この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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294.予想してた通りですけど?

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「‥すまない。予想ではこんなふうにならないはずだった」
 アン先輩が軽く頭を下げる。
 あくまで軽く。
 って言うか‥ホント不本意ながら下げてるって感じ。
 小声で
「‥コリンってポンコツなのか? 演技力がないって言うか‥何て言うか‥そう‥
 見掛け倒し! 
 見掛け倒しだよな‥
 ってか‥わざと失敗したのか? 見た目と違って性格ワルイ? いや、顔がいい奴は‥性格が悪いって相場が決まってるしな(※ 偏見)見た目通りか。‥け、裏切られたよ。色んな意味で‥」
 ってブツブツ言ってる。
 そして、深~いため息をつくと、
「まさかなあ‥自分にダメージ受けてまで「わざと失敗」とかするとはなあ‥」
 って小声で付け加えた。

 独り言長いよ! ってか‥絶対僕に聞かせようとしてるんだよな‥。
 独り言っていうか、悪口だしな!
 性格ワルイのは‥寧ろアンタだ!! 

 コリンは俯いて‥こころの中でアン先輩を罵倒した。(あくまでもこころの中で、だ。怖いから)

 僕は! 絶対失敗するってわかってたさ! 始めっから! 僕は! 僕は、絶対嫌だって言ったじゃないか!!
 それを! アンタが
「大丈夫。絶対失敗しない(← 無駄にいい顔で)」
 ってごり押ししたんじゃないか! 
 後輩で、罰則中の僕が断れるわけなくない?! だけど、勇気を出して‥罰則期間延長言い渡されるの覚悟で! 反対したんじゃないか! 「絶対無理ですって」って。僕がそれをするのが嫌だっていう理由で反対したんじゃない。(実際にいやだったわけだけど)失敗して困るのは、アン先輩だから言ったんだ。
 僕は先輩の為を思って! 反対したんだ! ‥なのに、先輩が
「大丈夫! 」
 って決行させたんじゃないか‥(涙)

 さて、何があったっていうと‥。
 話しは、あの先輩の発言
「夢だ。‥それは君の協力が必要なんだ(← 無駄にいい顔で)」
 の時まで遡る。
「‥僕の協力って? 」
 コリンはもう始めっから「面倒事には巻き込まれたくない」って感じの‥逃げ腰な姿勢で話を聞いた。
 先輩は終始キラキラした顔をしている。
 その上、
「その為に君を選んだんだ」
 だの、
「‥君が思ってたより話しやすそうで嬉しい」
 だの、今まででは考えられないベタ褒め。
 あれだ。これは「煽てて言うことを聞いてもらおう作戦」だ。
 コリンは
 ‥生憎そんなに単純には出来てない‥。
 と余計に警戒を強めた。
 それが伝わるとアン先輩は次の作戦
「‥先輩命令だ」
 先輩命令を発令した。
 その命令が
「コリン、オレの代わりに容疑者に会え」
 だった。

 以下先輩の夢。
「オレってどうやら美人でやり手の大人のオンナって皆に思われてるみたいなんだ。‥だけど、実際はこうじゃない? 皆会った瞬間に「え!? アン・ジェーンは!? 」って言うんだ。「‥伝説の美女がこんな少年なんて詐欺だ‥」とか、「捕まるなら、せめて伝説の美女アン・ジェーンに会いたいってお願いしたのに‥こんな子供を代わりによこすなんて‥噂以上にアン・ジェーンは冷たい女だ‥。もういい。殺してくれ。もう話すことはない。誓約だろうが何だろうが勝手にしろ」とか散々言われた」
「‥はあ‥」
 そうですか‥。それは‥お気の毒ですが、勝手に想像してる奴が悪いんじゃないか? 先輩が落ち込む理由なんてどこにもないと思うが‥。
「そりゃあ、オレは悪くないよ? それはわかってる。
 だけど、‥一度くらいは「伝説通り美女だった! 」って言われたいじゃない? だから、コリンに代わりに行ってもらおうと思ってね? (← 無駄にいい顔)」
 いやいやいやいや。
 僕じゃ、伝説の誓約士の技術ありませんから。
「ダイジョブダイジョブ。顔だけ見せてくれたら、あとはいつも通りオレがやるから「お前などアン様のお手を煩わす迄もない! 」とか言ってさ! 」
 ってそりゃあもう楽しそうに言う。
「‥全然勧めませんけど、もしね?! もし、絶対アン先輩がそれをやりたいっていうんだったら、‥実際の女性に頼んだ方が良くないですか!? 」
「誓約士全員の顔を見てコリンに決めたんだ! コリンなら女に見えるし。ってか、女より綺麗だし。中性的でミステリアスっての? 伝説の美女ってんだから、普通の「街のちょっとカワイイ子」じゃダメでしょ! (← 無駄にいい顔で)
 ‥それに‥ホントの女に頼むのって‥オレのプライドがね? 」
 ‥え? プライドが何? ‥僕に頼むのはプライド的に大丈夫なんだ?? ‥頼みやすいとか‥そういうあれ? そうか‥丁度僕が罰則者としてリストアップされてたの見たんだな。(※ ハズレ! コリンが罰則処分されるように「あいつは危険だから、ちょっとここらで再研修受けさせた方がいい。オレがひきうけてもいい」っておやっさんに頼んだ。そう、コリンは本来だったら罰則を食らわなかったんだ! )
 それで罰則者の中にちょろそうな奴がいる。ちょうどいい! こいつにやらせよう! ‥と。確かに(リアル)女子はそういないし、‥皆僕以上に頼みにくそうなタイプばっかりだ。仕事柄女装してる人もいるけど‥若い女に化けてる人はいないな。「普通にいる掃除婦さん」とか「家政婦さん」って感じの「普通のおばさん」。
 だから、僕が適任、と。
 ‥なるほどねえ‥。‥そういうのは‥ある‥かも?? あるかな。無いと思うけど‥そもそも、「お願い」自体がおかしい。もう、全部おかしい。
 コリンはふうっとため息を一つついてこころを落ち着けて
「いや、無理です。絶対無理です。容疑者とか、絶対普通の人よりいろいろするどそうでしょう? 絶対無理です」
 勇気を出して先輩にダメ出しした。
 アン先輩は苦笑いして、
「‥変わらないよ。だって、オレの事少年だと思ってたわけじゃない? 容疑者っていっても、そんな伝説の台泥棒とかじゃない限り、色々鋭いって心配する必要はないって! 」
 最後は断言するように言った。
 
 知らんからね! 絶対失敗するだろうけど、‥僕は絶対知らんからね! 

 あ、変な方言はいっちゃった。
 もう何とでもなれ! 

 って、アン先輩に化粧してもらって、アン先輩の思う「伝説の美女、だけど仕事もできる女」な衣装を買ってもらい‥容疑者との「戦い」に臨むことになった。
 確かにね。店員さんは
「美人さんですね~」
 って僕にお世辞言ってたよ? だけど、そんなの店員さんだから。‥そんなの真に受けて「やっぱりコリンは女に見える」とか言ってんじゃないよ!! 
 で。
 容疑者と対面。
 目が合って、一言も発しないうちに‥(ってか、喋ったら絶対バレるから喋る気もなかったが)
 容疑者は苦笑いして‥
「‥よう、アンタがアン・ジェーン? ‥伝説の美女って聞いてたから、女だって思ってたけど、やっぱり嘘だったんだな。誓約士のソロなんて女で出来るわけがないって思ってたんだよ。
 アンタ‥男だよな? 
 いや、自分が女だっていうなら女として扱わないといけない‥だろうけど、アンタは自分を女だって思ってない。‥よな? 犯人ってのは男が多いだろうから、女の振りして情報を集めよう‥ってか? 俺らもなめられたもんだよな」
 って言ったんだ。
 はい、一発でバレた。
 バレた上に、めちゃディスられてる。僕、したくてしてるわけじゃないのに、これだ。
 しかし、すごいな。なんで一目で男ってバレたんだろ。
 そんなこと思ってたら
「なんでバレたんだって顔してるな。‥そういうのは、解るんだよ。俺らみたいな人間はな。
 ‥というか、あんたホントにソロの誓約士? 全然オーラがないんだけど‥。
 アンタより、横の嬢ちゃんの方があるな。オーラ。
 伝説のアン・ジェーンは寧ろ‥アンタじゃないのかい? 」
 って‥そんなことまでバレてる。
 は~。この人凄いよ。凄い犯罪者(?)だよ。
 僕は‥不幸過ぎない??
 凄い犯罪者(?)は、
「お前の情報収集なんてオレで十分だ! 」
 ってアン先輩に連れられて行っちゃった。
 ‥アン先輩、さっきその男に「嬢ちゃん」って言われたんだから、少年キャラしなくてよくない? アン先輩‥もしかして‥失敗した僕に怒ってる?? ‥いや、知らないよ?? 僕絶対できないって言いましたよね??
 がくがくぶるぶる‥。
 表面は無表情のままなんだけど‥内心はそんなんだ。
 凄い犯罪者(?)は去る寸前、コリンを振り返り、
「まあ‥どうでもいいや。そこのアン・ジェーン(笑)(← コリン)あんたさ。アン・ジェーンの身代わりで女としてくるんだったら、もう少し女らしい仕草とか勉強した方がいいぜ。それじゃ、あんまりにもお粗末だ」
 って言ったんだ。
 嘲笑しながらね!
 むき~!! 変装だろうが何だろうが完全にできる様にしてやろうじゃない!! 女学生だろうが、家政婦だろうが何にだって変装してやるぜ!? 
 ブチ切れかけ‥「いやいや。もう女装はこりごりだ」って考えなおした。
 で。
 あの凄い犯罪者(?)の情報収集等はアン先輩がいつも通りささっとやっちゃって‥冒頭のアン先輩による「仮の謝罪」ってわけだ。
 
 これで、僕が全然悪くなくって、一方的に被害者だったってこと‥おわかりいただけただろうか?
 いや、僕が悪いんです。先輩の無茶振りに答えられなかった僕の力量不足です。
 ってかそもそも、誓約士にそこまでの変装スキル、いる!? 
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