この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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268.show must go on ⑤(side フタバ)

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 ナナフルさんの悩みって何だろう。

 ザッカさんはナナフルさんが不幸にならない様に、「ナナフルさんの不幸になるかもしれない」種を一つづつ取り除きたいって思ってる。
 きっと今までずっとそうしてきたんだろう。
 だけど‥ナナフルさんは今、ザッカさんの知らないところで‥悩んでいる。
 悩みがない人なんていないし、それこそ大事な人が悩むことがないように‥って全部先回りして世話を焼くことは不可能だし‥それってちょっとおかしい。
 だけど、ナナフルさんのあの表情‥あれは‥「悩むこともあるよね~人間だし‥」ってレベルを超えている‥気がする。
 何だろう。
 ナナフルさんの過去に関係があること? 
 ‥ってことは、もしかして‥エンヴァッハ伯爵夫人が接触してきた‥とか?! いや‥それよりも今怖いのは‥エンヴァッハ伯爵夫人の二人の娘、白薔薇と赤薔薇だ。
 この二人、噂は山ほど聞くんだけど‥実際の話ってのが全然入ってこない。‥ということは、それだけ情報管理をしっかりしているってことだろう。
 どれ程強力なバックがいるんだろうって思う。‥それを考えると、怖い。(※ 実際はそれを白薔薇が人を使って一人でしている)
 もし‥その二人がナナフルさんの存在に気付き、接触してきている‥としたら? 
 きっと二人はナナフルさんのことを快く思っていないだろう。
 だって‥エンヴァッハ伯爵家の庶子とはいえ「唯一の男子」なわけだから‥。後継者問題とか‥脅威でしかないよね? 
 だけど! ナナフルさんはあんたの家には無関係だから! お願いだから放っておいて!!
 ‥でも、そんな風には思ってくれないんだろうなあ‥。

 もし‥
 (ナナフルさんのお母さんを殺しただけでなく)ナナフルさんまで命を狙われたらどうしよう‥。
 そんなことを考えたら、心配で‥いっそ、私の屋敷に閉じ込めてしまいたいって考えてしまう。
 愛してるから監禁したい‥じゃない。心配だから、隠してしまいたい。
 だけど‥それは、本当の解決策じゃない。
 取り敢えず、回避しているだけだ。
 相手はナナフルさんのお母さんを殺した‥悪党だ。あっちがその気になったら、ナナフルさんを見つけ出して、ナナフルさんを隠している私の屋敷の者たちも一緒に殺してしまうだろう。
 ‥そんなことは‥させられない。
 私の命だけならいい。だけど‥私の家族や、使用人の命は、私の好きにしていいものでは絶対にない。
 そもそも‥そんな悪党に私の命をあげてやるのは嫌だな! 
 ああ嫌だ‥
 ナナフルさんを危険な目にあわせるのも、ナナフルさんを大事に思うナナフルさんの周りの人間が巻き込まれるのも‥。
 何もかも、嫌だ。
 全員、ナナフルさんに危害を与える恐れがある者たち全員。
 危険を及ぼす前に‥殺してしまいたい。
 
 魔薬にしたって‥エンヴァッハ伯爵家にしたって‥なんだって真面目に生きている人間の邪魔をするんだろう。
 面倒くさい。
 色々考えないでいっそのこと「疑わしいもの」は全員一掃してしまいたい。
 これじゃ‥昔のコリンと同じか‥。

 ただ、平凡に平和に暮らしたい。
 それだけなのに‥。
 何故、それだけでいいって思えないんだろう。
 きっと‥知らないんだ。
 どれ程、平和で平凡な日々が愛しく‥素晴らしい日々なのか。
 そんな暮らししたことがないから‥。
 それは可哀そうだけど‥だけど、だからといって「じゃあしかたないね」って風にはならない。

 同情には値するけど、絶対同感できない。
 絶対、許せない。

 ナナフルさんが「法にのっとって」を望むならそうしよう。
 ナナフルさんが望む「常識的」「平和的」な方法で、悪者たちを一掃しよう。
 それが一番、「いいこと」だから。
 相容れない考え方だから、違法だからって、悪者たちに対して、私たちまでが違法な、非人道的な方法で対抗したら‥絶対そのことに対して不満を持つ人たちが出て来る。
 悪者だからって‥、それは余りにも非情だ‥、そんな非人道的なこと‥
 そんな風に思われるの、嫌じゃない?

 だから、考えよう。
 平和的で常識的な方法を考えよう。
 
 考えることは、無駄なことなんて何もない。
 一人で考えること、皆で考えること。
 それぞれ無駄じゃない。
 その時間があるから、こころが成長したり、絆が深まったりする。この人って案外‥こういうところもあるんだ。って相手の別の面を見れたりする。
 やらなければならないことがいっぱいある。やっておきたいことも。‥何からやっていったらいいか分からないけど、だけど、そもそも優先順位がつけられないことも分かる。‥きっと、同時進行で進めていかなければいけない。
 だけど、私は一人じゃない。
 一人だって思ってはいけない。
 守る人がいる、‥守ってくれてる人がいる。そう自覚することによって責任感が生まれる。「自分が犠牲になればいいや」は、無責任な考え方だ。そうならない様に、自分には自分を大切に思ってくれる人がいることを自覚しなければいけない。それよりなにより、一人じゃないってことは‥力が得られて、安心できるよね。
 ナナフルさん‥だから、貴方も一人で悩まないで欲しい。
 誰よりもザッカさんに大事に思われてる貴方が危険な目にあったりなんてしたら‥それこそ、ザッカさんは魔王と化しかねない。
 巻き込みたくないって気持ちは‥持ってしまいがちだけど、絶対ザッカさんなら無理にでも巻き込まれに行くわけじゃない。だから、素直に巻き込んであげて欲しい。
 助けて‥一緒に戦って‥
 って声に出して言って欲しい。
 勿論、私たちも‥
 
 私たちは今回、赤薔薇に会います。
 貴方に害を与えそうって判断したら‥どんな手を使ってでも妨害するつもりです。
 勿論、魔薬のこと探るって目的もある。‥だけど、それは二の次、「ついで」だ。きっと、たいした情報なんて持っていないだろうから。
 私たちは貴方が心配で仕方がないんです。貴方のことが大好きになったから。
 見ていたら幸せになるような優しい微笑が、コリンのくだらない悪戯に怒って朝食のソーセージを減らす「お茶目な厳しさ」が‥たまらなく大好きなんです。
 いてくれるだけで幸せなんです。
 いなくなるってかんがえただけで、‥怒りでどうにかなりそうな気がします。
 それっ位、居てあたりまえな人なんです。
 貴方の笑顔を守る為なら、どんな小さな心配の芽も摘んでしまいたいって思うぐらい‥大好きなんです。
 私たちは貴方が幸せじゃなかったら、何のために戦っているのか分からないんですよ? 
 だから‥

 ナナフルさんは誰よりも幸せになってもらいたいんです。ザッカさんの隣で、笑っていて欲しいんです‥。
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