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一章 世界の均衡は崩れ、魔物があふれた。だけど、‥これ以上均衡が崩れようとも俺は、友を死なせたくはなかった。
1.似た者同士。
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Happy nationを神様がこの世に作り出した時、神様は、生命の種が育つように水と空気そして‥生命の種をまいた。だけど、それは無垢なる魂ではなかった。知能と欲望を持った魂だった。
周りの環境を享受して、不便を「そのようなもの」と甘受し、その上で努力によって生活の改善を図るのであれば、永久に死滅しないだけの生命力をも同時に与えた。
だが、一度、自分の欲望のために人を呪い、人を羨み、人のものを奪えば、世界は一転して牙をむき、彼を襲う。
‥そういう悪意から生まれたが、魔物だった。
世界を呪い力を得ようと望んだ者たちは魔物になり、魔物に大事な人を奪わたと魔物を呪うものは、‥魔物に対抗しうる力をその意思と愛情‥情熱でもって手に入れた。それが、魔法となった。
魔法があるから、魔物がいる。
その証拠に、魔法がない「地球」に魔物はいない。
魔法こそが、諸悪の根源…。
現在まことしやかに語られていることだが、実際は反対なのだ。
魔物がいるから、魔法が出来た。
過ぎたる力には、それを滅し、‥抑制する力が生まれる。
増えすぎた魔物を減らすためにだけ、俺は生かされている。魔法の象徴として…高位魔法使いである俺はこの世に送られた。
魔物は怖いそして、それを沈める俺もまた怖い。
魔物を恐れる人々は、俺をもまた恐れる。
人は、俺を…今までこの世に送られた全ての高位魔法使いを…世界の災悪と呼んだ。
高位魔法使いは世界の災悪である。
だから、…魔物が生まれるのも世界の災悪が生まれたせいだ…。
あの「誤解」はこういうわけでできた。
だけど、俺は否定なんてしない。
しても、…俺の話なんて誰も聞いてすらくれないんだから。
世界の災厄である俺を認めてくれて、傍に居てくれたのは、幼馴染であるアララキとカツラギ、フミカだけだった。
だけど、‥彼らは皆、一歩間違えれば、俺と同じようにこの世界に身の置きどころのなくなるような、稀有な才能の持ち主ばかりで、‥俺たちが集まるのは、お互いにお互いを牽制するという意識を‥自分では気付かぬまま‥無意識に持っていたのかもしれない。
元々は…だ。今はそんなこと思っていない。
唯一大事な友人だって、心から言える。
フミカは、人型の女だ。
稀有なる戦のセンスと、度胸。スタミナ。‥その総てにおいて、彼女は他の追従を許さなかった。
軽くウエーブしている金茶の艶のある長い美しい髪を無造作に背中に流し、同色の長い睫毛に縁どられた大きな若草色の瞳はまるで宝石の様‥まるで初秋の様な暖かな外見は、しかし、一度戦となると、血に飢えた獣の様に‥鮮やかに軽やかにそして、獰猛に戦場を駆けた。彼女の血に染まった拳、歓喜の為にバラ色に染まった頬、ギラギラと血に飢えた瞳、軽く微笑みを浮かべた口元、振り乱された髪。どこか、恍惚とした表情は、‥恐ろしく、そして純粋で‥美しかった。
彼女は美しい獣の様だった。
故に、彼女は味方からは、「癒しの戦神」。敵からは、「戦場の鬼姫」と呼ばれた。
カツラギは、予知の賢人で、プラチナブロンズとタンザナイトの瞳の麗人だ。
見る者に羞恥を抱かせる程の美貌と、その美しく、泉の様に透明なタンザナイトの瞳は、まるで心の内をすべて見通されるような‥恐ろしさと不安感を対面する者に与えた。
心の弱い者、‥心にやましいことがある者は、彼と目を合わせることすらしなくなった。
人は、強くない。
そのうえ、カツラギは、酷く人付き合いが不器用で、‥言葉が足りなかった。
生れながらの天才で、また、努力も厭わない努力家であった彼は、‥ちょっと、他人の心を慮るとかいった能力に乏しかった。で、‥歯に衣着せぬ言い方をしては、喧嘩になることも多かった。もっとも、喧嘩になるというより、良くてカツラギに論破される‥悪い場合だと、一方的に吠えて、カツラギに鼻で笑われて終わりだ。
‥そして、そのうち、誰もカツラギと一緒にいる者はいなくなった。
彼の幼馴染たちを除いて、だ。
だけど、定めに従い王になったアララキと共に王城で働くことになった彼は、‥都会の恐ろしさを知った。
正常じゃない性癖とか‥知りたくなかった。
「その冷たい視線、たまらない‥! 」
と、恍惚とした視線を向けて来る変態。
歯に衣着せぬ物言いをするカツラギに
「言葉攻め‥ごちそうさまです‥! 」
と、恍惚とした視線を向けて来る変態。
しかし、
‥自分に実害がないならいいか。
と彼は気にしなかった。
そして、その変態たちは、彼がどんなに冷たい目を向けても、キツイ言葉を言ってもへこたれなかったため、その内、彼の部下になった。(彼の言うところの一般の部下)。彼の腹心の部下は、『アカデミア』在学中に発想の柔軟さに惚れこんで友人になった、後の親友で、その後スカウトして王都に呼んだ。(で、現在は日常的にセクハラされている)‥カツラギの部下の中で唯一まともな人材。(精神力凄いな)
‥カツラギの部下が全員カツラギ信者で変態なのはそのせいだ。
世界の災厄(サカマキ)を最も(一方的に)愛し、その心を守って、見守っていたのは、この国の王であるアララキだった。
普段の彼は、冷静沈着であり、眉目秀麗、質実剛健な優れた王であったが、幼馴染たち4人といるときだけは、昔と変わらず打ち解けた態度で接していた。傍に遣える大臣たちも、他の3人が共に国の最高権力を有している実力者であったこともあったであろうが、「これ位は」と承認している。‥だけど、王がいかにサカマキを溺愛して、彼を見るアララキの表情がどんなにとろっとろなのかまでは、流石に知らないようだ。(知ったら、流石にドン引きするだろう)
長身でバランスの取れた恵まれた体格。黒髪、黒目でチョイたれ目のお色気過多の麗人。見つめられたらそのまま卒倒する者多数の彼の美貌は、しかしサカマキには特に有効ではない様だ。幼馴染からも冷たい目で見られる溺愛行為(フミカ曰く、溺愛行為というより変態‥)はいつもスルーされている。
戦闘力、知識量、魔法‥総てに置いて、標準より高水準でバランスもいいが、‥突出している才能はない。そして、彼自身そのことを自覚しているし、自分の役割も理解している。
残り三人の、サポート。
三人も、口には出さないが、アララキの存在を心強く思っている。
そして、世界の災厄たる、サカマキ。
彼の見かけは、人型である時はアッシュブラウンのサラサラの肩に届かない位の長髪、微妙な挽き茶色の切れ長の瞳、象牙色の肌の青年姿。すらりとした長身と涼し気な目元、優し気な雰囲気の「見かけだけでは絶対そうは見えない」人物。
人型であるときは、である。
そう、‥彼は、完全人型ではない。
彼の本性(?)は、モフモフの神獣である。
上空を自由に舞う大きな逞しい真っ白な翼をもつ巨大で美しい獣、足は細くしなやかで、爪は鋭く力強い‥。赤い目はルビーの様に強い光を讃え、鋭く美しい。(因みに、人間も二人位ならのせられるらしく、カツラギがタクシー代わりに使っている他、アララキが「気分転換に乗せて」と頼んでくる。(←サカマキには言っていないが、アララキ的に『空中デート』らしい)
と、アララキ大絶賛の姿なのだが、後にその姿を見た地球人が
「‥巨大な鶏‥!!!! (しかも飛んでる!! )」
と言っていた。
なんだ? 鶏?
地球に来て二日で、地球の動植物も調べつくしたカツラギ(現:牧野 翔)が大爆笑していたから、‥あんまり地球的に「カッコイイ!! 」って獣でもないのだろう。‥何か嫌だ。(アララキ、サカマキ談)
多くの魔物に均衡するために、サカマキが生まれたという…どう考えてもサカマキ様々な誕生秘話で、サカマキ自身は「世界の災厄」と呼ばれる様な悪事を働くわけでは全くない。
サカマキは、自分の潤沢な魔力を奢ることもしないし、隠したりもしない。また、自分の呪われた境遇を恨みも、嘆き悲しみもしない。ただ、事実として認めている。事実だけとらえている。自分の能力の把握を怠らず、潤沢な魔力を使用して、魔法の研究に日々勤しんでいる(ただし、自分の趣味と知的好奇心を満足させるためであって、人々に有効活用しようとか殊勝なことを思っているわけではない)ただ、魔物を全滅させるのは自分の使命であるということは高位魔法使いになったあの日、魂に「分からされた」
正義感はないが、責任感はある。
それだけ。
サカマキの生活は、ともすれば、王都の外の魔法使いたちより地味で、慎ましいものだった。
だけど‥魔物はそんな事情はどうでもいいし、世間もサカマキの事を理解する気なんてまるでない。
魔物は、世界を覆いつくし、そしてその制圧には、サカマキが先頭に立たされた。
まるで、自分のしたことの責任を取れというかのように、だ。
そして、その彼の傍らには、彼の友達が常にいた。まるで当たり前の様に、だ。
お互い何も言わない。
「戦うの大好き♡♡」
って‥フミカがいうのは、でも‥本心だろう。
ディスクワークとか無理だし、平和な王都に居ても、身体が訛るばかり、って彼女はいつもぼやいている。
「私がいないと二人ともブレーキの利かない暴走車でしょう? 」
って呆れ顔をするのは、カツラギだ。
戦狂のフミカと同様に、サカマキは魔術狂だ。
ありとあらゆる、‥鬼畜な魔術を使う。結構、嬉々として、だ。
だけど、スタミナはあんまりない。
魔力はあるが、体力がない。
魔力切れは起こしたことはないが、‥スタミナ切れで倒れそうになり、その都度「HPポーション」的なものを呆れた顔して飲ませるのは、「オカン」なカツラギだ。(アララキがいるときは、アララキが嬉々として飲ませている)。
王であるアララキも時々戦場に出向く。
絶対に安心だという信頼感を仲間に持っていたし、絶対にダメな時は、‥予知の賢人(カツラギ)が止めた。
今回、カツラギはアララキが行くと言ったことに了承しなかった。理由も何も言わなかった。ただ、「ダメだ」とだけ。そして
「…サカマキは守る」
と言い残して、戦に向かった。
‥嫌な予感がした。
カツラギの様に予知能力なんてないけど、だ。
だから‥。
「‥行くな! どうしてもっていうんだったら、僕も連れていけ! 」
その3人の背中に声が張り裂ける程さけんだが、アララキの忠臣‥そして、三人にアララキを任された王都に残る部下はアララキの両腕を掴んで止め、‥決して離そうとはしなかった。
周りの環境を享受して、不便を「そのようなもの」と甘受し、その上で努力によって生活の改善を図るのであれば、永久に死滅しないだけの生命力をも同時に与えた。
だが、一度、自分の欲望のために人を呪い、人を羨み、人のものを奪えば、世界は一転して牙をむき、彼を襲う。
‥そういう悪意から生まれたが、魔物だった。
世界を呪い力を得ようと望んだ者たちは魔物になり、魔物に大事な人を奪わたと魔物を呪うものは、‥魔物に対抗しうる力をその意思と愛情‥情熱でもって手に入れた。それが、魔法となった。
魔法があるから、魔物がいる。
その証拠に、魔法がない「地球」に魔物はいない。
魔法こそが、諸悪の根源…。
現在まことしやかに語られていることだが、実際は反対なのだ。
魔物がいるから、魔法が出来た。
過ぎたる力には、それを滅し、‥抑制する力が生まれる。
増えすぎた魔物を減らすためにだけ、俺は生かされている。魔法の象徴として…高位魔法使いである俺はこの世に送られた。
魔物は怖いそして、それを沈める俺もまた怖い。
魔物を恐れる人々は、俺をもまた恐れる。
人は、俺を…今までこの世に送られた全ての高位魔法使いを…世界の災悪と呼んだ。
高位魔法使いは世界の災悪である。
だから、…魔物が生まれるのも世界の災悪が生まれたせいだ…。
あの「誤解」はこういうわけでできた。
だけど、俺は否定なんてしない。
しても、…俺の話なんて誰も聞いてすらくれないんだから。
世界の災厄である俺を認めてくれて、傍に居てくれたのは、幼馴染であるアララキとカツラギ、フミカだけだった。
だけど、‥彼らは皆、一歩間違えれば、俺と同じようにこの世界に身の置きどころのなくなるような、稀有な才能の持ち主ばかりで、‥俺たちが集まるのは、お互いにお互いを牽制するという意識を‥自分では気付かぬまま‥無意識に持っていたのかもしれない。
元々は…だ。今はそんなこと思っていない。
唯一大事な友人だって、心から言える。
フミカは、人型の女だ。
稀有なる戦のセンスと、度胸。スタミナ。‥その総てにおいて、彼女は他の追従を許さなかった。
軽くウエーブしている金茶の艶のある長い美しい髪を無造作に背中に流し、同色の長い睫毛に縁どられた大きな若草色の瞳はまるで宝石の様‥まるで初秋の様な暖かな外見は、しかし、一度戦となると、血に飢えた獣の様に‥鮮やかに軽やかにそして、獰猛に戦場を駆けた。彼女の血に染まった拳、歓喜の為にバラ色に染まった頬、ギラギラと血に飢えた瞳、軽く微笑みを浮かべた口元、振り乱された髪。どこか、恍惚とした表情は、‥恐ろしく、そして純粋で‥美しかった。
彼女は美しい獣の様だった。
故に、彼女は味方からは、「癒しの戦神」。敵からは、「戦場の鬼姫」と呼ばれた。
カツラギは、予知の賢人で、プラチナブロンズとタンザナイトの瞳の麗人だ。
見る者に羞恥を抱かせる程の美貌と、その美しく、泉の様に透明なタンザナイトの瞳は、まるで心の内をすべて見通されるような‥恐ろしさと不安感を対面する者に与えた。
心の弱い者、‥心にやましいことがある者は、彼と目を合わせることすらしなくなった。
人は、強くない。
そのうえ、カツラギは、酷く人付き合いが不器用で、‥言葉が足りなかった。
生れながらの天才で、また、努力も厭わない努力家であった彼は、‥ちょっと、他人の心を慮るとかいった能力に乏しかった。で、‥歯に衣着せぬ言い方をしては、喧嘩になることも多かった。もっとも、喧嘩になるというより、良くてカツラギに論破される‥悪い場合だと、一方的に吠えて、カツラギに鼻で笑われて終わりだ。
‥そして、そのうち、誰もカツラギと一緒にいる者はいなくなった。
彼の幼馴染たちを除いて、だ。
だけど、定めに従い王になったアララキと共に王城で働くことになった彼は、‥都会の恐ろしさを知った。
正常じゃない性癖とか‥知りたくなかった。
「その冷たい視線、たまらない‥! 」
と、恍惚とした視線を向けて来る変態。
歯に衣着せぬ物言いをするカツラギに
「言葉攻め‥ごちそうさまです‥! 」
と、恍惚とした視線を向けて来る変態。
しかし、
‥自分に実害がないならいいか。
と彼は気にしなかった。
そして、その変態たちは、彼がどんなに冷たい目を向けても、キツイ言葉を言ってもへこたれなかったため、その内、彼の部下になった。(彼の言うところの一般の部下)。彼の腹心の部下は、『アカデミア』在学中に発想の柔軟さに惚れこんで友人になった、後の親友で、その後スカウトして王都に呼んだ。(で、現在は日常的にセクハラされている)‥カツラギの部下の中で唯一まともな人材。(精神力凄いな)
‥カツラギの部下が全員カツラギ信者で変態なのはそのせいだ。
世界の災厄(サカマキ)を最も(一方的に)愛し、その心を守って、見守っていたのは、この国の王であるアララキだった。
普段の彼は、冷静沈着であり、眉目秀麗、質実剛健な優れた王であったが、幼馴染たち4人といるときだけは、昔と変わらず打ち解けた態度で接していた。傍に遣える大臣たちも、他の3人が共に国の最高権力を有している実力者であったこともあったであろうが、「これ位は」と承認している。‥だけど、王がいかにサカマキを溺愛して、彼を見るアララキの表情がどんなにとろっとろなのかまでは、流石に知らないようだ。(知ったら、流石にドン引きするだろう)
長身でバランスの取れた恵まれた体格。黒髪、黒目でチョイたれ目のお色気過多の麗人。見つめられたらそのまま卒倒する者多数の彼の美貌は、しかしサカマキには特に有効ではない様だ。幼馴染からも冷たい目で見られる溺愛行為(フミカ曰く、溺愛行為というより変態‥)はいつもスルーされている。
戦闘力、知識量、魔法‥総てに置いて、標準より高水準でバランスもいいが、‥突出している才能はない。そして、彼自身そのことを自覚しているし、自分の役割も理解している。
残り三人の、サポート。
三人も、口には出さないが、アララキの存在を心強く思っている。
そして、世界の災厄たる、サカマキ。
彼の見かけは、人型である時はアッシュブラウンのサラサラの肩に届かない位の長髪、微妙な挽き茶色の切れ長の瞳、象牙色の肌の青年姿。すらりとした長身と涼し気な目元、優し気な雰囲気の「見かけだけでは絶対そうは見えない」人物。
人型であるときは、である。
そう、‥彼は、完全人型ではない。
彼の本性(?)は、モフモフの神獣である。
上空を自由に舞う大きな逞しい真っ白な翼をもつ巨大で美しい獣、足は細くしなやかで、爪は鋭く力強い‥。赤い目はルビーの様に強い光を讃え、鋭く美しい。(因みに、人間も二人位ならのせられるらしく、カツラギがタクシー代わりに使っている他、アララキが「気分転換に乗せて」と頼んでくる。(←サカマキには言っていないが、アララキ的に『空中デート』らしい)
と、アララキ大絶賛の姿なのだが、後にその姿を見た地球人が
「‥巨大な鶏‥!!!! (しかも飛んでる!! )」
と言っていた。
なんだ? 鶏?
地球に来て二日で、地球の動植物も調べつくしたカツラギ(現:牧野 翔)が大爆笑していたから、‥あんまり地球的に「カッコイイ!! 」って獣でもないのだろう。‥何か嫌だ。(アララキ、サカマキ談)
多くの魔物に均衡するために、サカマキが生まれたという…どう考えてもサカマキ様々な誕生秘話で、サカマキ自身は「世界の災厄」と呼ばれる様な悪事を働くわけでは全くない。
サカマキは、自分の潤沢な魔力を奢ることもしないし、隠したりもしない。また、自分の呪われた境遇を恨みも、嘆き悲しみもしない。ただ、事実として認めている。事実だけとらえている。自分の能力の把握を怠らず、潤沢な魔力を使用して、魔法の研究に日々勤しんでいる(ただし、自分の趣味と知的好奇心を満足させるためであって、人々に有効活用しようとか殊勝なことを思っているわけではない)ただ、魔物を全滅させるのは自分の使命であるということは高位魔法使いになったあの日、魂に「分からされた」
正義感はないが、責任感はある。
それだけ。
サカマキの生活は、ともすれば、王都の外の魔法使いたちより地味で、慎ましいものだった。
だけど‥魔物はそんな事情はどうでもいいし、世間もサカマキの事を理解する気なんてまるでない。
魔物は、世界を覆いつくし、そしてその制圧には、サカマキが先頭に立たされた。
まるで、自分のしたことの責任を取れというかのように、だ。
そして、その彼の傍らには、彼の友達が常にいた。まるで当たり前の様に、だ。
お互い何も言わない。
「戦うの大好き♡♡」
って‥フミカがいうのは、でも‥本心だろう。
ディスクワークとか無理だし、平和な王都に居ても、身体が訛るばかり、って彼女はいつもぼやいている。
「私がいないと二人ともブレーキの利かない暴走車でしょう? 」
って呆れ顔をするのは、カツラギだ。
戦狂のフミカと同様に、サカマキは魔術狂だ。
ありとあらゆる、‥鬼畜な魔術を使う。結構、嬉々として、だ。
だけど、スタミナはあんまりない。
魔力はあるが、体力がない。
魔力切れは起こしたことはないが、‥スタミナ切れで倒れそうになり、その都度「HPポーション」的なものを呆れた顔して飲ませるのは、「オカン」なカツラギだ。(アララキがいるときは、アララキが嬉々として飲ませている)。
王であるアララキも時々戦場に出向く。
絶対に安心だという信頼感を仲間に持っていたし、絶対にダメな時は、‥予知の賢人(カツラギ)が止めた。
今回、カツラギはアララキが行くと言ったことに了承しなかった。理由も何も言わなかった。ただ、「ダメだ」とだけ。そして
「…サカマキは守る」
と言い残して、戦に向かった。
‥嫌な予感がした。
カツラギの様に予知能力なんてないけど、だ。
だから‥。
「‥行くな! どうしてもっていうんだったら、僕も連れていけ! 」
その3人の背中に声が張り裂ける程さけんだが、アララキの忠臣‥そして、三人にアララキを任された王都に残る部下はアララキの両腕を掴んで止め、‥決して離そうとはしなかった。
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