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二章 世界の前提と、誤算。
2.サカマキの運命
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「サカマキの運命? 」
で、昨日の今日で‥夜またサカマキが眠ってから、フミカはカツラギからこの話を聞いている。
ちなみに、サカマキの検査とやらは、我が眠っておる間に終わっておった。
カツラギがやけにキラキラした目をしていたから、‥奴は見ていたのであろう。一体あやつはいつ寝ているんだろうか。
サカマキは‥
流石にくたびれたらしく、今日は早めに床に就いたようだ。
早めに寝たから、眠りが浅いかも? と心配したら、カツラギが首を振り
「良く眠っているから、今日も朝まで起きることは無いだろう」
と言った。
カツラギは‥「サカマキにはもう話していることだ」って言ってたけど、‥あんまり聞いて嬉しい話な気がしない。
そりゃあ、もう、全然いい話じゃないだろう。
カツラギから聞いた時についた傷口を、またほじくる様な事はしたくない。
「そんなもんかなあ」とさも興味がなさそうにいうと、カツラギが話し始めた。
「そもそも、サカマキだけじゃない。‥高位魔法使いってのは、同じ役割を持って生まれて来るのですよ。別にサカマキだけが不幸なわけではないってことを先に伝えておきますね」
という前置きは、でも多少重い口調で言った。
「高位魔法使い‥」
‥高位魔法使いは、普通の魔法使いよりも稀有で、また能力が高い。‥特に攻撃系に特化しており、また属性も多く、戦場の第一線で活躍する魔法使いたちのことを言う。そして、「賢者」と呼ばれる学者の内でも特に「物知り」な者が連れて来る者たちのことをいい、一般の魔法使いが修行を積んだから、とか魔法の才能があるから成れる者でもないらしい。
通常の魔法使いがグレーか白のローブを着ているのに対して、上位魔法使いは黒色を着ているので、直ぐ見分けがつく。
その黒いのが、対魔物の戦ともなれば、前線に出て戦う。男も女も、老いも若きもだ。
‥魔法使いなのに前衛って‥って兵士のフミカは、初めて見た時は思ったけど、彼らが戦う姿を見ていたら、「成程な」って思ったのを覚えている。‥それ程インパクトが強かった。
‥彼らの攻撃はフミカの「魔法」という認識を遥かに超えていた。
攻撃がまるで剣のように鋭かったり、広範囲の敵の動きを止めたりするトリッキーな技を使う者もいた。‥サカマキなんかもこのタイプだね。範囲を指定して、エリア攻撃をしたり、毒霧を発生させたり、火攻めにしたり。敵を攻撃するってことに、まるで躊躇がない。怖いって感覚は奴らにはないのかなってすら思える。
我だって、そりゃ、自分よりずっと大きな敵が来たら、一瞬怯む。だけど、彼らにはそれがない。
まるで、当たり前のように一番に走り出して行って、攻撃を仕掛ける。
‥誰かと協力するって考えは、彼らにはない。チーム意識もなく、作戦会議にも、‥打ち上げにも加わったりしない。サカマキと我は友達だけど、一度戦場に出たら、サカマキが我を見ることはない。‥他の高位魔法使い同様、サカマキも一人で突っ走っていくだけだ。(そういえば、他の高位魔法使い同士で協力することもあまりない。『黒の魔法団』に入った時期が同じ同期はたまに組んでいるのを見るけど)
黒の魔法団ってのは、高位魔法使いだけの集まりのことだ。
灰の魔法団っていうのが、一般の魔法使いの集まりで、白の魔法団というのが、治療を担当する魔法使いの集まりだ。(この三つは、独立しておりあんまり交流がない様だ)白と灰の連中が「黒はお高くとまっている」と影口を叩いていた。
‥悪口だけは「仲良く」言うとか、ホント、くだらない。
「黒の魔法団、か‥」
フミカが呟くと、カツラギが頷いた。
‥戦闘狂の歩く暗器。戦場の黒い悪魔‥。(魔物と戦うのに、悪魔って(笑))戦場以外では絶対にお目にかかりたくない、災厄の魔法団。戦時以外で、黒の魔法団と関わり合いになる者なんていない。
そういうことに拘りがないフミカだが、‥だけど、サカマキ以外の黒の魔法団の団員との付き合いはない。
強い、とは思うが、‥好きになれない。
兵士だから、常に強さを求めているし、強い者がいたら、友となり、互いに切磋琢磨して高めあっていきたいと思う。
だが、黒の魔法団の連中とそうなろうとは思わないし、‥相手もそれを望まないだろう。
‥奴らは異質だ。
強さも、その存在も。
初めて見た時に思って、今でもそう思っている。
‥命を粗末にしている様にしか思えないからだ。
そして、それは友であるサカマキについても言えた。
‥サカマキは、もっと強いから‥もっとヒドイ。
最前線でそんな戦い方をされたら、後ろにいる者は、‥不安になる。
そうじゃなくても、信頼されていないことに、不快で、何とも嫌な気持ちになる。
攻撃のリズムだって崩れる。
だけど、前線で粗方の敵を倒してくれるから、後ろの者の攻撃に余裕ができ、魔物の動きにも対応ができているというのも真実で、そのことには感謝しているし、‥出来るだけ、高位魔法使いを援護しようと思っている。
‥そんな高位魔法使いは、まさか、あれが「役割」に従っての行動だというのだろうか?
さっき、カツラギはそう言った。
「高位魔法使いの役割って? 」
改めてフミカが聞くと、カツラギは小さく頷き
「増えすぎた魔物を消すことさ」
何でもないことの様に言った。
‥それは、国を守る者皆の役割では無いだろうか?
フミカはちょっと眉を寄せる。
カツラギはまた小さく頷くと、「まずは、高位魔法使いが生まれるわけを話すね」と話を始めた。
「人口が増えすぎるたり、人々の生活が怠惰に成ったりすると、神は人々を戒め、罰を与え、また間引くために魔物を世に放つ。負のものを放つわけだから、世界のバランスは崩れる。だから、魔物を放つ際に、正のものを一緒に放つ。それが、高位の魔法使いだ」
フミカはピクリとも動かずに話を聞いていた。
神が人を減らすために、魔物を放つという‥嘘の様な話が、脳にすとんと落ちてこない。
信じたくない。フミカの顔を見て、カツラギはまた小さく頷いた。「だけど」
「魔物が人を殺すのは、高位魔法使いが無力な乳幼児~幼児の間だけだ。そして、その間に、魔物も世代交代を果たしている。人と魔物の関係が、若い人間と年老いた魔物となり、魔物側の力が人間に劣る状態は、世代交代によって解消される。魔物は、多少は人間に駆除されることもあるが、全滅させられることはない。
魔物が増えすぎて人が減りすぎることもこの地点ではないし、魔物が減りすぎて人が増えすぎることもない。
だけど、‥そこで止まらない。魔物は、増えすぎ、人を殺し過ぎる。なぜなら、魔物の方が人よりずっと強いからだ。
魔物は、神が想定した人の増加抑制量を超えて人を殺す。
‥そうなる前に、‥増えすぎた魔物を高位魔法使いが駆除する。
魔物は人口調整の手段で、だけど、意図せず増え続けた魔物の後始末をするのは、最終調整者の高位魔法使いってことだな」
‥まるで実験室での実験だ。
「‥だけど、‥さっきの話だったら、高位魔法使いは、‥ただの被害者で、何にも悪いことをしていない。さっき、カツラギも「正の存在」って言った。‥だのに、何故、高位魔法使いは一様に嫌われいるんだ? 」
「正の存在なのに、変だと思うよね。負のものとセットで生み出される正のもの‥。高位魔法使いを見た時、人は同時に負の存在である魔物を連想する。それも、‥自然とだ。さっきの私の話を知らなくても、です」
おかしいと思いませんか?
カツラギの目が、フミカにそう話しかけている。
「‥‥‥」
フミカは、思わず唾を飲んだ。
‥本能。
「世界の調整」のために世界に派遣される「高位魔法使い」が、人間と必要以上に接触するのを避けるため‥だろうか?
そういえば、黒の魔法団に所属している魔法使いは、皆短命で、未婚のまま死んでいる。
神が与えたチートな能力を後世に残さない為なのか‥。
「っチッ‥」
ガラにもなく舌打ちをしてしまった。
‥人間を何だと思っているんだ。
都合で調整されたり、後始末を押し付けられたり。
高位魔法使いだって人間だ‥。だのに、まるで彼の人権なんて考えないという態度‥。
サカマキを‥わが友を何だと思っているんだ‥。
「そんなわけで、高位魔法使いは人々から無条件に嫌われている。‥というか、恐れられている。
ただでさえそうなのに、‥サカマキはさらに『世界の災厄』と言われる程の高位魔法使いだ。今世の魔物の討伐を一人に任された今世でたった一人の高位魔法使い‥。サカマキが魔法でもって魔物を倒せば倒すほど‥、サカマキの魔法がいかに特別かということが世間に知れ、‥人々は、サカマキを恐れる。
サカマキの魔法に対する恐怖と、魔物に対する恐怖。サカマキの存在に、この世に確かに魔物がいるという事実を思い知らされる。サカマキの強さはすなわち魔物の強さだ‥。
‥この頃は、魔物の存在イコールサカマキと考えている者すらいる‥」
サカマキはなにも悪くない。
‥神による人心操作により
サカマキは無条件に嫌われる。
そして、一度嫌いと思った人間は、嫌いな人間に対して容赦がない。
更に「嫌い」が上乗せされる。
サカマキが、人類の為にその身を削って戦っていたとしても‥。
サカマキが人々に受け入れられることは、絶対にない。
それが、サカマキの運命だというのだ。
「酷いな‥」
「ああ」
‥しかも(ついてないことに)、サカマキの(勝つためには手段を選ばない)魔法は特別に質(たち)が悪くて、お世辞でも『正義の味方』って感じはしないしな。
は、今は言わないでおこう。
‥そういえば、我は、サカマキを見た時「生理的に嫌」だとは思わなかったな。‥偶にはそんな人間もいるのかな。アララキだってそうだし、カツラギもそうだ。
我が首を傾げていると、カツラギが
「それでも趣味嗜好ってやつはある。世間一般的には嫌われてるけど、俺は好きって奴もいる‥ってやつじゃないですか?
猫と一緒ですよ。
猫は犬ほど人気はない。力は犬に劣るし、気まぐれだし、従順じゃない。犬の方が従順だし、力もある。なのに、なんでわざわざ‥って犬好きには思われますが‥、(←注) あくまでも、カツラギたちの国の人たちの感覚です)猫好きだって希にはいる‥。
ああ、猫(小型)とサカマキって‥研究が進んでないから、どういうふうに次世代に影響が出るかわからないから交配はさせない‥ってとこが似てますね
ってちょっと笑った。
‥別に面白くもないが‥。
世間一般には嫌われてるけど、‥好きっていう人もいる。
‥そんな人間がもっと増えて、‥サカマキたちが、少しは暮らしやすい世界になればいいのにな、と祈らずにはいられなかった。(アララキなら「ライバルが少ないほうがいい」って言うかもしれなけどな)
で、昨日の今日で‥夜またサカマキが眠ってから、フミカはカツラギからこの話を聞いている。
ちなみに、サカマキの検査とやらは、我が眠っておる間に終わっておった。
カツラギがやけにキラキラした目をしていたから、‥奴は見ていたのであろう。一体あやつはいつ寝ているんだろうか。
サカマキは‥
流石にくたびれたらしく、今日は早めに床に就いたようだ。
早めに寝たから、眠りが浅いかも? と心配したら、カツラギが首を振り
「良く眠っているから、今日も朝まで起きることは無いだろう」
と言った。
カツラギは‥「サカマキにはもう話していることだ」って言ってたけど、‥あんまり聞いて嬉しい話な気がしない。
そりゃあ、もう、全然いい話じゃないだろう。
カツラギから聞いた時についた傷口を、またほじくる様な事はしたくない。
「そんなもんかなあ」とさも興味がなさそうにいうと、カツラギが話し始めた。
「そもそも、サカマキだけじゃない。‥高位魔法使いってのは、同じ役割を持って生まれて来るのですよ。別にサカマキだけが不幸なわけではないってことを先に伝えておきますね」
という前置きは、でも多少重い口調で言った。
「高位魔法使い‥」
‥高位魔法使いは、普通の魔法使いよりも稀有で、また能力が高い。‥特に攻撃系に特化しており、また属性も多く、戦場の第一線で活躍する魔法使いたちのことを言う。そして、「賢者」と呼ばれる学者の内でも特に「物知り」な者が連れて来る者たちのことをいい、一般の魔法使いが修行を積んだから、とか魔法の才能があるから成れる者でもないらしい。
通常の魔法使いがグレーか白のローブを着ているのに対して、上位魔法使いは黒色を着ているので、直ぐ見分けがつく。
その黒いのが、対魔物の戦ともなれば、前線に出て戦う。男も女も、老いも若きもだ。
‥魔法使いなのに前衛って‥って兵士のフミカは、初めて見た時は思ったけど、彼らが戦う姿を見ていたら、「成程な」って思ったのを覚えている。‥それ程インパクトが強かった。
‥彼らの攻撃はフミカの「魔法」という認識を遥かに超えていた。
攻撃がまるで剣のように鋭かったり、広範囲の敵の動きを止めたりするトリッキーな技を使う者もいた。‥サカマキなんかもこのタイプだね。範囲を指定して、エリア攻撃をしたり、毒霧を発生させたり、火攻めにしたり。敵を攻撃するってことに、まるで躊躇がない。怖いって感覚は奴らにはないのかなってすら思える。
我だって、そりゃ、自分よりずっと大きな敵が来たら、一瞬怯む。だけど、彼らにはそれがない。
まるで、当たり前のように一番に走り出して行って、攻撃を仕掛ける。
‥誰かと協力するって考えは、彼らにはない。チーム意識もなく、作戦会議にも、‥打ち上げにも加わったりしない。サカマキと我は友達だけど、一度戦場に出たら、サカマキが我を見ることはない。‥他の高位魔法使い同様、サカマキも一人で突っ走っていくだけだ。(そういえば、他の高位魔法使い同士で協力することもあまりない。『黒の魔法団』に入った時期が同じ同期はたまに組んでいるのを見るけど)
黒の魔法団ってのは、高位魔法使いだけの集まりのことだ。
灰の魔法団っていうのが、一般の魔法使いの集まりで、白の魔法団というのが、治療を担当する魔法使いの集まりだ。(この三つは、独立しておりあんまり交流がない様だ)白と灰の連中が「黒はお高くとまっている」と影口を叩いていた。
‥悪口だけは「仲良く」言うとか、ホント、くだらない。
「黒の魔法団、か‥」
フミカが呟くと、カツラギが頷いた。
‥戦闘狂の歩く暗器。戦場の黒い悪魔‥。(魔物と戦うのに、悪魔って(笑))戦場以外では絶対にお目にかかりたくない、災厄の魔法団。戦時以外で、黒の魔法団と関わり合いになる者なんていない。
そういうことに拘りがないフミカだが、‥だけど、サカマキ以外の黒の魔法団の団員との付き合いはない。
強い、とは思うが、‥好きになれない。
兵士だから、常に強さを求めているし、強い者がいたら、友となり、互いに切磋琢磨して高めあっていきたいと思う。
だが、黒の魔法団の連中とそうなろうとは思わないし、‥相手もそれを望まないだろう。
‥奴らは異質だ。
強さも、その存在も。
初めて見た時に思って、今でもそう思っている。
‥命を粗末にしている様にしか思えないからだ。
そして、それは友であるサカマキについても言えた。
‥サカマキは、もっと強いから‥もっとヒドイ。
最前線でそんな戦い方をされたら、後ろにいる者は、‥不安になる。
そうじゃなくても、信頼されていないことに、不快で、何とも嫌な気持ちになる。
攻撃のリズムだって崩れる。
だけど、前線で粗方の敵を倒してくれるから、後ろの者の攻撃に余裕ができ、魔物の動きにも対応ができているというのも真実で、そのことには感謝しているし、‥出来るだけ、高位魔法使いを援護しようと思っている。
‥そんな高位魔法使いは、まさか、あれが「役割」に従っての行動だというのだろうか?
さっき、カツラギはそう言った。
「高位魔法使いの役割って? 」
改めてフミカが聞くと、カツラギは小さく頷き
「増えすぎた魔物を消すことさ」
何でもないことの様に言った。
‥それは、国を守る者皆の役割では無いだろうか?
フミカはちょっと眉を寄せる。
カツラギはまた小さく頷くと、「まずは、高位魔法使いが生まれるわけを話すね」と話を始めた。
「人口が増えすぎるたり、人々の生活が怠惰に成ったりすると、神は人々を戒め、罰を与え、また間引くために魔物を世に放つ。負のものを放つわけだから、世界のバランスは崩れる。だから、魔物を放つ際に、正のものを一緒に放つ。それが、高位の魔法使いだ」
フミカはピクリとも動かずに話を聞いていた。
神が人を減らすために、魔物を放つという‥嘘の様な話が、脳にすとんと落ちてこない。
信じたくない。フミカの顔を見て、カツラギはまた小さく頷いた。「だけど」
「魔物が人を殺すのは、高位魔法使いが無力な乳幼児~幼児の間だけだ。そして、その間に、魔物も世代交代を果たしている。人と魔物の関係が、若い人間と年老いた魔物となり、魔物側の力が人間に劣る状態は、世代交代によって解消される。魔物は、多少は人間に駆除されることもあるが、全滅させられることはない。
魔物が増えすぎて人が減りすぎることもこの地点ではないし、魔物が減りすぎて人が増えすぎることもない。
だけど、‥そこで止まらない。魔物は、増えすぎ、人を殺し過ぎる。なぜなら、魔物の方が人よりずっと強いからだ。
魔物は、神が想定した人の増加抑制量を超えて人を殺す。
‥そうなる前に、‥増えすぎた魔物を高位魔法使いが駆除する。
魔物は人口調整の手段で、だけど、意図せず増え続けた魔物の後始末をするのは、最終調整者の高位魔法使いってことだな」
‥まるで実験室での実験だ。
「‥だけど、‥さっきの話だったら、高位魔法使いは、‥ただの被害者で、何にも悪いことをしていない。さっき、カツラギも「正の存在」って言った。‥だのに、何故、高位魔法使いは一様に嫌われいるんだ? 」
「正の存在なのに、変だと思うよね。負のものとセットで生み出される正のもの‥。高位魔法使いを見た時、人は同時に負の存在である魔物を連想する。それも、‥自然とだ。さっきの私の話を知らなくても、です」
おかしいと思いませんか?
カツラギの目が、フミカにそう話しかけている。
「‥‥‥」
フミカは、思わず唾を飲んだ。
‥本能。
「世界の調整」のために世界に派遣される「高位魔法使い」が、人間と必要以上に接触するのを避けるため‥だろうか?
そういえば、黒の魔法団に所属している魔法使いは、皆短命で、未婚のまま死んでいる。
神が与えたチートな能力を後世に残さない為なのか‥。
「っチッ‥」
ガラにもなく舌打ちをしてしまった。
‥人間を何だと思っているんだ。
都合で調整されたり、後始末を押し付けられたり。
高位魔法使いだって人間だ‥。だのに、まるで彼の人権なんて考えないという態度‥。
サカマキを‥わが友を何だと思っているんだ‥。
「そんなわけで、高位魔法使いは人々から無条件に嫌われている。‥というか、恐れられている。
ただでさえそうなのに、‥サカマキはさらに『世界の災厄』と言われる程の高位魔法使いだ。今世の魔物の討伐を一人に任された今世でたった一人の高位魔法使い‥。サカマキが魔法でもって魔物を倒せば倒すほど‥、サカマキの魔法がいかに特別かということが世間に知れ、‥人々は、サカマキを恐れる。
サカマキの魔法に対する恐怖と、魔物に対する恐怖。サカマキの存在に、この世に確かに魔物がいるという事実を思い知らされる。サカマキの強さはすなわち魔物の強さだ‥。
‥この頃は、魔物の存在イコールサカマキと考えている者すらいる‥」
サカマキはなにも悪くない。
‥神による人心操作により
サカマキは無条件に嫌われる。
そして、一度嫌いと思った人間は、嫌いな人間に対して容赦がない。
更に「嫌い」が上乗せされる。
サカマキが、人類の為にその身を削って戦っていたとしても‥。
サカマキが人々に受け入れられることは、絶対にない。
それが、サカマキの運命だというのだ。
「酷いな‥」
「ああ」
‥しかも(ついてないことに)、サカマキの(勝つためには手段を選ばない)魔法は特別に質(たち)が悪くて、お世辞でも『正義の味方』って感じはしないしな。
は、今は言わないでおこう。
‥そういえば、我は、サカマキを見た時「生理的に嫌」だとは思わなかったな。‥偶にはそんな人間もいるのかな。アララキだってそうだし、カツラギもそうだ。
我が首を傾げていると、カツラギが
「それでも趣味嗜好ってやつはある。世間一般的には嫌われてるけど、俺は好きって奴もいる‥ってやつじゃないですか?
猫と一緒ですよ。
猫は犬ほど人気はない。力は犬に劣るし、気まぐれだし、従順じゃない。犬の方が従順だし、力もある。なのに、なんでわざわざ‥って犬好きには思われますが‥、(←注) あくまでも、カツラギたちの国の人たちの感覚です)猫好きだって希にはいる‥。
ああ、猫(小型)とサカマキって‥研究が進んでないから、どういうふうに次世代に影響が出るかわからないから交配はさせない‥ってとこが似てますね
ってちょっと笑った。
‥別に面白くもないが‥。
世間一般には嫌われてるけど、‥好きっていう人もいる。
‥そんな人間がもっと増えて、‥サカマキたちが、少しは暮らしやすい世界になればいいのにな、と祈らずにはいられなかった。(アララキなら「ライバルが少ないほうがいい」って言うかもしれなけどな)
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