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閑話 手紙

引き続き、手紙

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 手紙③

 四朗 → 紅葉(下書き)

「お手紙有難うございます。
 趣味は、特にないです。
 剣術の練習を毎日していますが、博史が起きる7時までにして下さい。
 紅葉さんも剣術をされると聞きましたので‥
 5歳の弟の博史がなんでも俺のマネをしたがるので、竹刀を振り回して怪我をしたら大変だから。
 博史は、俺だけじゃなく幼馴染の武生のマネもしたくて仕方がないから、危ないことを博史の前でしない様にしてあげてください。
 博史は元気いっぱいのかわいい子ですよ!
 近頃俺たちが学校に行っている間は虫捕りにハマっているようですが、虫はお嫌いじゃないですか? 
 お嫌いでしたら言ってください。部屋で飼育しているカマキリとカブトムシ、ゴマダラカミキリを逃がすように言っておきます。

 紅葉さんは妹さんがおられると聞きましたが、お歳はおいくつですか? 博史と同じくらいですか? その位の歳だったら、女の子も男の子と同じような感じでしょうか?
 その辺りは少し心配です」


「博史‥。あの頃虫捕りにハマってたのか! 」
 俺は今の博史を想い出し‥笑ってしまった。
 そして、
「逃がすように言っとくって‥! 博史可哀そうじゃんね! 」
 で、また大笑い。

 博史! 虫逃がせ! 
 え!? なんで!? 兄ちゃんの馬鹿!!
 って感じの会話が交わされたのかな??

 俺は当時を想像して笑ってしまった。
 あくまで想像して‥だ。
 ‥そんな記憶も俺の中には残っていないから。
 
 俺は(しんみりなりそうになるのを)首を振って断ち切って、次の手紙を手に取った。

 手紙④

 紅葉 → 四朗

「お手紙有難うございます。
 素振りの件、了解しました!
 趣味の件ですが、
 私はお花をよく見ているみたいです。
 花屋さんに花を買いに行くってことはないんですが、道端に咲いてる花をよく見たりしてます。 
 この前父さんに言われて気付きました。こういうことって、自分では案外気付かないですよね。
 父さんの中では、私 = 花好き ってイメージみたいです。
 あと‥これは母さんに言われたんですが、
 母さんの中の私の認識 デラウェア好き らしいです。
 私は好き嫌いとか特にないと思ってるんですが、母さんの中では‥って話です。
 母さんがデラウェアを出して来たら美味しそうにむしゃむしゃしてください! (お嫌いじゃなかったら良いんですが)

 妹は7歳です。小学2年生です。
 凄くしっかりしてて、私のお姉さんみたいな感じです。
 しっかりしてるって言っても、えらそうにするとかじゃなくって、私のお世話をしてくれます。
 買い物に行って服をアドバイスしてくれたり、怪我の手当てをしてくれたりしてくれます。
 そんなに上手じゃないけど、私の為に一生懸命な千佳はホントに優しい子だと思います。
 千佳は、他の女の子と違ってテレビアニメを見たり、人形で遊んだりはしません。
 黙って本を読むのが好きみたいです。
 あと、ピアノが好きです。バイオリンも弾くんですよ! (バイオリンはまだ上手ではないです)
 私の道着が破れていたら、直してくれます。
 だけど、やっぱりあまり上手じゃないから後からお母さんがぬい直してくれているのは千佳には内緒です。
 私の為に、レモンのハチミツ漬けを作ってくれます。
 千佳はホントに姉思いの優しい子です。
 
 あと‥
 すみません。
 虫はそんなに好きじゃないです。だけど、カマキリとかそういう「しっかりした感じの虫」は大丈夫です。チョウの幼虫は‥すみません、触れません。チョウやガも急に飛んで来たら怖いので‥ちょっと苦手です‥
 でも、頑張って我慢するので、弟さんの虫を逃がしたりしないであげてください! 」


「千佳ちゃんって‥6歳とは思えないしっかりした子なんだな~。
 あと、虫逃がさないであげてって! ‥面白い」
 それと‥デラウェアむしゃむしゃ(笑)
 でも、デラウェアは言われなくてもむしゃむしゃしちゃうよね? 寧ろ他にどうやって食べる? 上品にポツリポツリ‥? そんなの美味しくないじゃん。

 そんな感じで俺は二人の文通を「ただの面白い手紙のやり取り」って風に読んじゃってたんだ。
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