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四章 物語の主人公
28.フミカは「マグロ漁にかける男たち」がお気に入りなんですって。
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「さて、‥お前、別にそんな話しに来たんじゃないんだろ? 何の用だ? 」
サカマキがアララキに抱きしめられている背中越しに、顔だけアララキを振り返る。
思った以上に顔が近くって、アララキが「ん? 」と、だらしなく顔を綻ばせる。
そのまま口づけようとする唇は、サカマキが身をよじって両手で突き放した。
「ん? 別に、僕は用なんかなくても、サカマキには会いたいけど?
だってここに1年いたところで、あっちでは1分くらいだったりするからね。でも、そういうわけにはいかないよね」
残念。って顔をする。
人外であるサカマキには関係が無いが、人間のアララキは、長居すると元の世界に戻った後が大変なのだ。
‥いうならば、時差ボケの凄い奴だ。
時間差が凄いから、時差ボケ的なものも凄い。
10年くらいこの国で居たら、あっちに帰ったら時差ボケであっちの世界でも下手したら10年分くらい寝てしまう位の凄さだ‥! その現象は、数々の実例報告があり、精神と本体の自動調節機能と呼ばれている。あっちの世界の騎士・兵士がこっちに長逗留しないのはそう言った理由だ‥! どの位いたら、時差ボケになるとかまだ解明されてないからね。(わざわざ身体を使って実験したいとは思わないよね? )
「気になるから、罪人にここでの長期兵役(←魔物討伐)って懲罰与えてみようかな。何人かで試したら傾向が見えて来るかもしれない‥」
っておい。罪人は兵士じゃないから長逗留ってほどもたないかもしれないぞ‥。生き残って無事刑期を終えても、国に帰ったら寝続けるかも‥とか、ほんと、アララキは鬼畜だよね‥。(勿論、対サカマキを除く)
因みに、アララキは頻繁にこっちに来てるから「慣れて」は来てるらしく、二日位居ても「ちょっと疲れたかな」程度になったらしい。
免疫は大事。
「ただの慣れじゃないよ。愛の力って言って欲しいな~」
サカマキの両手を優しく握って、サカマキを向かい合わせに抱き込み直す。
アララキは、サカマキが抵抗しないからさっきからすこぶるご機嫌だ。
ここで、「キモいな」ってフミカと言い合ってたらまた話が進まないので、サカマキはあえてアララキのしたいようにさせることにした。
鬱陶しい‥暑苦しい‥。だが‥我慢だ。あくまで話が終わるまでの話だ‥。
サカマキは心の中で小さくため息をついた。
「‥この前お前が言ってた、地球人に魔族討伐をさせるって件か? 」
サカマキがアララキの顔をちょっと見上げて聞くと、アララキがふわっと微笑む。
‥上目遣い‥サカマキ‥可愛い‥っ!
内心は鼻血出して悶えそうになっているが、サカマキが絶対逃げるだろうから、鋼の忍耐力で耐えた。
‥よし、耐えた‥っ、ちゅーしたいけど‥話が進まないからそれも我慢だ‥っ!
「うん」
アララキが頷いた。
(必死の葛藤のせいで)若干、サカマキを抱きしめる力が強くなっちゃったけどそれは、スルーしてくれると嬉しい。
ちら、っと見たフミカの(自分を見る)目が‥冷たい。‥もう、呆れちゃってるって目だ。娘にこんな目で見られちゃったら普通の父親だったら立ち直れないだろうが、僕は大丈夫だ。なんせ、嫁に対する愛情が娘に対するそれを遥かに凌駕しているからね!! (と、あとは鋼の精神力)
同じ目をしているだろう嫁の目は敢えて見ない様にシテマス。
傍(はた)から見たら、カップルがただいちゃついてるだけに見える。
「深刻な顔をして地球人に変に不安を与えてはいけない」(アララキ談)ため、いちゃつく振りをする。深刻な話をする時ほど、カムフラージュの為に、バカップルのフリをする。見るのも恥ずかしいよ、って位バカップルのフリをする。
ここ重要。「見るのも恥ずかしいよって位」。日本人はシャイで恥ずかしがり屋だからね。「恥ずかしい‥」って見てられないの(アララキ談)
今話してるのも「深刻な話」だ。
それも、それこそ、この世界の存続をかけた‥っていうのは大袈裟だけど‥の規模だ。
だから、カムフラージュも兼ねて、フォーメーション「バカップル」だ。そりゃあもう、盛大に。
傍らで、子供(フミカ)がぼんやりクリームパンをかじってても、「いちゃいちゃ夫婦とその子供」みたいに見えてるだろう。甘々の様子から、彼らが話してる内容が、世界規模にデカい話だってことは思いもしないだろう。
(と、異世界人共は思っているが、実際の所、かなり異様な光景)
なんせこの三人の顔面偏差値半端ない。目立たないわけがない。ギャラリーがいないからいいだけで、これを街中でやったら、野次馬の人だかりが出来るだろう。
‥異世界七不思議とされてきている「スマホでカシャカシャ」されること請け合いだ。
『ホント、一体あれ、なんだろ‥』
急に、なんか「武器」を向けられる。
だけど、時々激しく光るが、害はない。
だけど、びっくりする。
あれは‥『目くらましの類』か? それとも‥『挑発』か?
‥なんにせよ、「挑発してきたからには、覚悟があるんだろう。なら、殺していいよね? 」って感じだ。因みに「あれは、どうやら挑発行為では無いらしい。だって、あの武器(スマホ)を向けて来る奴から殺意は感じられないよね? だから、殺すのはよくないよね」って議会で決まったのは、結構最近。あの(正樹の友達が目撃した)スマホにーちゃん殺害事件は、議論のちょっと前位だっただろうか?
まあ兎も角、どっちにせよ誰も「何話してるんだろ」なんて考えはしないだろう。
「美形~! 尊い‥」
で、バシャバシャ‥ってかんじかな。
だけど、今は周りに人はいない。小学生が帰る時間にも早い時間帯。公園を通りかかる人間は、幼子を連れた若いお母さんくらいしかいない。今日は、そんな人々もいないようだ。多分、外で遊ぶには少し寒いからであろう。
そう、今ギャラリーはいない。
なら、カムフラージュの「いちゃいちゃ」も必要は無い。
勿論、アララキは気付いているが、そんなこと言うアララキじゃない。サカマキは、なんとなくアララキに流されて気付いていない。フミカも、わざわざそんなこと言わない。
「無粋って奴だろ」
フミカは自分に関係ないことには、とても寛容なのだ。
フミカが寛容なお陰でアララキはご機嫌 → アララキがこの世界にちょっと優しくできる → この世界が平和 → この世界の人も幸せ
幸福の連鎖が勝手に出来る。いいことづくめだ。
だから、サカマキも何も言わない。黙って抱っこされて、無の境地だ。
‥まあ、ちょっと暖かいしね。
「お前自らが、地球人の適性検査にまで加わっていたから、てっきりすぐに実行するのだと思っていたぞ」
サカマキが、アララキの腕の中からちょこっと顔を出す。
顔がちょっと赤くなっている。座りの良さに、人型であるのをちょっと忘れてちょっと丸まりかけてるんだ。(暖かいと眠くなるよね)口調も寝ぼけてるのか、心なしか甘い。
くふふ、っと笑う顔がもう、何の凶器だって程可愛い。
すり、ってアララキの胸に頬をする寄せて来る。
これは、眠たい時に聖獣サカマキが良くしてた仕草だ。サカマキが子供で人型がまだ取れない幼獣の頃から育ててきた。その頃、眠くなって甘えるサカマキを寝かし付けるのもアララキだった。その時は、天に誓って言うがやましい気持なんか無かった。
だけど、今のサカマキは人型だ。眠そうにとろんとした目元とか、ちょっと緩んだ口元とか‥胸に寄り掛かった体温とか、表情がもう‥色っぽ過ぎる‥っ!!
‥殺しにかかっているのか‥っ!!
その唇、誘ってるのか‥っ!!
もう辛抱たまらん!!
でも、ここでちゅーしたらサカマキが起きちゃう‥そしたらきっといちゃいちゃタイム強制終了だ‥っ! 我慢だアララキ‥っ
隣でフミカが『起こした方が良くない? 』って焦った様な顔になっているが、断固拒否だ。起こしてなるものか‥っ!
寝る前にサカマキに、僕からちゅーするのを僕が10数年かけて習慣にしてきたんだ。サカマキが眠たい顔したら「ちゅーでしょ? 」って。そのかいあって、眠くなったらサカマキは自分から頬っぺたを差し出して「ちゅーして」って強請るまでに‥(感涙)
今の寝ぼけてるサカマキなら‥っ!
「ん~、アララキ ちゅー は!! 俺、さっき寝かけて無かったか!? 」
アララキの胸からばって音がしそうな勢いで離れるサカマキ、脱力するアララキ、まだ固まっているフミカ。
「ん?? どうした? 俺、なんか寝言でも言った?? 」
仕切り直し。
「この姿勢は、眠たくなるからいかんな。ちゃんと座るよ」
と、反省&赤面のサカマキ。
で、
サカマキが「ちゃんと」座り直して、話再開。(アララキはがっくり、しょんぼり)
「メリットとデメリットを挙げよう。‥特に、デメリットを。それが、国が国策としてこの件を推進するのを躊躇している理由なんであろう? 」
フミカが、ごほん、と小さく咳ばらいをしてから口火を切った。
メリットは
Happy nationからの兵を待たずに、即座に対応できる。
(こっちは主にHappy nation側のメリット)
この国側のメリットとしたら、即座に対応することによって被害を出さずに済む。
魔法等「魅力的な」力を実際に自分で使うことが出来る(ただし期間限定)
デメリットは
地球人が「持つべきではない力」を持つ結果起きるであろう事態全般。
デメリットの規模が想像がつかないということ。
フミカが黙り込み、アララキが頷く。
「‥そもそも、地球人が魔法を覚えたとして、問題視される程の力を取得できるか‥って話だな」
そう魔力が多い者は今のところ見つかっていない。
魔族討伐といっても、Happy nationの兵士やサカマキみたいに単体で討伐できるものでは無い。力もさることながら、経験の差って奴だ。(経験のない地球人は)何人かで組んで‥っていうことになるだろう。
力に踊らされる‥って程には、ならないだろう。だけど、そう思うのも自分がHappy nation人だからだ。
当たり前に魔力が‥魔法がある国に生きて来た人間だから思うのだろう。
「先にインクをつけないと書けない羽ペンを、それと教えずに、またインクもつけないで渡されても、渡された者は、それが「書くもの」だと理解できない。
魔法を「武器」で「戦う手段の一つ」と教えられたものは‥魔法をそのようにしか理解できない。
でも、‥ここには既に土壌がある。
魔法の広がり‥魔法の可能性を今までに多くの地球人が夢見て、語って来た。
この世界には、魔法 = 魔物と抗う術
というイメージはない。
だけど、生活の一部‥程も定着してはいない。
そりゃそうだよね。だって‥ないものなんだから」
魔法は特別なもの。
そして、魔法を使える人間である自分は「特別な人間」そう思ってもおかしくない。
「特別な人間だから何やっても許される」
と思う者
「特別な人間だから、皆の‥力のない者の‥犠牲にならなくてはいけない」
って変な責任感を持つ者‥。
「魔法ってきっと、神の力だ‥。ここにとってね。
皆が知ってて
憧れ
だけど、努力しても決して得られない」
「そんな力を与えて、‥いいわけがない。
使えるから、使う才能があるから‥って与えていいわけがない。
我らと、彼らが同じなわけがない。
人間の価値の話じゃない。
魔法というものに対する知識・経験その他あらゆること。
‥我らは、彼らとは違う。
生きて来た環境そのものが‥違う。
有資格者と無資格者‥って言ったらいいだろうか‥。それ位違う」
有資格者‥無資格者‥それも違うかな‥「海に生きるものと、海水浴に海に来る程度にしか海と関りがない人達位違う」って例えの方がいいかなあ」フミカは、昔テレビで見た「マグロにかける男」特集を思い出しながらそんなことを思った。
「使えはするが、使う資格がないって話だね」
アララキが頷く。
「その際大事なのは、力を解放させるのも、封印させるのも、我ら次第だってことを理解させること‥それも、‥魂に刻み付ける位にね。
その時には、同時に思いあがらない事を教えておかないといけないね。
そして、それは‥何よりも彼らの為だ」
ふふ、
笑いを含んだ口調は、アララキ。
「お前はいちいち‥、変な威嚇をするなよ‥大人げないな。でも、魔法を悪用することは恐ろしいってことは教えておかないといけないな。
無くて当たり前、
寧ろ、無かったこと‥使わずに生きていける世界に感謝をすることは忘れて欲しくないな。
‥まあ、俺は魔法が無かったら退屈して死んでしまうだろうけど」
ふふ、サカマキも微笑む。
「はは、私はそう魔法は使えないし、使わなくても全然生活に支障はないけど、私の中にあるいくつかの知識を具現化する術が魔法にしかない限り、魔法は必要であるっていわないといけないな。
手段の一つでしかない魔法に翻弄されるなんて愚かなことに人がこの先陥るのであったら‥、人というものがそのような愚かなものであるならば、私は人として産まれてきたことを恥じるし、‥そうなったサカマキを恨みますね」
幼稚園から帰って来たらしい(ショタな外見の)カツラギが話に加わる。
隣で桜子がぎょっとした顔をしている。(「分かってるつもりだったけど、実際に見るとやっぱりびっくりする」って顔だね)
「一見平和主義なセリフを吐いているのが、余計に腹立たしいな。この、社会不適合者どもが‥。
アララキとサカマキは脅迫と牽制か。カツラギは、‥人には無害だけど人の為‥感はゼロだな」
フミカは長く深いため息をつくのだった。
サカマキがアララキに抱きしめられている背中越しに、顔だけアララキを振り返る。
思った以上に顔が近くって、アララキが「ん? 」と、だらしなく顔を綻ばせる。
そのまま口づけようとする唇は、サカマキが身をよじって両手で突き放した。
「ん? 別に、僕は用なんかなくても、サカマキには会いたいけど?
だってここに1年いたところで、あっちでは1分くらいだったりするからね。でも、そういうわけにはいかないよね」
残念。って顔をする。
人外であるサカマキには関係が無いが、人間のアララキは、長居すると元の世界に戻った後が大変なのだ。
‥いうならば、時差ボケの凄い奴だ。
時間差が凄いから、時差ボケ的なものも凄い。
10年くらいこの国で居たら、あっちに帰ったら時差ボケであっちの世界でも下手したら10年分くらい寝てしまう位の凄さだ‥! その現象は、数々の実例報告があり、精神と本体の自動調節機能と呼ばれている。あっちの世界の騎士・兵士がこっちに長逗留しないのはそう言った理由だ‥! どの位いたら、時差ボケになるとかまだ解明されてないからね。(わざわざ身体を使って実験したいとは思わないよね? )
「気になるから、罪人にここでの長期兵役(←魔物討伐)って懲罰与えてみようかな。何人かで試したら傾向が見えて来るかもしれない‥」
っておい。罪人は兵士じゃないから長逗留ってほどもたないかもしれないぞ‥。生き残って無事刑期を終えても、国に帰ったら寝続けるかも‥とか、ほんと、アララキは鬼畜だよね‥。(勿論、対サカマキを除く)
因みに、アララキは頻繁にこっちに来てるから「慣れて」は来てるらしく、二日位居ても「ちょっと疲れたかな」程度になったらしい。
免疫は大事。
「ただの慣れじゃないよ。愛の力って言って欲しいな~」
サカマキの両手を優しく握って、サカマキを向かい合わせに抱き込み直す。
アララキは、サカマキが抵抗しないからさっきからすこぶるご機嫌だ。
ここで、「キモいな」ってフミカと言い合ってたらまた話が進まないので、サカマキはあえてアララキのしたいようにさせることにした。
鬱陶しい‥暑苦しい‥。だが‥我慢だ。あくまで話が終わるまでの話だ‥。
サカマキは心の中で小さくため息をついた。
「‥この前お前が言ってた、地球人に魔族討伐をさせるって件か? 」
サカマキがアララキの顔をちょっと見上げて聞くと、アララキがふわっと微笑む。
‥上目遣い‥サカマキ‥可愛い‥っ!
内心は鼻血出して悶えそうになっているが、サカマキが絶対逃げるだろうから、鋼の忍耐力で耐えた。
‥よし、耐えた‥っ、ちゅーしたいけど‥話が進まないからそれも我慢だ‥っ!
「うん」
アララキが頷いた。
(必死の葛藤のせいで)若干、サカマキを抱きしめる力が強くなっちゃったけどそれは、スルーしてくれると嬉しい。
ちら、っと見たフミカの(自分を見る)目が‥冷たい。‥もう、呆れちゃってるって目だ。娘にこんな目で見られちゃったら普通の父親だったら立ち直れないだろうが、僕は大丈夫だ。なんせ、嫁に対する愛情が娘に対するそれを遥かに凌駕しているからね!! (と、あとは鋼の精神力)
同じ目をしているだろう嫁の目は敢えて見ない様にシテマス。
傍(はた)から見たら、カップルがただいちゃついてるだけに見える。
「深刻な顔をして地球人に変に不安を与えてはいけない」(アララキ談)ため、いちゃつく振りをする。深刻な話をする時ほど、カムフラージュの為に、バカップルのフリをする。見るのも恥ずかしいよ、って位バカップルのフリをする。
ここ重要。「見るのも恥ずかしいよって位」。日本人はシャイで恥ずかしがり屋だからね。「恥ずかしい‥」って見てられないの(アララキ談)
今話してるのも「深刻な話」だ。
それも、それこそ、この世界の存続をかけた‥っていうのは大袈裟だけど‥の規模だ。
だから、カムフラージュも兼ねて、フォーメーション「バカップル」だ。そりゃあもう、盛大に。
傍らで、子供(フミカ)がぼんやりクリームパンをかじってても、「いちゃいちゃ夫婦とその子供」みたいに見えてるだろう。甘々の様子から、彼らが話してる内容が、世界規模にデカい話だってことは思いもしないだろう。
(と、異世界人共は思っているが、実際の所、かなり異様な光景)
なんせこの三人の顔面偏差値半端ない。目立たないわけがない。ギャラリーがいないからいいだけで、これを街中でやったら、野次馬の人だかりが出来るだろう。
‥異世界七不思議とされてきている「スマホでカシャカシャ」されること請け合いだ。
『ホント、一体あれ、なんだろ‥』
急に、なんか「武器」を向けられる。
だけど、時々激しく光るが、害はない。
だけど、びっくりする。
あれは‥『目くらましの類』か? それとも‥『挑発』か?
‥なんにせよ、「挑発してきたからには、覚悟があるんだろう。なら、殺していいよね? 」って感じだ。因みに「あれは、どうやら挑発行為では無いらしい。だって、あの武器(スマホ)を向けて来る奴から殺意は感じられないよね? だから、殺すのはよくないよね」って議会で決まったのは、結構最近。あの(正樹の友達が目撃した)スマホにーちゃん殺害事件は、議論のちょっと前位だっただろうか?
まあ兎も角、どっちにせよ誰も「何話してるんだろ」なんて考えはしないだろう。
「美形~! 尊い‥」
で、バシャバシャ‥ってかんじかな。
だけど、今は周りに人はいない。小学生が帰る時間にも早い時間帯。公園を通りかかる人間は、幼子を連れた若いお母さんくらいしかいない。今日は、そんな人々もいないようだ。多分、外で遊ぶには少し寒いからであろう。
そう、今ギャラリーはいない。
なら、カムフラージュの「いちゃいちゃ」も必要は無い。
勿論、アララキは気付いているが、そんなこと言うアララキじゃない。サカマキは、なんとなくアララキに流されて気付いていない。フミカも、わざわざそんなこと言わない。
「無粋って奴だろ」
フミカは自分に関係ないことには、とても寛容なのだ。
フミカが寛容なお陰でアララキはご機嫌 → アララキがこの世界にちょっと優しくできる → この世界が平和 → この世界の人も幸せ
幸福の連鎖が勝手に出来る。いいことづくめだ。
だから、サカマキも何も言わない。黙って抱っこされて、無の境地だ。
‥まあ、ちょっと暖かいしね。
「お前自らが、地球人の適性検査にまで加わっていたから、てっきりすぐに実行するのだと思っていたぞ」
サカマキが、アララキの腕の中からちょこっと顔を出す。
顔がちょっと赤くなっている。座りの良さに、人型であるのをちょっと忘れてちょっと丸まりかけてるんだ。(暖かいと眠くなるよね)口調も寝ぼけてるのか、心なしか甘い。
くふふ、っと笑う顔がもう、何の凶器だって程可愛い。
すり、ってアララキの胸に頬をする寄せて来る。
これは、眠たい時に聖獣サカマキが良くしてた仕草だ。サカマキが子供で人型がまだ取れない幼獣の頃から育ててきた。その頃、眠くなって甘えるサカマキを寝かし付けるのもアララキだった。その時は、天に誓って言うがやましい気持なんか無かった。
だけど、今のサカマキは人型だ。眠そうにとろんとした目元とか、ちょっと緩んだ口元とか‥胸に寄り掛かった体温とか、表情がもう‥色っぽ過ぎる‥っ!!
‥殺しにかかっているのか‥っ!!
その唇、誘ってるのか‥っ!!
もう辛抱たまらん!!
でも、ここでちゅーしたらサカマキが起きちゃう‥そしたらきっといちゃいちゃタイム強制終了だ‥っ! 我慢だアララキ‥っ
隣でフミカが『起こした方が良くない? 』って焦った様な顔になっているが、断固拒否だ。起こしてなるものか‥っ!
寝る前にサカマキに、僕からちゅーするのを僕が10数年かけて習慣にしてきたんだ。サカマキが眠たい顔したら「ちゅーでしょ? 」って。そのかいあって、眠くなったらサカマキは自分から頬っぺたを差し出して「ちゅーして」って強請るまでに‥(感涙)
今の寝ぼけてるサカマキなら‥っ!
「ん~、アララキ ちゅー は!! 俺、さっき寝かけて無かったか!? 」
アララキの胸からばって音がしそうな勢いで離れるサカマキ、脱力するアララキ、まだ固まっているフミカ。
「ん?? どうした? 俺、なんか寝言でも言った?? 」
仕切り直し。
「この姿勢は、眠たくなるからいかんな。ちゃんと座るよ」
と、反省&赤面のサカマキ。
で、
サカマキが「ちゃんと」座り直して、話再開。(アララキはがっくり、しょんぼり)
「メリットとデメリットを挙げよう。‥特に、デメリットを。それが、国が国策としてこの件を推進するのを躊躇している理由なんであろう? 」
フミカが、ごほん、と小さく咳ばらいをしてから口火を切った。
メリットは
Happy nationからの兵を待たずに、即座に対応できる。
(こっちは主にHappy nation側のメリット)
この国側のメリットとしたら、即座に対応することによって被害を出さずに済む。
魔法等「魅力的な」力を実際に自分で使うことが出来る(ただし期間限定)
デメリットは
地球人が「持つべきではない力」を持つ結果起きるであろう事態全般。
デメリットの規模が想像がつかないということ。
フミカが黙り込み、アララキが頷く。
「‥そもそも、地球人が魔法を覚えたとして、問題視される程の力を取得できるか‥って話だな」
そう魔力が多い者は今のところ見つかっていない。
魔族討伐といっても、Happy nationの兵士やサカマキみたいに単体で討伐できるものでは無い。力もさることながら、経験の差って奴だ。(経験のない地球人は)何人かで組んで‥っていうことになるだろう。
力に踊らされる‥って程には、ならないだろう。だけど、そう思うのも自分がHappy nation人だからだ。
当たり前に魔力が‥魔法がある国に生きて来た人間だから思うのだろう。
「先にインクをつけないと書けない羽ペンを、それと教えずに、またインクもつけないで渡されても、渡された者は、それが「書くもの」だと理解できない。
魔法を「武器」で「戦う手段の一つ」と教えられたものは‥魔法をそのようにしか理解できない。
でも、‥ここには既に土壌がある。
魔法の広がり‥魔法の可能性を今までに多くの地球人が夢見て、語って来た。
この世界には、魔法 = 魔物と抗う術
というイメージはない。
だけど、生活の一部‥程も定着してはいない。
そりゃそうだよね。だって‥ないものなんだから」
魔法は特別なもの。
そして、魔法を使える人間である自分は「特別な人間」そう思ってもおかしくない。
「特別な人間だから何やっても許される」
と思う者
「特別な人間だから、皆の‥力のない者の‥犠牲にならなくてはいけない」
って変な責任感を持つ者‥。
「魔法ってきっと、神の力だ‥。ここにとってね。
皆が知ってて
憧れ
だけど、努力しても決して得られない」
「そんな力を与えて、‥いいわけがない。
使えるから、使う才能があるから‥って与えていいわけがない。
我らと、彼らが同じなわけがない。
人間の価値の話じゃない。
魔法というものに対する知識・経験その他あらゆること。
‥我らは、彼らとは違う。
生きて来た環境そのものが‥違う。
有資格者と無資格者‥って言ったらいいだろうか‥。それ位違う」
有資格者‥無資格者‥それも違うかな‥「海に生きるものと、海水浴に海に来る程度にしか海と関りがない人達位違う」って例えの方がいいかなあ」フミカは、昔テレビで見た「マグロにかける男」特集を思い出しながらそんなことを思った。
「使えはするが、使う資格がないって話だね」
アララキが頷く。
「その際大事なのは、力を解放させるのも、封印させるのも、我ら次第だってことを理解させること‥それも、‥魂に刻み付ける位にね。
その時には、同時に思いあがらない事を教えておかないといけないね。
そして、それは‥何よりも彼らの為だ」
ふふ、
笑いを含んだ口調は、アララキ。
「お前はいちいち‥、変な威嚇をするなよ‥大人げないな。でも、魔法を悪用することは恐ろしいってことは教えておかないといけないな。
無くて当たり前、
寧ろ、無かったこと‥使わずに生きていける世界に感謝をすることは忘れて欲しくないな。
‥まあ、俺は魔法が無かったら退屈して死んでしまうだろうけど」
ふふ、サカマキも微笑む。
「はは、私はそう魔法は使えないし、使わなくても全然生活に支障はないけど、私の中にあるいくつかの知識を具現化する術が魔法にしかない限り、魔法は必要であるっていわないといけないな。
手段の一つでしかない魔法に翻弄されるなんて愚かなことに人がこの先陥るのであったら‥、人というものがそのような愚かなものであるならば、私は人として産まれてきたことを恥じるし、‥そうなったサカマキを恨みますね」
幼稚園から帰って来たらしい(ショタな外見の)カツラギが話に加わる。
隣で桜子がぎょっとした顔をしている。(「分かってるつもりだったけど、実際に見るとやっぱりびっくりする」って顔だね)
「一見平和主義なセリフを吐いているのが、余計に腹立たしいな。この、社会不適合者どもが‥。
アララキとサカマキは脅迫と牽制か。カツラギは、‥人には無害だけど人の為‥感はゼロだな」
フミカは長く深いため息をつくのだった。
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