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34.週末婚の提案? (side 修斗)
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修斗の証言 >>
俺は‥あの時、どうにかしてたんです。普通じゃなかったんです。
神様ならなんとかしてくれ、って本気で思っただけ。それ程‥あの時の俺は普通じゃなかったんだ。
‥あるじゃん? そんな時。
誰でもいいからなんとかしてくれ! って言っちゃう時。
だけど、こころの奥ではちゃんと「言っても仕方ない」「誰もどうにもしてくれない」って分かってる‥っていうね? そういうの。
とにかくだ。
俺は‥何となく気持ちがわーってなって言っちゃっただけで、別に本気で神頼みしたわけじゃないんだ。
ほんっと、これっぽっちもあの子に期待なんてしてなかったんだからね!!
あの後、あの子は、俺を見下ろして、ふふって優しい顔で微笑んで、
その後ドヤ顔で
「じゃあ。お休みの日だけ‥会いに来るとかは? 」
って言った。
‥え、それドヤ顔で言う程のもん? って普通の俺なら思っただろう。即座に「神様だから期待したのにがっかり」って言っただろう。
だけど、あの時の普通じゃなかった俺は、だけど冷静に
「‥いや、そんな東京大阪間の遠距離恋愛じゃないんだからさ」
って突っ込んだんだ。あの子に。
結構真剣に。(今思えば恥ずかしい)
いや、‥ホント普通じゃない時って何をするかわかりませんね。
証言終了!
俺だって、わかる。来たい時にくれば? とか、異世界って‥そんな「どこでもドア」的なアレじゃないでしょ??
だってさ、ちょっとは‥影響がありそうじゃない?
俺とビクターは男同士だから子供は出来ないだろうけど、俺と付き合ってたらビクターが婚期を逃して産まれるはずの子どもが産まれなかったり‥とかさ?
そうなったら‥歴史が変わるよね? 産まれてこなかった子供の人生がまるまるなくなるし、その子供が出会うはずだった人やら、その子供の子供やらどうなる?
俺がそんなこと思ってたら
「ビクターの人生ねえ‥。変わるっていっても‥別にシナリオがあるわけじゃないわけじゃない? だったら、変わるも何もないんじゃない? それが、ビクターの人生なのよ。
誰しも、神が決めた人生を歩んでるわけじゃないの。自分で必死に生きた結果がその人の人生なの」
ってあの子が言った。(頭の中を勝手に読むんじゃない! いくら神だっていってもさ! )
それがビクターの人生‥。
ビクターの住んでる世界じゃない(本来だったら決して関わることのなかった)異世界の要因(俺)が混じったとしても‥それは別に構わないっていうの?
「だって、そうでしょ? そんな周到なお話、神が一人で用意することなんて無理じゃない。神は‥そんなことにまで関われない。
王子の結婚には関わっただろって思ってない? ‥だって、あれは、その他大勢の結婚とは話が違うじゃない」
俺はきっと不満そうな表情をしていたのだろう。あの子はまたふふって笑って、
「そもそもね、過去を弄るわけじゃないんだから。私たちにとってもルール違反とかじゃないの。
ねえ、修斗。
人間だって、予防薬とか飲むじゃない? インフルエンザにならないように、予防接種受けるじゃない? それって、自然法に背いてるわけじゃないわよね? 罹るのは運命だから、予防接種とか運命に逆らう悪い行いです。とか誰も言わないよね? それと同じよ。
別に、私たちは「自然のままに生きるのが当たり前に普通です」って言ってるんじゃないの。「もしかして少しでも幸せにつながるかもしれない努力はするべきだ」って思ってるの」
‥成程?
だしかに、予防接種は‥打つよね? だけど、罹ることもあるよね。100%運命を決定づけるほどのパワーはないからいいって感じなのかな?
確かに影響はあるかもしれないが、ないかもしれない。
俺の場合も‥そういう意味では同じ。
俺とあの子が盛り上がって「ここに住む! 」っていっても、ビクターの方で「嫌」っていうかもしれない。
‥ならいいのかな?
いいのかな‥。
「ビクターの人生にとって‥修斗はきっと‥棚ぼた的超ラッキーだと思ってると思うわ。
選択権は寧ろ、修斗にある。
ビクターと一緒にいたいか、どうしたいか。修斗が決めることだって思う。
ビクターはね、普通に生きてたら、もしかしたら脱童貞どころか、誰かと手を繋ぐことすら出来なかったかもしれない。この国だから、っていうより、ビクターがそんなこと思わなかったでしょうね。‥あの子は何もかも諦めてたところがあるから。
誰かと恋人になりたいって思うどころか、人間キライって思って人生を終えてたかもしれない。つまんない人生だったってため息ついて息を引き取ったかもしれない。
だから、修斗は全然「ビクターの人生を邪魔するかもしれない」とか思う必要ない」
‥いや、それこそ、アンタの思い込みだよね??
ビクターのこと過小評価しすぎてないか??
眉を寄せる俺を見ない振りして(見てないだけかも)
あの子は
「‥私。ナイス。流石神」
ってウットリした表情で呟いた。
‥自分のことは過大評価。
どうしようもねえな。コイツ。
「そして、流石神な私が考えたのが、あれ」
ほう。それが、さっきの週末婚の提案か?
流石神が聞いてあきれるお粗末な提案だな!
俺はため息をついて、
「でも、俺とビクターの休みが合わないぞ。俺は、別に週休二日制じゃないし」
って言った。
寧ろ、あんまり休みなんかない。
夜に来たらいいとかだと‥一体いつ寝るんだって話だし。ビクターだってそれは困るだろう。(寧ろ、肉体労働なビクターの方が困るだろう)
さあ‥どうする?
俺がちらりとあの子を見ると、あの子はふふって笑って
「お休みを合わせること位出来るわ。なんていっても、私は恋の神様だから! 」
って言った。
やっぱり、ドヤ顔で。
‥あ、認めちゃった。恋の神様とか‥自分で言ってる。
ちょっと笑っちゃった。
俺が笑ったのをみて安心したのかな? あの子の緊張みたいなものがふっと落ちた様に感じられた。
‥さっきまで、やっぱりちょっとは(ほんのちょっとは)緊張してたみたい。
緊張が解けて‥で、今はちょっと調子に乗ってる。(単純すぎないか?? )
「だって~。修斗の為にもなにかしたいじゃない。俊哉も修斗もお願い事叶えてあげるって言ってもな~んか喜ばなくって、やになっちゃってたんだよね。
私ってそんなに「凄い神様」に見えない? 」
とか言ってるけど、
アンタのこと凄い神様って思ったこと、ない。
凄い神様に見えない? とか聞かれたらびっくりするし、答えに窮するわ。(俊哉はわかんないけどね! )
俺はなんか一応フォローしようとして‥笑顔で「そんなことない」って言おうとしたけど‥言えなかった。
‥笑えなかった。
今は何だかまだ笑える気分にはなれなかった。
あの子はふ‥と苦笑いして、
俺を慈しむ様な目で見降ろして‥
「大丈夫。私に任せて。ね、修斗。貴方も少しは‥わがままになってもいい。貴方はイイ奴過ぎるから‥
心配になっちゃう」
って言った。
慈しむ様な‥優しい顔。
きっと神様ならこんな表情するだろうって顔。
あ‥神様だったか。
俺は、小さくため息をつくと
「別に、俺は我が儘だけど。我慢とかしてないし」
小声で言った。
だって、‥ちょっと恥ずかしい。過小評価されるより、過大評価されて褒められる方が嫌いだ。良心が痛むから。それなら「け、ホントのことは分かってない癖に言ってろよ」ってこころの中でほくそ笑んでる方がずっといい。今までも過大評価されてただろって? ‥俺は、顔のことでは褒められることはあるけど、それだけなの。「顔だけで中身は空っぽ」が俺の定番評価なの。俺はね、誰にも褒められたことなんてないんだ。
まあ‥それが妥当な評価なんだけどね。
真実だけど‥自分のこと自分でダメダメだっていうのはやっぱり恥ずかしい。
でも、どんなに自分に甘めに判定しても、俺は別にイイ奴なんかじゃない。我慢とかもしてない。
それは紛れもない真実なんだ。
俺は、今までの悪行をあの子に懺悔する。だって‥あの子は(人のこころの中だって平気で読むようなモラルのない)神だし、‥神に嘘ついても仕方ないじゃない?
「我慢するのは、全部長男の啓史兄さんの役目だった。
長男だからって、親に信用されて、家のこと全部任されて。
俊哉の世話や、料理‥全部やってた。
だけど、悪い成績取りたくないって、取ったら兄弟にカッコつかないって‥夜遅くまで勉強してた。
でも、それは近くの大学(※ ハイレベル大学)に行くためだったんだ。家から通えないと不便だからって。
自分が家を出たら、俺たちの面倒を見る人間がいなくなるからって。
なのに、俺や俊哉を自分が行きたい大学に行かせてくれた。‥その際、一言も文句言わなかったんだ。‥俺なら絶対言うね」
俺は我が儘だって思うポイントその1を話した。話しながら、改めて「俺たち兄弟は兄さんに頼りすぎてた」って思った。
俺は更に‥料理だって掃除だって何一つ手伝わなかった。俊哉は手伝ってたのに、だ。
「それは‥良くないわね」
あの子が眉を寄せて苦笑いする。俺は頷いて言葉を続ける。
俺の我が儘ポイントその2だ。
「遠くの大学に行ったら行ったで、盆や正月もろくに帰ってこなかった」
あの子は相変わらず穏やかな顔で俺を見てる。
俺を貶したり、批判したりする感じは全然ない。
それどころか、穏やかに、
「うん。でも、それはバイトしてたからでしょ? 修斗は親や兄弟の負担にならないように仕送りを断ってきたから」
って俺の行いを弁護してくれた。
あの子は‥ずっと信じられない程穏やかで俺に優しかった。
俺が首を振って、
「いや‥だって、自分の我儘で遠くの大学受けたからさ、それ以上負担かけられないじゃない? 啓史兄さんには要らなかった出費だし」
って言えば、
「なるほどね~。でも、そんなこと普通の子は気にせんよ? 」
って言ってくれ、
「‥俊哉のこと。微妙な立場にいた時も‥全然力になってこなかった。今も、俊哉が死んだ原因になった加害者のこととか全部兄さんに任せっきりだし」
って言った時も、
「それは、我が儘とは関係なくない? 多分貴方のお兄さんが修斗より自分の方が適任だって思ったって話じゃない? 年齢のこともあるし、修斗は‥定職についてないし」
って‥やっぱり責めたりしなかった。
でも、堪えた。定職についてないし、って言葉は‥堪えた。
「そう俺は‥自分の夢を追いかけて、今も定職についてない‥」
ポツリと呟くと、
あの子は、しゃがんで俺の目を真っすぐ見て、
「でも、別にそのことで親兄弟に迷惑かけて無くない? 」
「迷惑かけてなかったら、それでいいと思うけど。することも決まってて、その夢に向かって頑張ってる。親からしてみたら、それで十分じゃない? 修斗はバイトだって、学校だって十分頑張ってる。親からお金をもらってるわけでもない。‥私はそのことは、恥ずかしいことじゃないって思う。
それにね、
家から出て自活してない、家に住んでるから家賃掛からない‥っていうけど、住まなくても毎年税金払わなきゃいけないんでしょ? 貴方のお父さんはあの家を売りたくないし、でもまだあの家には帰れないって思ってるみたいだし。人が住んでる方が良いじゃない。家が傷まなくて」
「そのことで、修斗のこと半人前だの夢ばっかり追ってて家族に心配かけてるとか、我が儘だの言う人がいたら、私が殴ってやるわ」
って言ったんだ。
半人前、夢ばっかり追ってて家族に心配かけてる、我が儘‥
俺ってそういう風にやっぱり見えてるんだ‥。
いや、常日頃から思ってたけど‥他人から聞くと‥凹むね!
ほぼノックアウトしかけの俺に、あの子はにっこり笑って。
「大丈夫。修斗は素敵な人間よ。だから、自信もっていい。
貴方は素敵で、きっとビクターを一番幸せにすることが出来る価値のある人間。
そして、貴方もビクターとの未来を望んでいる。
ねえ、だから、私にそれを手助けさせて欲しいの」
言った。
さっき俺を言葉のパンチで滅多打ちにした奴の口から発せられた‥でも、嘘じゃない言葉。あの子にとって、俺が凹もうが、周りが何か言おうが関係ない。
恋の神様だから。
「だから、修斗も素直になればそれでいいのよ! 」
周りにぱあってお花が咲いた。エフェクトって奴? 神の演出。だけど‥それを見た俺が思ったのは‥
あ、‥コイツの頭のお花畑だ。
だった。
まあ‥いっか。神様がそういうなら、いっか。素直になったら‥いっか。
「よろしく‥お願いします」
身体に触れれば消えていくお花に囲まれながら、俺は‥あの子に手を差し出したんだ。
俺は‥あの時、どうにかしてたんです。普通じゃなかったんです。
神様ならなんとかしてくれ、って本気で思っただけ。それ程‥あの時の俺は普通じゃなかったんだ。
‥あるじゃん? そんな時。
誰でもいいからなんとかしてくれ! って言っちゃう時。
だけど、こころの奥ではちゃんと「言っても仕方ない」「誰もどうにもしてくれない」って分かってる‥っていうね? そういうの。
とにかくだ。
俺は‥何となく気持ちがわーってなって言っちゃっただけで、別に本気で神頼みしたわけじゃないんだ。
ほんっと、これっぽっちもあの子に期待なんてしてなかったんだからね!!
あの後、あの子は、俺を見下ろして、ふふって優しい顔で微笑んで、
その後ドヤ顔で
「じゃあ。お休みの日だけ‥会いに来るとかは? 」
って言った。
‥え、それドヤ顔で言う程のもん? って普通の俺なら思っただろう。即座に「神様だから期待したのにがっかり」って言っただろう。
だけど、あの時の普通じゃなかった俺は、だけど冷静に
「‥いや、そんな東京大阪間の遠距離恋愛じゃないんだからさ」
って突っ込んだんだ。あの子に。
結構真剣に。(今思えば恥ずかしい)
いや、‥ホント普通じゃない時って何をするかわかりませんね。
証言終了!
俺だって、わかる。来たい時にくれば? とか、異世界って‥そんな「どこでもドア」的なアレじゃないでしょ??
だってさ、ちょっとは‥影響がありそうじゃない?
俺とビクターは男同士だから子供は出来ないだろうけど、俺と付き合ってたらビクターが婚期を逃して産まれるはずの子どもが産まれなかったり‥とかさ?
そうなったら‥歴史が変わるよね? 産まれてこなかった子供の人生がまるまるなくなるし、その子供が出会うはずだった人やら、その子供の子供やらどうなる?
俺がそんなこと思ってたら
「ビクターの人生ねえ‥。変わるっていっても‥別にシナリオがあるわけじゃないわけじゃない? だったら、変わるも何もないんじゃない? それが、ビクターの人生なのよ。
誰しも、神が決めた人生を歩んでるわけじゃないの。自分で必死に生きた結果がその人の人生なの」
ってあの子が言った。(頭の中を勝手に読むんじゃない! いくら神だっていってもさ! )
それがビクターの人生‥。
ビクターの住んでる世界じゃない(本来だったら決して関わることのなかった)異世界の要因(俺)が混じったとしても‥それは別に構わないっていうの?
「だって、そうでしょ? そんな周到なお話、神が一人で用意することなんて無理じゃない。神は‥そんなことにまで関われない。
王子の結婚には関わっただろって思ってない? ‥だって、あれは、その他大勢の結婚とは話が違うじゃない」
俺はきっと不満そうな表情をしていたのだろう。あの子はまたふふって笑って、
「そもそもね、過去を弄るわけじゃないんだから。私たちにとってもルール違反とかじゃないの。
ねえ、修斗。
人間だって、予防薬とか飲むじゃない? インフルエンザにならないように、予防接種受けるじゃない? それって、自然法に背いてるわけじゃないわよね? 罹るのは運命だから、予防接種とか運命に逆らう悪い行いです。とか誰も言わないよね? それと同じよ。
別に、私たちは「自然のままに生きるのが当たり前に普通です」って言ってるんじゃないの。「もしかして少しでも幸せにつながるかもしれない努力はするべきだ」って思ってるの」
‥成程?
だしかに、予防接種は‥打つよね? だけど、罹ることもあるよね。100%運命を決定づけるほどのパワーはないからいいって感じなのかな?
確かに影響はあるかもしれないが、ないかもしれない。
俺の場合も‥そういう意味では同じ。
俺とあの子が盛り上がって「ここに住む! 」っていっても、ビクターの方で「嫌」っていうかもしれない。
‥ならいいのかな?
いいのかな‥。
「ビクターの人生にとって‥修斗はきっと‥棚ぼた的超ラッキーだと思ってると思うわ。
選択権は寧ろ、修斗にある。
ビクターと一緒にいたいか、どうしたいか。修斗が決めることだって思う。
ビクターはね、普通に生きてたら、もしかしたら脱童貞どころか、誰かと手を繋ぐことすら出来なかったかもしれない。この国だから、っていうより、ビクターがそんなこと思わなかったでしょうね。‥あの子は何もかも諦めてたところがあるから。
誰かと恋人になりたいって思うどころか、人間キライって思って人生を終えてたかもしれない。つまんない人生だったってため息ついて息を引き取ったかもしれない。
だから、修斗は全然「ビクターの人生を邪魔するかもしれない」とか思う必要ない」
‥いや、それこそ、アンタの思い込みだよね??
ビクターのこと過小評価しすぎてないか??
眉を寄せる俺を見ない振りして(見てないだけかも)
あの子は
「‥私。ナイス。流石神」
ってウットリした表情で呟いた。
‥自分のことは過大評価。
どうしようもねえな。コイツ。
「そして、流石神な私が考えたのが、あれ」
ほう。それが、さっきの週末婚の提案か?
流石神が聞いてあきれるお粗末な提案だな!
俺はため息をついて、
「でも、俺とビクターの休みが合わないぞ。俺は、別に週休二日制じゃないし」
って言った。
寧ろ、あんまり休みなんかない。
夜に来たらいいとかだと‥一体いつ寝るんだって話だし。ビクターだってそれは困るだろう。(寧ろ、肉体労働なビクターの方が困るだろう)
さあ‥どうする?
俺がちらりとあの子を見ると、あの子はふふって笑って
「お休みを合わせること位出来るわ。なんていっても、私は恋の神様だから! 」
って言った。
やっぱり、ドヤ顔で。
‥あ、認めちゃった。恋の神様とか‥自分で言ってる。
ちょっと笑っちゃった。
俺が笑ったのをみて安心したのかな? あの子の緊張みたいなものがふっと落ちた様に感じられた。
‥さっきまで、やっぱりちょっとは(ほんのちょっとは)緊張してたみたい。
緊張が解けて‥で、今はちょっと調子に乗ってる。(単純すぎないか?? )
「だって~。修斗の為にもなにかしたいじゃない。俊哉も修斗もお願い事叶えてあげるって言ってもな~んか喜ばなくって、やになっちゃってたんだよね。
私ってそんなに「凄い神様」に見えない? 」
とか言ってるけど、
アンタのこと凄い神様って思ったこと、ない。
凄い神様に見えない? とか聞かれたらびっくりするし、答えに窮するわ。(俊哉はわかんないけどね! )
俺はなんか一応フォローしようとして‥笑顔で「そんなことない」って言おうとしたけど‥言えなかった。
‥笑えなかった。
今は何だかまだ笑える気分にはなれなかった。
あの子はふ‥と苦笑いして、
俺を慈しむ様な目で見降ろして‥
「大丈夫。私に任せて。ね、修斗。貴方も少しは‥わがままになってもいい。貴方はイイ奴過ぎるから‥
心配になっちゃう」
って言った。
慈しむ様な‥優しい顔。
きっと神様ならこんな表情するだろうって顔。
あ‥神様だったか。
俺は、小さくため息をつくと
「別に、俺は我が儘だけど。我慢とかしてないし」
小声で言った。
だって、‥ちょっと恥ずかしい。過小評価されるより、過大評価されて褒められる方が嫌いだ。良心が痛むから。それなら「け、ホントのことは分かってない癖に言ってろよ」ってこころの中でほくそ笑んでる方がずっといい。今までも過大評価されてただろって? ‥俺は、顔のことでは褒められることはあるけど、それだけなの。「顔だけで中身は空っぽ」が俺の定番評価なの。俺はね、誰にも褒められたことなんてないんだ。
まあ‥それが妥当な評価なんだけどね。
真実だけど‥自分のこと自分でダメダメだっていうのはやっぱり恥ずかしい。
でも、どんなに自分に甘めに判定しても、俺は別にイイ奴なんかじゃない。我慢とかもしてない。
それは紛れもない真実なんだ。
俺は、今までの悪行をあの子に懺悔する。だって‥あの子は(人のこころの中だって平気で読むようなモラルのない)神だし、‥神に嘘ついても仕方ないじゃない?
「我慢するのは、全部長男の啓史兄さんの役目だった。
長男だからって、親に信用されて、家のこと全部任されて。
俊哉の世話や、料理‥全部やってた。
だけど、悪い成績取りたくないって、取ったら兄弟にカッコつかないって‥夜遅くまで勉強してた。
でも、それは近くの大学(※ ハイレベル大学)に行くためだったんだ。家から通えないと不便だからって。
自分が家を出たら、俺たちの面倒を見る人間がいなくなるからって。
なのに、俺や俊哉を自分が行きたい大学に行かせてくれた。‥その際、一言も文句言わなかったんだ。‥俺なら絶対言うね」
俺は我が儘だって思うポイントその1を話した。話しながら、改めて「俺たち兄弟は兄さんに頼りすぎてた」って思った。
俺は更に‥料理だって掃除だって何一つ手伝わなかった。俊哉は手伝ってたのに、だ。
「それは‥良くないわね」
あの子が眉を寄せて苦笑いする。俺は頷いて言葉を続ける。
俺の我が儘ポイントその2だ。
「遠くの大学に行ったら行ったで、盆や正月もろくに帰ってこなかった」
あの子は相変わらず穏やかな顔で俺を見てる。
俺を貶したり、批判したりする感じは全然ない。
それどころか、穏やかに、
「うん。でも、それはバイトしてたからでしょ? 修斗は親や兄弟の負担にならないように仕送りを断ってきたから」
って俺の行いを弁護してくれた。
あの子は‥ずっと信じられない程穏やかで俺に優しかった。
俺が首を振って、
「いや‥だって、自分の我儘で遠くの大学受けたからさ、それ以上負担かけられないじゃない? 啓史兄さんには要らなかった出費だし」
って言えば、
「なるほどね~。でも、そんなこと普通の子は気にせんよ? 」
って言ってくれ、
「‥俊哉のこと。微妙な立場にいた時も‥全然力になってこなかった。今も、俊哉が死んだ原因になった加害者のこととか全部兄さんに任せっきりだし」
って言った時も、
「それは、我が儘とは関係なくない? 多分貴方のお兄さんが修斗より自分の方が適任だって思ったって話じゃない? 年齢のこともあるし、修斗は‥定職についてないし」
って‥やっぱり責めたりしなかった。
でも、堪えた。定職についてないし、って言葉は‥堪えた。
「そう俺は‥自分の夢を追いかけて、今も定職についてない‥」
ポツリと呟くと、
あの子は、しゃがんで俺の目を真っすぐ見て、
「でも、別にそのことで親兄弟に迷惑かけて無くない? 」
「迷惑かけてなかったら、それでいいと思うけど。することも決まってて、その夢に向かって頑張ってる。親からしてみたら、それで十分じゃない? 修斗はバイトだって、学校だって十分頑張ってる。親からお金をもらってるわけでもない。‥私はそのことは、恥ずかしいことじゃないって思う。
それにね、
家から出て自活してない、家に住んでるから家賃掛からない‥っていうけど、住まなくても毎年税金払わなきゃいけないんでしょ? 貴方のお父さんはあの家を売りたくないし、でもまだあの家には帰れないって思ってるみたいだし。人が住んでる方が良いじゃない。家が傷まなくて」
「そのことで、修斗のこと半人前だの夢ばっかり追ってて家族に心配かけてるとか、我が儘だの言う人がいたら、私が殴ってやるわ」
って言ったんだ。
半人前、夢ばっかり追ってて家族に心配かけてる、我が儘‥
俺ってそういう風にやっぱり見えてるんだ‥。
いや、常日頃から思ってたけど‥他人から聞くと‥凹むね!
ほぼノックアウトしかけの俺に、あの子はにっこり笑って。
「大丈夫。修斗は素敵な人間よ。だから、自信もっていい。
貴方は素敵で、きっとビクターを一番幸せにすることが出来る価値のある人間。
そして、貴方もビクターとの未来を望んでいる。
ねえ、だから、私にそれを手助けさせて欲しいの」
言った。
さっき俺を言葉のパンチで滅多打ちにした奴の口から発せられた‥でも、嘘じゃない言葉。あの子にとって、俺が凹もうが、周りが何か言おうが関係ない。
恋の神様だから。
「だから、修斗も素直になればそれでいいのよ! 」
周りにぱあってお花が咲いた。エフェクトって奴? 神の演出。だけど‥それを見た俺が思ったのは‥
あ、‥コイツの頭のお花畑だ。
だった。
まあ‥いっか。神様がそういうなら、いっか。素直になったら‥いっか。
「よろしく‥お願いします」
身体に触れれば消えていくお花に囲まれながら、俺は‥あの子に手を差し出したんだ。
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男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
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