この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

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31.共通点は俊哉(side 修斗)

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 好みとか言う問題じゃなくて、生理的に‥物理的に無理‥
 例えばアレルギー‥みたいな?
 嫌いとか言う問題じゃなくて、これ食べたら下手したら、死ぬの。
 ‥そういうレベル??
 まさか‥。
 俺は大いに困惑だ。

 ありえねーって思うけど、ここは異世界みたいだから‥そういうこともあるのやもしれん。

「大丈夫ですか? 」
 頭をひねる俺を心配したのか、美人が心配そうに声をかける。
 遠い。距離が。
 よくある「大丈夫? 」は相手の顔を覗き込みながら‥が一般的じゃない? だって、相手の表情が大丈夫かどうかを見ながら聞くわけだから。‥だけど、この人はそんなことしない。俺を心配してないんじゃない。心配してるから、自分の顔を見せない様に遠くから様子をうかがっているんだ。
 その優しさに感動して、同時にその気遣いに心が痛んだ。
「俺は大丈夫」
 ただ、別の世界から来たもんだから、ちょっとこの世界のことを理解するのに戸惑ってただけ‥とは流石にいえない。言ったらいいんだろうけど流石にさらっと言うにはことが大きすぎるかな? 
「それより俺はあなたの手の方が気になります」
 痛そうな白魚の手をじっと見つめる。
「手? 」
 美人が首を傾げる。
「ええ。その手です」
 俺は、その手をそっと掴んで、持っていたハンドタオルで軽く拭いた。
 よかった、大きな怪我ではなさそうだ。ちょっとしたかすり傷程度で安心した。
「よかった。これなら二三日で消えますね」
 いつもの癖でにこっと微笑んだんだけど‥この世界で俺って不細工なんだよね。不細工が微笑んじゃ「キモ! やめろ」ってなるのかな。‥まあ、知ったこっちゃないけど。
 そう思ったら‥目の前の美人がちょっとはっとした様子を一瞬見せた。
「どうしましたか? やっぱり痛いですか? ‥ああ、バンドエイド持ってくれば良かったな。俊哉だったらいつでも持ってづんだけどな‥」
 ぽつっと呟くと
「俊哉? 」
 美人が顔を上げる。
「俊哉って‥あの‥え‥と、でも‥」
 ‥この人は、俊哉を知っている? 
 だけど、驚かない。‥それどころか、俺はピンと来たね。

 あの女神は俊哉がここに居るって言ってた。そして‥そのタイミングで俊哉を知っていそうな人物出現。
 そんなの絶対‥偶然とかじゃない。絶対、あの女神が俺とこの人を引き合わせたんじゃん。
 つまり、この人は、俊哉がどこにいるか知ってるってこと!
 テンション上がった俺は、つい
「あなたは俊哉のことを知っているんですか? 」
 ストレートに聞いてしまった。
 美人は目を見開いて、俺を見る。
 仮面で顔を覆っているけど、目は出してるからね。目は、見えるの。
「え? 」
 ‥目を見開いても、美人。ホント、仮面邪魔。いつか親しくなることがあったら、絶対俺の前だけでは仮面を外してもらおう。だって、この顔見れないの勿体ない。
 それは‥そうと、今は俊哉。
「もしかして‥」
 俺は話を切り出す。
「あなたは俺を俊哉と見間違えたんじゃないですか? それで‥つい周囲に対する注意がおろそかになって‥あの子とぶつかったと。‥間違ってたらすみません」
 美人が驚いた表情をして、こくりと頷いた。
 仮面越しでも表情って結構分かるんだな。‥目に表情が出るのかな? ‥ホント、勿体ない。
「分かります。‥俺と俊哉は背格好が似てるし、後ろから見たら雰囲気が似てるってよく言われるんです」
 俺が笑いながら言うと、美人が肩をすくめて頷く。
「そうなんです。貴方は‥俊哉の‥? 」
 俺は微笑んで
「兄です。俺は、修斗って言います」
 どさくさに紛れて自己紹介しちゃった♪
「お兄さんなんですね」
 ふわっと美人が微笑む。
「‥ホントに俊哉は実存する人間なんですね」
 ‥ん?
 ホントに俊哉は実存する人間?? 
 何それ。
 首を傾げる俺に、美人は
「場所を変えましょうか。ここでお話していたら、皆さんの通行の邪魔になりますし」
 って場所の移動を提案してくれた。それは尤もなことで俺に異論なんてあるわけはない。‥どころか、「じゃあ、お茶でもしながら話しませんか? 」とか‥デートに繋げる決まり文句じゃない? 感じのいいお洒落なカフェやなんかで甘い物食べたら話も弾むよね。‥そうなんだけど、勿論俺はそういう当てとか‥ここにはない。だって、数分前にここに来たばっかりなんだもん。
「俺はここの生まれじゃないから、ここに詳しくない」
 正直に言うと、美人は微笑んで
「じゃあ、私の家に行きましょうか」
 って言った。

 で

 ここは、美人の家らしい。
 家って言うか‥城か? って程大きい。
 ‥もしかして、ホントに城か? 
 それを考えるとちょっとガクブルするけど‥考えないことにする。
 王族に対する礼儀とか‥俺は知らない。
 この人はただの金持ち‥ただの金持ち‥。
 ってか‥金持ちのお嬢様‥いや、お坊ちゃまだったか。
 さっきの子「うちの坊っちゃんにぶつかっておいて無礼な! 」とかならないかな。‥いや、それどころかこの坊っちゃんお供も付けてないんだな‥。
 立派なソファーに所在なく座っていると、お坊ちゃまが手ずからお紅茶を淹れてくださいました。
 うわ~。似合う。
 ティーパックなんかじゃ勿論ない。ちゃんと茶葉から淹れた奴。しかも、適当なマグカップとかじゃない、ちゃんとした(きっと)カップ&ソーサー(お紅茶用)だ。
 割ったら‥きっと、俺は破産する。弁償とか絶対無理そうな感じの高級品。
 触るのすら躊躇している俺の前で、美人が実に上品な所作でカップを持って、それを口に運ぶ。
 あ、あの仮面、口のところもそういえば開いてる。凄いな下品な感じにならない仮面。絶対、地球で適当に作ったら犯罪者みたいになるぞ。(偏見)
「良かったら冷めないうちにお飲みください」
 ‥って勧められたら‥飲まないわけにはいかないじゃない? だって、きっとこの人「僕が淹れた紅茶とか嫌ですよね」とか気にするよ?
 覚悟を決めて飲んだ紅茶は‥凄く美味しかった。
 何? 紅茶ってこんなに香り豊かなの??
「美味しいです‥」
 しみじみ呟く。
 食レポみたいに「何、これウマ! 」とかじゃないよ。こんなお上品なものに、そんなコメントあるか。
「よかった」
 美人は嬉しそうに微笑んでくれた。

「修斗はホントに俊哉のお兄さんなんですね。‥さっき、目を細めて微笑んだ顔がホントにそっくりでした」
 嬉しそうに美人が言う。
「あなたは‥俊哉の‥? 」
 恋人って言われたらショックでソファーから落ちそうだけど‥でも、なんか違うって気がする。この人は‥なんとなく俊哉の「タイプ」じゃない気がする。
 年下より年上って気はでも、する。頼れる年上タイプとか好きそう。ってか、俊哉に合ってそう。‥別に俊哉は頼りなくないけど、頑張りすぎちゃうから。優しい年上タイプに「無理しないでね」って窘めて欲しい。この美人さん相手だと俊哉はずっと心配ばっかりしてそう。で、この美人さんも「俊哉に心配ばっかりかけて‥」って気にして‥お互い心配し合ってばっかりいるの。そういうカップルって、いないことはないだろうんだろうけど‥兄としては心配だ。
 俊哉には是非、「心配しないでも大丈夫」って肝っ玉母さんタイプを見つけて欲しい。(っていうか、肝っ玉母さんタイプに俊哉が見つけられるて感じかな)
 ‥そんなことよりも‥この人さっき変なこと言ってたよね。「‥ホントに俊哉は実存する人間なんですね」あれ、どう言う意味だろ? それをどう切り出そう‥って迷っていると、
「友達です。夢の中の。友達の‥夢の中でだけの友達の女の子が紹介してくれました」
 美人が自分から説明してくれた。
 ‥その子、絶対あの女神だろう。ったく、アイツは世話焼きババアか。
「俊哉とは夢の中でしか会ったことがなかったから、俊哉もきっとあの女の子同様、実際にはいない子なんだって思ってました。だけど‥修斗は俊哉のお兄さんなんですよね。俊哉も実際に生きている人間だって思うとて‥凄く嬉しいです。いつかは実際にも会ってみたいです」
 嬉しそうに話す美人に‥心が痛んだ。
 俊哉は俺の弟。それは間違いない。夢の中の人物だと思ったら、実存する、俊哉の兄である俺が目の前に現れた。‥なら、俊哉も実存するんだろう。‥無理のない理論だ。
 だけど‥実際は、俊哉は実存していたけど、今は死んでいる。
 でも‥この異世界では俊哉はもしかして生きているのかもしれない?
 だって、あの女神は「俊哉は幸せに暮らしている」って言ってた‥。

「‥実は、俺も俊哉とは最近会えていないんです。俺同様、俊哉は実は‥別の世界から来たんです」

 信じてもらえないかも‥って思いながら、俺は言った。

「俊哉に会うために、俺はこの世界に来たんです」
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