この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

文月

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7.ひほ‥が何かわかりました。

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 あの後、市場に食事を買いに行ったんだけど、ホントこの世界の人たちって感じ悪いわ~って思った。
 高身長が怖いっていっても、そんなの‥商売人ならそんなそぶり見せちゃダメでしょ。‥そもそも、商売人じゃなくても、人間として他人にそういう態度取るの良くないって思うワケ。
 そんなことを思いながらご飯を食べてたら、顔に出てたらしい。
「‥どうした? 機嫌がよくないようだけど? 」
 向かい合って座っていたクラシルさんが首を傾げている。
「お店の人がああいう態度とか、有り得ないなって思って。僕も接客業をしてたから、余計にそう思うんです。
 ‥僕はこの容姿だから、接客側の僕もね、お客さんから「君じゃなくて、あの子に持ってきてもらいたかったな」とか‥可愛い同僚の方を見ながら言われることはあるんです。そう言うこと言われたら、‥慣れてるとはいえやっぱり腹が立つし、それを聞いてた同僚だって嫌な気持になるんです。「慰めていいものか‥」って微妙な空気になるんです。
 言った人にとっては何気ない言葉かもしれないんですけど、言われた人や周りの人は凄く嫌な気持ちになるんです。でも、仕事だし仕方がないかなって‥
 僕はね、それっ位の覚悟をもって働いてるんです。なのに‥さっきの人はなんです? 接客側の人間なのに‥お客さんにああいう態度取るとか! 在り得ませんよ!   」
 僕はつい力説してしまった。
 だって、それっ位腹が立ったんだ。
 僕の場合も‥まあね、お客だからっていってお店の人に何言っていいわけじゃない。そういうのは、絶対許されない。
 だけど‥僕的にはね、折角お金払ってご飯を食べに来てくれてるんだ、そこでわざわざ波風立てるて‥お互い気分悪くなるのもどうかなって思うんだ。だから‥まあ、僕のことだったら我慢できるし‥黙っておこうかなって。
 それは、僕のバイト先が観光地の団体客向けのお食事処だったってこともある。
 それこそ、それしか見るとこない様な辺鄙な田舎の、「キレイだけど‥別にもう一度見たいかって言われると微妙」って感じの観光スポット。‥だから、多分もう二度と会わないであろう人たちだ。
 あのお客さんはきっと、旅行で気が大きくなって、もう二度と会わないであろう店員につい大きなこと言っちゃっただけで、普段は普通の‥ストレス溜めたサラリーマンなのだろう。
 そんな人にさ「おじさん、それはセクハラですよ」って僕が説教する。それを聞いたらオジサンは反省するだろう。普通の人だろうから。‥だけどね、それでおじさんの一日台無しだよ。折角旅行に来てるのに、「あ~俺は何を言ってしまったんだ~」って思うよ。周りのお客さんも思うだろうしね。で、その結果「恥ずかしい‥もう、こんなところ二度と来れない‥」ってなるよ。
 そういうのって、嫌だよね?
 きっとね、僕が言わなくても、その人も日常に戻って「嫌なこと言ったな」って反省するだろう。

 ‥って期待してる。皆が皆良心を持ってるわけじゃないって知ってるけど、少なくとも僕はそう信じてる。「今頃はあの人も自分の言ったことを反省してる頃だろう」って思ってる。
 反省して、恥ずかしい思いしたらいいなって! だけど、それは僕の知らないところでしてくださいね! って。

 そんなことを思い‥
 余計にさっきの商売人に腹が立った。
 
 そもそもさ。僕らみたいな「もう二度と会わないであろう店員」じゃなくて、さっきの人はいつもあそこにいるわけでしょ? 常連客になってくれるかもしれないお客さんにあの態度とか! 商売なめてんの? 商売人なら、慣れる努力をしろって話だ。
 僕はそんな感じで怒ってたんだけど‥
 クラシルさんは何かを考えるように‥僕を見た。

「俊哉は接客業で働いてたの? 」
 ぽつっとクラシルさんが聞いて来た。何かを探るような‥ちょっと不安そうな表情が気になる。

 ん?

 僕は「ええ」と小さく頷きかけ‥いや、これは慎重に答えないといけないぞっと思った。
 さっき、ちらっと娼館っぽいところが見えた。娼館勤務も‥接客業って言われたらそうだ。職業に貴賤はないが、やっぱりそういう職業についてる人はちょっと‥って人もいないことはないだろう。そういうの言ってはいけないけど‥誤解させてはいけないし‥僕もそれは嫌かも。
 でも‥観光客相手の食事処って言っても分からなくない? ここにはなさそうだし。ここは屋台で買って食べ歩きスタイルが主流って感じだった‥。もしかして、レストランみたいに食べ物をお店で提供するところもない?? 
 いやでも、さっきメインストリートで「お洒落なカフェ」っぽい店見た気がする!
「お食事を提供するカフェの店員でした」
 ‥多分、これでいいはず。
 僕がそう答えるとクラシルさんは明らかにほっとしたような表情になった。
 そして、がばっと頭を下げると
「ごめん! ‥そっかカフェの店員さんか‥。接客について凄くこだわりを持ってるし、俺に対しても嫌な態度取ったりしないし‥一瞬、秘宝館で働いてるのか? って思った」
 って言ったんだ。
 謝られちゃった。やっぱり、そういう風に聞こえてたんだね。だが‥

 秘宝館って何ぞや。

 さっきもあの騎士団の兄ちゃんが言ってたよな‥そういう単語‥ひほ‥って言いかけて、クラシルさんに(多分)睨まれていうの止めた‥って感じだった。
 あんまり公に言いたくないようなとこなのかな? 
 だけど、秘宝館には‥接客にこだわりをもってる接客員がいる。
 そして‥多分だけど、秘宝館に通うにはお金がかかる。そして、騎士団長なクラシルさんは、お金があって‥あの団員さんは「僕も出世して通いたい」みたいな話をしたってことか?? ‥どんなところなんだ?? 秘宝館。高級な‥娼館的なところ?? いや、別に‥高級なバーかもしれないし‥いや、何の流れで秘宝館の話が出た? ああそうか‥嫁がもらえるって話だった‥。
「俊哉? 」
 クラシルさんが不安そうな表情で聞いて来た。僕が慌てて顔を上げて「あ。すみません。ぼうっとしてました」っていうと、ちょっと眉を寄せて‥
「ごめん。俺は‥思ったこと直ぐ言っちゃうから‥俊哉に不快な思いさせたかもって‥。もしかして‥俊哉は秘宝館のこと知らない? 」
 うかがうような視線を僕に向けた。
 はい、知りません。
 僕が頷くと、
「秘宝館は、政府が運営している結婚斡旋所なんだ」
 苦笑いしてクラシルさんが言った。
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