この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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274.長女の思う壺? 

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 長女って案外人を見て計画を立ててる‥って感心すべきなのか夫人が単純なだけなのか。
 目の前で(長女の計画通り)ナナベルにマジ切れしてる夫人を見て、コリンたちは「あ~あ」って思った。
 貴族ってそんな表情を露わにしちゃダメだっていうじゃない? これってどうなんだろ、って呆れたり。


 二人の「待ち合わせ場所」をザッカの知り合いの「情報屋」がゲットしたのは昨日の事。昨日約束して、今日。連絡方法はどうやら、手紙の様だった。
 知らない子供を使って、伝言を伝えて来る‥とか、いつの時代の連絡手段だよ、って思う。
 そんな「しょーもないお誘い」にナナベルが乗ったのは、きっと「もう相手の出方をうかがうの面倒」とか思ったからだろう‥って皆の想像。きっとそう間違ってはいないだろう。(それか、手紙の内容が余程魅力的だったか‥だけど、そんなことはないだろう)
 ナナベルの後ろでコッソリ待ってると、ナナベルに遅れること5分、夫人が来た。
 見た瞬間「親子だね~」って思った。
 真っ赤な髪の毛と気の強そうな眼差しがそっくり。
 だけど、ナナベルと比べて身体つきは華奢っていうか「女性らしい」って感じ。
 成人した娘の母親だというのに、今でも若若しい美貌を保っているのは「流石貴族」って感じがする。
 きっと、美意識が高いんだろう。
 それに比べナナベルは若さでは勝っているが、手入れが全然行き届いてないって感じ。
 だから‥二人は親子というよりは寧ろ姉妹の様に見えた。

 あ~。ナナベルさんって殆ど母親似なんだ。だけど、ナナベルさん単品で見たら、ちょこっとナナフルさんに似てるとこもあると思ったんだけどな。‥兄弟って不思議だよな。
 なんて(この場には関係ないことを)ちょこっとコリンは思ったんだけど、勿論口には出さなかった。
 
「長女もここに来ますかね」
 こそっとコリンがザッカに聞いた。ザッカは静かに首を傾げる。
「こないんじゃないか? ‥少なくとも今は全然そんな気配ない」
 それにはロナウとコリンも同意した。
「魔力を探っても‥怪しい奴は誰も居ませんね。僕らは魔力の気配には敏感ですが、殺気や気配を消した‥所謂暗殺者タイプはそう分からないんですよね‥」
 そこはザッカにお任せするしかない。
 ザッカは顎で物陰を示すと
「‥そこの陰、あそこに一人いる。凄腕って程じゃない‥微妙な暗殺者っぽいのが‥」
 って言った。
 ああ例の、長女が雇った「そこそこ」の情報屋(?)ね? それとも、殺しも別途請け負いますな「何でも屋」かな? だけど、凄腕って感じではないらしいから‥技術はそうでもないってタイプなんだろう。
 丸腰の女子供なら大丈夫ですけど‥って感じなのかな? (胸糞悪いね)
 そんなそこそこの奴は、今は「一応見ときますけど、別に逐一報告とかしませんよ? 殺し合いになるようだったらそのまま放っといて、すべてが終わった時に目撃者として登場する。もし、殺し合いにならなかったら、二人を適当に「怪しまれない様な感じで」殺しとけばいいんでしょ? 」って感じで待機してるんだろう。

 因みにコリンたちはホントに三人の近くにいるんだけど、気付かれていない。例の、三人位なら気配を消せる結界みたいな奴をコリンが張っているからだ。
 (コリンとロナウは暗殺者がどこにいるかすらまだ分かっていないんだけど‥ザッカによると「奴はこっちに気付いてない。問題ない」らしい。‥そういうところも、そこそこの奴だよね)
 今回のメンバーはザッカ、コリン、ロナウだ。
 長女が雇った暗殺者(笑)対策にシークかザッカ‥ってなった時に、ザッカが「自分が行く」って立候補したんだ。
 全部自分の目で確かめておきたいんだろう。そう思って皆反対はなかった。
 二人が決まったところで、あともう一人も腕利きのメンバーにすると、気配を消し切れなくなるかもしれない(魔力というか‥殺気をってことだろう)からやめておこうってことになり‥なんとなく消去法でロナウになった。
 三人は再びナナベルと夫人を見る。


 ナナベルはチラリと夫人‥母親を見て、小さくため息をつくとさっさと背を向けた。
「ちょっと! どこ行くのよ! なんなのよ貴女は! 家にいる時は悪い噂ばかりたてられ伯爵家に迷惑をかけて、家出しても、騎士団なんかの手を煩わせて‥
 騎士団が捜索するってことは、あの家のことをなんでも調べるってことなんですよ!? 家を隅から隅までひっくり返して、使用人全員に聞き取りして‥
 使用人があの家の「あることないこと」外部の人間に話すのよ?! そんなの許されるはずがないわ。
 あることを話すのも許されないのに、ないことをあたかも本当かの様に話されたら‥どれ程伯爵家の恥になると思う?! そんなの許されることじゃないわ」
 母親が淑女とは思えない様な‥凄い剣幕でナナベルに叫んだ。
 ナナベルはそれを聞いて‥更にしらっとした表情になる。
「そこは嘘でも「心配してたわよ」と位言っていただきたいですね。騎士団と関わりたくないとか‥調べられて困るようなことでもあるんですか? 
 大変ですね。脛に傷持つ人は。
 だって、火のない所に煙は立たぬっていいますからね」
 ナナベルの皮肉に、夫人はますますナナベルを睨みつける。
 もう、‥まさに殺しそうな視線だ。

 ‥このままでは、このまま殺人事件に発展しそうだ。
 それじゃあ長女の思う壺じゃないか。
 ‥それだけは止めないと‥。
 ゴクリ‥と唾をのみ、動き出そうとするコリンをザッカが首を振って止める。
 もう少し様子を見ろってことだろう。

 予想外に夫人は口で対応することを選んだみたい。
 まあ‥ね、なかなか「かっとなって」殺人事件になんて発展しないよ。
「は!? 何もない所に放火してでも火を出すのが世間ってもんでしょう?! 貴女も貴族として生まれたからにはそれ位の事当然わかるでしょう!? 」
 にしても‥
 ホント、この人必死だよね。
 保身に。自分の事しかさっきから言ってない。
 ホント‥ナナベルさん可哀そう。ここにはいないけど、長女さんも‥可哀そうかも。
 きっと、二人とも母親に愛されずに育ったんだろうな。
 ちらっとロナウを見たら「貴族なんてそんなもん」みたいな表情をしていた。

 ナナベルさんは今度は大きくため息をついて、そのあと、真っすぐに夫人を見た。
 夫人がちょっとひるむ。
「‥貴族は大変ですね。私はそんなバカみたいな人間と金輪際関わり合いになりたいなんて思わないんです。‥私のこと娘だとすら思ってないんでしょうから、もうこれ以上関わり合いにならないでください」
「‥で‥出来るものならそうしたいわ。でも、伯爵家の敵にとって、貴女は格好の非難材料なの。貴女は生きてるだけで私たちの迷惑になってるの。貴女が社交界から消えて家を出てることで、皆はそれこそ‥あることないこと噂にして嘲笑してる。
 そんな恥ずかしいこと‥ないわ」
 ナナベルから視線を逸らしながら夫人が言うと、ナナベルがふ‥と嘲笑し
「伯爵家の恥‥とか。今さら。寧ろ世間の関心が私に向いて貴女にはよかったんじゃないですか? 」
 夫人をまるで汚いものを見るかのような視線で見ながら言った。
「‥この‥! 」
 夫人が懐に忍ばせていたナイフを出してナナベルに向かってきて、
 そのタイミングで、ザッカの友人の騎士が夫人を拘束する。騎士の登場でさっきの「そこそこの奴」はもう‥影も形もない。逃げ足は一級品なんだろう。
 ‥それにしても、ザッカの友人の騎士さん、うま~く隠れてたな。
 (勿論コリンたちは気付いてたけど)あの「そこそこの奴」もナナベルも夫人も全然気づいてなかったぞ。
 コリンが呑気にそんなことを考えている間に‥
「殺人未遂の現行犯で逮捕します! 」
「何するのよ! 」
 夫人は騎士に最後までナナベルを睨みつけながら連行されていった。
 
 あとに残されたナナベルは唖然としたような‥だけど、どこか寂しそうな表情でその様子を眺めていた。
 アンバーがナナベルの後ろに立つ。
 ‥どこにいたんだアンタ。
 コリンたちが気配を消したままアンバーを見る。
 アンバーはコリンたちに気付かない振りをしている様だ。(でも、勿論気付いてる。気付かないわけがない。アンバーレベルだったら気付いているだろう)
 ナナベルがアンバーを振り返る。
「家族が居ても不幸なら‥いない方がましかもね」
 そういって苦笑いするアンバーにナナベルは
「身をもって世間の汚さを教わったわ。‥反面教師もまた、大事な教師だわ」
 って強がって微笑んだ。
「まあ‥それを、反面教師だって判断できるなら、確かに自分にとって大事な教師だね」
 ってアンバーも微笑む。
 いつもの色気たっぷりな微笑じゃない。
 どこか寂しそうな‥優しい微笑だった。
 悪い親に傷つき、復讐を願ったり、ただ心を閉ざすだけなら、それは反面教師と判断出来ているとは言えない。
 だけど、ナナベルは反面教師だと判断し、そしてそれを乗り越えようとしている。
 傷ついても、まだ前を向こうとしている。
 その勇気と強さ‥そして、寂しさにアンバーは惹かれた。
 初めて‥傍に居たいって思った。
「俺と‥一緒に来ないか? 」
 つい、考えなしな言葉が口から出てきて‥慌てた。
 ナナベルが驚いた表情でアンバーを見、そして苦笑いして首を振る。
「アンバー、貴方もそういうのもうそろそろやめた方がいいわ。
 この前の貴族のお嬢様はどうする気なの? あの子も遊びなの? ‥貴方の人生だから口出すつもりは無いけど‥私はもう、‥こりごりだわ。
 その場限りとか、楽しければいいとか、もうそんなのこりごり」
 そう言って、ナナベルはアンバーに背を向けて歩き始めた。
 
 その背中は、今まで見たどんな彼女より力強く、美しく見えた。
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