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三章 高遠 桜子
6.桜子にしかできない事。
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一晩、ぐるぐる考えた結果、‥っていってもずっと起きていたわけではない。
私の体力‥っていうか、気力っていうかはそうもたない様だ。だから、「起きてる間」だけでもせめて、考えた。自分の事、サカマキさんのこと、これからのこと。
‥まあ、そんなに直ぐ答えは出ないんだけどね! そりゃね!
まあ、これからは考えなしに、身体の主導権を主張するのはやめようとは、思った。
身体の主導権って何かって?
‥何ていえばいいのかわかんないからそう表現してるんだから、推して量ってほしい‥。
私の身体を操り人形みたいなものと仮定して、それを操作する人って感じかなあ~。分かるよね‥?
あ、高校のことだけど
「今すぐに代われるわけじゃない。桜子の精神力は今だったら一日もたないぞ? 時々代わって練習するにしても、試験は俺が受ける。だから中退しないといけない‥とか、そういうことは考える必要はない」
って当たり前の様にいわれてしまった。
サカマキさんはちょっと困った様な顔をして
「中退‥。ないことでもないけど、そう勧められた選択肢でもないと思うぞ。事実だけで「この子は何か事情がある様な子なのかもしれない」って痛くもない腹を探られるのも、困るしな」
ってアドバイスもしてくれた。
‥異世界生活5年目。私歴5年のサカマキさんは、私よりずっと勉強もできるし、世間ってものが分かってるみたいだ。
今、私たち‥「私の精神」と、私の器にサカマキさんが入った「私」は、ベッドの上で「お泊り会」よろしく「話し合い」をしている。ベッドの上に体育座りしている「私(本体 サカマキin)」の恰好は、手触りの良いフリースのパジャマ。母さんが選んだんであろう、白地に大きめのドット柄が可愛い。
自分でいうのもなんだけど、似合ってるし、普通に可愛い。
顔がっていう話じゃない。そこまでナルシストじゃない。‥そうじゃなくって、高校生として全然違和感がないってこと。お見事‥としか言いようがない。
むしろ、私の方が付いて行けてない。精神年齢が、ね。近所の仲の良い高校生のお姉ちゃんとしゃべってる感じ。‥まだ、「同級生」としゃべってるって感覚にはならないなあ~。
ちょっと苦笑いしてたら
ピロン
軽い電子音がして、サカマキさんが枕元のスマホを手繰り寄せた。
「あ、恵子から‥」
無料通話アプリのサイトを開けて、メッセージを読み、返事を返す。
‥慣れてる。早いし、‥文章も女子高生っぽい‥っ。
スマホを当たり前の様に扱うこの「私」の中身は異世界人、しかも男かもしれない。それもアレだけど‥女子高生する私ってのがそもそも、まだ見慣れないから違和感しかない。
いや、さっきも言ったみたいに私‥「桜子」自体には違和感はないんだよ?? これは、私の気持ちの話‥っていうか‥私が、自分の変化に違和感を感じてるって感じ?
だって、私、寝る(寝るっていうのかな??)前は小学生だったわけだし? 半袖半ズボンで走り回ってドッチボールとかしてたわけだし??
それが今では、背が伸びて、大人(高校生)になって‥昼間はセーラー服着て高校行って、スマホ操作も慣れたもの‥。
‥にしても、スマホ‥ホントに慣れてるな。これも覚えなきゃいけないのか‥。
うんざり‥。小学生までの私を覚えるより、小学生までの知識で中学・高校の知識を詰め込む方が絶対キツイぞ‥。
私がちょっと弱音を吐いたら、サカマキさんは呆れた様な顔をすることもなく、
「覚えなくてもいいことは取り敢えずはしょって、まず覚えなくちゃいけないことから、かな。優先順位だ。俺なりに整理しておく。(←この頃は、サカマキさんはずっと一人称、俺だ。‥ホントに‥どうなんだろう? )
そういうのは、俺が選んでおくからちょっと待っててね。
それ以外は、桜子には桜子しか出来ないことを、やってほしい」
って言った。
サカマキさんな私は、そう愛想よくはないけど、むやみやたらに愛想笑いとかしないで、凛としている。優しくって感じじゃないけど、つんけんしてるとかそんな感じじゃない。‥凄くしっかりしてて、安心できる。
だから、さっきの言葉だって、私のお腹に「そうだな、何とかなるな」って、ストンって落ちて来たんだ。安心、納得ってやつ?
これは、サカマキさんに対する私の信頼度ってのもあるけど、私の素朴な顔もその「安心、納得」に一役かってるって感じ。やたらキラキラした顔じゃ、こうはいかないもんね。なんか「他人事だと思ってんじゃない? 美人って性格悪いんじゃない? 」って感じになったり‥とかね?? (←偏見)
サカマキさんにお任せしていい部分と、私にしか出来ない部分。
その前にまず、サカマキさんを信用していいのかって話になるんだけど、実は‥情操面は少し信頼できないんだけど‥だけど、私のことをよく知っている人っていえば、親と私を除いたらきっとサカマキさんだろうから、ここは信用しないといけないな、とは思う。
この件(サカマキさん関連)はサカマキさんと私の間の話で、両親は‥言い方は悪いんだけど‥関係が無い。親にだって言えることでは無い。だから、今までは、誰にも相談できずサカマキさんは一人で苦労して来たんだ。‥それを思うとホント、感謝しかない。あの時、怒ったりしてホントに悪かった。
そんなサカマキさんだから‥私はサカマキさんを信頼している。
多分、情操面以外だったら、きっと問題はない‥と思うし。(大事なことなので二度言いました)この世界の常識みたいなものは、一番初めに覚えたってサカマキさん言ってたし。
‥そういう常識面でやばいことはしてないと思う。
「私しかできないこと? 」
私が首を傾げて聞くと、真剣な顔をしたサカマキさんが頷いた。
サカマキさんが‥っていうか、サカマキさんの入った私の身体が、だ。ややこしいんだけど、私の精神とサカマキさんの入った私の身体でか、私とサカマキさんの精神が話す方が都合がいいんだ。
精神同士で頭の中で話すと、どうしても精神の強い方‥サカマキさんの方だね‥に引っ張られちゃって、洗脳じゃないけど‥意見がサカマキさん寄りになっちゃうんだ。それじゃ話し合いにならないから‥ってことで、この頃は、私の意思を尊重してサカマキさんはこの形を取ってくれてる。
‥傍から見たら、私が独り言を言い続けてるって感じなんだけど。
‥ちょっと、ヤバいね‥。
「桜子しかできない事。俺には絶対できないし、‥俺が決めるのは嫌だって、さんざん桜子は言ってたじゃないか」
それって、もしかして。
「恋愛? 」
「そう。恋愛、桜子は恋をして。俺は、見ない様に隠れてるから、さっさと結婚の約束とかしちゃってもいいから。誰でも、どんな奴でも俺は文句言わないから」
「いや、‥サカマキさんに文句言われる筋合いはないし‥ってか、そんな会って直ぐ結婚とか有り得ませんから!! 」
‥相変わらず分かってない異星人に、私は頭が痛くなりそうですよ!? あれか? 効率化って奴か?? いや、情緒がわかんない人間に「情緒がない! 」とかいう話をしても無駄ってのは分かるんだけど‥分かるけど、だけどそこは‥譲れない。
サカマキさんがこてんと首を傾げる。
‥こういう顔をするサカマキさんは、いつもよりも幼く見えて、‥可愛いんです。
でも、流されませんよ‥。今あなたは、私の顔なんですからね‥ちっとも可愛くないですよ~。
「ん? だってほら。運命の相手ってのは、見た瞬間分かるって」
だから~。そんな、「だってだって」って顔しても、ダメ。
中身のサカマキさんがあの可愛らしい顔でしたら「それでも許す!! 」って感じなんだろうけど、今あなたの見た目、私ですからね。ただの普通顔の高校生ですからね~。
可愛くないです。
って、スパンと切り捨てちゃいたいんだけど‥
‥中身はもしやアンドロイドかって感じの、情緒がなく、恋愛感情ってもんが根っこすらない特殊な異世界人だ。きっと、本気でそんなこと思っているんだろう。
「‥どんなファンタジーだ‥」
にしても‥さすが異世界だね。‥運命の相手って。私、実際にはそんなの見たことも聞いたこともないですけど。‥そんなのマンガやラノベの世界ですよね??
しかも、‥そういうことが仮にあったとしても、私みたいな普通の顔した女子には無関係かと思います。それこそ、サカマキさん程の美形さんじゃないと‥
サカマキさんなら‥
「サカマキさんには、運命の相手がいるんですか? 」
ふと、思いついたまま聞いてみると、
「俺? 俺は‥そういうのわからないんだ。俺にとって運命ってのは、神が俺に課した定めってか、仕事みたいなもんだ。神が‥俺の愛やらそういうのに、関与する必要というか‥理由はないわな。だって、神にとって関係が無いことじゃない? 」
大層驚いた後、首を捻られました。
‥いや、そういう感じのこと言われると‥思ってましたけどね?
「それは、まあ‥そうですかね? そもそも、‥じゃあ、「運命の相手」って誰が決めたもんなんでしょうね? 神だとしたら、「この人とこの人の産んだ子だったら、遺伝子的にこういう子が生まれるだろうから、この人とこの人は出会って子を成す運命」とかっていう感じ‥ですかね? 」
‥おお、私、冴えてる。天才か。
密かに自画自賛してたのに
「なら、「遺伝子的にこういう子供」を作ればいいって話にならないか? 」
サカマキさんの意地悪う‥情緒なさすぎるよ‥。情緒ないって思ってたけど、予想を上回る情緒のなさだよ~。
「それは、その‥ロマン的な部分? もしかしたら、神的に予想してるより、もっと凄いもん出来るかも~、みたいな? 」
「それは‥かなり、実験動物的な思想の神だね‥」
‥そうね。
確かに、そんなこと思う神、嫌だわ‥。
なんか、この話、もう嫌になってきちゃった。
が、それはお互い様だったらしく
「まあ、そういうこと‥議論しても仕方が無いね。答えは分からないんだから」
ってサカマキさんは苦笑いで話を締めくくった。そして、今後の方針として
「まあ、とにかくだ。運命の相手はいないにしても、相性がいいっていうの? そういう相手にどんどん接触していってよ。マンガで読んだんだけど「どうせ私なんか彼が好きになってくれるわけない」とか言って、実は両思いだったのに、話しかけるまでに時間がかかっちゃって、その間に別の女が‥とか、そういう時間の無駄なこと、どうでもいいから」
ってサカマキさんが提案して来た。提案ってか、ほぼ決定事項だし、命令って感じだね~。
私も苦笑いで「了解」とだけ言っておく。
それはそうと‥
「‥マンガとかも読んだんですね。サカマキさん」
「美咲に借りた。「桜子には女の子らしさがない。この「女子のバイブル」を読んで勉強しろ」って言われた」
「あ~」
‥美咲、言いそうだなあ~。今はどうしてるんだろ。落ち着いたらまた「久し振りに会わない? 」とか言って集まろっかなあ。
「気になる子とか。いなかったの? 小学生の時。あ、その子じゃなくても、「その子っぽい子」とか紹介できると思うし、参考までに、さ」
「気になる子‥ねえ。あ、顔だったら‥」
「うん。誰? 」
「牧野 正樹君。凄く優しいこでね。家も近くって、低学年の時とかは、遊んだことがあったんだ。女の子より可愛い子でさ~。高学年になったら、塾に通い始めたから、気が付いたら遊ばなくなったんだけど、‥遊んでた時もそういえば、そんなに目立つ子でもなかった。だけど、なんか気になったっていうか‥」
っていうか、すっごく好きだった。顔も‥なんだけど、それだけじゃなくって、好きだった。
一緒に遊ばなくなってからも、学校で見かけたら、ちらちら見ちゃってた。
笑ってるの見たら、何話してるんだろ? って会話が聞こえないのがもどかしかったり、図書館で見かけたら、今日も来てるかも、って図書館に通ってしまってたり‥。
でも、なんか緊張して話せなくって‥。
‥私は、普段はそうでもないと思ってんだけど、そういえば、恋愛にはヘタレだった。
そんなことを思っていたら、サカマキさんが、ちょっと考え事をするみたいに、顎に手を置いて固まっているのが見えた。
「どうしたの? 」
て私が聞くより先に
「牧野正樹‥小学校が一緒‥いや。小学校から一緒‥。いるぞ! そいつ。ツイてる桜子! そいつ、同じ高校だ!! 」
サカマキさんが叫んだ。
運命はないかもだけど将来ってのは、自分で切り開いていくものなのだ。
私は、その偶然を、無駄にしない。「ヘタレ」で後悔するのはやめよう。って思った。
‥せっかく、サカマキさんに(利害の一致とはいえ)偶然助けてもらった命。一度は死んだもの‥と、ヘタレな自分とは決別して‥頑張ろうと思います。
私の体力‥っていうか、気力っていうかはそうもたない様だ。だから、「起きてる間」だけでもせめて、考えた。自分の事、サカマキさんのこと、これからのこと。
‥まあ、そんなに直ぐ答えは出ないんだけどね! そりゃね!
まあ、これからは考えなしに、身体の主導権を主張するのはやめようとは、思った。
身体の主導権って何かって?
‥何ていえばいいのかわかんないからそう表現してるんだから、推して量ってほしい‥。
私の身体を操り人形みたいなものと仮定して、それを操作する人って感じかなあ~。分かるよね‥?
あ、高校のことだけど
「今すぐに代われるわけじゃない。桜子の精神力は今だったら一日もたないぞ? 時々代わって練習するにしても、試験は俺が受ける。だから中退しないといけない‥とか、そういうことは考える必要はない」
って当たり前の様にいわれてしまった。
サカマキさんはちょっと困った様な顔をして
「中退‥。ないことでもないけど、そう勧められた選択肢でもないと思うぞ。事実だけで「この子は何か事情がある様な子なのかもしれない」って痛くもない腹を探られるのも、困るしな」
ってアドバイスもしてくれた。
‥異世界生活5年目。私歴5年のサカマキさんは、私よりずっと勉強もできるし、世間ってものが分かってるみたいだ。
今、私たち‥「私の精神」と、私の器にサカマキさんが入った「私」は、ベッドの上で「お泊り会」よろしく「話し合い」をしている。ベッドの上に体育座りしている「私(本体 サカマキin)」の恰好は、手触りの良いフリースのパジャマ。母さんが選んだんであろう、白地に大きめのドット柄が可愛い。
自分でいうのもなんだけど、似合ってるし、普通に可愛い。
顔がっていう話じゃない。そこまでナルシストじゃない。‥そうじゃなくって、高校生として全然違和感がないってこと。お見事‥としか言いようがない。
むしろ、私の方が付いて行けてない。精神年齢が、ね。近所の仲の良い高校生のお姉ちゃんとしゃべってる感じ。‥まだ、「同級生」としゃべってるって感覚にはならないなあ~。
ちょっと苦笑いしてたら
ピロン
軽い電子音がして、サカマキさんが枕元のスマホを手繰り寄せた。
「あ、恵子から‥」
無料通話アプリのサイトを開けて、メッセージを読み、返事を返す。
‥慣れてる。早いし、‥文章も女子高生っぽい‥っ。
スマホを当たり前の様に扱うこの「私」の中身は異世界人、しかも男かもしれない。それもアレだけど‥女子高生する私ってのがそもそも、まだ見慣れないから違和感しかない。
いや、さっきも言ったみたいに私‥「桜子」自体には違和感はないんだよ?? これは、私の気持ちの話‥っていうか‥私が、自分の変化に違和感を感じてるって感じ?
だって、私、寝る(寝るっていうのかな??)前は小学生だったわけだし? 半袖半ズボンで走り回ってドッチボールとかしてたわけだし??
それが今では、背が伸びて、大人(高校生)になって‥昼間はセーラー服着て高校行って、スマホ操作も慣れたもの‥。
‥にしても、スマホ‥ホントに慣れてるな。これも覚えなきゃいけないのか‥。
うんざり‥。小学生までの私を覚えるより、小学生までの知識で中学・高校の知識を詰め込む方が絶対キツイぞ‥。
私がちょっと弱音を吐いたら、サカマキさんは呆れた様な顔をすることもなく、
「覚えなくてもいいことは取り敢えずはしょって、まず覚えなくちゃいけないことから、かな。優先順位だ。俺なりに整理しておく。(←この頃は、サカマキさんはずっと一人称、俺だ。‥ホントに‥どうなんだろう? )
そういうのは、俺が選んでおくからちょっと待っててね。
それ以外は、桜子には桜子しか出来ないことを、やってほしい」
って言った。
サカマキさんな私は、そう愛想よくはないけど、むやみやたらに愛想笑いとかしないで、凛としている。優しくって感じじゃないけど、つんけんしてるとかそんな感じじゃない。‥凄くしっかりしてて、安心できる。
だから、さっきの言葉だって、私のお腹に「そうだな、何とかなるな」って、ストンって落ちて来たんだ。安心、納得ってやつ?
これは、サカマキさんに対する私の信頼度ってのもあるけど、私の素朴な顔もその「安心、納得」に一役かってるって感じ。やたらキラキラした顔じゃ、こうはいかないもんね。なんか「他人事だと思ってんじゃない? 美人って性格悪いんじゃない? 」って感じになったり‥とかね?? (←偏見)
サカマキさんにお任せしていい部分と、私にしか出来ない部分。
その前にまず、サカマキさんを信用していいのかって話になるんだけど、実は‥情操面は少し信頼できないんだけど‥だけど、私のことをよく知っている人っていえば、親と私を除いたらきっとサカマキさんだろうから、ここは信用しないといけないな、とは思う。
この件(サカマキさん関連)はサカマキさんと私の間の話で、両親は‥言い方は悪いんだけど‥関係が無い。親にだって言えることでは無い。だから、今までは、誰にも相談できずサカマキさんは一人で苦労して来たんだ。‥それを思うとホント、感謝しかない。あの時、怒ったりしてホントに悪かった。
そんなサカマキさんだから‥私はサカマキさんを信頼している。
多分、情操面以外だったら、きっと問題はない‥と思うし。(大事なことなので二度言いました)この世界の常識みたいなものは、一番初めに覚えたってサカマキさん言ってたし。
‥そういう常識面でやばいことはしてないと思う。
「私しかできないこと? 」
私が首を傾げて聞くと、真剣な顔をしたサカマキさんが頷いた。
サカマキさんが‥っていうか、サカマキさんの入った私の身体が、だ。ややこしいんだけど、私の精神とサカマキさんの入った私の身体でか、私とサカマキさんの精神が話す方が都合がいいんだ。
精神同士で頭の中で話すと、どうしても精神の強い方‥サカマキさんの方だね‥に引っ張られちゃって、洗脳じゃないけど‥意見がサカマキさん寄りになっちゃうんだ。それじゃ話し合いにならないから‥ってことで、この頃は、私の意思を尊重してサカマキさんはこの形を取ってくれてる。
‥傍から見たら、私が独り言を言い続けてるって感じなんだけど。
‥ちょっと、ヤバいね‥。
「桜子しかできない事。俺には絶対できないし、‥俺が決めるのは嫌だって、さんざん桜子は言ってたじゃないか」
それって、もしかして。
「恋愛? 」
「そう。恋愛、桜子は恋をして。俺は、見ない様に隠れてるから、さっさと結婚の約束とかしちゃってもいいから。誰でも、どんな奴でも俺は文句言わないから」
「いや、‥サカマキさんに文句言われる筋合いはないし‥ってか、そんな会って直ぐ結婚とか有り得ませんから!! 」
‥相変わらず分かってない異星人に、私は頭が痛くなりそうですよ!? あれか? 効率化って奴か?? いや、情緒がわかんない人間に「情緒がない! 」とかいう話をしても無駄ってのは分かるんだけど‥分かるけど、だけどそこは‥譲れない。
サカマキさんがこてんと首を傾げる。
‥こういう顔をするサカマキさんは、いつもよりも幼く見えて、‥可愛いんです。
でも、流されませんよ‥。今あなたは、私の顔なんですからね‥ちっとも可愛くないですよ~。
「ん? だってほら。運命の相手ってのは、見た瞬間分かるって」
だから~。そんな、「だってだって」って顔しても、ダメ。
中身のサカマキさんがあの可愛らしい顔でしたら「それでも許す!! 」って感じなんだろうけど、今あなたの見た目、私ですからね。ただの普通顔の高校生ですからね~。
可愛くないです。
って、スパンと切り捨てちゃいたいんだけど‥
‥中身はもしやアンドロイドかって感じの、情緒がなく、恋愛感情ってもんが根っこすらない特殊な異世界人だ。きっと、本気でそんなこと思っているんだろう。
「‥どんなファンタジーだ‥」
にしても‥さすが異世界だね。‥運命の相手って。私、実際にはそんなの見たことも聞いたこともないですけど。‥そんなのマンガやラノベの世界ですよね??
しかも、‥そういうことが仮にあったとしても、私みたいな普通の顔した女子には無関係かと思います。それこそ、サカマキさん程の美形さんじゃないと‥
サカマキさんなら‥
「サカマキさんには、運命の相手がいるんですか? 」
ふと、思いついたまま聞いてみると、
「俺? 俺は‥そういうのわからないんだ。俺にとって運命ってのは、神が俺に課した定めってか、仕事みたいなもんだ。神が‥俺の愛やらそういうのに、関与する必要というか‥理由はないわな。だって、神にとって関係が無いことじゃない? 」
大層驚いた後、首を捻られました。
‥いや、そういう感じのこと言われると‥思ってましたけどね?
「それは、まあ‥そうですかね? そもそも、‥じゃあ、「運命の相手」って誰が決めたもんなんでしょうね? 神だとしたら、「この人とこの人の産んだ子だったら、遺伝子的にこういう子が生まれるだろうから、この人とこの人は出会って子を成す運命」とかっていう感じ‥ですかね? 」
‥おお、私、冴えてる。天才か。
密かに自画自賛してたのに
「なら、「遺伝子的にこういう子供」を作ればいいって話にならないか? 」
サカマキさんの意地悪う‥情緒なさすぎるよ‥。情緒ないって思ってたけど、予想を上回る情緒のなさだよ~。
「それは、その‥ロマン的な部分? もしかしたら、神的に予想してるより、もっと凄いもん出来るかも~、みたいな? 」
「それは‥かなり、実験動物的な思想の神だね‥」
‥そうね。
確かに、そんなこと思う神、嫌だわ‥。
なんか、この話、もう嫌になってきちゃった。
が、それはお互い様だったらしく
「まあ、そういうこと‥議論しても仕方が無いね。答えは分からないんだから」
ってサカマキさんは苦笑いで話を締めくくった。そして、今後の方針として
「まあ、とにかくだ。運命の相手はいないにしても、相性がいいっていうの? そういう相手にどんどん接触していってよ。マンガで読んだんだけど「どうせ私なんか彼が好きになってくれるわけない」とか言って、実は両思いだったのに、話しかけるまでに時間がかかっちゃって、その間に別の女が‥とか、そういう時間の無駄なこと、どうでもいいから」
ってサカマキさんが提案して来た。提案ってか、ほぼ決定事項だし、命令って感じだね~。
私も苦笑いで「了解」とだけ言っておく。
それはそうと‥
「‥マンガとかも読んだんですね。サカマキさん」
「美咲に借りた。「桜子には女の子らしさがない。この「女子のバイブル」を読んで勉強しろ」って言われた」
「あ~」
‥美咲、言いそうだなあ~。今はどうしてるんだろ。落ち着いたらまた「久し振りに会わない? 」とか言って集まろっかなあ。
「気になる子とか。いなかったの? 小学生の時。あ、その子じゃなくても、「その子っぽい子」とか紹介できると思うし、参考までに、さ」
「気になる子‥ねえ。あ、顔だったら‥」
「うん。誰? 」
「牧野 正樹君。凄く優しいこでね。家も近くって、低学年の時とかは、遊んだことがあったんだ。女の子より可愛い子でさ~。高学年になったら、塾に通い始めたから、気が付いたら遊ばなくなったんだけど、‥遊んでた時もそういえば、そんなに目立つ子でもなかった。だけど、なんか気になったっていうか‥」
っていうか、すっごく好きだった。顔も‥なんだけど、それだけじゃなくって、好きだった。
一緒に遊ばなくなってからも、学校で見かけたら、ちらちら見ちゃってた。
笑ってるの見たら、何話してるんだろ? って会話が聞こえないのがもどかしかったり、図書館で見かけたら、今日も来てるかも、って図書館に通ってしまってたり‥。
でも、なんか緊張して話せなくって‥。
‥私は、普段はそうでもないと思ってんだけど、そういえば、恋愛にはヘタレだった。
そんなことを思っていたら、サカマキさんが、ちょっと考え事をするみたいに、顎に手を置いて固まっているのが見えた。
「どうしたの? 」
て私が聞くより先に
「牧野正樹‥小学校が一緒‥いや。小学校から一緒‥。いるぞ! そいつ。ツイてる桜子! そいつ、同じ高校だ!! 」
サカマキさんが叫んだ。
運命はないかもだけど将来ってのは、自分で切り開いていくものなのだ。
私は、その偶然を、無駄にしない。「ヘタレ」で後悔するのはやめよう。って思った。
‥せっかく、サカマキさんに(利害の一致とはいえ)偶然助けてもらった命。一度は死んだもの‥と、ヘタレな自分とは決別して‥頑張ろうと思います。
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