この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

文字の大きさ
上 下
24 / 36

24.僕をホントに「求めている」人

しおりを挟む
 僕は、勝手なことばっかり僕に要求するあの子に‥文句言って、「絶対無理! 」って伝えなきゃ! って思ったんだ。
 ‥でもね、伝えたらどうなる? って心配になった。
 伝えても無駄ならまだいいんだ。「え~? だって、丁度タイミングよくあっちの世界で俊哉が死んだから連れて来たんだけど? ‥嫌なら、帰る? 実は死んでなかったってことにして」とか言われたら最悪だ。
 あっちの世界に‥言っちゃなんだけどそんなに未練はない。
 ‥それよりなにより、クラシルさんのいるこの世界から‥僕は絶対に離れたくない。
 そんなことを心配してたら‥あの子がいつの間にか横に居て、クスクス笑ってた。
 草原のようなんだけど、草のにおいも感じられない空間だった。
 草が時々揺れるんだけど、風が吹いているわけでは無い。
 よくできた映像を見ているような‥そんな空間だった。
 
 ‥僕、いつの間にか寝ちゃってたんだ。
 さっきまで洗濯物を畳んでたのに‥。
 きっと、あの子が僕を「呼んだ」んだろう。

 ビクッとなった。
 僕は必死に起きよう‥夢から覚めようとしたけど、そういう方法ってあるんだろうか? また考え込んでいたら、あの子は
「俊哉ってホントに面白いわねぇ」
 って今度はお腹がよじれそうになる程大笑いした。
「失敗かあ。せっかく利害が一致したって思ったのに。
 ‥いくら私でも、要求がない所に無理に品物を届けるようなことは出来ないわ。
 というか、要求があれば多少の無理は通るの。‥私って正体は明かせないけど‥結構凄いのよ? 」
 って言う。
 正体は明かさないんだ「多分神様でしょ」って分かるけど‥そういえばこの子が名乗ったわけでは無い。
 僕と王子が勝手にそう予想しているだけなんだ。
 僕はあえてそのことには触れないことにして
「誰と誰の利害? 君と僕? 」
 って‥別に興味が無いけど聞くと、その子は
「え~? 私は関係ないわよ? 」
 って苦笑いした。
「私は関係ないの。
 王子の願いを叶えたかったの。王子はずっと一人で孤独だったから、‥あの子口では気にしてないって言いながら、ずっと誰かに愛されたいって思ってたの。‥それが可愛そうでね。
 だけど、この国でその相手を探すのは難しいかなって‥。それでたまたま別の世界を見てたら、俊哉を見つけたの。
 この子ならって思った。
 ‥でも、まさかこんなことになるとはねぇ。
 また探し直しってことになるわけだけど‥そういうわけには‥なかなかいかないのよね。
 ‥貴方が、クラシルと別れて王子と結婚してくれたらそれが一番いいんだけど‥そんなわけにはいかないでしょう? 」
 あの子がちょこんと首を傾げる。
 無邪気に「ダメ? 」って子供がもう一つお菓子をねだる位に‥軽い口調でだ。
「ならないよ! 」
 僕はちょっと食い気味に断った。
 何を言ってるんだ! 
 思ってる以上に僕は怒ったらしい。自分の声が自分が思ったよりもキツクって、ちょっと驚いた。
 あの子は苦笑いして
「定員があるとかじゃないけど、誰でも彼でも呼ぶわけにはいかないわけでしょ? 世界の法に触れるっていうか‥」
 って小声で言ったそれは、拗ねてるようで、言い訳の様で‥その子の正体が神様って分かってる僕にも‥ただの小さな女の子にしか見えなかった。
 だけど、ふうと小さく息をついて一度小さく深呼吸して、その子は一度俯いて息を整え、やがて決心したように顔を上げ、僕の顔を正面からしっかり見た。
 改まってどうしたというんだ?
「そこで、よ。
 今度は貴方にどうしても会いたい人間をあっちの世界から呼ぶわ。
 貴方がいなくなって悲しくて悲しくて仕方ない子。それこそ‥貴方を追いかけて死んでしまいたいって思ってるくらいにね。きっと、貴方に会えるって言ったら、ここに来るわ! 
 その子には‥はじめは夢を見てる形で‥ここでお試しで暮らしてもらう。それで、うまいこといったら‥その子もここで暮らしてもらう。そのままずっと! ‥その子にもあっちの世界では死んでもらうことになるけど。その子も貴方や‥愛する人がいるこの世界の方がいいに決まっているわ!
 それでどうかしら? 」
 って言ったんだ。
 どうかしらって‥なに?!
 いいわけがない。聞かれるまでもない。
「うまく行くってどういうこと?! 」
 その子と僕の恋愛成就を願ってるの?! 僕が神様の思い通りに動かなかったからその腹いせに? 僕とクラシルさんも破局したらいいのにってこと!? なんでそんなひどいことを言うんだ! 
 でも、思い通りになんてさせないからね!? 僕はそんな気はない。僕の絶対に気持ちは変わらないだから! 
 憤る僕に、その子はポカンって表情をした。その後苦笑いして
「その子は貴方に対して恋愛感情なんてないわ。それこそ、これっぽっちも」
 って‥呆れ口調で言った。
「貴方のこと、死にたいほど好きな子‥誰か覚えある? 」
 ‥ない。ないけど‥わざわざ言わなくていいじゃないか!! ‥そうか、やっぱりそんな子はいないんだ。そりゃ‥いないよね。
 僕はもう‥苦笑いするしかない。‥なんか、恥ずかしい。
「わざわざ関係を複雑にしてどうするのよ。
 貴方はここにその子をおびき寄せるただのエサよ。私はね、その子に王子と一緒になって欲しいの」
 ‥エサって言ったよ‥。
「ああ‥間違えた。
 ええと‥貴方に会いたくて仕方なかったその子が、ひょんなことでこの世界に迷い込んで来て‥たまたま王子に会うの。‥私的にはそのまま恋に発展してくれたらいいなって‥そういうロマンスを期待してるの」
 ‥恋愛脳か。
 ちょっとヤバい人だよね。
「‥君は何の神様なの? ロマンスの神様か何かなの? 」
 って‥ちょっとドン引きした僕が聞くと、その子は「え~? 神様ってバレちゃった感じ~。やっぱり、普通の服着てても高貴さとかは隠せないかなあ~」なんて‥ホントどうでもいいことを言って、照れる。
「私は、愛の女神よ」
 ‥うん、やっぱりね。
 って思ってたら‥
 その子は、に‥と口元にさっきとは違う‥黒い微笑を浮かべた。
「‥なんてね」


「何の神様って‥
 神は一人じゃない。何を言ってるの? 

 私は、ただ、神なの」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...