Happynation番外編。

文月

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答えあわせ的なこと

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「結局、答えはなんだったんですか? 」

 カツラギの不満そうな‥ってか、不機嫌な顔。
 今回の事は、アララキたち悪友のほんっとにくだらない悪戯だって分かってるんだけど、それにしたって「答え」っていうか‥解除条件はあったんだろう。
 結局それがなにだったか分からない。
 なんで、解除されたのか分からない。
 何処までが現実で、何処までが作った映像だったのか‥とかが分からない。
 どんなくだらないことでさえ、分からないままとかってキモチワルイ。

「まず、解除条件。アララキは、どんな条件を私がクリアしたらこの状況から抜け出せるって設定したんですか? 」

 カツラギがぎろりとアララキを睨むと(っていっても、あの童顔だから怖くない。昔は、氷の美貌だったから‥それはもう‥怖かったもんだけど‥)
「条件? 解除? なんのことだ? 」
 こてん、とアララキが首を傾げる。
 しらばっくれて‥って感じじゃない。
 もうホントに「何のこと? 」って顔。
「え? 」
 カツラギが怪訝な顔をすると、アララキがサカマキに「別にそんなんじゃないよね? 」って同意を求める様な素振りをして、サカマキが頷いた。
 サカマキは、アララキと違って嘘も下手だし、「遊び心」とかゼロなんだ。ノリを合わせるとか‥絶対できない不器用なタイプなんだ。
 気持ちがすぐ顔に出て、隠し事が出来ない‥ってのは、アララキにもサカマキにもいえる特徴。
 アララキは立場上「国のシークレット」を守らないといけない。それじゃ駄目だろ? って思われるかもしれないが‥それはそれできちんとしている様だ。
 仕事は仕事、プライベートはプライベート‥ってことじゃない。アララキはサカマキの為に法律を変えまくって来たし、結構職権乱用しまくってる。
 ‥国のシークレットだから隠さないといけない、とかじゃない。
 秘密裏に動く前に、とっとと動いてる。それは「秘密」じゃなくって、やらなきゃならないことで、隠さなきゃならないことじゃない。
 やらなきゃならないことは、真剣にするものであって、真剣にしたら‥無表情になる。
 無表情っていうか‥王様の威厳のある表情でいるのが、自分の仕事だって分かってるから、誇りをもってその表情を保ってる。

 疲れていようとも、腹が立っていようとも、だ。

 自分のその表情が周りに安心感を与えているって分かってるからこそ、自分にはその表情でいる責任がある。
 人間責任感でもって「逃げない」って決めないと、顔に迷いが出る。
 アララキはそうやって、日常的にずっと気を張っているんだ。
 そうすることを、無理しているわけではなく、そうすることによって、アララキは王様としてやっていられているんだ。

 決して、慌てない、動揺しない、逃げない‥。
 泰然自若ってやつだ。

「今回のことは‥ただの、悪戯だ。ぶっちゃけね。
 同じように将来について悩んだ時期が自分にもあったな‥あの時の自分がカツラギに会ったらどんな風に成ってたかな。カツラギがあの頃の僕にあったとして、なにか学べるもの‥ってか、考えることはないかな‥って、
 ‥未来を生きる若者へのエールのつもりだったってやつかなあ‥」
 へへ、ってアララキが照れ笑いする。
 悪戯‥。
「何か学べることあった? 僕的には‥流されて就職するとああいうことになるよ~、なんかその場その場を生きるだけのダメな感じになるよ~って警告が出来たかな~って思ったんだけど」

「小笠原は‥別にダメな感じじゃなかった」
 アララキの言葉に被せる様に、カツラギが言った。

「え? 」
 アララキが首を傾げる。
「‥確かに、ダメダメだったけど、ちゃんと生きようとしてた。地に根っこを張って、根っこを広げて‥生きようとしてた。ダメな自分ってあきらめずに、こんなはずじゃなかったって嘆いて時間を無駄にせずに‥ダメなりに生きてた。確かにベストじゃなかったけど、‥ダメじゃない。
 世の中はベスト or  ダメじゃない。
 選択が間違った‥とか悔やむ必要も、どこで失敗したんだろって悩む必要も無い。
 悔しい、もっといい生活したいって思う気持ちは持たなきゃならないけど、後ろを振り向く必要はない、って小笠原は知ってた。
 ‥確かにあれはアララキだ。
 どんな時だって自分を鼓舞して、真っ直ぐ前を向いてる。
 誰に何を言われようと‥どう思われようと‥
 関係ないって顔して前を向いてる。

 ‥アララキはその姿勢を情けない自分の前世の姿で教えてくれたんですよね? 」
 にこり、と笑うとアララキが困った様な‥迷ったような‥情けない顔をした。

「カツラギ‥」
 貶されたんだか‥褒められたんだか
 ちょっと分からない。
 カツラギの解釈があってるんだかあってないんだか‥
 それも、分からない‥。
 だから、複雑な顔。

 そこで、あからさまにむっとした顔をしたのは、サカマキだった。
「失礼なこと言うなよ。カツラギ。
 いい顔だったろ? 小笠原先輩の顔。
 無駄にキラキラしてない‥絶対に「こいつ顔がいいからって俺らの事見下してるよな」って思われない‥無害な顔。だけど、決して不細工じゃない。特に特徴がないから視界に入っても邪魔になんない。
 それにさ、情けないかんじだけど、出来ないことを出来るっていわないし、悪口とか全然いわないし、ホント無害だったよね。
 俺は大好きだった。
 自分の虚栄心を顧みさせてくれたし、‥何より、一緒に居て楽だった。
 一緒にずっといたいな~から、ずっと一緒にいるのが当たり前って思うようになって‥
 離れて行くって思ったら‥気がついたら‥」

 気がついたら、殺してた。

 は、‥シャレになんないから言わない。
 思えば、俺の傍にいる奴は、俺によって皆一度は殺されてるな‥。俺って‥

「気がついたら、一緒に転生してたってこと? アララキが死んだあとも離れたくなくって? 」
 カツラギが首を傾げる。
「そう! 生まれ変わっても一緒に居たいってロマンチックだよね~! 究極の愛だよね~! 」
 アララキが嬉しそうに頷いたけど
 
 ‥うそ、そんなロマンチックなことじゃない。

 サカマキは、
 なあんだ。アララキも平気な顔して嘘つけるんだ‥
 って思った。

「でも、ま、今回のアララキの事での、転生して顔が変われば生活も変わるってことが分った。それは、別に当たり前のことで特別なことでも何でもないってことも。
 私は、昔の顔での自分をきっぱり忘れ去って、この顔で新しい人生を切り開いていく覚悟が出来ました。
 お礼をいいます」
 にっこりと、カツラギが笑う。
 カツラギっぽいニヒルな笑顔じゃなくって、翔によく似合う可愛いあざとい感じの笑顔。

 ‥そういう路線で行くことに決めたのか~。覚悟を決めた、‥吹っ切れたってこと‥かな?
 クズ人生は悔い改めませんよ? 今まで通り邁進しますよってこと‥かな?

 苦笑いするアララキとサカマキだった。
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