162 / 238
十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル
7.偶然じゃなくて。
しおりを挟む
「今と一緒だ」
意外って顔をしたヒジリが言った。
「ああ、今と一緒だな。‥そして、デュカとリゼリア夫婦以前にはなかったことだ」
「え? 」
ヒジリがナラフィスを見て、ナラフィスが頷く。
「デュカとメレディア‥史上最悪な交配実験により、リバーシと魔法使いは生まれた。‥それ以前には、リバーシも魔法使いもこの世界にはいなかったんだ」
ヒジリが目を見開く。
「え‥だって‥」
「桔梗さんもきっとリバーシだったよ? 」
同時代、異世界、同世代の桔梗もリバーシだった。
今まで、この世界には魔法使いもリバーシもいなかった。でも、異世界にはいたっていうこと。
それを、交配実験をした史上最悪の「調停者」は知っていたのだろうか。
可能性は、二つだ。
① 事実として知っていたから、自分の世界でも試したくなった。
② 全く知らなかった。禁忌の交配も単なる好奇心。
「②‥だけど、禁忌の交配をすればリバーシと魔法使いが産まれるってことは分かってた‥感じがするんだよな。知ってたじゃなく、あくまで分かってた。
きっと、調停者は地球で言うところの「科学者」って奴だと思う」
ヒジリが言うとナラフィスも頷いた。
「それが一番あり得るな。研究馬鹿‥狂った奴ってのはいるからな」
と、魔力枯渇寸前まで異世界渡りの実験を「身体を張って」までしていた科学者が言う。
‥説得力あるわ~。
なんてヒジリは思ったが口には出さなかった。
「じゃあ‥桔梗さんがメレディアさんに会ったっていうのは単なる偶然なのかな」
う~んとヒジリが腕組みをして考えていると、
「メレディア王がその桔梗さんと会った場所にいくって確率は、他の場所に行く確率より高かった‥とか言う事はないだろうか。
だって、異世界からの桔梗さんが現れる様な場所だ。
その場所はリバーシにとって特別な場所ってことだろう。
ミチルが「現れた」場所だって、リバーシにとっては特別な場所だったからな」
「特別な場所? 」
ヒジリが反芻するとナラフィスが頷いた。
反芻したものの、ヒジリにも「そんな場所」には覚えがあった。
なんとなくわかるけど‥確認の為‥っていうか、形式美だ。
会話のリズムっていうか‥「ここは聞いといた方がいい」っていう「おきまり」って奴だ。
で、ナラフィスの説明というのが
「特別な場所というか‥リバーシは「身体の充電中、飛ばされやすい場所」ってのがある。それは個人的に‥というより、リバーシの共通の場所なようだ」
だった。
自分の「何となくわかる気がすること」が間違ってなかったので、安心した。
やっぱりそうだった。
あの時、他のリバーシも飛ばされてきてたもん。
っていうか‥そうか‥幼い頃、‥身体が疲れた時なんかに‥気が付けばあの湖に「飛ばされていた」のは偶然とか前世死んだ場所的な「個人的に関わりのある場所」じゃなくって、リバーシ共通の「飛ばされやすい場所」だったのか~。
そして、‥それは俺だったら疲れた時だったんだけど‥(とにかく)自分の意思とは関係なしに飛ばされているようだということ。だから、あそこに飛ばされてきた幼いリバーシはぽかんとした顔をしていたのだろう。
「その特別な場所に飛ばされていることを弟妹のリバーシから聞かされたメレディア王はきっと、弟妹を探しにその湖に行ったのだろう。そして、そこで桔梗さんに会った」
「他の人たちには会わなかったのかな」
ヒジリが首を傾げる。
出会ったら、きっと大騒ぎだ。
だって、王様なんだもん。‥その時は王子様だったかもしれないけどね。
「あの頃は、メレディア王の弟妹以外にリバーシはいなかったし、リバーシのことは今以上に分からないことだらけだった。だから、メレディア王は弟妹がやること言う事を全部日記に書き留めて‥観察日記のようなものをつけていた」
え、怖い‥
「‥なんで? 」
「メレディア王以外が全員、今までいなかった未知なるリバーシと魔法使いだったんだ。未知なる存在に国民は皆恐れた。そんな存在だったんだ。リバーシも魔法使いも。それこそ、今の比じゃなかったと思う。
メレディア王は「普通の人」だったんだけど、きっとメレディア王は不安に思っていただろう。「いつか自分もそうなるんじゃないか」って。だから、観察していた」
「う~ん。なるほどねえ‥。で、メレディア王は美人な桔梗さんに一目惚れして弟妹関係なくてもあの湖に通うようになった」
なるほどねえ‥と何度か呟いたヒジリにナラフィスが「ん? 」という顔をする。
「なんだ? その湖って。ヒジリ、さっきどこに飛ばされてたんだ? 」
「なんて名前か知らないけど、結構昼間は有名な湖だよ」
いや、ホント名前が言えたらいいのだけどね。
ヒジリが「すみませんね」って‥照れ笑いする。
「あ、でも‥なんかちょっと違ったかも‥なんか、広かった‥というかなんか‥なんかわかんないけど違うかった」
それは、「その湖の過去」だからじゃないか?
残留思念を読んだんじゃなくって、過去に「飛ばされて」二人に会ったってことは考えられないか?
あるかもしれない。
だって、ヒジリの魔力が(普通の人にとってはやっぱり十分すぎるほどだけど)ヒジリにしては少ない。つまり、膨大な量の魔力を「使った」ってことだ。
リバーシは「時の属性」の魔力を持っている。なら、スーパー魔力量のヒジリなら過去に行けたっておかしくはない。
あり得ないけど、ヒジリならあるかもしれない。
「その湖に、今から‥は無理だろうから、明日にでも行ってみないか? 」
ナラフィスが
ヒジリの胸の前あたりで(← 二人とも座ってるから)ヒジリの両手を握って、熱い眼差しで(← 研究馬鹿だから)そう言ったあたりで、防音魔法が切れて‥ちょうどミチルが迎えに来た。
机に向き合って、
熱いまなざしをヒジリに向け、両手を握ってデートに誘うナラフィス。
を、目撃するヒジリ大好きなミチル。
超高速移動で、ヒジリをナラフィスからはがしとり、自分の背中に隠す。
「何口説いてるんですか? 」
口調が‥あれだ。マジだ。絶対零度の「冷た~い」口調。背中しか見えないけど、きっと視線もそういう感じなんだろう。
‥うわ~。ナラフィスさん固まってる。蛇に睨まれた蛙ってこんな顔かなって顔してる。
いやね。誤解だからね、ミチル。違うよ、俺全然口説かれたりとかしてませんよ?!
そんな「色っぽい話」とかしてませんからね?
ナツカさんまで、ナラフィスさんを拘束しようとしないで?! 「主の婚約者に不貞を働こうとするとは‥」って感じなの!? 違うよ?!
意外って顔をしたヒジリが言った。
「ああ、今と一緒だな。‥そして、デュカとリゼリア夫婦以前にはなかったことだ」
「え? 」
ヒジリがナラフィスを見て、ナラフィスが頷く。
「デュカとメレディア‥史上最悪な交配実験により、リバーシと魔法使いは生まれた。‥それ以前には、リバーシも魔法使いもこの世界にはいなかったんだ」
ヒジリが目を見開く。
「え‥だって‥」
「桔梗さんもきっとリバーシだったよ? 」
同時代、異世界、同世代の桔梗もリバーシだった。
今まで、この世界には魔法使いもリバーシもいなかった。でも、異世界にはいたっていうこと。
それを、交配実験をした史上最悪の「調停者」は知っていたのだろうか。
可能性は、二つだ。
① 事実として知っていたから、自分の世界でも試したくなった。
② 全く知らなかった。禁忌の交配も単なる好奇心。
「②‥だけど、禁忌の交配をすればリバーシと魔法使いが産まれるってことは分かってた‥感じがするんだよな。知ってたじゃなく、あくまで分かってた。
きっと、調停者は地球で言うところの「科学者」って奴だと思う」
ヒジリが言うとナラフィスも頷いた。
「それが一番あり得るな。研究馬鹿‥狂った奴ってのはいるからな」
と、魔力枯渇寸前まで異世界渡りの実験を「身体を張って」までしていた科学者が言う。
‥説得力あるわ~。
なんてヒジリは思ったが口には出さなかった。
「じゃあ‥桔梗さんがメレディアさんに会ったっていうのは単なる偶然なのかな」
う~んとヒジリが腕組みをして考えていると、
「メレディア王がその桔梗さんと会った場所にいくって確率は、他の場所に行く確率より高かった‥とか言う事はないだろうか。
だって、異世界からの桔梗さんが現れる様な場所だ。
その場所はリバーシにとって特別な場所ってことだろう。
ミチルが「現れた」場所だって、リバーシにとっては特別な場所だったからな」
「特別な場所? 」
ヒジリが反芻するとナラフィスが頷いた。
反芻したものの、ヒジリにも「そんな場所」には覚えがあった。
なんとなくわかるけど‥確認の為‥っていうか、形式美だ。
会話のリズムっていうか‥「ここは聞いといた方がいい」っていう「おきまり」って奴だ。
で、ナラフィスの説明というのが
「特別な場所というか‥リバーシは「身体の充電中、飛ばされやすい場所」ってのがある。それは個人的に‥というより、リバーシの共通の場所なようだ」
だった。
自分の「何となくわかる気がすること」が間違ってなかったので、安心した。
やっぱりそうだった。
あの時、他のリバーシも飛ばされてきてたもん。
っていうか‥そうか‥幼い頃、‥身体が疲れた時なんかに‥気が付けばあの湖に「飛ばされていた」のは偶然とか前世死んだ場所的な「個人的に関わりのある場所」じゃなくって、リバーシ共通の「飛ばされやすい場所」だったのか~。
そして、‥それは俺だったら疲れた時だったんだけど‥(とにかく)自分の意思とは関係なしに飛ばされているようだということ。だから、あそこに飛ばされてきた幼いリバーシはぽかんとした顔をしていたのだろう。
「その特別な場所に飛ばされていることを弟妹のリバーシから聞かされたメレディア王はきっと、弟妹を探しにその湖に行ったのだろう。そして、そこで桔梗さんに会った」
「他の人たちには会わなかったのかな」
ヒジリが首を傾げる。
出会ったら、きっと大騒ぎだ。
だって、王様なんだもん。‥その時は王子様だったかもしれないけどね。
「あの頃は、メレディア王の弟妹以外にリバーシはいなかったし、リバーシのことは今以上に分からないことだらけだった。だから、メレディア王は弟妹がやること言う事を全部日記に書き留めて‥観察日記のようなものをつけていた」
え、怖い‥
「‥なんで? 」
「メレディア王以外が全員、今までいなかった未知なるリバーシと魔法使いだったんだ。未知なる存在に国民は皆恐れた。そんな存在だったんだ。リバーシも魔法使いも。それこそ、今の比じゃなかったと思う。
メレディア王は「普通の人」だったんだけど、きっとメレディア王は不安に思っていただろう。「いつか自分もそうなるんじゃないか」って。だから、観察していた」
「う~ん。なるほどねえ‥。で、メレディア王は美人な桔梗さんに一目惚れして弟妹関係なくてもあの湖に通うようになった」
なるほどねえ‥と何度か呟いたヒジリにナラフィスが「ん? 」という顔をする。
「なんだ? その湖って。ヒジリ、さっきどこに飛ばされてたんだ? 」
「なんて名前か知らないけど、結構昼間は有名な湖だよ」
いや、ホント名前が言えたらいいのだけどね。
ヒジリが「すみませんね」って‥照れ笑いする。
「あ、でも‥なんかちょっと違ったかも‥なんか、広かった‥というかなんか‥なんかわかんないけど違うかった」
それは、「その湖の過去」だからじゃないか?
残留思念を読んだんじゃなくって、過去に「飛ばされて」二人に会ったってことは考えられないか?
あるかもしれない。
だって、ヒジリの魔力が(普通の人にとってはやっぱり十分すぎるほどだけど)ヒジリにしては少ない。つまり、膨大な量の魔力を「使った」ってことだ。
リバーシは「時の属性」の魔力を持っている。なら、スーパー魔力量のヒジリなら過去に行けたっておかしくはない。
あり得ないけど、ヒジリならあるかもしれない。
「その湖に、今から‥は無理だろうから、明日にでも行ってみないか? 」
ナラフィスが
ヒジリの胸の前あたりで(← 二人とも座ってるから)ヒジリの両手を握って、熱い眼差しで(← 研究馬鹿だから)そう言ったあたりで、防音魔法が切れて‥ちょうどミチルが迎えに来た。
机に向き合って、
熱いまなざしをヒジリに向け、両手を握ってデートに誘うナラフィス。
を、目撃するヒジリ大好きなミチル。
超高速移動で、ヒジリをナラフィスからはがしとり、自分の背中に隠す。
「何口説いてるんですか? 」
口調が‥あれだ。マジだ。絶対零度の「冷た~い」口調。背中しか見えないけど、きっと視線もそういう感じなんだろう。
‥うわ~。ナラフィスさん固まってる。蛇に睨まれた蛙ってこんな顔かなって顔してる。
いやね。誤解だからね、ミチル。違うよ、俺全然口説かれたりとかしてませんよ?!
そんな「色っぽい話」とかしてませんからね?
ナツカさんまで、ナラフィスさんを拘束しようとしないで?! 「主の婚約者に不貞を働こうとするとは‥」って感じなの!? 違うよ?!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる