相生様が偽物だということは誰も気づいていない。

文月

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三章.意識と無意識

8.人間としての優しさは、だけど、男前がすると誤解されるから‥困る。って(要らない)心配する相崎。

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 四朗の関係者なんかに関わりたくないはずだのに‥、どうしてこんなに気になるんだろう。俺はどうしてしまったのだろう。
 バクバクする心臓を抑えて、相崎は眉を寄せた。
 幸い四朗は気付いていない(※ 気付いてます)それならこのまま関わらない方がいいだろう。
 相崎は、ひとつ大きく息を吐いて、その場を後にした。

 俺と四朗の関係。
 どんな関係かって‥
 別に無関係だ。
 家同士、仕事上関わらなきゃいけない関係だから‥俺は昔から奴と相馬とあと‥相模と「仲良く」している。
 それが、次期当主としての務めだからだ。

 四家の関係について、爺さんが昔御伽噺みたいなのをしてくれたことがあった。
「御先祖様は四人兄弟の長男だった。
 あの頃は家の跡継ぎである長男以外の子どもは扱いが悪かった。だけど、それを祖先は心由としなかった。
 ご先祖様は自分の受け継いだ遺産を兄弟四人に分けて、兄弟にそれぞれ渡して、独立して家を持たせた。それが相崎(長男)相模(次男)相馬(三男)相生(四男)だった。
 ご先祖様は偉い人だったんだ。
 それだけじゃなく、兄弟で「独立しても、兄弟協力して支え合っていこう」って言って、一緒に仕事をするようになったんだから」
 って言っていた。
 幼い頃の(純粋な)俺が
「兄弟はみんな仲が良かったの? 」
 って聞いたら、爺さんは苦笑いして、
「そうでもなかったみたいだな。‥残念ながら。ご先祖様の日記には彼の赤裸々な気持ちが書かれていた。日記にまで自分の気持ちを偽る必要はないからね」
 って言ったんだ。
 爺さんの話(というか、祖先の日記)によると
「次男(相模)は、たよりにはなったけど、なにか得体が知れなくて不気味だったし、三男は知識をひけらかす感じが癪に障ったし、四男は要領がよくって外面が良くって‥とにかく人に取り入るのだけが上手かった。時々目が黄色く光るのも薄気味悪かった。それは、次男にも言えた。きっと他人に知られたら「狐憑き」だって言われるだろう」
 って書いてあったらしい。
 ‥独立したのは、狐憑きの弟たちと縁を切りたかったから‥ってのもあったんだろう。三男ともうまく行ってなかったようだしな‥。
 だけど、気に食わなければ当主になった時に家から放り出してもよかっただろうに、財産を持たせて独立させてあげるなんて‥ご先祖様はなんてできた人だったんだろうって思う。しかも職も斡旋してあげるなんて!!
 流石俺の御先祖様だ。

 まあ‥そんな関係だ。
 この時代、新しい時代を生きる俺たちが昔に囚われて‥「今まで通り」をキープしなければいけない理由はどこにもない。
 もういいんじゃないか? って思う。
 だけど、それは‥俺一人で決めていいものでもないってことは分かる。
 そのためには、さっさと親父に認められて後継者として認められないといけない。

 先に次代当主となった四朗。
 うちの爺さんや父親にも一目置かれていた四朗。
 可愛げが無く、人間味のない完璧人間。
 だった。

 だけど‥
 
 さっき見た、不安そうな苦しそうな姿。
 否、さっき見たのは四朗の身代わりだ。
 身代わりが「不安そうで苦しそうなワケ」それは、‥身代わりでいることが苦しいから以外にないだろう。
 女の子を苦しめてまで、身代わりなんかとんでもないことを任せる四朗が許せない。
 ご先祖様の言う通り、アイツは多分人間じゃないんだろう。
 狐狸妖魔の類だから、人の気持ちなんてちっともわかっていないんだろう。

「だけど、そこで助けたら‥絶対惚れられちゃうよな~。‥そういうややこしいの困るんだよな~」

 要らない心配をする相崎だった。
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