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22.☆ 独占欲(side クラシル)
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言葉にしないといけないのに‥言葉にしたら全部俺の手から零れ落ちてしまうんじゃないかって不安になる。
自分に自信がない俊哉が苦しんでいるのを分かっているのに‥本当のことを言ってやれない。
「俊哉は今まで誰に何を言われてきたのか分からないけど‥本当は綺麗だよ」
言ってあげた方がいいって分かってる。
だけど‥
真実を知ったら俊哉が自分の元を去ってしまうかも‥そう思ったら不安で‥言えなかったんだ。
俊哉だけは‥失いたくない。
俊哉を奪い去っていく者は、例え神だって‥容赦しない。
どうやら‥俺をこの世に送り出した神は俺がとことんお嫌いなようだから。
かって、俺はいろんなものを奪われ続けた。
友達も初恋も母親も‥父親の愛も‥
全部‥奪われた。
今度は絶対奪われたりしない。
昔こんなことがあった。
学校から帰る際に激しい雨に降られた。幸い雨はすぐに止んだけど、びしょ濡れになってしまった。その時に偶然会った女の子が乾いた布を借してくれたんだ。
その子にとっては他意もない、ただの小さな親切だった。勿論そこに恋愛感情その他はない。(それは分かる)
‥だけど、俺にとっては、それこそ舞い上がるほど嬉しかった。
幼少期から身体が大きくてその上顔も醜く‥恐れ嫌われていた俺はそれまで人から親切にされたことがなかったから。
「こんな親切な人がいるなんて! 」
って‥感動したんだ。
一目惚れするってことは流石になかったけど、
「こんな優しい子がいたんだ‥」
って思った。‥思えば、初恋だったかもしれない。(単純だったというより、ホントに人の温かみってものに飢えてたんだろう。)
濡れたまま返すわけにはいかない‥って家に持って帰って、当時はまだ生きていた実母に洗ってもらって、次の日学校に持っていって、その子に渡したんだ。
噂されたら恥ずかしいからって誰もいないところで渡したつもりだった。
だけど、見てる奴がいたんだ。
そいつがわざわざ皆に言いふらして‥俺はその子から避けられるようになったばかりじゃなく、俺の両親はその子の両親から苦情を言われたんだ。
「うちの子が皆に揶揄われて可哀そうだ。アンタのところの醜い息子がうちの子に話しかけたりするから」
「変な噂が立って、うちの子が嫁に行けなくでもなったらどうするんだ」
「うちの子にもう金輪際近づかないで」
って。
母さんはその場では謝ったけど、その子の両親が帰った後‥一人で泣いてた。
父さんは、
「くだらないことを言うやつは放っておけ。金輪際、他の奴とは関わるな」
って言った。
その頃は‥今よりずっと「ましな」父親だったんだ。今の父さんだったら、俺のことをまず怒っただろうね。父さんは、母さんが亡くなって俺を一人で育て始めて‥変わってしまった。
まず、俺の顔をまともに見る機会が増えた。
今までは俺の世話を母さんが一人でしてきて、父さんが俺の顔を見ることなんてそんなになかったんだ。
だからこそ耐えられてたってのもあるんだろう。
父さんはね‥悪人とかじゃない。普通の男なんだ。
父親として俺を「しっかり」扶養しないとって気負って‥俺の顔を見て話を聞こうと努力したり、怪我ばっかりする俺の傷の手当てをしてくれたり。ご飯を作ってくれたり。
俺の顔を見て具合を悪くして、だけどそんな自分に嫌悪感を感じたり、不慣れな家事仕事に疲れたり‥だけど、俺を食わせるためには働かなくっちゃいけなかった。
疲れがMAXになってたんだろうね。
‥父さんはどんどん俺が嫌いになっていったんだ。
俺にも嫌われる原因はあった。
どんなに怒られても、怪我ばっかりして帰ったし、喧嘩ばっかりしてたから。
友達同士で喧嘩をしてるわけなんだけど、友達の親からしたら俺に「怪我をさせられた! 」「あの子が一方的にうちの子を苛めてる! 」って思うらしい。‥俺が大きくって醜くくって、怖かったから。(だから)俺に言うのは怖かったんだろう、俺がいないところで父さんに文句を言ったりした。
そんな奴らがいっぱいいたんだ。
父さんは、初めはそれでも「子供にも話を聞かないと‥」って言ってたんだけど、そんなことが続けは‥父さんも嫌になる。父さんは疲れはて‥俺のことが嫌いになっていったんだ。
そして、そんな疲れはてた父さんを慰めたのが‥今の義母さんだった。
夫を亡くして、不安だった子連れの義母さんと、疲れはてた父さん。慰め合いがそのうち‥って感じなのかな。俺が中等学校を卒業した年に結婚した二人は、俺に
「お前も早く仕事を見つけて所帯をもて」
ってずっと言って来た。
結婚出来ると本気で思ってるのか? 俺の事追い出したいだけだろ?
腹立たしかったけど‥そんなこと言っても仕方がないから、さっさと騎士団に入団して寮に入った。家には一度も帰らなかった。
だから、義母弟とは一緒に暮らしたことなんて殆どなかったんだ。
‥話したこと位はある。「頼りない奴だな」「‥いけ好かない奴」って程度の印象。
初めて俺を見た時泣かれたのも‥腹が立ってたし。
毎日必死に訓練して、若くして騎士副団長にまでなった。だけど、結婚していない俺を家族は一人前とは認めなかった。
「所詮、お前は家族すら持てない」
って酔っ払った父さんに言われた時‥「何が何でも結婚してやる」って思った。‥その時はそういう当てつけでしかなかったんだけど‥結婚は俺の中でどんどん大きな存在になっていった。
実の母さんみたいに‥俺のことを愛してくれる人がいたら幸せだろう。
家族を持つってどんな気持ちだろう。
‥暖かい家庭が築きたい。
相手もいないのに‥そんなことばっかり考えた。
そんな時、秘宝館が出来たんだ。
秘宝館には、国中から集められた「特別な乙女」がいて‥俺たちみたいな醜い者たちに対しても偏見が無いらしい。
国は、醜い者と言われ、忌避されている(且つ ※ここが重要)「国を発展させ、維持してきた功績のある若者」が結婚する機会を得られるように、と秘宝館を開設したらしい。
初めは確かに上司に推薦されたから‥ってのがきっかけだったけど、「いい機会だ」って思った。
結婚がしたかったんだ。
その一方で、ホントに冷めてた。
その結果が、アレだった。(※ 弟に婚約者を略奪婚される事件)
だけど‥思ったより落ち込まなかった。
だろうなって思ったよ。
もういいや。が、正直な気持ちだった。
でも、俊哉だけは絶対あきらめない。
俺のベッドで眠る俊哉の髪を一筋持ち上げた。
さらりと指の間を落ちる絹糸のような髪。
半身を起して、正面から俊哉を見つめる。
今日も‥
俊哉は美しい。‥もう、今ここに居るのが信じられない程だ。
ずっと触れてみたかった頬は‥思っていた以上に柔らかかった。
頬だけじゃない。
胸も、腹も、腕も、俊哉の身体全部、柔らかくてすべすべとして‥しっとりとした潤いがあった。
自分と同じ人間だなんて‥信じられなかった。
柔らかな腹に触れた指をそのまま滑らせ、胸の小さなピンク色の突起に触れ‥そのまま指先で転がす。もう片方の突起は反対の指で軽くつまむ。
「ん‥っ」
小さな声をあげ、身体をよじって逃げようとする俊哉の両肩を軽く抑えて‥逃がさないようにする。
可愛い‥。
声に出さないようにこころの中で呟く。
本当だったら、昨日見たかったのだけど、俊哉が恥ずかしがるからランプを消したんだ。
「ランプを消して‥」
恥ずかしそうに顔を隠す俊哉。真っ白な肌を赤く染めて、不安そうに‥目だけで俺に訴えかける。いつものフード付きの上衣(長めのTシャツ)を着ていないから顔を隠せなくて‥俊哉は酷く心許ない様子だ。
その様子が、色っぽくて‥ゾクっとした。
そんな俊哉の顔や身体‥全部を目に焼き付けたかったけど、俊哉が嫌がることはしたくない。(とりあえず今日は)‥そのうち頼み込もうと思う。だって、絶対見たい。
ランプを消して、月明りの中俊哉を抱いた。
俊哉の真っ白な肌が月夜に照らされ‥まるで発光してるのか? って位輝いて見えた。
‥実は、これは初めてじゃない。
初めては‥失敗したんだ。
‥風呂場でちょっとした誤解があった日、あの日は‥散々だった。
‥初めてでうまくなんて行くわけがなかったんだ。
がむしゃら? ‥なんて表現したらいいのか分からない。だけど、あの時のことを思い出したら、今でも心臓がバクバクいうのを止められない。
体中が心臓になるっていう言葉は‥良くいったもんだって思った。
噛みつくように口付けて‥その後は、夢中で身体中を貪った。
‥きっとその様子は野生の獣のようだっただろう。
そのまま、碌に慣らすこともせずにその‥身体を繋いでしまった。娼館にすら行ったことがなかった俺に、前戯(っていうのかな? )って知識はなかったんだ。
「く‥っ! 」
俊哉は咄嗟に口に腕をかました。‥きっと、痛くて叫び声をあげそうになったのを堪えたのだろう。
腕を噛んだまま、顔をゆがめた俊哉を見た瞬間、身体中の血が抜けたような気がした。
繋いだ部分を見ると、出血していた。
碌に慣らしもせずに無理に挿入したからだ‥っ!
しかも、俺の身体は大きく、俊哉の身体は小さいのに‥。
慌てて引き抜き、身体を起こそうとした俺に俊哉は弱弱しく微笑み「大丈夫」って言った。
俺は、俊哉を抱きしめ‥少し泣いた。
自分が情けなくて仕方なかった。
そんな俺に俊哉は、黙って‥何度も口付けしてくれた。
そのままその日は‥眠った。
初めてがそんな風だったから、もうそんな機会は二度とないかもって思ってたけど、それ以降、俊哉は俺のベッドで眠ってくれるようになった。‥で、昨日ついに無事に‥身体を繋ぐことが出来た。
総ては俊哉の優しさのおかげなんだけど、俺だって何もしなかったわけでは無い。
潤滑油だって買って来たし、恥を忍んで‥そういう本を読んで研究(← イメージトレーニングonlyだ)もした。部下に聞こうかと思ったけど‥絶対無駄だから止めた。‥教えられてもショックだし、そもそも俺と俊哉のことで何か想像されるのも嫌だし。
‥俺なりに、努力はしたんだ。‥努力ってか、気が付いたらそんなことばっかり考えていた。(いや、仕事中は仕事に集中してたよ? それは‥勿論だ! )
挿入することを目標とするんじゃなくって‥俊哉を気持ちよくさせたいって‥初めは思ってたんだけど、気が付いたら暴走しちゃってた。
「ダメだなあ」
って思う。
‥やめる気はないけど。人間なんでも慣れと努力と、あと愛情で改善していけないことはないって思うんだよ。(希望的見解)
自分に自信がない俊哉が苦しんでいるのを分かっているのに‥本当のことを言ってやれない。
「俊哉は今まで誰に何を言われてきたのか分からないけど‥本当は綺麗だよ」
言ってあげた方がいいって分かってる。
だけど‥
真実を知ったら俊哉が自分の元を去ってしまうかも‥そう思ったら不安で‥言えなかったんだ。
俊哉だけは‥失いたくない。
俊哉を奪い去っていく者は、例え神だって‥容赦しない。
どうやら‥俺をこの世に送り出した神は俺がとことんお嫌いなようだから。
かって、俺はいろんなものを奪われ続けた。
友達も初恋も母親も‥父親の愛も‥
全部‥奪われた。
今度は絶対奪われたりしない。
昔こんなことがあった。
学校から帰る際に激しい雨に降られた。幸い雨はすぐに止んだけど、びしょ濡れになってしまった。その時に偶然会った女の子が乾いた布を借してくれたんだ。
その子にとっては他意もない、ただの小さな親切だった。勿論そこに恋愛感情その他はない。(それは分かる)
‥だけど、俺にとっては、それこそ舞い上がるほど嬉しかった。
幼少期から身体が大きくてその上顔も醜く‥恐れ嫌われていた俺はそれまで人から親切にされたことがなかったから。
「こんな親切な人がいるなんて! 」
って‥感動したんだ。
一目惚れするってことは流石になかったけど、
「こんな優しい子がいたんだ‥」
って思った。‥思えば、初恋だったかもしれない。(単純だったというより、ホントに人の温かみってものに飢えてたんだろう。)
濡れたまま返すわけにはいかない‥って家に持って帰って、当時はまだ生きていた実母に洗ってもらって、次の日学校に持っていって、その子に渡したんだ。
噂されたら恥ずかしいからって誰もいないところで渡したつもりだった。
だけど、見てる奴がいたんだ。
そいつがわざわざ皆に言いふらして‥俺はその子から避けられるようになったばかりじゃなく、俺の両親はその子の両親から苦情を言われたんだ。
「うちの子が皆に揶揄われて可哀そうだ。アンタのところの醜い息子がうちの子に話しかけたりするから」
「変な噂が立って、うちの子が嫁に行けなくでもなったらどうするんだ」
「うちの子にもう金輪際近づかないで」
って。
母さんはその場では謝ったけど、その子の両親が帰った後‥一人で泣いてた。
父さんは、
「くだらないことを言うやつは放っておけ。金輪際、他の奴とは関わるな」
って言った。
その頃は‥今よりずっと「ましな」父親だったんだ。今の父さんだったら、俺のことをまず怒っただろうね。父さんは、母さんが亡くなって俺を一人で育て始めて‥変わってしまった。
まず、俺の顔をまともに見る機会が増えた。
今までは俺の世話を母さんが一人でしてきて、父さんが俺の顔を見ることなんてそんなになかったんだ。
だからこそ耐えられてたってのもあるんだろう。
父さんはね‥悪人とかじゃない。普通の男なんだ。
父親として俺を「しっかり」扶養しないとって気負って‥俺の顔を見て話を聞こうと努力したり、怪我ばっかりする俺の傷の手当てをしてくれたり。ご飯を作ってくれたり。
俺の顔を見て具合を悪くして、だけどそんな自分に嫌悪感を感じたり、不慣れな家事仕事に疲れたり‥だけど、俺を食わせるためには働かなくっちゃいけなかった。
疲れがMAXになってたんだろうね。
‥父さんはどんどん俺が嫌いになっていったんだ。
俺にも嫌われる原因はあった。
どんなに怒られても、怪我ばっかりして帰ったし、喧嘩ばっかりしてたから。
友達同士で喧嘩をしてるわけなんだけど、友達の親からしたら俺に「怪我をさせられた! 」「あの子が一方的にうちの子を苛めてる! 」って思うらしい。‥俺が大きくって醜くくって、怖かったから。(だから)俺に言うのは怖かったんだろう、俺がいないところで父さんに文句を言ったりした。
そんな奴らがいっぱいいたんだ。
父さんは、初めはそれでも「子供にも話を聞かないと‥」って言ってたんだけど、そんなことが続けは‥父さんも嫌になる。父さんは疲れはて‥俺のことが嫌いになっていったんだ。
そして、そんな疲れはてた父さんを慰めたのが‥今の義母さんだった。
夫を亡くして、不安だった子連れの義母さんと、疲れはてた父さん。慰め合いがそのうち‥って感じなのかな。俺が中等学校を卒業した年に結婚した二人は、俺に
「お前も早く仕事を見つけて所帯をもて」
ってずっと言って来た。
結婚出来ると本気で思ってるのか? 俺の事追い出したいだけだろ?
腹立たしかったけど‥そんなこと言っても仕方がないから、さっさと騎士団に入団して寮に入った。家には一度も帰らなかった。
だから、義母弟とは一緒に暮らしたことなんて殆どなかったんだ。
‥話したこと位はある。「頼りない奴だな」「‥いけ好かない奴」って程度の印象。
初めて俺を見た時泣かれたのも‥腹が立ってたし。
毎日必死に訓練して、若くして騎士副団長にまでなった。だけど、結婚していない俺を家族は一人前とは認めなかった。
「所詮、お前は家族すら持てない」
って酔っ払った父さんに言われた時‥「何が何でも結婚してやる」って思った。‥その時はそういう当てつけでしかなかったんだけど‥結婚は俺の中でどんどん大きな存在になっていった。
実の母さんみたいに‥俺のことを愛してくれる人がいたら幸せだろう。
家族を持つってどんな気持ちだろう。
‥暖かい家庭が築きたい。
相手もいないのに‥そんなことばっかり考えた。
そんな時、秘宝館が出来たんだ。
秘宝館には、国中から集められた「特別な乙女」がいて‥俺たちみたいな醜い者たちに対しても偏見が無いらしい。
国は、醜い者と言われ、忌避されている(且つ ※ここが重要)「国を発展させ、維持してきた功績のある若者」が結婚する機会を得られるように、と秘宝館を開設したらしい。
初めは確かに上司に推薦されたから‥ってのがきっかけだったけど、「いい機会だ」って思った。
結婚がしたかったんだ。
その一方で、ホントに冷めてた。
その結果が、アレだった。(※ 弟に婚約者を略奪婚される事件)
だけど‥思ったより落ち込まなかった。
だろうなって思ったよ。
もういいや。が、正直な気持ちだった。
でも、俊哉だけは絶対あきらめない。
俺のベッドで眠る俊哉の髪を一筋持ち上げた。
さらりと指の間を落ちる絹糸のような髪。
半身を起して、正面から俊哉を見つめる。
今日も‥
俊哉は美しい。‥もう、今ここに居るのが信じられない程だ。
ずっと触れてみたかった頬は‥思っていた以上に柔らかかった。
頬だけじゃない。
胸も、腹も、腕も、俊哉の身体全部、柔らかくてすべすべとして‥しっとりとした潤いがあった。
自分と同じ人間だなんて‥信じられなかった。
柔らかな腹に触れた指をそのまま滑らせ、胸の小さなピンク色の突起に触れ‥そのまま指先で転がす。もう片方の突起は反対の指で軽くつまむ。
「ん‥っ」
小さな声をあげ、身体をよじって逃げようとする俊哉の両肩を軽く抑えて‥逃がさないようにする。
可愛い‥。
声に出さないようにこころの中で呟く。
本当だったら、昨日見たかったのだけど、俊哉が恥ずかしがるからランプを消したんだ。
「ランプを消して‥」
恥ずかしそうに顔を隠す俊哉。真っ白な肌を赤く染めて、不安そうに‥目だけで俺に訴えかける。いつものフード付きの上衣(長めのTシャツ)を着ていないから顔を隠せなくて‥俊哉は酷く心許ない様子だ。
その様子が、色っぽくて‥ゾクっとした。
そんな俊哉の顔や身体‥全部を目に焼き付けたかったけど、俊哉が嫌がることはしたくない。(とりあえず今日は)‥そのうち頼み込もうと思う。だって、絶対見たい。
ランプを消して、月明りの中俊哉を抱いた。
俊哉の真っ白な肌が月夜に照らされ‥まるで発光してるのか? って位輝いて見えた。
‥実は、これは初めてじゃない。
初めては‥失敗したんだ。
‥風呂場でちょっとした誤解があった日、あの日は‥散々だった。
‥初めてでうまくなんて行くわけがなかったんだ。
がむしゃら? ‥なんて表現したらいいのか分からない。だけど、あの時のことを思い出したら、今でも心臓がバクバクいうのを止められない。
体中が心臓になるっていう言葉は‥良くいったもんだって思った。
噛みつくように口付けて‥その後は、夢中で身体中を貪った。
‥きっとその様子は野生の獣のようだっただろう。
そのまま、碌に慣らすこともせずにその‥身体を繋いでしまった。娼館にすら行ったことがなかった俺に、前戯(っていうのかな? )って知識はなかったんだ。
「く‥っ! 」
俊哉は咄嗟に口に腕をかました。‥きっと、痛くて叫び声をあげそうになったのを堪えたのだろう。
腕を噛んだまま、顔をゆがめた俊哉を見た瞬間、身体中の血が抜けたような気がした。
繋いだ部分を見ると、出血していた。
碌に慣らしもせずに無理に挿入したからだ‥っ!
しかも、俺の身体は大きく、俊哉の身体は小さいのに‥。
慌てて引き抜き、身体を起こそうとした俺に俊哉は弱弱しく微笑み「大丈夫」って言った。
俺は、俊哉を抱きしめ‥少し泣いた。
自分が情けなくて仕方なかった。
そんな俺に俊哉は、黙って‥何度も口付けしてくれた。
そのままその日は‥眠った。
初めてがそんな風だったから、もうそんな機会は二度とないかもって思ってたけど、それ以降、俊哉は俺のベッドで眠ってくれるようになった。‥で、昨日ついに無事に‥身体を繋ぐことが出来た。
総ては俊哉の優しさのおかげなんだけど、俺だって何もしなかったわけでは無い。
潤滑油だって買って来たし、恥を忍んで‥そういう本を読んで研究(← イメージトレーニングonlyだ)もした。部下に聞こうかと思ったけど‥絶対無駄だから止めた。‥教えられてもショックだし、そもそも俺と俊哉のことで何か想像されるのも嫌だし。
‥俺なりに、努力はしたんだ。‥努力ってか、気が付いたらそんなことばっかり考えていた。(いや、仕事中は仕事に集中してたよ? それは‥勿論だ! )
挿入することを目標とするんじゃなくって‥俊哉を気持ちよくさせたいって‥初めは思ってたんだけど、気が付いたら暴走しちゃってた。
「ダメだなあ」
って思う。
‥やめる気はないけど。人間なんでも慣れと努力と、あと愛情で改善していけないことはないって思うんだよ。(希望的見解)
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