リバーシ!

文月

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二章 別に生活に支障を感じなかった特異なリバーシ

8.無意識の天才って奴か。

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(side 聖)


「‥夢か‥」

 とか、べたなセリフ‥勿論無駄だってわかってるけど‥口に出して言ってみた。
 勿論現実逃避をするつもりなんてない。
 思えば‥悪夢から目が覚めて

「夢でよかった~」

 ってほっとする瞬間って最高に幸せなのかも。
 だけど、リバーシは眠らないから夢も見ないらしい。‥じゃあ、俺は今まで12時以降何してたんだろ? って‥思う。
 夢なんか見ないほど深く眠ってるんだと思ってた。
 夢なんて起きた瞬間忘れちゃってるんだと思ってた。
 ‥実際は、あっちの‥肉体を置いている‥夜の国ってミチルが呼んでた国に帰ってたんだろう。だけど、身体が魔道具‥ブレスレットによって封印されてたから戻れず‥ずっと「ドアの前」で待たされるような状態になってた。

 ‥だけど(それもブレスレットの呪いのせいか)その間の記憶はないっていうね。

 あれから、ミチルにリバーシの事を客観的に聞いたり、思い出したりした。

 ‥わざわざ考えたことないけど、そういえば俺は夢なんて見たことはなかった。
 そもそも、こっちの世界の人間は、リバーシに理解があるから、(リバーシの子供が)寝なくても誰も何も言わない。‥だから、俺は一晩中起きてた。
 あの、妙なスキルはそんな時に考えてたんだ。
 眠らないリバーシには夜と朝の境目‥とかない。
 夜は誰も相手をしてくれなくて、例えばしゃべっていた、遊んでいた相手も夜は寝てしまって相手してくれないって違い。
 ‥夜通し起きてるやつに遊んでもらったらって思うかもしれないけど、そうじゃない。
 ‥そうじゃないんだ。

 初めて、気付いた時は、驚いた。(そういえば)
 
 全く知らないところにいたんだ。
 びっくりして、一晩中泣きながら家を探して歩き回っていたら‥夜が明けて朝が来たら家に帰っていた。
 あそこがどこだったかは‥あの時は分からなかった。
 あそこが城下だったって分かった時には驚いたな。
 学校に上がる前に城の偉い人に「将来働く職場見学」に連れて行ってもらった時だった。
「あ! ここ! 夜にいつも来てるところだ! 」
 っていったら、偉い人は
「夜間のリバーシは自分が必要とされている場所に行くという研究結果があります。そういうことではないでしょうかね」
 って言った。
 本当かどうかは分からない。
 ってか、‥じゃあ家は俺のこと必要としてないのかよ。追い出そうとしてるのかよ。って話だよな。(とんでもねえこと言うやつだぜ)

 夜間と昼間

 どっちも現実で、でも、まったく繋がりがない。
 繋がりがないって、‥夜の記憶を朝には忘れてる‥とかじゃない。
 そういう意味じゃない。

 つまり、例えば夜間、誰かに追われてても、時間が来て(本体が目覚めて)意識がこっちに戻ってきたら、夜間そこにいた自分は(相手の前から)消え、‥そこからは逃げられる‥ってこと。
 夜のトラブルが朝に持ち越されることはない。
 まるで壁か何かで分けられてるみたいに、夜と朝は別のものなんだ。
 でもそうはいっても、夜に怖い目にあったら、朝になって‥逃げきれたって分かってもやっぱり心臓がバクバクしてたり‥感情は引きずるってことはあるんじゃないか? って思うだろうけど‥
 少なくとも俺に関して言えば‥ない。
 終わったことは、終わったことだ。くよくよいつまでも悲しまないし、うじうじ悩まない。‥そして、ミチルも含めて多分‥リバーシって呼ばれる人たちはみんなそうなんじゃないかなって思う。
 なんとなく、直感でそんな感じがした。(同類ってなんか感じでわかるじゃん? )
 まいっか、で切り替えられるからリバーシをやっていけてるんだと思うしね。

「ホントに、この前と同じ幻影作れてる‥しかも、意識せずに‥だろ? 凄いな‥」
 俺を背中越しに見ているらしいミチルが、まだ寝転んだままぼそっとつぶやいたのが聞こえたが、俺に話しかけたわけではなさそうなので、無視しておく。
 ‥なんて答えていいかわかんないしな。
 さっき俺の「夢か」発言スルーしてもらったしな。おあいこってやつだ。
 俺がちらっと振り向いたら、
 ミチルは‥まるで初めて気づきました‥って風に
「おはよ~」
 ってにこって微笑んだ。
 イケメンか。
 朝からキラキラしてるんじゃねえ。
 朝は、無精ひげとかうっすらはえて「寝起きです」ってきったねえ面してるのが男ってもんじゃねえのか。
 俺? 俺は、あれだ。‥男ではなかったらしいからな。
 女かっていわれても‥今はそんな自覚ねえんだけど。

 複雑。

 でもまあ、男だとか女だとかは関係なく、挨拶は人間として当たり前にしないとな。
 社会人の嗜みって奴だ。
 大人の常識ってやつだ。
 だから俺も、
「‥おはようございます」
 ってぼそっと返した。
 キラキラ返ししたいけど、‥そんなテンションでないわ~。(あっちでは色々あったしね。正直一人になって考えたいって感じ)

 だけど、ま、挨拶してお暇しよう~って思って、改めてミチルの顔を見て、おや? っと気付く。

 ‥この男、顔色がいい。
 ‥思えば昨日はちょっと顔色が悪かった。

 肉体が「寝て」精神がこっちに帰ってきたから?

 ミチルはこっちの世界がメインだから、あっちにいる時は実体を持たない。ミチル曰「幻影を作って見せてるに過ぎない」ってことらしい。
 その時は、実体(身体)はお休み。丁度充電時間ってことになるらしい。
 充電してるのは、純粋に身体を維持する体力ってわけだ。
 だから、今の状態は「充電終了」だから、「顔色がいい」ってわけ。
 一方でミチルも俺の顔をしみじみ見ながらなんか感心したようにつぶやいている。

「凄いな、昨日会った時と全く同じ顔に「作ってある」」
 本体とはちょっと違う顔、‥違う性別。
 そういうこと、ホントはできないらしい。
 そもそも、意識の無い状態で裏の世界(つまり、自分の肉体があるメイン‥表の世界(朝)‥に対しての裏(夜)の世界)で実体をもつってことも普通はできない。‥らしい。

 裏の世界で「実体」を作るのは、特別な意識は要らないけど、だけど、普通の意識は当たり前にいる‥らしい。
 自分が自分であるって特別に意識はしないけど、そもそも、起きて動いたりしゃべったりしてるってことは「意識がある」状態だよね?
 だから、寝てる俺が「寝てても裏の世界で実体(しかも性別も顔も違って)」を作れてることにミチルは驚いたらしい。

 俺って‥天才ってことか‥っ。
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