この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

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23.もうひとりの友達。(side 俊哉)

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 変な‥嫌な夢を見ると嫌だから、眠らないでおこうって誓ったあの日の次の日、お風呂でクラシルさんと‥ちょっとした誤解があった。
 僕はクラシルさんが僕に対して「性的に」魅力なんて感じてないって思ってた。
 だから、一緒にお風呂に入るのは「ただお湯が増えて」都合がいいからとしか考えないようにしてた。
 ‥勿論、ホントにそう思ってたわけじゃない。(いくらなんでもそんなわけないじゃないか)
 クラシルさんにはそう見えるように‥(僕が)そう考えているように振る舞ってたんだ。
 ‥だって、クラシルさんに気を遣わせたくなかったんだ。クラシルさんは優しいから僕に恥かかせてはいけない‥って無理に気を遣うようなところがあるでしょ? 僕が意識してるって気付いたら、僕のこと好きじゃなくたって「悪いし‥」って思うでしょ? そういう人だ。(だから、好きになったんだけどね)
 だけど‥違ったんだ。
 クラシルさんも僕のことを性的に‥見てくれてたんだ。

 僕の片思いじゃなかったんだ!

 なんだかんだで盛り上がって‥そういうことになったんだけど‥何分経験不足な僕たちが始めっからうまく行くわけもなかった。そんなの珍しいことではないし、たいしたことない。‥なんだけど、男としては‥気持ち的にはあるじゃない? プライドが‥とか。(地球時代恋愛経験ゼロの)僕には勿論そういう経験は無いけど‥普通に想像は付く。だけど、クラシルさんが落ち込んだところはそこじゃなかった。僕を傷つけたって泣くクラシルさんは‥今まで会ったどんな人より優しいって思った。
 ホントに‥感動したんだ。
 こんな優しい人に‥僕は「大丈夫だよ」って伝えるだけしかできなかった。
 そのうちに‥二人で眠ってしまっていた。

 あんなに寝ないって決めてたのに‥。

 ‥昨日徹夜をしてたからと‥クラシルさんの体温が気持ちよかったからだろう。
 眠ってしまったことに気が付いたのは次の日の朝。
 血の気が一瞬引いたけど、昨日は夢を見ていなかった‥「昨日の夢」を覚えていなかったことに安心した。
 眠るのが怖いんじゃなくて、‥眠って「あの夢を見るのが怖い」んだって、気付いた。

 夢を見なければいいんだ。

 不安や不満‥そういう小さな「綻び」が(神様の)付け入る隙‥じゃないけど‥そういうのを与えてたのかも? だけど、昨日はクラシルさんと一緒に眠ってて僕の精神が安定してたから‥神様が干渉できなかった? 
 ‥そうじゃなかったとしても、クラシルさんがすぐ隣にいてくれるって分かったら、何を言われても「NO!」って断れそうだ。
 ‥心強い。
 人のお願いを断るのも‥勇気がいる。(人どころか、神様のお願いとか‥もう、かなりハードだ! )
 自分に出来ることだったら、多少面倒だろうが大変だろうが断る選択肢はない。だけど、‥無理なことは、無理なんだ。‥そういうことは絶対にあるわけじゃない。

 ‥よし、今度会ったら、断ろう。大丈夫僕にはクラシルさんがいてくれる。何も怖くない。

 クラシルさんと一緒なら‥そう思える。
 そんな理由で‥次の日からクラシルさんに頼んで一緒に眠ってもらうことにした。
(※ クラシルは俊哉が失敗したクラシルに気を遣って一緒に寝てくれるようになったって思っているが、そうではなかったのだ)
 クラシルさんと一つのベッドで一緒に寝るなんて‥ドキドキして寝れないかなって思ったけど、案外すぐ慣れて今では一人で眠るよりずっと安心して‥深く眠れる。
 子供みたいだなって思う。

 慣れたから‥かもしれない。
 僕は久し振りに夢を見てしまった。

「君は‥誰? 」
 気が付いたら先に座っていた綺麗な人が首を傾げた。
 間違いなく自分の夢のはずなのに、人の夢に迷い込んでしまった感が半端ない。「知らない人がいる! 」僕は慌てて顔を隠すものを探した。
 いつものクラシルさんのローブ! って考えたら、ふわっと目の前に落ちて来た。(流石夢。現実にはあり得ないことでも思い通りだ)
「すみません。その‥僕の顔は醜いから」
 って‥目の前の綺麗な人に一言謝ってから、ローブを羽織って、しっかり顔を隠す。
 今ではすっかり慣れたローブの存在に、安心する。
 目の前の綺麗な人は小さく首を傾げて、
「僕は大丈夫ですよ。貴方のお好きになさってください」
 って言ってくれた。
 綺麗な人も(なんか亜空間的なところから)仮面を取り出して被って
「ごめんね。僕も被るね。僕の顔見えたよね。大丈夫? 不快な気持ちになってない? 」
 優しい口調で謝ってくれた。
 ‥不快どころか、凄く綺麗だと思いますよ、は口には出さなかった。

 これって、きっとアレだ。神様の言ってた王子様なんだ。ってすぐに分かった。
「君は「あの子」に言われてここに来たの? 」
 って王子様が僕に聞く。
 あの子とは? 僕が思うあの子は、神様だけど? って思いながら話を聞いているとどうやらそうみたいだ。
 あの子は、王子様の夢の中でも友達偽造してる様だ。
 僕のこと「異世界から特別な人を呼んだからね」とか紹介されてたら、嫌だな‥って思ったけど、少なくとも王子様の口からそのことを告げられることはなかった。
 黙って座ってるのもなんだし‥って気を遣って話題を探してたら、同じく気を遣ったらしい王子様が先に口を開いた。
 話題は「共通の知人」である「あの子」の話だった。

「急にあの子の夢を見るようになったんだ。間違いなく知らない子のはずなんだけど‥不思議なことに夢の中であの子と私は古くからの友人のようなんだ。たわいもない話をしたり、「理想のタイプってどんな人? 」って恋の話をしたり‥。実際にはそんな話を僕にする人はいない。そんな話しても無駄だって思ってるだろうし、そんな話して‥うっかり好きになられでもしたら大変だって思うんだろう。皆「どこかにあなたのこと分かってくれる人がきっといます」って‥自分ではない誰かの話をするんだ。‥あれを聞くと凄く悲しくなるね。拒絶された上に「私は貴方のことを考えてはいるんですよ」って‥優しい人アピールまでされたような気持になる。‥ああ、これは関係ない話だね」
 苦笑いする王子様。
 それは‥僕にも分かりすぎるほど分かる話だ。
 自分ではないけど、「誰かがきっと」「どこかに」発言する人ね。この人も心無いそのセリフに傷付いてた一人なんだ。‥なんか似たもの同士感が凄い。
 だからと言って仲間意識以上の気持ちは持てない。
 そうだよ。
 似てるから、気持ちが分かるからっていって、恋愛に発展することって‥そんなにある? 人ってそんなに単純じゃない。
 一目惚れはする癖に、似た者同士は‥どんなに周りが「こいつらってお似合いだよな」って思おうと、恋愛に発展することはそうない。
 だって、そうだと思う。
 一目惚れは「自分に持ってないもの」にするんであって、自分と「同じ傷持つ者」なんて‥わざわざ選ばない。DNAが「品種改良を目指したい! より優勢な遺伝子を! 」って求めるからだろう‥と、僕は思ってる。
 最終的には自分と似た人と結婚していようとも、初恋はそうじゃない気がする。
 特別感って感じかな。
 人は、「fast impression」で一目惚れした人には、恋を成就させるために「いいとこ見せよう」って努力するけど、同じく「fast impression」で「同類」分類した人にはそういう努力ってしない気がする。

 恋とは違う。だけど、一番親しい存在でいたい。理解して欲しい、否定されたくない。傷を舐め合いたい‥裏切られたくない。
 同類の最終形態は、愛以上に執着だ。だけど‥それが恋に変わることは、そうない。
 だって、「弱い自分」って認めたくない。そんな「目に見える弱い自分」と付き合うのは‥生涯の伴侶として向き合っていくのは「どうだろう」って思うよね? 
 人は‥一番大好きなのは自分で、そして、一番大嫌いなのも‥自分なんだ。
 うまく行っている自分が「大好き」で、うまく行かない自分が「大嫌い」。
 「うまく行っている自分」を「貴方らしい」って言ってくれる他人は好きだけど、「うまく行っていない自分」を「貴方らしい」って言う他人が嫌い。
 自分のことを分かってくれる人は親友にしたいけど、分かってくれて無いかもしれないけど「憧れてます!  」「大好き! 」って言ってくれる人を恋人にしたい。‥だけど、結局疲れちゃって分かってくれる人といる方が楽~っていう風になっちゃって、結婚相手は結局似た人‥みたいな? 中には一生カッコつけたい、カッコつけてやる! って人もいるだろうけどね。(でも、そんな人に限って、俺はカッコつけたいから、フォローよろ。俺が失敗しようと見なかった振りしてくれ、何ならフォローしておいてくれって相手に暗に要求したりしてたりしてね)

 いずれにせよ。そういうのは‥人にどうこう言われてどうなるってもんじゃない。

 同病相憐れむ愛って、優しく穏やかだけど‥他人(第三者)の思惑でどうにかできるものじゃないって思う。 
 そういう風にお膳立てすることって‥すごく残酷だって思う。「似たもの同士でお似合いだと思うよ? 」って言葉‥「はみ出し者同士、傷を舐め合ってればいいんじゃない? 」って言ってるようなもんだって‥お膳立てされた当事者たちにはそういう風に聞こえるんだって‥きっとお膳立てした第三者‥恵まれている者は気付かない。(卑屈になりすぎてる感はあるけど、‥少なくとも僕はそう思える様な時が結構あった)

 ましてやあの子は、卑屈とは無縁なずっと高いところにいるから‥そういう「僕ら」の気持ちなんて分からないんだ。
 そもそも、今回の場合は「そうなるようにセッティングする」じゃない。そうするようにって、あの子が僕にお願いしてきたんだ。
 それをお願いされた地点で‥もう僕の王子様に対する「fast impression」は「同類」でしかない。それに、僕の一番はもう他にいる。クラシルさん以外を僕が好きになることはない。
 だけど‥同類であり、見た感じすごくいい人の王子様のこと、僕は幸せになって欲しいなって思う。‥だけど、その相手は僕じゃない。

 ‥僕に僕らが一番嫌いな言葉を言わせたいのか? 
 僕はあの子がホントに憎くなったんだ。
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