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四章 物語の主人公
25.happynationとアララキと、結婚について、まだ何か考え込んでいるサカマキ。
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サカマキは、途中の自販機で買ってもらったペットボトルのお茶を一口、口に含んだ。
いつも通り、パンは食べない。
フミカは白パン。桜子はクリームパンをかじっている。飲み物は、近頃はまっている「イチゴ牛乳」だ。
白パンをかじりながらフミカは、サカマキの横顔をこっそり見つめた。
表情に乏しい、白磁の様な端正な顔。
今は、我の「母親」である、かっての(今もだな)親友。
母親って感じも、‥女って感じもしない。
だけど、ここにいるサカマキは(格好が違うからか)向こうでの「高位魔法使い・サカマキ」とは違う。
我のよく知っているサカマキとも少し違う気がする。
あからさまな悪意に晒されていないから、リラックスしているのだろう、って思う。
高位魔法使い・サカマキ。happynationの王・アララキ。
我の「父親」であるアララキ。アララキも、我のかっての親友だった。
そして、そのアララキの唯一であり、最愛の人であるサカマキ。
そんな二人の子供である「今の我」
‥結婚。
結婚しててもおかしくはない。二人は、今は結婚が出来る。
‥以前は出来なかった。
‥そもそも、アララキが新王としてあの国を統治し始めたのも、融通が利かない、柔軟性に欠けた法律で国家をガチガチに統治して来た前体制に反抗していた延長‥って感じがする。
気に喰わないから議論してたら、いつの間にか新体制の王に祭り上げられてたって感じかな?
いつの間にか。
まさにそんな感じ。
アララキには、人を惹きつける才能やら、魅力みたいなものがあったから。
面倒見もいいしね。
濃く深い付き合いの我には、多くの国民の為‥的大層で高潔な理由が奴にあるとは、どうしても‥思えなかった。他の奴らとは違い、我らは付き合いの深さが違う。
アララキは、決してぶれない。
アララキの強さも、優しさも全部サカマキの為にあるのであって、それ以外の為に、アララキが努力をするなんてことは有り得ない。
そんなアララキが、サカマキ以外の理由で面倒事を引き受けた理由っていったら、アレしかないだろう。
国の体制が変わらないと‥法律が変わらないと自分に不利益がある‥からだろう。
アララキがもっとも変えたかったのは法律だった。
法律っていっても、主に高位魔法使いが関わること‥
中でも、『高位魔法使いとの婚姻の禁止』って項目だろう。
高位魔法使いとの婚姻の禁止は、別に「子孫を残さない為」ではない。
結婚したところで、高位魔法使いの女性は子供を産めないし、男性についてもそうだ。
ただ、高位魔法使いの財産の所有権の問題だけなのだ。
勿論表向きには「貴い身分の高位魔法使いを国家単位で守る為」ってことにはなっているが、なんてことない。高位魔法使いは、対魔物戦でしか死なない。そんな保護は必要ない。
高位魔法使いの給料、そして遺産。お金を使うことをしない高位魔法使いの莫大な資産は国が管理している。そして、その死亡後は国に自動的回収される。
高位魔法使いが国と専属契約を結ぶ際に、親に(サカマキにはいないけど、高位魔法使いにだって普通は両親がいる)莫大な契約金が渡され、親子の縁を切る契約書を書かされる。
その際、
「親子の縁を切れば、確かに遺産も入るまいが‥それも含めての契約金だ。遺産の生前贈与だと思ってもらえばいい」
って言われるらしい。‥あんまりな話なんだけど、そもそも、親が高位魔法使いの育児すら放棄していることが多いから、今まで異論があったことはない。
そんな風に、高位魔法使いの結婚は禁止されてきたわけだけど、高位魔法使い自身には、恋愛感情なんかないんだから、高位魔法使いから「結婚したい」なんて思うことはないからそれは問題が無かった。
「人権」なんかを議題に問題視されると、国に勝ち目なんかないわけなんだけど、そもそも、誰も今まで問題にして来なかった。誰も高位魔法使いと結婚したいなんて思わなかったからだ。
本人に「その気がなくとも」ってことは、ある。
財産目的(ひいては遺産相続目的)だ。
そういう目的で、高位魔法使いとの婚姻を強要する者が出てもおかしくない。国はそこを前面に持ち出してこの法律を継続し続けた。
人身御供で、親によって無理矢理、高位魔法使いと婚姻を結ばされる悲劇の少女(稀に少年)が出るのを防ぐ為の法律だ。
この場合、人権を保護されているのは、結婚相手にされる悲劇の少女だった。
高位魔法使いにも人権を!
主張したアララキの発言は‥まあ、アララキの強いプッシュにより結果的には通った。
人身御供の未然予防のために、遺産相続の禁止(結婚後も財産管理権は国家で、死亡後は国に資産が回収される)や、婚姻の強要禁止等別な法律が新たに増えたのは‥言うまでもない。
つまり、金銭的メリットがなければ、無理に高位魔法使いと結婚する価値なんてないって考えたんだろう。(でも、勿論、金銭的メリットなんてアララキには関係のない話なのだった。これって、アララキの為だけの法律だね。多分)
遺産なんか要らないから‥、アララキの意志と国家資産との「落としどころ」って奴なんだ。
「アララキと‥サカマキが結婚、ねえ‥」
「俺とアララキが結婚、ねえ‥」
‥口に出すと、その違和感、半端ないな。
しゅーんとした顔で、二人を見比べている桜子をよそ目に、フミカとサカマキは尚も、たっぷりの沈黙の後、呟いた。
まあ、アララキなら喜びそうだけど、‥サカマキにはそんな気はないんだろうなあ‥。
が、フミカの結論。
「そうか。俺はフミカを生んだんだから、アララキと結婚しなければいけないのか。‥そうだな。フミカを育てないといけないんだからな。‥今度アララキに会ったら相談しよう」
は、サカマキの結論。
‥え?
アララキとサカマキが結婚??
‥我は‥
いっそ、自然発生したってことにしておいてくれても構わんぞ‥。
さっきの話でいったら、アララキが父親、サカマキが母親ってことになるんだよな‥。
二人が両親ってのは‥まあ、認めてるよ。(親友二人が両親って複雑だけれども、だ! )
だけど、それだけじゃ済まないでしょう?
結婚っていったら、個人だけの問題じゃ済まないでしょう‥?
だって、アララキは王だから!
王が父親‥。
「いやいや‥。それは、そう簡単に決められるものじゃないでしょう‥。ほら、ああ見えてアララキは彼の国の王様だしな‥」
慌てて止める。
サカマキがはっとした様な顔をする。
‥忘れてたのか‥。
まあ‥普段のあいつ見てたら忘れるのも‥分かるわ‥。
「あ、そうか‥アララキは王であったな。‥悪い。フミカ。両親揃って育てることは出来ない‥」
サカマキが「ホントに申し訳ない」という顔で頭を下げる。
そんな、捨てられた子犬みたいな顔してくれるな。‥お前は我の親なんだぞ? もっと、しっかりしろ。って、なんか微笑ましい気持ちになり
「‥全然気にしておらん。寧ろ、もう少し成長すれば、後は自分で自分のこと位する」
ふふ、とフミカは思わず笑ってしまった。
「すまん‥」
ははは。
笑ったのは、
桜子だ。
「う~ん。フミカちゃんが見た目通りの子供じゃないって分かってるのに、ついついビジュアルに引っ張られて子供だよね? って思っちゃうよね~。それは、翔もだけどね~」
くすくす
って。
「でも、‥確かに我らの自立は、ここよりずっと早いな。成人は15だし」
フミカが首を傾げる。
でも‥まあ、カルチャーショックはあるわな。何処でも。
って納得したり。
桜子は、
「15! 」
目を見開いた。
「そんなに驚くこと? 」って今度はサカマキが首を傾げる
「だから、ここに初めて来たときは、驚いた」
15を過ぎても、「子供」のまま、依然親の保護下にあって自立していない子供たちに驚いた。
早く自活しないと、親の暮らしを切迫しかねない。
金銭的理由以外でも‥
「草食動物と一緒だ。自分自身で直ぐに歩きださないと、逃げ切れない。‥あっちには、魔物もいるし、肉食の獣も多い」
彼の国の国民は、この国の人たちよりずっと、危険と隣り合わせなのだ。
自立はすなわち生きる為に最も重要なことなんだ。
「そっかあ‥。サカマキさんのご両親は? 自立をしてからも、時々は会いに行ったりする? 」
感心したような口調の桜子に、サカマキがふふ、と微笑む。
「俺には、両親はいないんだ。それは、カツラギもアララキも同じだ。‥フミカには普通に居た様だね」
「あ‥」
桜子がまたしゅーんとなるのを、サカマキが「気にしてない」と言って首を振る。
「別に俺は気にしていない。桜子も気にするな。正樹も両親はいないが気にしておらんだろう? 」
‥気にしてないかどうか、実際のところは分からないが、少なくとも見た目では‥気にしてない様に見える。
「俺には、兄さんや姉さんたちが沢山いたし、アララキもカツラギもいたからね。
‥兄や姉といっても血は繋がっていない。孤児ばっかり集められた村だったんだ。
でも、誰も‥不平不満を言うものも、泣き言いうものもいなかった
いい村だったぞ? 」
ふと、故郷の「両親たち」や「兄や姉たち」を思い出し、懐かしく‥そして、どこか哀しい気持ちになった。
いつも通り、パンは食べない。
フミカは白パン。桜子はクリームパンをかじっている。飲み物は、近頃はまっている「イチゴ牛乳」だ。
白パンをかじりながらフミカは、サカマキの横顔をこっそり見つめた。
表情に乏しい、白磁の様な端正な顔。
今は、我の「母親」である、かっての(今もだな)親友。
母親って感じも、‥女って感じもしない。
だけど、ここにいるサカマキは(格好が違うからか)向こうでの「高位魔法使い・サカマキ」とは違う。
我のよく知っているサカマキとも少し違う気がする。
あからさまな悪意に晒されていないから、リラックスしているのだろう、って思う。
高位魔法使い・サカマキ。happynationの王・アララキ。
我の「父親」であるアララキ。アララキも、我のかっての親友だった。
そして、そのアララキの唯一であり、最愛の人であるサカマキ。
そんな二人の子供である「今の我」
‥結婚。
結婚しててもおかしくはない。二人は、今は結婚が出来る。
‥以前は出来なかった。
‥そもそも、アララキが新王としてあの国を統治し始めたのも、融通が利かない、柔軟性に欠けた法律で国家をガチガチに統治して来た前体制に反抗していた延長‥って感じがする。
気に喰わないから議論してたら、いつの間にか新体制の王に祭り上げられてたって感じかな?
いつの間にか。
まさにそんな感じ。
アララキには、人を惹きつける才能やら、魅力みたいなものがあったから。
面倒見もいいしね。
濃く深い付き合いの我には、多くの国民の為‥的大層で高潔な理由が奴にあるとは、どうしても‥思えなかった。他の奴らとは違い、我らは付き合いの深さが違う。
アララキは、決してぶれない。
アララキの強さも、優しさも全部サカマキの為にあるのであって、それ以外の為に、アララキが努力をするなんてことは有り得ない。
そんなアララキが、サカマキ以外の理由で面倒事を引き受けた理由っていったら、アレしかないだろう。
国の体制が変わらないと‥法律が変わらないと自分に不利益がある‥からだろう。
アララキがもっとも変えたかったのは法律だった。
法律っていっても、主に高位魔法使いが関わること‥
中でも、『高位魔法使いとの婚姻の禁止』って項目だろう。
高位魔法使いとの婚姻の禁止は、別に「子孫を残さない為」ではない。
結婚したところで、高位魔法使いの女性は子供を産めないし、男性についてもそうだ。
ただ、高位魔法使いの財産の所有権の問題だけなのだ。
勿論表向きには「貴い身分の高位魔法使いを国家単位で守る為」ってことにはなっているが、なんてことない。高位魔法使いは、対魔物戦でしか死なない。そんな保護は必要ない。
高位魔法使いの給料、そして遺産。お金を使うことをしない高位魔法使いの莫大な資産は国が管理している。そして、その死亡後は国に自動的回収される。
高位魔法使いが国と専属契約を結ぶ際に、親に(サカマキにはいないけど、高位魔法使いにだって普通は両親がいる)莫大な契約金が渡され、親子の縁を切る契約書を書かされる。
その際、
「親子の縁を切れば、確かに遺産も入るまいが‥それも含めての契約金だ。遺産の生前贈与だと思ってもらえばいい」
って言われるらしい。‥あんまりな話なんだけど、そもそも、親が高位魔法使いの育児すら放棄していることが多いから、今まで異論があったことはない。
そんな風に、高位魔法使いの結婚は禁止されてきたわけだけど、高位魔法使い自身には、恋愛感情なんかないんだから、高位魔法使いから「結婚したい」なんて思うことはないからそれは問題が無かった。
「人権」なんかを議題に問題視されると、国に勝ち目なんかないわけなんだけど、そもそも、誰も今まで問題にして来なかった。誰も高位魔法使いと結婚したいなんて思わなかったからだ。
本人に「その気がなくとも」ってことは、ある。
財産目的(ひいては遺産相続目的)だ。
そういう目的で、高位魔法使いとの婚姻を強要する者が出てもおかしくない。国はそこを前面に持ち出してこの法律を継続し続けた。
人身御供で、親によって無理矢理、高位魔法使いと婚姻を結ばされる悲劇の少女(稀に少年)が出るのを防ぐ為の法律だ。
この場合、人権を保護されているのは、結婚相手にされる悲劇の少女だった。
高位魔法使いにも人権を!
主張したアララキの発言は‥まあ、アララキの強いプッシュにより結果的には通った。
人身御供の未然予防のために、遺産相続の禁止(結婚後も財産管理権は国家で、死亡後は国に資産が回収される)や、婚姻の強要禁止等別な法律が新たに増えたのは‥言うまでもない。
つまり、金銭的メリットがなければ、無理に高位魔法使いと結婚する価値なんてないって考えたんだろう。(でも、勿論、金銭的メリットなんてアララキには関係のない話なのだった。これって、アララキの為だけの法律だね。多分)
遺産なんか要らないから‥、アララキの意志と国家資産との「落としどころ」って奴なんだ。
「アララキと‥サカマキが結婚、ねえ‥」
「俺とアララキが結婚、ねえ‥」
‥口に出すと、その違和感、半端ないな。
しゅーんとした顔で、二人を見比べている桜子をよそ目に、フミカとサカマキは尚も、たっぷりの沈黙の後、呟いた。
まあ、アララキなら喜びそうだけど、‥サカマキにはそんな気はないんだろうなあ‥。
が、フミカの結論。
「そうか。俺はフミカを生んだんだから、アララキと結婚しなければいけないのか。‥そうだな。フミカを育てないといけないんだからな。‥今度アララキに会ったら相談しよう」
は、サカマキの結論。
‥え?
アララキとサカマキが結婚??
‥我は‥
いっそ、自然発生したってことにしておいてくれても構わんぞ‥。
さっきの話でいったら、アララキが父親、サカマキが母親ってことになるんだよな‥。
二人が両親ってのは‥まあ、認めてるよ。(親友二人が両親って複雑だけれども、だ! )
だけど、それだけじゃ済まないでしょう?
結婚っていったら、個人だけの問題じゃ済まないでしょう‥?
だって、アララキは王だから!
王が父親‥。
「いやいや‥。それは、そう簡単に決められるものじゃないでしょう‥。ほら、ああ見えてアララキは彼の国の王様だしな‥」
慌てて止める。
サカマキがはっとした様な顔をする。
‥忘れてたのか‥。
まあ‥普段のあいつ見てたら忘れるのも‥分かるわ‥。
「あ、そうか‥アララキは王であったな。‥悪い。フミカ。両親揃って育てることは出来ない‥」
サカマキが「ホントに申し訳ない」という顔で頭を下げる。
そんな、捨てられた子犬みたいな顔してくれるな。‥お前は我の親なんだぞ? もっと、しっかりしろ。って、なんか微笑ましい気持ちになり
「‥全然気にしておらん。寧ろ、もう少し成長すれば、後は自分で自分のこと位する」
ふふ、とフミカは思わず笑ってしまった。
「すまん‥」
ははは。
笑ったのは、
桜子だ。
「う~ん。フミカちゃんが見た目通りの子供じゃないって分かってるのに、ついついビジュアルに引っ張られて子供だよね? って思っちゃうよね~。それは、翔もだけどね~」
くすくす
って。
「でも、‥確かに我らの自立は、ここよりずっと早いな。成人は15だし」
フミカが首を傾げる。
でも‥まあ、カルチャーショックはあるわな。何処でも。
って納得したり。
桜子は、
「15! 」
目を見開いた。
「そんなに驚くこと? 」って今度はサカマキが首を傾げる
「だから、ここに初めて来たときは、驚いた」
15を過ぎても、「子供」のまま、依然親の保護下にあって自立していない子供たちに驚いた。
早く自活しないと、親の暮らしを切迫しかねない。
金銭的理由以外でも‥
「草食動物と一緒だ。自分自身で直ぐに歩きださないと、逃げ切れない。‥あっちには、魔物もいるし、肉食の獣も多い」
彼の国の国民は、この国の人たちよりずっと、危険と隣り合わせなのだ。
自立はすなわち生きる為に最も重要なことなんだ。
「そっかあ‥。サカマキさんのご両親は? 自立をしてからも、時々は会いに行ったりする? 」
感心したような口調の桜子に、サカマキがふふ、と微笑む。
「俺には、両親はいないんだ。それは、カツラギもアララキも同じだ。‥フミカには普通に居た様だね」
「あ‥」
桜子がまたしゅーんとなるのを、サカマキが「気にしてない」と言って首を振る。
「別に俺は気にしていない。桜子も気にするな。正樹も両親はいないが気にしておらんだろう? 」
‥気にしてないかどうか、実際のところは分からないが、少なくとも見た目では‥気にしてない様に見える。
「俺には、兄さんや姉さんたちが沢山いたし、アララキもカツラギもいたからね。
‥兄や姉といっても血は繋がっていない。孤児ばっかり集められた村だったんだ。
でも、誰も‥不平不満を言うものも、泣き言いうものもいなかった
いい村だったぞ? 」
ふと、故郷の「両親たち」や「兄や姉たち」を思い出し、懐かしく‥そして、どこか哀しい気持ちになった。
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