この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

文字の大きさ
上 下
20 / 36

20.俊哉とクラシルのお風呂。(side 俊哉)

しおりを挟む
 夢を見ないために寝ない。

 そう誓った僕は、その日から眠らないように頑張った。
 一日目は問題なかった。
 試験勉強やら何やらで、現在人は徹夜位問題ない。
 徹夜のお供のコーヒーがないのが地味にキツイ。
 夜通し電気をつけられないのも、そう。
 明かりはろうそくって感じではない。
 何の油か分からない‥オイルランプを使っている。
 よくある異世界ものみたいに、魔法があったり魔道具を使っていたり‥は、しない様だ。
 丁度「まんま中世ヨーロッパ」みたいな感じなのかな? ‥そんなに詳しくないけど。
 だけど、ボットンだけど一家に一つトイレがあったり、湯船にお湯が張れるタイプのお風呂があったりとかは‥ちょっと違うっぽい。

 お風呂があるのは、かなり嬉しかった。
 兄さんたちは「シャワーでさっさと済ませる派」だったから、「流石に一人で湯船に湯を貯めるのは‥」って感じで我慢してたんだけど、僕は「お風呂は湯船でゆっくり派」なんだ。
 お風呂と言えば‥上の兄さんが結婚した後久し振りに両親が揃って帰宅して、「折角だから皆で集まろう」ってなった時、「嫁が風呂派だから、この頃は風呂に入ることもある」って言ってたな。結婚って、今までの長い習慣みたいなものも変えちゃうんだなあ~って感心したっけ。
 ‥ああ、話が脱線した。
 ここのお風呂って話だったね。
 ここのお風呂は、固定式のお風呂なんだ。中世ヨーロッパみたいに猫足浴槽って感じじゃなくって‥昔の‥昭和とかの日本のお風呂みたいな感じ? レンガだかなんかを積んで形を作ってセメント?? かなんかで固めてタイル張って仕上げる‥って感じのお風呂。(よくわかんないけど)
 日本のゴエモン風呂みたいに湯船に溜めた水を沸かすって感じじゃないみたい。
 だけど、勿論蛇口が付いてるわけじゃないし、シャワーもない。
 じゃあどうするのか‥というと、井戸か川から水を運んできて湯船の横に置いてある大きな瓶「お湯用水瓶(※ 便宜上僕が名付けた。「何て名前なんですか? 」ってクラシルさんに聞いたら「これの名前? 」って首を傾げられちゃった。クラシルさんはそういうの別にどうでもいいみたい)」に水を貯めて、それを薪で下から沸かして‥その沸かしたお湯を木の器で掬って湯船の中で身体を洗ったりする。
 そういうスタイル。
 二人ではいっても狭すぎる‥ってわけでもないし、いっぺんに入った方が便利だから、僕はクラシルさんと一緒に入ってる。
 初めからそう提案した僕にクラシルさんは凄く驚いた表情を見せた。
 分かる。なんで? って思うよね。でもね。そういう問題じゃない。効率を優先した方がいい。
 だって‥どうせアレだ。① クラシルさんが気を遣って僕に「先に入っていいよ」って言う ②僕も「お湯をあんまり使わないようにしないと」「早く上がらなきゃ」って気を遣う。③後で入ったクラシルさんが「お湯、使ったのか? 」「早かったな」「気を遣わせてしまった‥」ってなる。
 もう、目に見えてる。
 お互いが気を遣って折角のお風呂っていう‥リラックス時間が台無しになるの‥目に見えてる。

 蛇口捻ればお湯が出る日本とは違う。
 湯を沸かすのだって大変なんだ。
 手間は一回の方がいい。
 そうじゃない? 

 だから、クラシルさんが嫌だったら問題だけど、そうじゃなかったら絶対一緒に入った方がいいじゃない?
 クラシルさんは
「俊哉が嫌じゃなきゃ俺は‥それでいい」
 って僕を気遣ってくれた。
 僕が押し付けたみたいになって‥悪かった。だけど、これは「そういうもの」って割り切って了承して欲しい。

 銭湯文化のある日本ならまだしも外国の人はそういうの嫌がるかなって思ったけど、クラシルさん曰く
「騎士団でもそういうこと(皆で風呂に入る)はあるから別に」
 らしい。
 それはよかった。
 銭湯みたいな感じかな? 

 だけど、アレだ。
 服を脱ぐとクラシルさんの身体と僕の身体があんまり違うもんだから‥落ち込む。
 僕は標準体形で太ってるわけじゃないけど、鍛えてないから筋肉なんてない。
 ポチャッとはしてないけど!
 同じ男として情けなくって隠したくなったけど、そもそもそういうのこそ、男らしくないかなって! 

 自分が気にするほど、誰も見てない!  
 
 って思ったんだけど‥
 クラシルさんは今日も
「俊哉の腕‥今日も気持ちいい‥身体も‥柔らかい。癒される‥」
 って後ろから抱きしめながら僕の腕をぷにぷに掴んでくる。
 デブじゃないぞ! 筋肉じゃないだけで、脂肪じゃないぞ!!

 バックハグとかじゃないよ? 
 二人でお風呂に入った方が少しの湯でもあったまるでしょ? 体重分水の量が増えるでしょ? そんな理由で一緒に入ってるだけのことだ。
 クラシルさんたちはお湯に入る文化はないみたいなんだけど、どうしてもお風呂につかりたかった僕がお願いしたんだ。
 お湯を入れて、二人で入る。
 初めは小山座りみたいな感じで向き合ってたんだけど、足が伸びなくて疲れが取れないかな~って話で、お膝を伸ばして座るクラシルさんの上に僕が座る今みたいなスタイルになったわけ。どっちが言い出したわけでもなく、何となくそうなったって感じ。そういうのは「口に出さなくても何となく通じるものがある」ものだと思う。
 お互いに、何となく‥工夫して「より良い」を探るって感じ? 
 (下に座るクラシルさんの)際どい所が上に座る僕のお尻に当たらないかって? そこは‥お互いにアレだ。お互いに‥何となく工夫して座りやすいように座ってる。(ここでも、「口に出さなくても何となく通じるもの」っていう無言の意思疎通が働いているわけだ)
 あと、僕ももし‥「何か」がお尻に当たっても‥大騒ぎとかしないようにしてる。
 だって僕がそんなことで大騒ぎしたらクラシルさんはきっと「動かないようにしないと‥」って気を遣う。‥気を遣ったらゆっくりくつろげないでしょ? お風呂ってのは、くつろぎ空間だよ。
 あと、コミュニケーションの場。お互いが「お互い様」って許し、許される。そういう場だよ。
 細かいこと気にしちゃ、ダメだよ。そういうのはね。
 そんな感じで僕が「何事も気にしませんよ~」って姿勢を取り続けたおかげで、随分クラシルさんも遠慮しないようになってきた。今までは上に座る僕に気を遣ってるってのがひしひしと伝わって来てたけど、今はお互いだら~と入れるようになった(と思う)。僕も「重くないかな?? 」って気を遣うの止めたしね。
 やっぱり、裸のコミュニケーションってのは、凄いね! 一歩も二歩も距離が近づいた感じがするね! 
 今では、(恋人って感じにはなかなかならないけど)長年連れ添った相棒って感じにはなってきたもんね!
 ‥甘々って感じには‥なかなかね。
 お互い恋愛未経験者だからね。
 だけど‥
「もたれかかって来ても重くないぞ? 」
 って僕の二の腕を掴んで自分にもたれかかれるようにしてくれたのは、ちょっと恋人っぽい感じ?
 
 背中にクラシルさんの逞しい腹筋が‥! 

 びっくりして、‥意識したのはどうやら僕だけみたいで、クラシルさんは全然そんな感じじゃなかったっぽい。「俊哉の肌は綺麗だな。傷一つないし、つるっつるだ。あと‥フワフワしてる。硬くない」
 僕の二の腕をにぎにぎしながら‥感心したような口調で言った。
 その口調があんまりにいつも通りで‥それにはちょっと‥流石に凹んだ。

 ‥それって、筋肉ない。って言ってるだけですよね??
 ‥何? びっくりして‥ドキドキしてるの僕だけ?? 
 クラシルさんにとっては何気ないちょっとした気遣い??

 ‥そうだよね。気にしない気にしない‥
 いつも通りスルースキル発動だ。

 それ(全然色気のないバックハグ)にも今では慣れちゃってるから‥人間恐ろしい。
 何なら慣れ過ぎてもう、ドキドキもしない。(してないからね!! ドキドキとか‥あれだ。不整脈かもしれない。‥病気だ。多分)
 僕だけ意識してドキドキ、とか馬鹿らし過ぎる! 

 クラシルさんお嫁さんを貰うつもりらしいけど、僕が言うのもなんだけど、恋愛に無縁過ぎませんかね!!
 
 今日もお尻に当たる違和感や背中に当たる筋肉を無理やり‥スルースキル発動でスルーする俊哉だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。 家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで

深凪雪花
BL
 候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。  即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。  しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……? ※★は性描写ありです。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

処理中です...