リバーシ!

文月

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四章 人は自分が思うほど‥

8-1.リバーシは、皆病み過ぎてるみたいです。

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(side ヒジリ)


 ‥一晩中の孤独を埋める‥

 ミチルにとって、あのおばあさんの存在は、大きかった。
 そして、同じリバーシの俺‥。
 目が覚めたなら、一晩中一緒に遊べるであろう、同じリバーシ。
 まあ普通に考えると‥眠っているだけの同類を、ずっと待ち続けるっていうのが、‥ちょっと病んでる。
 でも、反対に‥それほど孤独だったってこと。
 それを考えると‥胸が痛くなる。
 特別ミチルが病んでいるわけでは、きっとないんだろう。
 だって、子供だ。

 大人の一晩中と子供の一晩中は絶対に‥違う。

 ‥ただ、その時はそうだったとしても‥、成長して時間の使い方に慣れたり、好きな子ができるなりする。
 所謂、思い込みって奴なんだろう。

 思い込んで、心の中で美化されて、‥絶対視する様になって‥。執着するようになった。
 執着って表現は良くないね。健気っていうんだよね。こういうの。
 初恋は想い出としていつまでも心の中で美しく‥っていうもんね。

 そういうことって‥あるかもしれないなあ。(俺にはないけど)

 だっておばあさんとの出会いでさえ「砂漠で水を得たような‥」って表現するような‥表現力豊かな子供だ。
 いやいやいや。
 俺よ。‥ミチルは健気で片付けてはいけない。
 確かに今ではすっかりお世話になっているが、‥出会いを思い出そう。
 確証もないまま‥「初恋の君だと思われる(確信はない)女 ただし見た目は男」を拉致るような男だ。
 はっきり言って、健気とかいう可愛いレベルじゃなくって‥ヤバい奴だ。
 あんなに、イケメンなのになあ‥。

 ‥執着って、恐ろしい。
 間違えた方向にいってたら、ストーカーとかの犯罪被害につながってたかもしれん。
 今って、ネットとか盗撮とか怖い事件多いしね‥。
 よかった‥。ミチルが「そういうタイプ」じゃなくて‥。
 
 でも、今の俺を見て、「初恋なんて、所詮、気のせいだった」って思ってるだろう。もしかしたら‥黒歴史として心の中から消し去ってるかもしれん。
 ‥それも、それで腹立つがな!!
 勝手に期待して、勝手に見限るとかどうよ!?
 ‥いいけど‥。
 まあ‥なんにしろ。
 子供だったころのミチルがずっと孤独を感じていた‥ってことは、変わらない事実なんだ。
 そんな経験があったから、ミチルは孤独の怖さを人一倍知ってて、人よりちょっと「気遣い屋さん」で優しくって、‥強いんだろう。
 悪いことばかりではない。
 否、悪いことばかりにならないように‥ミチルは努力してきたんだ。

 ミチルは、嘆いて膝を抱えるばかりではなく、‥自分で努力できる奴なんだ。
 そして、ラルシュたちの支えがそれに不可欠だったってことは間違えはない。

「それ程の、‥影響力かあ」
「ん? 」
 ぽつりと俺の呟いた声に、ラルシュが振り向く。
「何か言った? 」
 ふわりと優しい微笑み。
 病んでないし、腹黒って感じじゃない、ホントに優しい微笑み。
 眩しいし、なんか‥あれ「尊い」。浄化されるような感じ。
 ‥これで王子とか大丈夫か。誰かに騙されたりしない?
 って心配になる。
 ラルシュは、
「国は、兄が継いでくれるから大丈夫」
 って言ってたけど、‥それで済むわけがないってのくらい、俺でもわかるよ。
 ラルシュは間違えなく、きっとすごく頑張ってる。
 表情に出ない‥ってのも、それだ。
 それも相手に弱みを握られない訓練の賜物‥とかなんだろ? ‥王族って大変だ。

 それはそれとして‥さっきの話「それほどの影響力」の話。

「うん、さっきミチルから、子供の頃のリバーシが保護する国の体制って話聞いてて‥。ミチルに声をかけてくれたのが、国側の‥いい人で良かったなって‥。
 だってさ、もし仮にいい人が匿ってくれても、その人の後ろについてるのが反対勢力だったら‥大変じゃないかって思って‥いや、思いまして。
 ‥反対勢力だってそのくらいのこと考えるんじゃない‥かな‥とか? 」
 そう‥ラルシュは王族。
 ああ、普通に王族にため口きいてたよ‥。
 ‥もしかして、今更か?? 俺って奴は‥。
 口をつぐんで(つい)ミチルに助けを求めるが、ミチルには俺の意図なんて伝わっていないようだった。
 ちょっと首を傾げ
「考えたとしても、人手もいるし、家の確保、人材確保(おばあさんの確保ね)とか‥金銭的に考えて不可能」
 言った。

 ‥そうだよね‥今更‥だよね‥。
 ミチルにそういうの期待した俺がバカだった。
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