この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

文字の大きさ
上 下
16 / 36

16.偶然と間違い。

しおりを挟む
 異世界からきた僕の使命。
 否、異世界から僕のような者が呼ばれた意味。
 偶然、神様の気まぐれやなんかでこっちに飛ばされたんじゃないだろうって思う。
 (気まぐれかどうかは分からないけど)きっと、僕を異世界からここに呼んだのは神様(的なものの存在)なのは間違いないだろう。
 だって、普通に考えて「普通じゃ」こんなこと起こらない。

 何のために? 
 
 それはきっとあの伝説が関係している。
 あの‥クラシルさんたちこの国で忌避されている人たちの間で「特別な人間」って思われてる、(多分)異世界出身人。
 (こっちから見て)異世界 = きっと地球から来た人間には、ここ基準での醜いはカッコイイだから‥普通に「かっこいい! 」って言っただろう。普通に「かっこよくて」「(きっと)優しく」「自分のことを慕ってくれる美形」に恋をした。
 それは、異世界人にとって当たり前に「よくあること」で、難しいことではなかった。だけど、こっちの人にとってはそれはにわかに信じがたく‥「美醜に分け隔てがない」「特別な人間」って思われた。
 (異世界からきた)特別な人間が王子様を愛し、二人は幸せになった‥。
 きっとこれが「異世界人の使命」だ。
 神様は、「こっちの価値観ではどうしても救えない人を救うために、価値観が違う異世界から人を呼んだ」のだろう。

 僕の役割もそう? 僕にとっての役割はクラシルさんを幸せにすること? 
 神様(多分)はクラシルさんを幸せにするために僕をここに呼んだ? 

 だったら、クラシルさんと知り合って一緒に暮らしている現状は、全部神様のシナリオ通りってことになるだろう。
 偶然会ったって思ってたけど‥あれも計算だったの?
 だけど‥なぜ、クラシルさんなんだろう。
 クラシルさんは神様にとって特別だってことだろうか? 
 予想されるのは‥① クラシルさんがこの世界において特別醜くって皆に特別嫌われてて(あの伝説の王子様みたいに)そのクラシルさんが幸せになることによってこの国で忌避されてる者たちに希望を与えて‥結果、神様に対する信仰心がアップするっていう考えだけど‥そんなにクラシルさんは有名人だろうか? 
 クラシルさんだけがここ基準の忌避される存在じゃない。
 ここでの醜い(怖い? )の基準は身体が大きい人だから。(だと予想している。‥他にも基準があるかもしれないが、今のところ分かっているのはそれだけ)
 他の人でも良くなかった? (そりゃ、僕はクラシルさん以外嫌だけどさ)
 そうなると‥ホントに偶然なのかも??
 ‥他の理由を考えてみた。
 奇跡を起こして信仰心アップが目的じゃないとしたら‥② クラシルさんがこの世界にとって凄く意味があって、クラシルさんのモチベーションを何としてでも上げたい、あげることによってこの世界をより良く出来るから。って理由。
 確かにクラシルさんは騎士団の団長さんだ。
 だけど‥騎士団の団長さんってのはホントに国家レベルで重要人物と言われる程の存在だろうか? 
 後々モチベーション上がったクラシルさんが奇跡の覚醒(的な発達)をして勇者や英雄的な存在となって国を救うとか、変える‥とか? 

 どうなんだろう。
 神様(多分)は、僕に何を期待しているのだろう。
 神様の期待に副える働き‥僕にそんな力があるんだろうか? 
 愛は地球を救う的なあれ? 
 例え小さな力だとしても、それが集まれば、社会を変えていく力にもなりうる‥的な? 

 ‥よくわからないけど、僕は僕なりに‥目の前のクラシルさんを幸せにすること‥一緒に幸せになることに精一杯尽力すればいいかな? 僕に出来ることなんてたかが知れてる。救世主になんてなれるわけがない。
 救世主‥
 でも‥特別な人間と言われた過去の異世界人は‥この国で忌避されてきた「醜い」人間にとっては、希望で‥救世主的な存在だった‥。
 僕も救世主にならないといけないの? 
 だけど‥異世界から来た特別な人間が救世主として‥伝説にまでなったのは‥① 助けた相手が王子(つまり有名人)だった。醜さでも有名だったけど、それ以前に地位的に知名度が高かった。② 異世界人がこの世界基準の美形だった って二つの条件が揃っていたからだ。
 僕のパターンはこの二つともに当てはまらない。
 例えクラシルさんがこの先大躍進を遂げたとしても‥そのモチベーションを上げる切っ掛けになったクラシルさん的「特別な人間」が僕みたいながっかり容姿だったら‥きっと皆がっかりする。美醜に分け隔てがない特別な人間には違いないけどね‥って感じだ。

 何なんだろ。
 そうなると‥ホントに‥よくある「神様の手違い」にしか思えなくなってきた‥。


 目が覚めたらクラシルさんが枕元に立っていた。
 昨日の朝に続いて二回目だ。やっぱり、慣れない。クラシルさんの超絶美形っぷりにも慣れないけど‥それ以上に人が枕元に立ってるってことに‥慣れない。慣れるわけない。
 だけど、‥今日も僕は「わあ!? 」って大声上げなかったぞ! ‥上出来。
「大丈夫か? 俊哉‥うなされてたぞ? 」
 心配そうなクラシルさんの顔。
「大丈夫ですよ。ちょっと‥怖い夢見てしまっただけです」
 僕はドックドック早鐘をうつ心臓を何とか宥めながら‥クラシルさんに謝った。
 ‥だって、クラシルさんをこんなに心配させてしまったんだから。
 僕はそんなにうなされてたのかな?? 
「怖い夢? 」
 クラシルさんが僕の手を握ってくれた。
 あったかい手に安心する。
 僕をまっすぐに見つめるクラシルさんの心配そうな‥真剣な眼差し。クラシルさんは本気で僕を心配してくれてるんだ。心配して、僕を勇気づけようと手を握ってくれている。
 その優しさに‥心があったかくなった。
「大丈夫です。‥きっと怖い夢を見たんだろうけど‥今はもう内容も覚えていないんです」
 僕は苦笑いして、クラシルさんの手を握り返した。
 これは、ホント。
 さっきまで夢の中で何か重要なことを延々と考えていた気がするんだけど‥目が覚めたら忘れてしまった。
 
 そういうことってよく無い? 

 凄く怖い夢を見たって記憶だけ残ってるのに、夢の内容は全然覚えてない。
 それをいったらいい夢もそういうことある。
 面白い夢見た~! いい夢見た~! 感動した! っていう印象だけはあるんだけど、どんな夢かは覚えてない、っていう‥。
 ああいう夢って何の為に見るんだろうね? 
 怖い夢見たら「夢でよかった~」。いい夢見たら「ああ、いい夢見た。気分がいいから今日もがんばれそうな気がする」‥とか?
 ‥だけど、今回の夢は凄く重要だった気がする。
 忘れてしまってはいけないような‥。
 僕は‥
 気が付くと俯いていた僕をクラシルさんが抱きしめてくれた。
「考えなくてもいい。怖い夢なんて忘れてしまった方がいいだろ? それに、所詮は夢だ。現実では俊哉が怖い目にも嫌な目にも合わないように、俺が守ってあげるから‥」
 僕はボロボロと涙を流しながら‥何度も何度も頷いた。
 忘れてしまった「重要なこと」が怖くて‥不安で仕方が無いけど、クラシルさんの傍は僕にとって‥今世界で一番安心できて幸せな場所だ。

 ‥それだけが今僕の真実の全てなんだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで

深凪雪花
BL
 候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。  即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。  しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……? ※★は性描写ありです。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

黄金 
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。 恋も恋愛もどうでもいい。 そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。 二万字程度の短い話です。 6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です

花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。 けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。 そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。 醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。 多分短い話になると思われます。 サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

処理中です...