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36.運命ってのは向こうから来る‥こともあるらしい。(side 俊哉)

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 あれから、王子様は「もう「特別な乙女」は探さないで」って秘宝館のスタッフにお願いしたらしい。その理由について王子様は
「だって、お城で働いている様な普通の人(スタッフ)には(特別な乙女かどうかなんて)分からないでしょ? 」
 って言った。
「不幸な女の子が増えるのは良くない」
 とも。
 無理やりは‥確かに良くないよね。
 だけど、秘宝館に行けば「自分の特殊な(この世界では)趣味」にヒットする相手に会えるかも! って女の子が働きに来ることもあるかも。だって、こんなに秘宝館の認知度が上がってきたんだから。
 って‥なんとなく考えてたら‥
「私、ここで働きたいんです! 」
 って女の子が来たらしい。(ホントに! )
 それも、一人じゃない。
 その話は、夢の中であの子に聞いたんだ。
「秘宝館とか馬鹿なもの作ったわ~って思ってたけど、‥まあ、よかったのかな」
 ってあの子は苦笑いしてた。
 志願者たちは全員平民の子だっていってた。
 平民の子は今まで居なかったわけでもなかった。なぜって、やっぱりお金がもらえるから。親が無理やり「この子‥そうみたいで」って連れて来るの。身売り‥人身売買だよね。どうだろ。お金とか払われるのかな? ‥でも、払われなくても口減らしとかなのかな? だけど、実はそういうのは稀で、大半は貴族の子女の親が「娘を王妃にするぞ」って感じで推薦してた感じだったという。
 だけど、今回ここに来た子たちは違う。
 王子様と結婚できるかも、とかじゃなく、初めから秘宝館で働きたくて‥就職希望で来た子たちだ。
 一応口実は
「国を支える立派な騎士様に憧れて、そんな人たちのひと時の安らぎになれたらなって思って‥」
 って言ってるけど、ちらっと表情を見たところ「それだけじゃないな」って感じた。
 アレだ。地球における「アイドルを見る顔」。あと‥肉食系の女子って感じ。「イケメンと話せてちやほやされて大事に扱われて、更にお金貰えるとか! なにその天職! 」って顔。‥そういう子もいてもいいって思う。恋に積極的なのは、いいことだって思う。
 そう、その子の「好みの問題」なんだ。だけど、この子たちはこの国においては「ゲテモノ食い」って扱いになるんだろう。「趣味悪い子」って思われるんだろう。親からは「親不孝者」って言われるかもしれない。‥この国の美醜に対する差別は‥酷い。
 それはともあれ「かっこいい! 」って目がハートになってる女の子たちは可愛くって、なんだかほっこりしたよ。蔑むような、嫌なものを見る様な女の子の視線って‥ホントに怖い。そんな視線を今まで多く向けられてきた者として、あんな思いを王子様にはもうさせたくない。
 王子様には幸せになって欲しい。

 
 僕は今、秘宝館の面接のお手伝をしている。
 僕に何か出来ることはないかなって王子様に聞いたら「特別な乙女」の面接を手伝って欲しいって言われたんだ。
 今までみたいにスカウトしてきた子、入りたいって志願してきた子全員と(王子が)会うのは‥お互いにとって良くないからって。それを聞いて凄く辛くなったよ。「数うちゃ当たる」じゃないんだからさ‥って。だけど、王子様の周りの人だって、別に悪気があってそれをしていたわけでは無い‥って王子様は言った。「だって、‥彼らには誰が本物か偽物か分からないんだもん」って。それに「その気持ちが嬉しいじゃない」って。
 確かに‥。彼らがそれっ位王子様のことを大事に思ってくれてる。‥その気持ちは嬉しい。
 それを「いらんことして」とは言えないよね? 
 僕は勿論二つ返事で承知したよ。特別な乙女を僕の足で探しにいく覚悟をしてたから、正直「それでいいの? 」って思ったくらい。
 そのことをクラシルさんに話すと、
「‥俊哉に嫌な思いをさせたくないからホントは大勢の人の前に出したくない」
 って苦しそうな顔をさせてしまった。
 クラシルさんは僕のことがホントに心配なんだって‥そんなクラシルさんを心配させるようなこと言って‥って心が痛んだ。
 だけど‥って引かなかった僕に、
「でも、俊哉がしたいことをしたらいい」
 って最終的には認めてくれた。
「だけど、ローブを脱ぐのは禁止だ。ローブを脱ぐことを強いて来るような奴がいたら、俺が容赦しないってことは‥伝えさせてくれ」
 って言ったクラシルさんはその足で面接官の人たちに会って、凄んでた。
 面接官の人たちはそんなクラシルさんの様子に驚いてたけど、
「お顔を隠したいっていう俊哉さんの‥王子様のご友人の気持ちは尊重します。決して、そういうことで嫌な思いはさせたりしないと約束します」
 って言ってくれた。
 クラシルさんは相手の顔をじっと見て、小さく頷いた。

 ローブを脱がさないこと。
 秘宝館には毎日クラシルさんが送り迎えをすること。

 これが僕がお手伝いをする際の約束事項だって念を押した。あと、クラシルさんは僕に
 秘宝館の中をうろうろしないこと。
 って念を押した。
「花姫だと勘違いする奴がいたら困るから」
 って‥クラシルさんは心配性だ。
「クラシルさんは過保護だな~」
 ってちょっと笑っちゃった。でも、「愛されてるな~」って思えて‥嬉しかった。
 後日その時のことを、
「騎士団長様に逆らうとか‥無理ですよ」「あの時はホント怖かった」
 ってすっかり仲良くなった面接官の人たちから聞いた時にもちょっと笑ってしまった。
 仲良くなっても、相変わらず、ローブは被ったままです。お昼ご飯のお弁当は、お昼休みに抜けて来たクラシルさんと食べるんだ! 
 同じお弁当を一緒に食べるのって凄く嬉しいね! 
 ローブを脱がないと食事が出来ない‥とかじゃないけど、クラシルさんが「何かのはずみで脱げたら困るから」って‥。クラシルさんはホント心配性だ。
 心配しなくても、僕がローブを脱ぐのはクラシルさんの前だけだよ! お互いにとってその関係が一番いいんだから、それを崩したりしませんよ!

 さて、お手伝いが始まったわけだけど‥手伝うと言っても‥直接僕が志願者の面接するわけでは無い。お城の人たちが面接している様子を別室で見るんだ。その人たちも、前回の有力貴族の関係者‥とかじゃなくって、ホントに王子様の心配して‥大事に思ってる人たちに変わったんだ。
 城の人が書類に目を通して、実際に会って‥「この子は、王子様と合いそうかな? 」とか厳しくチェックするんだって。僕の仕事はそんな様子を別室で見ること。ダブルチェックって奴だね! その話を面接官の人に事前に聞いた時「王子様は大事にされてるんだな」って嬉しく思ったよ。
 そんな人たちだから、僕が出て来る幕はない‥って思ってたけど、そうでもないみたい。
「私たちは‥たくさんの人は見てきました。政治的に
 ホントに、自分も騙すレベルで‥自分でも気づかないレベルで勘違いしてる子‥分かりにくい子ってのはいる。
 頭で「自分は皆とは違う」って‥暗示をかけちゃって、実際にそう思い込んでる子。だけど、実際には「この子は頭でそう思ってるだけだな」ってのは‥なんかね、会ったら分かるんだ。
 そうだな‥「自分は聖人でなければいけない」って思い込んでる子。親から「そうであれ」って過度な期待をかけられて大きくなった子。そういう子は一見「凄いイイ子」って見えるけど‥見る人が見たら‥大概は同族がみたら‥わかるって言うね? そういうの。
 だけど、こういう子たちはただの被害者で、ホントに悪い子じゃない。(「本物」でもないんだけどね)
 そういう子とは違って、自分の意志で「そう見えるように」演技してる子もいる。‥それも、「アカデミー賞レベル? 」って位凄い子。きっと、こういう子は好きでもない人にも「好きです」って‥ホントにナチュラルに言えるんだろう。絶対、嘘だって分からないレベルの演技で。
 だけど、今までそういう子をいっぱい見てきて、‥いっぱいそういう子に傷付けられてきた僕にはわかる。‥本能的に「あ、この子、違う」って分かる。
 踏んできた場数が違う。(言ってて悲しくなるな)
 王子様と僕はその点よく似ている。

 ‥よくあることだけど、慣れてるけど‥別に傷つかないわけではない。嫌なもんは嫌だ。

 それで、僕らが厳選にチェックして、ホントにこの子は「本物」(特別な乙女)って判明した子だけ、王子様とそれとなく出会わせる。
 なんで「それとなく」なのかっていうのは‥
「王子としてじゃなく、一人の人間として会いたい」
 って王子様が言ったからだ。
 (今までは、王子様と謁見って感じだったらしい)
 自分が王子だからじゃなくって、ホントに好き合った相手と結婚したいって恥ずかしそうに希望を語った王子様の顔が嬉しそうで‥ホントに変わったんだなって思った。
 そんな彼を見てたら友達として、ホントに嬉しくなったよ。

 この世界にも好みが違う人が「ある程度」いるって知れたのは単純に嬉しかった。
 そのことはあの子(神様ね)も把握出来てなかったらしくって
「結構いるものなのねぇ」
 って驚いてた。
「昔もね、確かに結婚までには至らなかったけど、恋愛関係になる子たちはいたものね」
 とも。
 恋愛と結婚は違うから‥好きだけで結婚は出来ない(周りの偏見だとか、給料だとかね)。だけど、今後は王子様が大きな子の地位や給料(労働に似合った報酬)も上げてくれるっていってたから‥少しは変わっていくんじゃないかなって思うんだ。
 そのうち、差別がなくなっていったらいいなって思った。

 異世界から来たら美醜逆転で自分的には美形なイケメンがイケメンとは認識されてなくって、逆に元の世界ではフツメンもしくはイケてない自分がモテモテで‥そういうのに憧れが無かったわけでは無い。
 だけど、そんなんじゃなかったけど‥僕は僕的にイケメンで優しい恋人が出来た。
 誰かの評価なんて‥もうどうでもいい。
 そんな風に思えるようになった毎日が、今は凄く幸せなんだ。



 これで、本編は一応終了です。
 最後まで読んでいただきありがとうございました!
 この後、クラシル目線の話何本かと、修斗と俊哉の話、クラシルと俊哉のその後‥みたいな感じの話を書きたいなって思ってます。こちらもよろしければ読んでいただけたら嬉しいです!

 大好きな美醜逆転ものにチャレンジって思ったんだけど‥なかなか思ったようにはいかなかった。
 おかしい‥もうちょっと軽い感じの面白い話が書きたかったのに‥。
 今後またチャレンジしてみたいな、なんて思ってます。
 もしよろしければお付き合いください! 
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感想 3

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みんなの感想(3件)

朝倉真琴
2023.04.30 朝倉真琴

おお!兄が巻き込まれて絆されendと思っていたので、王子さまの人としての魅力の高さ?を感じることができました。是非幸せになれるお相手と巡り会えますように🛐✨。そしてどんどん差別が減っていきますように。

素敵な作品をありがとうございました。

文月
2023.05.01 文月

感想有難うございます! 
何とか私的なhappyendを迎えることが出来ました! 

王子にも何とか幸せになって欲しいなって思いながら‥番外編頑張ります!
よろしければもう少しお付き合いください!

解除
コウ
2023.04.06 コウ

美醜逆転ものが大好きで
いつも楽しく読ませてもらっています!

今回の話に出てきた王子様にも
幸せになって欲しいなぁと思うのですが
主人公総受けとかにはなることないのですかね?

すいません💧
少し気になったので質問させていただきました。🙇

文月
2023.04.06 文月

感想有難うございます! 
ネタバレになる(?)ので詳しくは言えませんが‥

主人公総受けとかにはなりません!
安心してください!

最終的には皆それぞれ幸せって道を用意していけたらな、って思ってます。

これからもよろしくお願いしたします! m(__)m

解除
juuun
2023.04.01 juuun

俊哉くんが健気で可愛いです!
美醜逆転BLはあまり多くないのでとても楽しく読ませて頂いています。
俊哉くんの過去や心情の描写がリアルで分かりやすく、凄く考えさせられました。
家族は悪い人ではないのだろうけど、根本的な部分で俊哉の気持ちは理解できないんだろうなーとか。
兄達の言う『他人を気にしない』と言う生き方は美形だからこそ出来るんだよなーとか。
元の世界で苦労した分、今度は沢山愛されて幸せになってほしいです…!

少し気になったのは、内心描写でも「 」をよく使われているので、今実際声に出して喋っている台詞なのか俊哉の回想や頭で考えている中での台詞なのか一瞬考えてしまうことです。(すぐ後にある「と言っていた」などの文で判断はできるのですが…)
あくまで私個人が気になったというだけなのでご参考までに…。

文月
2023.04.03 文月

感想有難うございました! 
ご指摘も有難うございます! 成る程‥。これからは注意して改善していきます! 過去の分はおいおい‥。
先に、ストーリーを進めていきたいな、と思ってます。(すみません(-_-;))

俊哉の気持ちに寄り添っていただけて嬉しい‥。
今までの環境のせいで若干ひねくれちゃってる彼ですが、(だからこそ)他人の痛みが分かるのかなって思いながら‥押しつけがましくない優しさがクラシルに伝わったらなあって思ってます。
可愛さって、顔の良しあしだけじゃないですよね! 
俊哉もクラシルも、今後は彼らなりに幸せにできたらな、って思います。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです!

解除

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