俊哉君は無自覚美人。

文月

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36.脳内BGMと幸せオーラ。(side 修斗)

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 恋人出来ました♡
 ニヤニヤしてたら、カメラの専門学校のオジサンメンバーから気持ち悪がられました。
「なんか、幸せオーラ出しまくってる奴来たけど‥」
「何。欲しがってたカメラ買えたの? 」
 君等の喜びってそこか。
 ま~確かに昨日までの俺だったらそうだったかも。
 いや‥でも、今でもそれはそうかも。
 あと‥三脚も新調したいなあ。
 だがしかし、人の幸せは物欲のみにあらず。
 精神的な幸せもまた幸せなり。
 精神的って程高尚でもないが。
 俺は、ゴホンとひとつ咳ばらして、
「違う。いいアイデアが浮かんでさ~。俺、プロダクションマッピングも学びたいかも」
 って言ったら、
(オッサン1)「君写真館志望でしょ? 屋内でしたいってこと? 写真のセットとして? 」
(オッサン2)「動画エフェクトでもよくない? 」
(オッサン3)「それって、動画編集の奴でしょ。鈴木が言ってるのはそういうのじゃないでしょ」
(オッサン4)「空間に映すってこと? ホログラムみたいな感じ? 」
(全員)「それは違う」
 わっと話が広がっていく。この感じ、やっぱり面白い。この世界が俺の住む世界なんだ。
 因みに、オッサン1は、自営で不動産業を営む真面目なオッサン。45歳。写真は趣味らしい。
 オッサン2は、会社員。写真好きが高じて脱サラして写真に関する仕事をしようと考えている‥らしい。36歳。あの(コスプレスタジオカメラマン志望)女性(歳は知らないが、明らかに若い)と俺の次に若い。彼女ナシ。新しいもの好き。甘いもの好き。休日は甘い物食べ歩きをして、スイーツと風景をSNSに投稿するのが趣味らしい。山靴とかアウトドアっぽい服装を好むが、アウトドア派じゃない。
 オッサン3は、会社役員。鉄道写真が好き。個展を開くほどの腕前。ルールは犯さないのがモットー。いつでも規律を守る人。技術向上のためにここに来てる。58歳で、定年後は写真に関係する仕事がしたいらしい。
 オッサン4は、年齢不詳(聞いたらはぐらかされる。なんでだろ)の自称団体職員(どうも公務員っぽい)彼も、「いつかは脱サラ」組っぽい。見かけは30代位に見える。風景写真専門の行動派。風景撮影の為なら山奥にだって行く。‥といって、一人キャンプが趣味なアウトドア派じゃなくて、「テント張っても湯を沸かしてカップ麺」ってタイプ。「外でカレー? カレーなんて家で食べる方が美味しいって」「アウトドアグッズ? 持ってない」「別に寒くなかったら、暖かいものすら要らない。コンビニのオニギリでいい。防寒対策は万全」「テント持っていくのはどこでも泊まれようにするだけ、別に宿泊施設があったら泊まる」らしい。
 因みにあの話(写真のセットにプロダクションマッピング使いたい)の着地点は
「金かかりすぎだから、無理でしょ」
 だった。
 まあ‥そうだね。
「そういうのに頼らない。カメラマンなら腕で勝負でしょ。感激したり喜ぶ顔が見たい? ‥あのね、そんなことしなくても、人って嬉しい時は脳内で勝手に出してくれるよ。花咲くエフェクトとかBGM」
 オッサン1が呆れた顔で言うと、オッサン2が
「あるある」
 って相槌を打ち、ため息をついて
「彼女に振られた時頭の中に葬送行進曲流れてたな」
 って言った。葬送‥大袈裟だな。って苦笑いしてると、皆が次々に
「あ、俺はカノン」
「俺は小フーガト短調だったな」
 って続けた。
 カノンは悲しい歌でもない気がするが‥。でも、小フーガは何となく気持ち分かるかも? 別に悲しい歌でもないんだけどね。悲しい歌っていったら、ラベルの「亡き女王のためのパヴァーヌ」とか? ‥これは、でも死んでるな。
 とか思ってたら、オッサン4が
「小フーガ‥ああ、ハゲの歌」
 ってボソッと呟いた。これにはおもわず皆で
「それ違う」
 って突っ込んだね。
 www
 ブリトラの小フーガハゲ短調。なんでオッサンたち知ってるのww
 唯一の女子だけは、終始爆笑してるだけで話にはのってこなかった。彼女はいつも聞き役に回ってる感じだね。あんまり人と話すのは得意じゃないみたいだ。

 結局、このメンバーからは一度も「なに、恋人でも出来たの? 」って話題になることもなく、気付いたら、いつも通りカメラの話になってた。
 そういうとこも、居心地がいい。
 因みにコンビニでは年下のバイト君(チャラ男)に
「先輩、キモチワルイっすよww 恋人出来たんですか? でも、そんなことで浮かれる年でもないでしょww 学校を卒業してからの恋愛って、なんか結婚がちらついて純粋に楽しめなくないですか? ww 
 ‥ってか、先輩が結婚ってww なんか合わないっすねww」
 って爆笑された。
 おまけに
「でも、大丈夫ですか? 稼ぎが少ないから心配‥って彼女のご両親に言われちゃうんじゃないですか? ww
 あと‥ぱっと見、先輩って頼りなく見えるから ww」
 って付け加えられた。
 腹立ったけど、コイツになんか言い返すのも馬鹿馬鹿しいって黙ってたら、落ち込んだと勘違いしたらしいそいつが、妙に優しい声で
「‥すいませんっす。言い過ぎました」
 って謝って来て
 何故か胸を叩いて
「大丈夫です。俺もうすぐ専門学校卒業なんで、働き始めたら先輩のこと位養ってあげれるっす! 」
 って言われた。
 めっちゃにこやかに!! 

 結構です!! (# ゚Д゚) 

 なにそれ!? それを愛の告白とか言わないでよね?! 
 チャラすぎない?! 
 アンタは絶対恋人に振られても脳内に葬送行進曲は流れないし、告白に成功しても花畑が脳内に出現したりしないんでしょうね!!
 そういう情緒あることとは無縁なんでしょうね!!
 ‥つか、アンタいつ就活してた?? 就活しないで学校に来てる求人募集で試験受けたからって‥受からないよ?? 多分。そんなに甘くないよ??

 そんな話をビクターにちらっとした(勿論後輩に告白されたことは省いて、だ)ら、ビクターに
「結婚は考えてるよ。だって、修斗のこと離したくないもん」
 って言われた。
 いつも通り人懐こい「にこやかな顔」で言われたけど、目が‥マジだ。
「考えてるどころか、ちゃんと将来設計を立ててるよ。修斗が「老後はこっちで」とか言ってくれるかもしれないからね。その時に急に「家どうしよ」っていうわけにはいかないでしょ? 」
 老後のことまで言い出した‥。
 そうだよね、老後の計画大事だよね‥。耳が痛い話です。ビクターは年下なのにしっかりしてるよ。未だに「夢に向かって努力中」の俺とは違う‥。
 落ち込む俺を横目にビクターは酷く嬉しそうに
「その前に結婚式だよね。‥結婚式だけは先にしておかない? 」
 って言った。

 結婚式??

 黙って、俺を正面から見つめる。‥例の「目だけはマジ」な笑顔で。
 ‥俺‥もう、逃げられる気しないんだけど‥。
 いや‥いいんだけど、コイツってあれかな? 結構執着系?? クラシル君にも感じたけど‥ここの(※ モテない)人って結構そういう傾向が‥? 愛が重いって言うか‥ ヤンデレって言うか‥。(※ モテないから、初めて出来た恋人に狂喜乱舞。絶対に離したくない‥って傾向が強い)
 結婚といえば‥
 ビクターには上司にあたる騎士団長のクラシル君が弟の恋人だって話をちらっとしたら、ビクターは大興奮で、
「団長に「弟よ‥。俺のこと‥お兄さんってよんでもいいですよ」って言っちゃそ~! ww」
 って言った。
 でも、面白がってる風ではない。本気で嬉しそう。嬉しくって、テンションアップって奴なんだろう。
 (だけど)お願いだからクラシル君にそんな話しないでね。
 怖いから‥。
 君にまだ死んでほしくないよ‥。
 しかし、クラシル君は俺にとっても年上の弟なのに(俊哉たちが結婚したらね)ビクターからしたらかなり年上の弟にならないか? そう思ってビクターに
「弟って‥。団長はかなり年上でしょ? 」
 って言ったら、
「え? 多分、同じ年ですよ? 俺は今年で25だから」
 って言われた。
 ええ!? 
 異世界のお約束、地球人若く見えるじゃなくて、異世界人若く見える!? ってか、クラシル君25なんだ~。なんか、もう少しいってるんだと思ってた~。
 う~ん。別に大したことじゃないけど‥なんか意外。
 でも、老けてるってことじゃない。
 しっかりしてるって意味。
 ビクターは‥「老けない顔」って感じかな。
 10年後もこの顔してそう‥。
 それは俺も人のこと言えないけど‥。
 俺がそんなことを思っていたら、ビクターが
「でも‥修斗の弟だったらいくつだ? 修斗が18としても‥16とか?? 犯罪だよな‥」
 って小声で呟いた。
 ‥おい、俺は18じゃないぞ。
 女子なら若く見えたら嬉しいかもだけど、男はなぁ~。「え、そんなに貫禄ない?? 」ってちょっと思っちゃうよね。でも‥地球はここと比べたら平和だから多分‥「平和ボケ」してるんだろうな~。
 仕方があるまい。
 だけど、言っておかねばならない。‥クラシル君の名誉の為に。
 犯罪良くない。
「え‥俺、23だけど‥。因みに弟は今年19」
 俺がそう言うと、ビクターが目を丸くする。
「ええ!? 修斗23って! ええ‥」
 ブツブツ呟きながら首を傾げてるけど、「若く見える」は、俺の台詞だからね? 俺、ビクターのこと、20位だと思ってたからね? 
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