306 / 310
閑話 ロナウと魔剣
しおりを挟む
その後、なんだかんだで騎士団に「とにかくお試し入団」が決まった僕に(※ だって、僕が断れるわけないじゃん!! )
「魔剣は、封印だ」
騎士団長が言った初めの言葉がそれだった。
びっくりしたものの
「これは家宝でお前のモノじゃない」
って兄から常日頃言われてるし‥まあ、いい機会かなって思うことにした。
渡された木刀は、教会の練習用の剣より重くて長くて「ああ、これが学生とプロの違いかあ」って思った。
同時に
「騎士団に入団って‥入団テストとかしなかったけど大丈夫か? 」
と思ったり。
‥僕はここでもっといろいろ考えるべきだったんだよ。だけど、‥まあ‥いつも通り流されたんだよね。
思えば僕の人生って流されっぱなしだ。
来る日も来る日も訓練。
走り込み、甲冑を着ての階段の上り下り、素振り‥それも剣だけじゃない、なんかハンマーみたいな奴を振り回したり。
弓を射たり、乗馬訓練をしたり、泳いだり。
‥毎日くたくただ。
団長の御好意で騎士団の寮に住まわせてもらってるんだけど、もう殆ど寝るためだけの部屋だ。
最初の日、僕を案内してくれたイケメンの騎士さんは休日になったらいそいそとデートに出かけてるみたいだけど‥僕にそんな余力はない。
休日なんて、ただ寝るだけだ。
‥寝てたいのに、団長が笑顔(!)で、
「街に買い物にでも出ないか? 」
とか‥誘いに来てくれるんだ。(なぜか、やたら団長と休みが重なるんだ(※ 勿論わざと))
いびられる!? と身構えてたんだけど‥どうやらそうでもないらしく‥ただ一緒に「お出かけ」してるだけ。
‥何か話があるのか?
と疑ってはみたが‥そうでもないらしい。
団長はそんな腹芸は出来ない人だ。
そんなことを思いながら街を歩いてると、例のイケメン騎士を見掛けた。
一応知り合いだから声をかけた方がいいのかな? って思ったけど、どうやら向こうは女性連れらしい。
‥ああ、デートって言ってたな。
「僕には縁のないこと」って思って目を逸らした。
そんな僕に団長が後で「ああやって、街の様子を見てるんだ」って教えてくれた。
「騎士団の見回りだと、やっぱり見せない街の顔ってのがあるからな」
って。
それだけかって言われると違うんだろうけど、彼は休日もやっぱり騎士様なんだ。
なんか感動して、「油断して」る僕に団長が
「‥フタバの事どう思ってる? 」
‥不意打ちを食らわして来た。
「‥どうって‥。いい友達です」
って言うと、ぎろっと睨まれた。
ええ??
「あ‥仮とはいえ、婚約者にいい友達って変ですよね。‥ええと‥。‥大切な人です」
「本当か? 」
じっと‥疑うような視線を僕に向けて来る。
いや、‥本当かどうかって問題か? あくまで「仮の」婚約なんだから‥それは問題じゃないんじゃ?
‥でも、自分の娘が「遊ばれてる」「軽く扱われてる」って風に聞こえたんだろうか。
僕が‥そんなことするわけ、‥出来るわけないじゃないか。
それに、‥嘘なわけない。
「仮なんですけどね。‥僕にはフタバちゃんが、誰よりも大好きで‥大切な人になってしまったんです」
「‥合格だ。
君にフタバを任せる」
‥は?
「もう、仮じゃない。フタバの意志も聞いているんだ。‥後は俺の気持ちを‥ってフタバの義父さんからいわれてたんだ。
俺も問題はない。
俺は君とフタバの結婚を認める」
照れくさそうに‥団長がいかつい顔を赤らめた。
いや、‥ちょっと怖い。
照れるマッチョ怖い。
「え? 結婚って急に‥」
急に言われても、困る。
‥貴方に言われても、困る。
「‥嘘だったってことか? 俺に言ったフタバを幸せにするって言葉は嘘だったってことか? 」
ひい‥それは確認じゃなくって‥脅迫‥!
「嘘じゃないです‥! 」
(びびって言葉も出なかったんだけど)あんまりにも団長からの圧が強かったから‥
僕は慌てて答えた。
「‥ならいいじゃないか。
ここで俺に誓ってくれ。
フタバと結婚して、フタバを幸せにするって」
に~と団長が満足そうに微笑む。微笑むって‥上品な言葉は似合わないな。
あれだ。
魔王みたいな笑みだ。
アンバーさんみたいな「メロメロになっちゃう♡」な笑みじゃない。
‥背筋凍っちゃう系の笑みだ。
「ん? どうした? 聞こえないぞ」
「ひい! 誓います。誓います! 」
叫ぶ様に答えた僕だったけど‥
息を整えて、
改めて
「‥僕は、フタバさんを一生幸せにするって誓います」
って言いなおした。
真っすぐ団長を見て、だ。
団長はふっと微笑むと。
「‥それは、フタバに言ってやってくれ」
って僕に背を向けていった。
‥そうだよね、それ、僕もさっき思った。
彼女のお父さんに真剣な顔して「幸せにします」はないよね。
彼女がいないところで、とか、ないよね。
「はい! 」
叫ぶ様に答えて、僕はフタバちゃんのもとに駆けて行った。
僕を選んでくれたのは、昨日まで魔剣だけだった。
きっと、この先もあの魔剣だけだって思ってた。
だから魔剣は僕にとって特別だった。
だけど‥
「フタバちゃん! 」
フタバちゃんが驚いた顔で振り向いて、
微笑む。
僕は自分で特別で大切なものを探し出した。そして、その大切なものは僕を‥僕と同じ気持ちで大切だって思ってくれてる。自分の二人の父親に‥相談してくれた。父親に相談って結構重大なことだよね?
それって、かなり嬉しい。
だから、最後の言葉は自分で言わないといけない。
「フタバちゃん、結婚しよう! 」
「魔剣は、封印だ」
騎士団長が言った初めの言葉がそれだった。
びっくりしたものの
「これは家宝でお前のモノじゃない」
って兄から常日頃言われてるし‥まあ、いい機会かなって思うことにした。
渡された木刀は、教会の練習用の剣より重くて長くて「ああ、これが学生とプロの違いかあ」って思った。
同時に
「騎士団に入団って‥入団テストとかしなかったけど大丈夫か? 」
と思ったり。
‥僕はここでもっといろいろ考えるべきだったんだよ。だけど、‥まあ‥いつも通り流されたんだよね。
思えば僕の人生って流されっぱなしだ。
来る日も来る日も訓練。
走り込み、甲冑を着ての階段の上り下り、素振り‥それも剣だけじゃない、なんかハンマーみたいな奴を振り回したり。
弓を射たり、乗馬訓練をしたり、泳いだり。
‥毎日くたくただ。
団長の御好意で騎士団の寮に住まわせてもらってるんだけど、もう殆ど寝るためだけの部屋だ。
最初の日、僕を案内してくれたイケメンの騎士さんは休日になったらいそいそとデートに出かけてるみたいだけど‥僕にそんな余力はない。
休日なんて、ただ寝るだけだ。
‥寝てたいのに、団長が笑顔(!)で、
「街に買い物にでも出ないか? 」
とか‥誘いに来てくれるんだ。(なぜか、やたら団長と休みが重なるんだ(※ 勿論わざと))
いびられる!? と身構えてたんだけど‥どうやらそうでもないらしく‥ただ一緒に「お出かけ」してるだけ。
‥何か話があるのか?
と疑ってはみたが‥そうでもないらしい。
団長はそんな腹芸は出来ない人だ。
そんなことを思いながら街を歩いてると、例のイケメン騎士を見掛けた。
一応知り合いだから声をかけた方がいいのかな? って思ったけど、どうやら向こうは女性連れらしい。
‥ああ、デートって言ってたな。
「僕には縁のないこと」って思って目を逸らした。
そんな僕に団長が後で「ああやって、街の様子を見てるんだ」って教えてくれた。
「騎士団の見回りだと、やっぱり見せない街の顔ってのがあるからな」
って。
それだけかって言われると違うんだろうけど、彼は休日もやっぱり騎士様なんだ。
なんか感動して、「油断して」る僕に団長が
「‥フタバの事どう思ってる? 」
‥不意打ちを食らわして来た。
「‥どうって‥。いい友達です」
って言うと、ぎろっと睨まれた。
ええ??
「あ‥仮とはいえ、婚約者にいい友達って変ですよね。‥ええと‥。‥大切な人です」
「本当か? 」
じっと‥疑うような視線を僕に向けて来る。
いや、‥本当かどうかって問題か? あくまで「仮の」婚約なんだから‥それは問題じゃないんじゃ?
‥でも、自分の娘が「遊ばれてる」「軽く扱われてる」って風に聞こえたんだろうか。
僕が‥そんなことするわけ、‥出来るわけないじゃないか。
それに、‥嘘なわけない。
「仮なんですけどね。‥僕にはフタバちゃんが、誰よりも大好きで‥大切な人になってしまったんです」
「‥合格だ。
君にフタバを任せる」
‥は?
「もう、仮じゃない。フタバの意志も聞いているんだ。‥後は俺の気持ちを‥ってフタバの義父さんからいわれてたんだ。
俺も問題はない。
俺は君とフタバの結婚を認める」
照れくさそうに‥団長がいかつい顔を赤らめた。
いや、‥ちょっと怖い。
照れるマッチョ怖い。
「え? 結婚って急に‥」
急に言われても、困る。
‥貴方に言われても、困る。
「‥嘘だったってことか? 俺に言ったフタバを幸せにするって言葉は嘘だったってことか? 」
ひい‥それは確認じゃなくって‥脅迫‥!
「嘘じゃないです‥! 」
(びびって言葉も出なかったんだけど)あんまりにも団長からの圧が強かったから‥
僕は慌てて答えた。
「‥ならいいじゃないか。
ここで俺に誓ってくれ。
フタバと結婚して、フタバを幸せにするって」
に~と団長が満足そうに微笑む。微笑むって‥上品な言葉は似合わないな。
あれだ。
魔王みたいな笑みだ。
アンバーさんみたいな「メロメロになっちゃう♡」な笑みじゃない。
‥背筋凍っちゃう系の笑みだ。
「ん? どうした? 聞こえないぞ」
「ひい! 誓います。誓います! 」
叫ぶ様に答えた僕だったけど‥
息を整えて、
改めて
「‥僕は、フタバさんを一生幸せにするって誓います」
って言いなおした。
真っすぐ団長を見て、だ。
団長はふっと微笑むと。
「‥それは、フタバに言ってやってくれ」
って僕に背を向けていった。
‥そうだよね、それ、僕もさっき思った。
彼女のお父さんに真剣な顔して「幸せにします」はないよね。
彼女がいないところで、とか、ないよね。
「はい! 」
叫ぶ様に答えて、僕はフタバちゃんのもとに駆けて行った。
僕を選んでくれたのは、昨日まで魔剣だけだった。
きっと、この先もあの魔剣だけだって思ってた。
だから魔剣は僕にとって特別だった。
だけど‥
「フタバちゃん! 」
フタバちゃんが驚いた顔で振り向いて、
微笑む。
僕は自分で特別で大切なものを探し出した。そして、その大切なものは僕を‥僕と同じ気持ちで大切だって思ってくれてる。自分の二人の父親に‥相談してくれた。父親に相談って結構重大なことだよね?
それって、かなり嬉しい。
だから、最後の言葉は自分で言わないといけない。
「フタバちゃん、結婚しよう! 」
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる