この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

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10.ワンチャンあるか? 、と思ったけど‥。

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 クラシルさんの幸せって何だろう。‥というか、嬉しいことって何だろう。
 え? って、何。

 クラシルさんは固まったみたいに動かず‥たそのままっぷり2分ほどの沈黙が流れて‥その後、何も言わず僕にローブを被せた。
 ‥何もなかったように。

 ‥酷くない?
 いや、そりゃ海外にはこけしなんてないからきっと見たこともなかったって思うよ? 
 見たこともないリアルこけしに驚いて固まっちゃった‥ってのは、わかる。だけど、‥何か言おうよ。
 言葉が見つからなかったのかもしれないよね。
 ‥確かにそういうことはあるよ。
 クラスメイトがテストを手に固まってて‥たまたまその点数の部分がぴらって折れて点数が見えちゃった時とか‥
「いや、僕もよくなかったし‥」
 って言うしかないよね。
 言っても仕方ないけど。言われたら余計に泣きたくなるけど‥
 でも‥言うよ。
 無視される方が辛いから。
 
 そう、無視される‥なかったことにされるのって‥辛いよ?!

 何なの?? 何なの??
「こわ‥」
 とか、
「‥人間、顔じゃないよ。‥気にするな」
 とか言ってよ~!!
 まあ‥でも、いい。強く生きよう(? 既に元の世界で死んでる僕が、強く生きようって変だけど)
 僕の顔にはクラシルさんを活動休止する程のパワーがあるってわけだ。
 ネタとして使うよ!! しゃっくりが止まらなくて死にそう‥って時に「びっくり爆弾」として使ったりね! (自分で言ってて悲しくなるな‥)
 まあ‥慣れてます。そういう扱いは。
 でも
 いくらあっちの世界が僕に冷たかったっていってここまでの扱いじゃなかったよなあ‥。
 僕は苦笑いして
「スミマセン」
 ‥一応謝っておいた。

 美醜の基準が違うみたいだから、ワンチャン‥ワンチャンね? かなって思ったんだけどなあ~。無かったよ‥。
 あっちの世界のリアルこけしはこっちの世界では「見てはならない謎物質」だった様だ。
 ‥見られたのがいい人・クラシルさんでよかった。悪い人に見られてたら
「何だ!? 珍獣か!? 高く売ろう! 」
 ってなってただろう‥。
 気をつけねば‥今後絶対顔を晒すことだけはしない様にしよう。
 
 に、しても。傷つくなあ‥。
 肩を落として落ち込む僕に、クラシルさんは
「ゴメン。‥驚いただけなんだ、‥ホントにゴメン」
 って何度も謝ってくれた。
 驚いたのは分かった。‥だけど、フォローはどうした! 
 驚いただけで、別に醜過ぎて固まったわけじゃない。とか‥いや、言わなくていい。余計にショックだから。
 ‥あ、醜過ぎて固まったんだね。
 って悟っちゃうから‥言わないでいいんだからね!!
 ‥でも、きっとクラシルさんも「下には下もいる。俺も頑張ろう」って思ってくれたはずだ。‥良かった良かった。
 ああそうだった‥がっかりした顔されたら家を出ようって思ってたんだ‥。
「スミマセン。僕なんかが恋人とか‥迷惑ですよね。‥出て行きますね‥」
 って荷物を纏めて‥纏める荷物なんてないから‥出て行くために立ち上がる。
 クラシルさんはホント、条件反射って感じで僕の腕を掴んで
「え?! 何を言ってるんだ! ‥この国は俊哉が生まれた国とは違って‥俊哉一人で生きていけるほど優しい国じゃないぞ? この国は‥アレだ‥恐ろしい国なんだ」
 って言ったんだ。
 ‥恐ろしい国なの?
 そうだよね‥クラシルさんでも目を合わせてもらえないんだもんね‥きっと、僕の顔とか見られようものなら、
「バケモノ退治だ!! 」
 ってどこからか人が集まってたこ殴りにされるかも。
「でも‥僕がここに居たら‥クラシルさんにも迷惑がかかるんじゃ‥。バケモノを匿ったって思われて‥クラシルさんもたこ殴りにされるんじゃ‥」
「え? バケモノ? たこ殴り? ああ‥俊哉のこと? バケモノって思われてたこ殴りにされるってこと? で、俺に累が及ばないか心配してくれてるの? (‥優しいな‥)
 ‥大丈夫だよ。
 俺は‥(たっぷり間を置くことによって協調)
 強いから」
 心配する僕を気遣うように、クラシルさんが優しく微笑んだ。
 その微笑に安心する。
「‥大丈夫? 大勢の人が攻めてきても? 」
 僕が安心したことが(僕の声で)伝わったのか、クラシルさんが僕の頭を撫ぜながら‥まるで小動物に接するような様子で‥微笑んだ。
「大丈夫。俺は騎士団長だよ? 強いんだよ」
 僕の目を見つめながら力強い声で言う。
 ‥といっても、僕の目はローブにすっぽり隠れていて見えないんだけど。
 僕は微かに頷いて
「分かった‥有難う」
 って‥蚊が鳴くような小声で言い、頷いた。
 クラシルさんがほっとしたって表情で僕の頭を一度大きく撫ぜた。
「だから、安心してここに居ればいい。絶対、俺がいないときにここから出て行ったらいけないよ」
 僕は頷く。
 クラシルさんが出て行かないでいいって言うんだったら、僕がここを一人で出るわけがない。ここがどれ程恐ろしいところか分かったしね。
 海外の‥スラム街みたいなところなのかもしれないな。散歩してた時は普通の街に見えたけど‥あれは、クラシルさんが怖かったから悪者が出てこれなかっただけなんだな。(納得)

 その夜は、クラシルさんが僕の為に自分のベッドを譲ってくれ、クラシルさんはソファーで眠ると言った。
 僕は持ち主を追い出すのは‥って自分がソファーで眠ると言ったのだが、クラシルさんは聞き入れてくれなかった。
 BLならここで
「じゃあ一緒に寝ましょう」
 ってヒロインが言うんだろうけど‥残念ながらヒロインポジの僕がリアルこけしで、さっき素顔を見せたことでクラシルさんの精神に大ダメージを与えたばっかりだ。
 ‥そんな極悪非道な提案は出来ない。
 一晩寝て
「昨日のあれは、‥きっと夢だったに違いない」
 ってなって‥クラシルさんの記憶から僕の顔を見たショックだけ都合よく抜け落ちてくれたらいいなって願うのだった。

 翌朝。
 クラシルさんの
「夢じゃなかった」 
 という呟きに、目が覚めた。(といっても、まだ目を閉じたままだ。意識が覚醒したって意味だ)
 僕は結構耳ざといんだ。
 起きようかって思ったけど、今起きて僕が目を開けたら‥またリアルこけしを見せてしまう‥。それも、超至近距離で。
 なんだってクラシルさんは僕をそんな至近距離で見下ろしてるんだ。
 動くに動けないじゃないか。
 目を開けるわけにも、動くわけにもいかず‥僕は固まっていた。
 ‥でも、いつまでもこうしているわけにはいかない。‥目を開けよう。
 で‥そろっと‥ホントにそろ~と、目を開ける間にそこから離れることができるくらいの時間をかけて‥そろ~と目を開けた。
 
 いる!!

 で、やっぱり目が開いた僕を見てクラシルさんは、‥驚いて今度はしゃがみ込んだ姿勢のままで30㎝くらいはねた。

 いくら何でも、失礼過ぎない!?

 朝から泣きそうになる僕だった。
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