥正樹にとってはいい迷惑だろう。
「どうした? 黙り込んで? 何か考え事か? 」
カツラギが僕を覗き込む。
口調は、今までと何ら変わらない。だけど、知らない子供の声だ。
子供の頃のカツラギの声とは違う、高い声、丸くって大きな‥茶色い目。丸みを帯びた頬。艶のある黒髪。
カツラギだって思って見てるから、カツラギなんだけど、‥全くの別人だ。
魔力を感じないのは、‥だけど、カツラギは魔力量が少なかったから以前とそう変わりはない。
彼から感じる賢者の特徴である、紫の輝く魂‥(検査機を使わなくても、これ程近かったら分かる)それは、何も変わらない。寧ろ、‥それだけが、目の前の子供がカツラギだと確信できる唯一の「目印」だった。
母親である桜子を前にしているからか、チャラくて鬼畜でドSなクズ発言を封印しているらしいカツラギは‥酷く違和感がある。(寧ろ、違和感しかなくってイライラする)
これって、あの「ビジネスモード」だ。あっちにいるときも、僕たちといるとき以外は、カツラギはこんな感じだった。
かわい子ぶりっ子してるってわけじゃないよ? もちろん。
顔に相応しい態度を装ってたって話だ。
家族にそんな感じって‥。
「‥なんだその同情の眼差し‥」
僕を見る絶対零度の侮蔑の視線が「ぼうっとして‥時差ボケの先取りでもしてるのか」って語ってる。よかった‥この子はカツラギだ。こんな、底冷えしそうな視線する子供他にはいないもん(いたら嫌だよ)
地球人になっても、両親の愛に包まれて生活しても、カツラギはカツラギだ。それがちょっと嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「あ、大変。もうこんな時間。じゃあ、サカマキさん、フミカちゃん。またね! ええと‥アララキさんも、失礼します」
僕にまだ慣れていないらしい桜子が、ぎこちない笑顔を僕に向けた。
僕は、もう習慣どころか条件反射になってしまっている「万能な笑顔」を桜子に向ける。
サカマキは、ふわっと優しい自然な笑顔で桜子に手を振り、フミカはニヒルな‥いつもと同じ笑顔で軽く手をあげた。‥こいつ、自分が幼児だってこと忘れてないか。そんな渋い笑顔の子供嫌だぞ。
フミカといい、カツラギといい‥顔見知り相手だとはいえ、外で気を抜いて子供らしい演技を忘れのはよくない。
カツラギとフミカはこの世界にとってどういう存在なんだろうか。
カツラギは、人間なんだろうけど、‥正規の方法で産まれてきたわけではない。その影響は、今後どのように出て来るのだろうか‥。
身体は、確実に人間だ。その遺伝子に「カツラギの記憶」「賢者としてのスペック」みたいなものが加わったくらいで、外見的特徴は正樹と桜子だ。(ってか、ほぼ正樹)身体能力は、正樹かな? そういう、「両親のいろいろな特徴を受け継いでいる」のは、普通の人間と変わらない。
でも、「桜子と正樹の子供として」神の加護を受けた魂‥神から与えられた魂ではない。
タイミングもそう。
神が決めたタイミングじゃない。‥神が決めたタイミングと重なると、カツラギの魂(核)が、その魂に押し出されてしまうから、神が決めたタイミングより早く着床するようにプログラミングしたらしい。(って、サカマキが言っていた)
カツラギの魂‥。
神に殺され‥見放された魂。
本来ならば他の魂と同様に輪廻に再び取り込まれ、記憶その他をクリアにされる予定だった魂。
それを、神に逆らい、無理矢理人間にした。
‥どういう存在だか分からないのは、‥フミカの方が「ヒドイ」かもしれない。
魂の状態は、カツラギと同様、神に疎まれ、‥見捨てられた魂だ。
そして、母親が神に呪われた「遺伝子を残すことが出来ない高位魔法使い」。
‥神に最も望まれていない子供だ。
フミカの身体は‥。
カツラギ以上にイレギュラーだ。
母親であるサカマキが「遺伝子を残すことが出来ない高位魔法使い」なので、フミカの遺伝子は、僕のものだけだ。そして、フミカそのものの性質‥戦士としての性質だ。
フミカの魂に魔法耐性が無かったからか、彼女の魔力は、僕よりすっと少ない。
魔法の申し子であるサカマキの子供だと思ったら、‥なんとも、物足りない。
それが‥でも、神の決めたことなんだ。
神の駒は、チートで使い勝手が良くって、「一代限り」。
能力だけは、‥でいいんじゃない? 「能力が遺伝しない」で良くない? 容姿は遺伝してもはいいんじゃない? ああ、でもそうか‥。神は、本当に何も残したくないんだ。
高位魔法使いJrが、高位魔法使いの能力を持たずに生まれる → 高位魔法使いじゃないから無条件に嫌悪されない → 結婚するのに何の抵抗もない。 → 顔だけは「高位魔法使い」の孫ができる。その顔を見ても、人々は嫌悪感を抱かない。‥そうこうしている内に、人々から高位魔法使いに対する無条件の嫌悪感がなんとなく‥で消えていく。それが、困る。
高位魔法使いは、一代限り。
ピンポイントに、目的のためだけに作り出して、目的が済めば「無かったもの」にしたい。
過ぎたる強力な力は、害にしかならないから。
確かに。神は、道具であり、(道具だからこそ)チートな高位魔法使いの遺伝子を後世に残さないって言ってる。でも、作らせないっていうなら、生殖機能そのものをなくすんじゃない?
つまり、「作らせないって私は言わないけど、どうせ作らないでしょ? 高位魔法使いとか、あなたたち嫌いじゃない。作れないんじゃなくて、‥作る機能を私が与えなかったんじゃなくって、作る相手がいるかが問題なわけでしょ? 作らなかったのは、それはそっちの意思だよ? 」って‥話なんだろうか? 神は高位魔法使いとの間に、人は誰も子供なんて作りたいと思わないだろうって決めつけていた。
今までその神の予想を違える人間はいなかった。
高位魔法使いと子を成す行為をした人間がいなかった。
恋愛感情が分からず、性欲のない彼らは、もしかしたら‥生理現象としての「そういうもの」もなかったのかもしれない。‥それ位の違いが神によって与えられていたのかもしれない。(たまった精液を排泄物と同様に定期的に排泄する的な? 何ら性的な感情もなく、だ)‥それは、分からない。
もしかしたら‥彼らは、誰も愛することもなく愛されることもなく、だけど「性的な快楽」として、自身でそれを慰めていたかもしれない。だとしたら‥それは、なんとも悲しい話だ‥。
思わず眉間に皴が寄った。
でも、‥多分そうなんだろう。「生理現象として」男性器が反応しない事には、ヤルことが出来ない。
「‥‥‥」
‥『あの野郎』‥。
僕は、怒りで身体がかっと熱を持ったのが分かった。
「アララキ。で、さっきの話の続きなんだけど」
サカマキが僕に話しかけようとするのを、フミカが止めた。
「サカマキ。なんかあいつさっきから変に考え込んでるみたいだから、話しかけても無駄じゃないか? おい、アララキ、今日はもう帰れ。遅くなったらあっちに帰った時、大変なんだろ? 王様が長期不在ってのもよくないぞ」
ぽん、とフミカがサカマキの肩をたたく。
「そうだな。そうしろ、お前も疲れてるんだよ。ちょっと休め」
反対の肩をサカマキが叩く。
と、僕はその腕をぱしっと取った。
「?! 」
ぎょっとした顔をするった可愛いサカマキ。(何この顔、可愛い)きょとんとしてる。‥可愛い。
「生殖機能はある。生殖すること自体は、禁忌ではない‥」
きょとんとした可愛いサカマキに僕は、にっこり微笑みかけて呟いた。
「は? 」
聞き返したのは、フミカだ。
サカマキはまだ固まっている。
そんなサカマキの両手を包み込んで
「僕らの愛には何の問題もない。寧ろ、いいことばっかりだ。
皆が高位魔法使いのフィルターでもって、サカマキを嫌っているから、僕は他の誰かにサカマキを奪われずに済んだ。
桜子ちゃんが、カツラギしか受け付けられず、そしてタイムリミットが迫っていたから、サカマキはたまたまそこにいた僕を子作りの相手として選んでくれた。サカマキにとっては、誰でも良かったんだろう。サカマキには恋愛感情なんてないから。だけど理由なんてどうでもいいんだ。他の誰でもなく、サカマキが僕を選んでくれたってことが重要なんだ。
そして、フミカが産まれた。
サカマキにそんなことしていいのは、僕だけ。
だから、サカマキとこれから家族を増やしていけるのも、僕だけ。僕は、サカマキと家族そろって暮らして‥それから、増やしていきたいんだ。
フミカも兄弟が多い方がいいでしょ? 」
うっとり顔でアララキが、幸せ家族計画を、幼子(フミカ)の前で明け透けに言う。
これって、ちょっとした性的虐待だよね!!
両親の濡れ場とか想像したくないぞ。‥ましてや、その両親共が親友っていうね‥。
フミカは、顔面蒼白で絶句し、
「そんな事態はもう、ない! 俺は、もうアララキとあんなことはしない! 」
フリーズからとけたサカマキは赤面して叫んだ。
「ああ! アララキと‥っというか、誰とも! だ! アララキ以外とあんなことするなんて想像もつかん! 」
‥サカマキ、それ中途半端にアララキ喜ばしてるよ‥。
そのあと、サカマキは無言で狂喜乱舞したアララキに無茶苦茶抱きしめられて、(転移で)どこかに連れ去られた。
‥我に、妹か弟が出来るのやもしれん。前世(?)は一人っ子だったから‥なんか、嬉しいな。(※現実逃避)
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【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
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