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8.クラシルさんの事情
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秘宝館が結婚斡旋所ってこともしかして、この世界では当たり前のことで‥知っていない僕は「もしかしてこの世界の人間じゃないの? 」って疑われちゃうレベルの認知度がある言葉? って一瞬思ったけど‥そうでもなかったみたい。クラシルさんは
「俊哉はまだ子供だから‥そんなこと知らなくてもおかしくないよ」
って言ったんだ。
‥子供じゃないですってば。
僕が反論しようとすると、クラシルさんはふっと微笑んで‥
「出来れば知らずにいられたらいいのにね」
優しく僕の頭に手を置いた。そんなクラシルさんの顔を見てたら‥
なんで‥そんな寂しそうな顔をするの? 僕はそんな貴方に何かできることはない?
って‥悲しくなった。
きっと、また表情‥雰囲気かな? に出てたんだろう、クラシルさんは苦笑いして「大丈夫だよ。俊哉は優しいな」って呟いた。
僕は、クラシルさんを見上げる。ローブを被っているから、きっとクラシルさんに見えてるのは、僕の口元だけだろう。
だけど‥僕らの関係は今はそれでいい気がする。
今僕がローブを脱いで「僕は僕でこの通り顔にコンプレックス持ちなんです。お互い様だよね」って言っても‥仕方がない。傷をなめ合うのが僕らにとっていい関係なわけがない。それにね、「僕もなんだよ」っていうってことは、「君だけじゃない」って‥クラシルさんのことを僕同様の悪い物って見てるみたいじゃないか。
僕はね、クラシルさんに「大丈夫だよ」って言いたいんじゃないんだ。
「気にする必要なんてどこにあるんだ? それは僕も同様だよ」
って言いたいんだ。
兄さんの受け売りかもしれないけど‥「そんなこと考えるなんて時間が無駄」なんだよ。
だけど‥今はそんな話をしたって「気休め」に聞こえちゃうだろう。
だから、今は言わない。
人に信用してもらうのに必要なのは、百の「いい言葉」なんかじゃない。ましてや「僕はこうしてきた。君もそうするべきだ」っていう‥経験談とかじゃ絶対ない。「僕はこんなことがあった」って語って‥その言葉に「僕もそうなれるだろうか? 」って相手が思うのは‥いいかもしれないけど‥経験談をアドバイスとして「こうするべき」って押し付けるのは‥きっと違うと思う。
答えはきっと、それぞれ、自分の中にしかない。他人に出来ることは、傍にいるよって伝えること位だって思う。
時々ね‥不安過ぎて、何が正しいかわからなくって‥自分を見失う時もあるだろう。そんなとき「僕は君が大事」って言って傍に居てくれる人がいる。それだけで、人って救われる。
傍に居て、一緒に考えたり、悩んだり、泣いたり怒ったり。
それが‥対等な関係ってことだと思う。
アドバイスするとか‥完璧上から目線じゃん? そういうの‥僕は一番嫌いなんだ。
僕のこと可哀そうがって「大丈夫だよ」とか‥何なの? って思う。「兄さんにないもの君も持ってるかもしれないじゃん? 」って‥じゃあ、お前は持ってんのかよって思う。「人の趣味はそれぞれだから‥俊哉君のこといいって思う人もいるかもしれないじゃない? 」って‥遠回しに「私は趣味じゃないけど」って言ってるよね?
私はそうじゃないけど、きっと誰かが。
僕のこと、自分で掬い上げる気が無いんだったら‥そういうこと、言わないで?
僕を可哀そうがる人間なんて、僕は絶対好きになれないし、絶対友達になろうなんて思えない。
僕はきゅっとクラシルさんにしがみついた。
僕は‥誰かにクラシルさんのこと選んで欲しいんじゃない。‥僕が、クラシルさんと一緒に居たいんだ。そうおもった。
恋人じゃなくたって、‥僕はクラシルさんの「何か」になりたい。
僕を抱きしめ返すクラシルさんの声が、頭の上から聞こえて来る。
‥まるで、子守唄みたいな優しい声。
「‥俊哉が住んでたところはどんなところなんだろうな。
容姿で人を判断するようなところってのは‥変わらないみたいだけど‥でも、俊哉は他の奴らみたいに俺に対して嫌悪感を露わにしない。
もしかして‥俊哉だけが特別なのかな」
優しい静かな声は‥だけど、ちょっと苦しそうに聞こえて、心臓がぎゅっと痛んだ。
「特別な人間‥」
クラシルさんがポツリ‥と呟く。
「そんな人間がいるんだって。
昔この国にそれはそれは醜い王子様がいて‥皆に忌み嫌われて一人で寂しく暮らしていたらしい。そんな時、美醜に分け隔てがない‥特別な人間が現れて、王子様を愛し、二人は幸せになったって昔話があるんだ」
昔話?
僕は視線だけで、クラシルさんを見上げる。クラシルさんが小さく頷く。
「伝説だよ。だけど、この国の醜い者たちの唯一の希望なんだ。
だけど、ある時醜い男が美しい人と結婚したんだ。周りの人たちは「脅されたのか? 」って疑ったが‥美しい人は「心からこの人が好きなんだ」って笑った。‥ホントに幸せそうに。
皆はその時、あの昔話を想い出したんだ。
もしかしたら、特別な人は‥御伽噺の存在じゃなくて‥実存するんじゃないかって。
そして‥探し出された。
そんな特別な人たちがいるところが‥秘宝館だ」
ぼそぼそと‥クラシルさんが話し始めた話は‥思った以上に「胸糞悪い話」だった。
曰く
秘宝館とは、醜い人間に対して耐性がある「特別な人間」(← 好みの問題じゃね?! って思ったけど‥この国の人間は、「醜い人間」のことを同じ人間だと認識できないレベル(どんだけだ! )で嫌悪するのが普通らしく、耐性のある一部の「特別な人間」はそんな人たちにとってそれこそ‥女神レベルに有り難い人ってことになる‥らしい。‥理解できないな! )と普通だったらまあ結婚はおろか誰かとお付き合いも絶望的な「他人から目すら合わせてもらえない」「醜い」人たちとの結婚をサポートすることを目的に政府公認で開設された結婚斡旋所らしいのだ。
というのも、大柄な彼らは力が強い者が多く、国防や建築等「力が必要な事業」に重宝されている。
そんな彼らが結婚できず死に絶えてしまったら国家の存続が危うくなる‥ということらしい。(←そんな国滅びてしまえ、って思うけどね! )
そこで、政府は「特別な人間」を国の威信をかけて国内外から集めてきて‥秘宝館を立ち上げた、と。
秘宝館にいる接客員は、会ってお話するだけの「つぼみ姫」と、秘宝館の職員同行でお出かけしてくれる「花姫」がいる。ここはあくまで出会いの場で、娼館のように身体の関係を結ぶような場所ではないらしい。
「特別な人間」は、秘宝館から手厚い保護を受けており、その子たちが嫌がるようなことは客にもさせない。その為に出会いの場には職員が「護衛として」控えている‥らしい。
「‥成程」
つまり、おさわり厳禁、違反行為は見逃さないよ! って感じかな?
まあ‥でも、それは大事かも。働いてる子の身体の安全保障は大事だよね。
僕は頷く。
規則で決まっているわけでは無いが、つぼみ姫は18歳~20歳位の「結婚は出来るが、若い部類」の子、花姫は20歳以降って感じ。
そこでつぼみ姫とお話したり、花姫とちょっとしたお出かけをして‥結婚相手に「選んでもらえるように」アプローチして‥つぼみ姫、花姫が了承したなら客は店側に「お礼金」的なものを払い、結婚できるって形らしい。
‥身請けか。
胡散臭い‥何もかも全部。ぼったくり感半端ない。「あくまで店がするのはセッティングだけ」とか言いながら‥モテない奴らに何度もお金を出させて、‥金払いのいい者に「そろそろ相手を斡旋するか~」的な流れなのかも?
そこに、お店の子(特別な人間だっけ? )の希望とか絶対なさそう。
そもそも‥ホントにその子たち、特別な人間? お金で連れてこらて無理やり働かされてるんじゃない? 「大丈夫。私耐性あるんで」とか‥言わされてるだけなんじゃない??
不信感いっぱいの僕に、クラシルさんは苦笑いして、
「‥たしかにね、秘宝館は「財産の多少は問わない」「誰でも利用できる」「結婚は縁のものだし、性格や相性で決まる」って言うけど、やっぱりお金がある客の方が店側から優遇してもらえるのは事実だ。
‥お金が無い者は、会うだけでも何か月も待たされたりするらしい」
って言った。
やっぱりねえ‥
ってことは‥騎士団長で金持ちだったからクラシルさんはそこに通えたし‥結婚相手をゲット出来た‥ってことなのかな? 「その子がお嫁さんですか? 」ってベルクさん言ってたよね?
首を傾げてると(また顔に言いたいことが全部出てたのだろう)クラシルさんは苦笑いして
「結婚が決まって、家族に会いに行くって話になって‥弟を見た彼女が弟に一目惚れして‥義母さんが「じゃあ、カーライル(弟)のところにお嫁さんに来たらいいじゃない」って話になって結婚したんだ。
‥都会とは違い、田舎だったら「普通の人間」でも出会いの場ってのは少ないからね」
って‥衝撃の事実をさらっと公開した。
なんだそりゃあ!!
弟側の花嫁略奪じゃんか! ってか‥義母‥何言ってやがるんだ!! 普通反対するよな!?
でも、相手も相手だよね! 何なの?! クラシルさんの良さを分かる「特別な人間」じゃなかったの?!
‥違うんだろうな。
きっとその子は「特別な人間」ではなくて、お金で雇われた‥売られてきただけの普通の子だったんだろう。だけど、店に言われていやいや結婚に承諾した。だけど‥クラシルさんの家に行って「醜くない」カーライルさんを見て‥醜いクラシルさんと結婚するのが嫌になった。そんな時、カーライルさんのお義母さんに「それでもいいのよ」って優しくそそのかされて‥カーライルさんと結婚することになった。
「‥‥」
呆れ果てて言葉も出ない。クラシルさんが可哀そうって思ったけど‥でも、結婚する前に気付けて良かったかもって、むしろ思ったよ。
‥でも、相手の子が100悪いわけじゃない。聞けば、18歳の店に入ったばかりのつぼみ姫だったらしい。いうならば、成人したてのお嬢さんだ。きっと、貧しさで売られてきて‥店に言われるまま結婚を決められたんだろう。‥どう考えても、店側が悪い。
絶対、この事業‥めちゃ悪徳事業だよ。
特別な人間って偽って、お金の為に逆らえない弱い立場の人間を利用して、結婚させて、お金を巻き上げる‥。
ほくほくなのは店側だけで、店の子だって、客だって‥不幸じゃないか‥。
‥でも、まあ‥いることはいるんだろうな。ホントに「特別な人間」。忌み嫌うのは、好みの問題じゃなくて、遺伝子レベルの問題みたいだから‥僕みたいに異世界から来た人間とか、その子孫‥とか?
元々はそういう子を集めてたのかもしれないけど、そういう子は多分、ホントに少ない。
だけど‥特別な人間の存在を信じて‥願ってやまない「醜いとされる人間」は‥本当に多い。需要は尽きない。‥なら、無理やりでも何でも供給しなきゃねって‥なってるのかも。
悔しさに唇をかんだ僕は、
この国は‥本当に‥なんて悲しくて‥なんて病んでいる国なんだ‥
って思った。
「俊哉はまだ子供だから‥そんなこと知らなくてもおかしくないよ」
って言ったんだ。
‥子供じゃないですってば。
僕が反論しようとすると、クラシルさんはふっと微笑んで‥
「出来れば知らずにいられたらいいのにね」
優しく僕の頭に手を置いた。そんなクラシルさんの顔を見てたら‥
なんで‥そんな寂しそうな顔をするの? 僕はそんな貴方に何かできることはない?
って‥悲しくなった。
きっと、また表情‥雰囲気かな? に出てたんだろう、クラシルさんは苦笑いして「大丈夫だよ。俊哉は優しいな」って呟いた。
僕は、クラシルさんを見上げる。ローブを被っているから、きっとクラシルさんに見えてるのは、僕の口元だけだろう。
だけど‥僕らの関係は今はそれでいい気がする。
今僕がローブを脱いで「僕は僕でこの通り顔にコンプレックス持ちなんです。お互い様だよね」って言っても‥仕方がない。傷をなめ合うのが僕らにとっていい関係なわけがない。それにね、「僕もなんだよ」っていうってことは、「君だけじゃない」って‥クラシルさんのことを僕同様の悪い物って見てるみたいじゃないか。
僕はね、クラシルさんに「大丈夫だよ」って言いたいんじゃないんだ。
「気にする必要なんてどこにあるんだ? それは僕も同様だよ」
って言いたいんだ。
兄さんの受け売りかもしれないけど‥「そんなこと考えるなんて時間が無駄」なんだよ。
だけど‥今はそんな話をしたって「気休め」に聞こえちゃうだろう。
だから、今は言わない。
人に信用してもらうのに必要なのは、百の「いい言葉」なんかじゃない。ましてや「僕はこうしてきた。君もそうするべきだ」っていう‥経験談とかじゃ絶対ない。「僕はこんなことがあった」って語って‥その言葉に「僕もそうなれるだろうか? 」って相手が思うのは‥いいかもしれないけど‥経験談をアドバイスとして「こうするべき」って押し付けるのは‥きっと違うと思う。
答えはきっと、それぞれ、自分の中にしかない。他人に出来ることは、傍にいるよって伝えること位だって思う。
時々ね‥不安過ぎて、何が正しいかわからなくって‥自分を見失う時もあるだろう。そんなとき「僕は君が大事」って言って傍に居てくれる人がいる。それだけで、人って救われる。
傍に居て、一緒に考えたり、悩んだり、泣いたり怒ったり。
それが‥対等な関係ってことだと思う。
アドバイスするとか‥完璧上から目線じゃん? そういうの‥僕は一番嫌いなんだ。
僕のこと可哀そうがって「大丈夫だよ」とか‥何なの? って思う。「兄さんにないもの君も持ってるかもしれないじゃん? 」って‥じゃあ、お前は持ってんのかよって思う。「人の趣味はそれぞれだから‥俊哉君のこといいって思う人もいるかもしれないじゃない? 」って‥遠回しに「私は趣味じゃないけど」って言ってるよね?
私はそうじゃないけど、きっと誰かが。
僕のこと、自分で掬い上げる気が無いんだったら‥そういうこと、言わないで?
僕を可哀そうがる人間なんて、僕は絶対好きになれないし、絶対友達になろうなんて思えない。
僕はきゅっとクラシルさんにしがみついた。
僕は‥誰かにクラシルさんのこと選んで欲しいんじゃない。‥僕が、クラシルさんと一緒に居たいんだ。そうおもった。
恋人じゃなくたって、‥僕はクラシルさんの「何か」になりたい。
僕を抱きしめ返すクラシルさんの声が、頭の上から聞こえて来る。
‥まるで、子守唄みたいな優しい声。
「‥俊哉が住んでたところはどんなところなんだろうな。
容姿で人を判断するようなところってのは‥変わらないみたいだけど‥でも、俊哉は他の奴らみたいに俺に対して嫌悪感を露わにしない。
もしかして‥俊哉だけが特別なのかな」
優しい静かな声は‥だけど、ちょっと苦しそうに聞こえて、心臓がぎゅっと痛んだ。
「特別な人間‥」
クラシルさんがポツリ‥と呟く。
「そんな人間がいるんだって。
昔この国にそれはそれは醜い王子様がいて‥皆に忌み嫌われて一人で寂しく暮らしていたらしい。そんな時、美醜に分け隔てがない‥特別な人間が現れて、王子様を愛し、二人は幸せになったって昔話があるんだ」
昔話?
僕は視線だけで、クラシルさんを見上げる。クラシルさんが小さく頷く。
「伝説だよ。だけど、この国の醜い者たちの唯一の希望なんだ。
だけど、ある時醜い男が美しい人と結婚したんだ。周りの人たちは「脅されたのか? 」って疑ったが‥美しい人は「心からこの人が好きなんだ」って笑った。‥ホントに幸せそうに。
皆はその時、あの昔話を想い出したんだ。
もしかしたら、特別な人は‥御伽噺の存在じゃなくて‥実存するんじゃないかって。
そして‥探し出された。
そんな特別な人たちがいるところが‥秘宝館だ」
ぼそぼそと‥クラシルさんが話し始めた話は‥思った以上に「胸糞悪い話」だった。
曰く
秘宝館とは、醜い人間に対して耐性がある「特別な人間」(← 好みの問題じゃね?! って思ったけど‥この国の人間は、「醜い人間」のことを同じ人間だと認識できないレベル(どんだけだ! )で嫌悪するのが普通らしく、耐性のある一部の「特別な人間」はそんな人たちにとってそれこそ‥女神レベルに有り難い人ってことになる‥らしい。‥理解できないな! )と普通だったらまあ結婚はおろか誰かとお付き合いも絶望的な「他人から目すら合わせてもらえない」「醜い」人たちとの結婚をサポートすることを目的に政府公認で開設された結婚斡旋所らしいのだ。
というのも、大柄な彼らは力が強い者が多く、国防や建築等「力が必要な事業」に重宝されている。
そんな彼らが結婚できず死に絶えてしまったら国家の存続が危うくなる‥ということらしい。(←そんな国滅びてしまえ、って思うけどね! )
そこで、政府は「特別な人間」を国の威信をかけて国内外から集めてきて‥秘宝館を立ち上げた、と。
秘宝館にいる接客員は、会ってお話するだけの「つぼみ姫」と、秘宝館の職員同行でお出かけしてくれる「花姫」がいる。ここはあくまで出会いの場で、娼館のように身体の関係を結ぶような場所ではないらしい。
「特別な人間」は、秘宝館から手厚い保護を受けており、その子たちが嫌がるようなことは客にもさせない。その為に出会いの場には職員が「護衛として」控えている‥らしい。
「‥成程」
つまり、おさわり厳禁、違反行為は見逃さないよ! って感じかな?
まあ‥でも、それは大事かも。働いてる子の身体の安全保障は大事だよね。
僕は頷く。
規則で決まっているわけでは無いが、つぼみ姫は18歳~20歳位の「結婚は出来るが、若い部類」の子、花姫は20歳以降って感じ。
そこでつぼみ姫とお話したり、花姫とちょっとしたお出かけをして‥結婚相手に「選んでもらえるように」アプローチして‥つぼみ姫、花姫が了承したなら客は店側に「お礼金」的なものを払い、結婚できるって形らしい。
‥身請けか。
胡散臭い‥何もかも全部。ぼったくり感半端ない。「あくまで店がするのはセッティングだけ」とか言いながら‥モテない奴らに何度もお金を出させて、‥金払いのいい者に「そろそろ相手を斡旋するか~」的な流れなのかも?
そこに、お店の子(特別な人間だっけ? )の希望とか絶対なさそう。
そもそも‥ホントにその子たち、特別な人間? お金で連れてこらて無理やり働かされてるんじゃない? 「大丈夫。私耐性あるんで」とか‥言わされてるだけなんじゃない??
不信感いっぱいの僕に、クラシルさんは苦笑いして、
「‥たしかにね、秘宝館は「財産の多少は問わない」「誰でも利用できる」「結婚は縁のものだし、性格や相性で決まる」って言うけど、やっぱりお金がある客の方が店側から優遇してもらえるのは事実だ。
‥お金が無い者は、会うだけでも何か月も待たされたりするらしい」
って言った。
やっぱりねえ‥
ってことは‥騎士団長で金持ちだったからクラシルさんはそこに通えたし‥結婚相手をゲット出来た‥ってことなのかな? 「その子がお嫁さんですか? 」ってベルクさん言ってたよね?
首を傾げてると(また顔に言いたいことが全部出てたのだろう)クラシルさんは苦笑いして
「結婚が決まって、家族に会いに行くって話になって‥弟を見た彼女が弟に一目惚れして‥義母さんが「じゃあ、カーライル(弟)のところにお嫁さんに来たらいいじゃない」って話になって結婚したんだ。
‥都会とは違い、田舎だったら「普通の人間」でも出会いの場ってのは少ないからね」
って‥衝撃の事実をさらっと公開した。
なんだそりゃあ!!
弟側の花嫁略奪じゃんか! ってか‥義母‥何言ってやがるんだ!! 普通反対するよな!?
でも、相手も相手だよね! 何なの?! クラシルさんの良さを分かる「特別な人間」じゃなかったの?!
‥違うんだろうな。
きっとその子は「特別な人間」ではなくて、お金で雇われた‥売られてきただけの普通の子だったんだろう。だけど、店に言われていやいや結婚に承諾した。だけど‥クラシルさんの家に行って「醜くない」カーライルさんを見て‥醜いクラシルさんと結婚するのが嫌になった。そんな時、カーライルさんのお義母さんに「それでもいいのよ」って優しくそそのかされて‥カーライルさんと結婚することになった。
「‥‥」
呆れ果てて言葉も出ない。クラシルさんが可哀そうって思ったけど‥でも、結婚する前に気付けて良かったかもって、むしろ思ったよ。
‥でも、相手の子が100悪いわけじゃない。聞けば、18歳の店に入ったばかりのつぼみ姫だったらしい。いうならば、成人したてのお嬢さんだ。きっと、貧しさで売られてきて‥店に言われるまま結婚を決められたんだろう。‥どう考えても、店側が悪い。
絶対、この事業‥めちゃ悪徳事業だよ。
特別な人間って偽って、お金の為に逆らえない弱い立場の人間を利用して、結婚させて、お金を巻き上げる‥。
ほくほくなのは店側だけで、店の子だって、客だって‥不幸じゃないか‥。
‥でも、まあ‥いることはいるんだろうな。ホントに「特別な人間」。忌み嫌うのは、好みの問題じゃなくて、遺伝子レベルの問題みたいだから‥僕みたいに異世界から来た人間とか、その子孫‥とか?
元々はそういう子を集めてたのかもしれないけど、そういう子は多分、ホントに少ない。
だけど‥特別な人間の存在を信じて‥願ってやまない「醜いとされる人間」は‥本当に多い。需要は尽きない。‥なら、無理やりでも何でも供給しなきゃねって‥なってるのかも。
悔しさに唇をかんだ僕は、
この国は‥本当に‥なんて悲しくて‥なんて病んでいる国なんだ‥
って思った。
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