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番外2 カツラギ ① ※
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※ ちょっと長くなるので、三つに分けます。
「‥カツラギ様? 」
目の前にはことり、と首を傾げる精悍なイケメン。アロイス。
自分の事カッコイイって知ってる「あざといイケメン」じゃない。こいつはきっと、今まで自分の見せ方なんて考えたことも無いんだろう。
こうしたらカッコよく見える‥とか、こう見せたい‥とか、そんなこと考えたことないんだろう。
だけどこいつはいつだってカッコイイんだろうし、今だって‥やっぱりカッコイイ。
自然体でカッコいいとか、なんだそりゃ、ズルいだろ。‥断じて羨ましいとか思わない。
ただ‥日々努力してる奴には腹が立って仕方が無い存在だろうな、って思うだけ。
‥私は、そういうの(イケメンに見られたい願望とか? )じゃないから思いません。でもね、そういうの馬鹿にする‥とか否定するわけじゃない。
人の「目指すところ」はそれぞれだ。
これは‥それ(見られるイケメン)を目指す者の‥一つの「理想形」なんだろう。
ひたり、とこちらを見つめる目に自然と目が惹きつけられる。
男の目なんて、普段まじまじ見ることはない。だのに、‥何故か自然に目が釘付けになった。
珍しい‥否地球では珍しい、赤い目だ。赤と言っても、ルビーやらガーネットほど強い赤じゃない。勿論、充血してるわけではない。懐かしい、赤だ。
まるで夕焼け空みたいな、懐かしい赤‥。
地球には珍しい赤を、懐かしいって思うのは、やっぱり自分が地球外出身者(Happynation出身者)だからだな、‥なんて今更のこと考えたり。
それにしても、見れば見る程イケメンだ。
まず、パーツが狂ってない。
肌荒れなんて言葉知らないんじゃないか?って思うような‥ニキビ一つない肌。左右対称の輪郭、鼻筋の通った鼻が顔のあるべき場所にちゃんと収まってる。
‥そうちょうど、そんな感じ。目・口・鼻全部があの輪郭の中の「あるべき‥こうあったらいいだろう‥って場所」にきちんと配置されてる。大きさについても、そんな感じ。パーツ一つ一つが、大きすぎもせず、小さすぎもしない‥そんな「ちゃんと測って作った特注品」なんだ。
ヘーゼルの柔らかい髪は、邪魔にならない様に短く切り揃えただけ。地球人みたいに「ツーブロック」だとか「マッシュ」とか、小顔に見える髪型‥とか追及したりしない。
ホント、素材そのもので勝負してますって感じ。
しつこい様だが、「羨ましい、とか「憎い! イケメン爆ぜろ! 」」とか思ってない。
薄い唇とか、
ちょっとつり目がちの切れ長の‥色っぽい目とか、
それを縁取る、‥影が出来そうって思う位長い‥睫毛とか‥
羨ましくないし、見惚れてない!
「‥悪い。じろじろ見たりして‥ 」
ふ、と我にかえり‥不躾に凝視したことを詫びると、ゆるりと首を振って「いいですよ? 」と微笑まれた。
暖かい、‥慈しむような微笑。
迷惑そう‥とか、不審感とか、そういうの全然感じられない微笑。
そういえば、Happynation人って、人に対して懐疑心持つとか、人の顔色伺う‥とか空気を読む‥とかあんまりしない。
人目を気にして、自分を「作った」り、我慢したり‥とかしない。(人の迷惑顧みない、とかとは勿論ちがうよ)
地球では‥、って思った。
地球‥特に日本人は、照れ屋だからじっと目を見られると、恥ずかしそうな反応をされたり‥人によっては「人の顔じろじろ見るなよ」って嫌な顔されるからね。それに、あっちでは、同性愛ってのはそう一般的じゃやないから同性が見つめ合うのはやっぱり、ちょっと違和感があるみたいなんだ。
そういう感覚に随分慣れて来ていた。
すっかりあっちの暮らしに‥感覚が馴染んでいた。
地球は嫌いじゃない。
あっちの女の子は背格好が小さい子が多いし、可愛いし、柔らかい。
元々の骨格の違いもあるだろうけど、やっぱり単純に運動量だね。Happynationで生きていくためには、どんな都会人だって、小さな魔獣から位は逃げ切れる程の基礎体力がいるからね。(都会人は狩れないよ、せいぜい逃げ切る位だ)
地球ではそういう日常の危機ってそうないじゃない? だから、筋肉モリモリって女の子は少ない。
小さくって、可愛くって、その上‥自分の事、ちょっとでも可愛く見せる努力してる。
可愛いよね。
‥ちっちゃくて華奢な子が一般的だから、この小さい‥翔の身体でも、そう問題が無かったのも良かった。
将来はこっち(地球)で、正樹(父さん)みたいに、桜子(母さん)みたいな自分より背の小さい女の子と結婚して何となく幸せに暮らす。当たり前にそんな将来が待ってるって思ってたのに‥。
サカマキの言った
「‥お前、普通の人間じゃないぞ。俺が作った核を使ってるんだから‥100%人間ってわけじゃないだろう。‥この前、ちょっとだけど里帰りしたとき気付かなかったか? 」
‥が、思った以上にショックだったらしく、言われたその時ではなく、夜寝ようと思った時に、じわりと思い出して、‥その日は寝付けなかった。
普通の人間じゃない。
こっち(Happynation)の人間‥。
だのに、私の身体はこっちの人間よりずっと小さい。
記憶だけしかこっちの人間らしくない私が、こっちの人間‥。
今私を羽交い絞めみたいにして‥後ろから抱きしめてる男‥ライカはこっちの世界だったら大きい方じゃない。
「女の子みたいだな」
って揶揄われるのがコンプレックスで、「誰にも馬鹿にされない程賢くなって、王都に出て働く」って決心したんだって昔言ってた。
身体を鍛えて大きくなって揶揄ったやつを見返す。
って口でどんなに言っても、実際には無理だ。無理‥とは言い切れないけど、現実的ではない。人には向き不向きがあるし、身体の大きさだって生まれ持ったものがある。
ライカのほっそりとした身体は運動しても筋肉がつきにくいし、‥そもそも運動がそう得意ではないらしい。
筋肉質ではなく華奢で、でもガリガリではない。男とか女っていう性別を感じさせない綺麗な身体が、「カツラギ」は気に入っていた。
カツラギだって大きい方じゃなかった。だけど、身長があった。
細身だが、眼光鋭い美貌のカツラギに、絶対零度の視線で見下ろされると、身体が冷えた‥ってか、縮まる思いがしたもんだった。(サカマキ談)
カツラギであったときは、ライカをすっぽりと抱きすくめられるくらいは、体格差があった。
今の、「翔」とカツラギとは違う。
‥こんなにも、違う。
今、私の目を心配げに見つめているアロイスと、「翔」の体格差は更に大きい。例えるなら、‥小学生と大学生程はありそうだ。
‥犯罪臭半端ないな。
だけど、犯罪臭を感じさせない程、目の前の男はイケメンだ。
つまり、熊みたいな大男が小学生を見つめてたら「喰われる! 小学生~逃げて~! 」ってなるけど、キラキラな芸能人が小学生を見つめてたら「なんか微笑ましいわ~。子供好きなんですね~」ってなるでしょ? (なるよね? )あれ、あの感じ。
美形っていうのは、それだけで大抵のことが許される‥気がする。
アロイスは、アララキみたいな特注品の芸術品みたいな「(神が)創りたもうた様な」美形じゃない。
見た目が精悍な感じのイケメンって言っても、筋肉質ってわけではない。(←アララキは隠れマッチョ)
なんせ、所詮文系だ。
学者棟のメンバーは身体を鍛えるより、本を読んでいたいって連中が殆どだから仕方が無い。
「カツラギ」時代の私やサカマキ・アララキは‥特殊な村で育ってきたから、生きる為、自然と身体が鍛えられていた。訓練で‥ではない。剣を振る稽古の代わりに獲物を仕留め、走り込みの代わりに‥野原を駆け回って野生動物を狩った。時々は、依頼で盗賊と戦ったりもした。全部実戦で、訓練ではない。
訓練に熱心だったのは、フミカの村だろう。
あの村は、訓練至上主義の脳筋な村だから。(私たちの村より都会なんですよね。結局)
アロイスの身体は、そのどちらでもない。
あくまでも、日常範囲の生活を規則正しく行っている健康的な身体。
‥当たり前のことなんだけど、地球では結構難しかった気がする。
照明設備に恵まれ昼夜変わらず明るい環境。真偽含めて垂れ流される豊富な知識。娯楽にあふれた刺激的な毎日。人とのつながりを容易にし、‥しかし、時に他人の生活を無遠慮に縛る、ネットや電話。
地球は「真面目な人間」と「自分に甘い人間」にとっては、健康的な生活が送りにくい社会だ。
‥まあ、私は後者の方かな‥。
ちょっと自嘲気味に笑ってアロイスから視線を外し‥目線を落とそうとすると(完全に今この状況からの現実逃避)
「‥貴方は、カツラギ様じゃないんですか? 」
アロイスの神経質っぽい細い指が、私の顎を掬った。
「え? 」
上を向かされ、再び視線がアロイスと合う。
「カツラギ様なら、お断りなさらないはずです。誰よりも、知識を愛されていて‥知らない事なんて許せないってお方だから‥。
知らない事‥知りたくないですか? 」
ゆっくり‥微笑をその口元に浮かべる。
合わされた瞳が色っぽくて、こくり‥思わず唾をのみ込む。
ふふ、と後ろから私をぴったりくっつく位近く‥抱きしめていた男が微笑んだので、私の耳元に暖かい息がかかった。
ライカだ。
ピクリと私の身体が反応したのをライカが見落とすわけがなかった。
更に私を抱きしめる力が強くなるのを感じ、思わず視線だけでライカを振り向いた。
「カツラギ様なら、躊躇されないかと。気持ちいいこと‥お好きですよね。
気持ちよくって、そして、貴方が知らない事‥
体感されたいって思われないカツラギ様じゃないですよね?
‥もしかして、怖気づいておられますか? 」
揃いも揃って、魅力的な言い方‥私が好むような誘い方をしてくる。
私は‥
「‥カツラギ様? 」
目の前にはことり、と首を傾げる精悍なイケメン。アロイス。
自分の事カッコイイって知ってる「あざといイケメン」じゃない。こいつはきっと、今まで自分の見せ方なんて考えたことも無いんだろう。
こうしたらカッコよく見える‥とか、こう見せたい‥とか、そんなこと考えたことないんだろう。
だけどこいつはいつだってカッコイイんだろうし、今だって‥やっぱりカッコイイ。
自然体でカッコいいとか、なんだそりゃ、ズルいだろ。‥断じて羨ましいとか思わない。
ただ‥日々努力してる奴には腹が立って仕方が無い存在だろうな、って思うだけ。
‥私は、そういうの(イケメンに見られたい願望とか? )じゃないから思いません。でもね、そういうの馬鹿にする‥とか否定するわけじゃない。
人の「目指すところ」はそれぞれだ。
これは‥それ(見られるイケメン)を目指す者の‥一つの「理想形」なんだろう。
ひたり、とこちらを見つめる目に自然と目が惹きつけられる。
男の目なんて、普段まじまじ見ることはない。だのに、‥何故か自然に目が釘付けになった。
珍しい‥否地球では珍しい、赤い目だ。赤と言っても、ルビーやらガーネットほど強い赤じゃない。勿論、充血してるわけではない。懐かしい、赤だ。
まるで夕焼け空みたいな、懐かしい赤‥。
地球には珍しい赤を、懐かしいって思うのは、やっぱり自分が地球外出身者(Happynation出身者)だからだな、‥なんて今更のこと考えたり。
それにしても、見れば見る程イケメンだ。
まず、パーツが狂ってない。
肌荒れなんて言葉知らないんじゃないか?って思うような‥ニキビ一つない肌。左右対称の輪郭、鼻筋の通った鼻が顔のあるべき場所にちゃんと収まってる。
‥そうちょうど、そんな感じ。目・口・鼻全部があの輪郭の中の「あるべき‥こうあったらいいだろう‥って場所」にきちんと配置されてる。大きさについても、そんな感じ。パーツ一つ一つが、大きすぎもせず、小さすぎもしない‥そんな「ちゃんと測って作った特注品」なんだ。
ヘーゼルの柔らかい髪は、邪魔にならない様に短く切り揃えただけ。地球人みたいに「ツーブロック」だとか「マッシュ」とか、小顔に見える髪型‥とか追及したりしない。
ホント、素材そのもので勝負してますって感じ。
しつこい様だが、「羨ましい、とか「憎い! イケメン爆ぜろ! 」」とか思ってない。
薄い唇とか、
ちょっとつり目がちの切れ長の‥色っぽい目とか、
それを縁取る、‥影が出来そうって思う位長い‥睫毛とか‥
羨ましくないし、見惚れてない!
「‥悪い。じろじろ見たりして‥ 」
ふ、と我にかえり‥不躾に凝視したことを詫びると、ゆるりと首を振って「いいですよ? 」と微笑まれた。
暖かい、‥慈しむような微笑。
迷惑そう‥とか、不審感とか、そういうの全然感じられない微笑。
そういえば、Happynation人って、人に対して懐疑心持つとか、人の顔色伺う‥とか空気を読む‥とかあんまりしない。
人目を気にして、自分を「作った」り、我慢したり‥とかしない。(人の迷惑顧みない、とかとは勿論ちがうよ)
地球では‥、って思った。
地球‥特に日本人は、照れ屋だからじっと目を見られると、恥ずかしそうな反応をされたり‥人によっては「人の顔じろじろ見るなよ」って嫌な顔されるからね。それに、あっちでは、同性愛ってのはそう一般的じゃやないから同性が見つめ合うのはやっぱり、ちょっと違和感があるみたいなんだ。
そういう感覚に随分慣れて来ていた。
すっかりあっちの暮らしに‥感覚が馴染んでいた。
地球は嫌いじゃない。
あっちの女の子は背格好が小さい子が多いし、可愛いし、柔らかい。
元々の骨格の違いもあるだろうけど、やっぱり単純に運動量だね。Happynationで生きていくためには、どんな都会人だって、小さな魔獣から位は逃げ切れる程の基礎体力がいるからね。(都会人は狩れないよ、せいぜい逃げ切る位だ)
地球ではそういう日常の危機ってそうないじゃない? だから、筋肉モリモリって女の子は少ない。
小さくって、可愛くって、その上‥自分の事、ちょっとでも可愛く見せる努力してる。
可愛いよね。
‥ちっちゃくて華奢な子が一般的だから、この小さい‥翔の身体でも、そう問題が無かったのも良かった。
将来はこっち(地球)で、正樹(父さん)みたいに、桜子(母さん)みたいな自分より背の小さい女の子と結婚して何となく幸せに暮らす。当たり前にそんな将来が待ってるって思ってたのに‥。
サカマキの言った
「‥お前、普通の人間じゃないぞ。俺が作った核を使ってるんだから‥100%人間ってわけじゃないだろう。‥この前、ちょっとだけど里帰りしたとき気付かなかったか? 」
‥が、思った以上にショックだったらしく、言われたその時ではなく、夜寝ようと思った時に、じわりと思い出して、‥その日は寝付けなかった。
普通の人間じゃない。
こっち(Happynation)の人間‥。
だのに、私の身体はこっちの人間よりずっと小さい。
記憶だけしかこっちの人間らしくない私が、こっちの人間‥。
今私を羽交い絞めみたいにして‥後ろから抱きしめてる男‥ライカはこっちの世界だったら大きい方じゃない。
「女の子みたいだな」
って揶揄われるのがコンプレックスで、「誰にも馬鹿にされない程賢くなって、王都に出て働く」って決心したんだって昔言ってた。
身体を鍛えて大きくなって揶揄ったやつを見返す。
って口でどんなに言っても、実際には無理だ。無理‥とは言い切れないけど、現実的ではない。人には向き不向きがあるし、身体の大きさだって生まれ持ったものがある。
ライカのほっそりとした身体は運動しても筋肉がつきにくいし、‥そもそも運動がそう得意ではないらしい。
筋肉質ではなく華奢で、でもガリガリではない。男とか女っていう性別を感じさせない綺麗な身体が、「カツラギ」は気に入っていた。
カツラギだって大きい方じゃなかった。だけど、身長があった。
細身だが、眼光鋭い美貌のカツラギに、絶対零度の視線で見下ろされると、身体が冷えた‥ってか、縮まる思いがしたもんだった。(サカマキ談)
カツラギであったときは、ライカをすっぽりと抱きすくめられるくらいは、体格差があった。
今の、「翔」とカツラギとは違う。
‥こんなにも、違う。
今、私の目を心配げに見つめているアロイスと、「翔」の体格差は更に大きい。例えるなら、‥小学生と大学生程はありそうだ。
‥犯罪臭半端ないな。
だけど、犯罪臭を感じさせない程、目の前の男はイケメンだ。
つまり、熊みたいな大男が小学生を見つめてたら「喰われる! 小学生~逃げて~! 」ってなるけど、キラキラな芸能人が小学生を見つめてたら「なんか微笑ましいわ~。子供好きなんですね~」ってなるでしょ? (なるよね? )あれ、あの感じ。
美形っていうのは、それだけで大抵のことが許される‥気がする。
アロイスは、アララキみたいな特注品の芸術品みたいな「(神が)創りたもうた様な」美形じゃない。
見た目が精悍な感じのイケメンって言っても、筋肉質ってわけではない。(←アララキは隠れマッチョ)
なんせ、所詮文系だ。
学者棟のメンバーは身体を鍛えるより、本を読んでいたいって連中が殆どだから仕方が無い。
「カツラギ」時代の私やサカマキ・アララキは‥特殊な村で育ってきたから、生きる為、自然と身体が鍛えられていた。訓練で‥ではない。剣を振る稽古の代わりに獲物を仕留め、走り込みの代わりに‥野原を駆け回って野生動物を狩った。時々は、依頼で盗賊と戦ったりもした。全部実戦で、訓練ではない。
訓練に熱心だったのは、フミカの村だろう。
あの村は、訓練至上主義の脳筋な村だから。(私たちの村より都会なんですよね。結局)
アロイスの身体は、そのどちらでもない。
あくまでも、日常範囲の生活を規則正しく行っている健康的な身体。
‥当たり前のことなんだけど、地球では結構難しかった気がする。
照明設備に恵まれ昼夜変わらず明るい環境。真偽含めて垂れ流される豊富な知識。娯楽にあふれた刺激的な毎日。人とのつながりを容易にし、‥しかし、時に他人の生活を無遠慮に縛る、ネットや電話。
地球は「真面目な人間」と「自分に甘い人間」にとっては、健康的な生活が送りにくい社会だ。
‥まあ、私は後者の方かな‥。
ちょっと自嘲気味に笑ってアロイスから視線を外し‥目線を落とそうとすると(完全に今この状況からの現実逃避)
「‥貴方は、カツラギ様じゃないんですか? 」
アロイスの神経質っぽい細い指が、私の顎を掬った。
「え? 」
上を向かされ、再び視線がアロイスと合う。
「カツラギ様なら、お断りなさらないはずです。誰よりも、知識を愛されていて‥知らない事なんて許せないってお方だから‥。
知らない事‥知りたくないですか? 」
ゆっくり‥微笑をその口元に浮かべる。
合わされた瞳が色っぽくて、こくり‥思わず唾をのみ込む。
ふふ、と後ろから私をぴったりくっつく位近く‥抱きしめていた男が微笑んだので、私の耳元に暖かい息がかかった。
ライカだ。
ピクリと私の身体が反応したのをライカが見落とすわけがなかった。
更に私を抱きしめる力が強くなるのを感じ、思わず視線だけでライカを振り向いた。
「カツラギ様なら、躊躇されないかと。気持ちいいこと‥お好きですよね。
気持ちよくって、そして、貴方が知らない事‥
体感されたいって思われないカツラギ様じゃないですよね?
‥もしかして、怖気づいておられますか? 」
揃いも揃って、魅力的な言い方‥私が好むような誘い方をしてくる。
私は‥
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