この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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267.show must go on ④(side フタバ)

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 転送! ‥は無理でも、コリンの「気配遮断」の魔術でこっそり隠すことは‥出来るかも?! 
 でも‥それってどうかしら
「アメージング! 人が消えたぞ! 」
 って驚くだけで済むかしら。
 きっと
「やっぱりなにか企んでやがったんだな!? 誘拐だ! 妹を返せ! 」
 ってなるに違いないですわね‥。
 ダメ。これは‥グッドアイデア! 即採用って飛びつけるようなアイデアではない‥。
 でも、コリンの目はキラキラしてる。
 これは「アメージング! この案しかない! 」って顔‥。だけど、「ホントにそう」思ってるんじゃなくて、きっと「シークさんが発言してくれた! 」ってことに喜んでるんだ。
 ‥この件に関して、シークさんは今までホントにノンタッチだったから。
 無関心だったってことじゃない。
 きっと‥心配で‥心の底ではやめて欲しかったから。
 だけど、こうして目の前で「心配ないようにするように」案を詰めてるのを見せることで、シークさんも「少しは」認めようとしてくれてるんだ。
 コリンはそのことが嬉しいんだ。
 あと、好きな人が自分の為に言ってくれた言葉だから、単純に嬉しいってのもあるんだろう。
 恋について、
 色々話した。
 恋心と、リアルな性欲について‥とかね。
 コリンにも人並みに性欲があるってことを知った‥あの時から、「コリンもただの人間なんだ」って思えた。
 優等生の「超合理主義者」じゃなくって、一人の「迷ってるただの人間」。
 そういうことまで話せるような間柄の「友人」なんて‥今までいなかった。
 ‥好きにならないわけがない(勿論、恋愛関係とは違う「好き」だ)コリンと恋愛とか‥私は「違う」。どう違うか分からないけど、違うって分かる。
 じゃあ誰なら「違わない」のか? って言われても困るけどね。
 私はきっと、コリン以上に恋愛に対して不器用だ。

 だけど、今はそんな話をしている場合じゃない。

 私はふいに頭に浮かんだ「今は関係がない話」にそっと蓋をして、「今関係がある話」に集中することにした。
 集中集中‥。
 一つ息をついて前を向くと、ザッカさんが時計を見ているのに気付き‥つられて時計に目をやった。
 時間は4時。驚いて窓の外を見ると、もう辺りは暗くなりかけていた。
 時間が経つのが早くて驚く。
「隠す‥って案は、最終手段として、その場を取り繕う方法を考えないとな‥。って、もうこんな時間だ。ナナフルが帰って来る」
 ザッカさんがそう「今日の話合い」を締めくくる。
 ザッカさんってば、相変わらず「一にナナフルさん、二にナナフルさん」ですわ。‥ホントに、羨ましい。
 私もこんな「大切な人」が出来たらいいのになって思う。

「ああそうですわね。私たちの迎えももうすぐ来ますから、大通りまで出ておきませんと‥」
 私が言うと、ロナウも頷いた。今日も相変わらず、ロナウと私は「ニコイチ」だ。
 なんだか、このまま結婚しちゃいそうな勢いだけど‥私としては「それはちょっと嫌かも‥」なのよね。
 なんか‥「あんまり適当じゃない?? 」って思うのよね‥。
 私の人生それでいいの?? 
 って。
 二人して席を立ち、丁寧にザッカさんたちに会釈した。
 同じ貴族階級のロナウとはこういう時の対応が同じで安心する。コリンだったら「もう! もっと丁寧に会釈して! 」って思ったり「そこでそんな表情しない! 」ってハラハラしたりすることがあるけど‥、ロナウにはない。だって「そういう対応」は「貴族として常識」だから。
 だからといって‥「これだから平民は‥」とか「こういうとこ不満」とかは無いけどね。
 結婚相手として考えてないから「まあいいか」って思うのかもしれない。‥理由はいろいろあるだろうけど、結論として「私は何もコリンに不満はない」それはきっとロナウも同じだ。
 そんなことを考えながらついコリンをじっと見てしまった。
 相変わらず‥顔だけ見てたら天使みたい。
 それこそ‥「アメージング! 」って感じ。
 コリンは首を傾げて、不思議そうに私を見上げる。私は、つい誤魔化し紛れに
「コリンも私たちと一緒に来ますか? 私の屋敷でこの話の続きをした方が話が進みますし」
 って聞いてしまった。
 だけど、適当にいったものの「それは確かにイイかも? 」って思った。
 効率もいいし、これは悪い案では無くない? 
 ロナウも要るわけだし、今更コリンが増えても家の者は困らないし。(寧ろ喜ぶし)
 だけど、コリンはちょっと遠慮がちに微笑んで
「この話は‥皆が居るところで話した方がいい。
 それに、三人だけで話していると、きっと暴走して‥事後報告したら「そんな危ないこと許せるか」って案しか出ない。‥僕も一人で考えておくね。明日それぞれが考えて来たことを発表し合おう」
 って言った。
 ‥ごもっともなご意見です‥。そうですよね。
 私は苦笑いしてコリンに頷いた。
 コリンはザッカさんを振り向くと、
「ナナフルさんって、どちらに行かれているんですか? 」
 って「今更なこと」を聞いた。
 あ。コリンも知らないんだ。
 今日、私たち(ロナウとフタバ)が来た時からおられなかったから、きっと「何か適当な理由をつけて」ナナフルさんに席を外してもらってるんだろうって思ってたけど‥コリンもどこに行っているのか知らなかったんだ。
 私が驚くとコリンはこそっと「朝、ダイニングに来たときにはもういなかったよ」って教えてくれた。
 ザッカさんは頷くと、
「村の友人が来て、今街にお茶を飲みに行ってる。俺もよく知ってる奴(※例の市役所勤務の友達)だから心配しないでいい。
 奴に「5時位まで少しナナフルを引き留めておいてくれないか」って頼んでおいたから5時位までは大丈夫だ」
 って言った。
 村って、ザッカさんの生まれ育った村のこと、らしい。そして、ナナフルさんがお母さんと移り住んで、お母さんが「何者かに」殺された村。
 きっと‥色々なことがあった村。
 だけど、ザッカさんやザッカさんのお母さん。‥ナナフルさんの力になってくれた人たちが住んでいる村。
 きっと「いい村」なんだろうって思った。一度行ってみたいな。このことが全部終わったら皆で行かせてくださいってザッカさんにお願いしてみようかな? 

 大通りまでロナウとぽつぽつと歩いていると、ちょうど街から帰って来るナナフルさんと出会った。ナナフルさんは何かを考えこんでいるようで‥私たちに気付いていない様だった。
 仕事で行き詰ってます‥って表情でもないし、まして今日の夕飯どうしよう? なんて表情じゃない。
 もっと深刻で‥もっと、暗い表情。
 私も、ロナウも声をかけられずに、すれ違うナナフルさんを見送った。

 ナナフルさんは何をそんなに悩んでいるんだろう。‥深刻に考え込んでいるんだろう。
 
 私たちの今一番の悩みとは‥種類が違う悩みを‥ナナフルさんはきっと一人で抱え込んでいる‥。そして、きっとナナフルさんは私たちにそのことを相談してくれることはない。
 そう気付いた時、私とロナウはぐっと心臓が痛くなるのを感じた。
 ‥せめてザッカさんにはその悩みを打ち明けて‥悩みを一人で抱え込んだりしないで欲しい。
 ザッカさん‥ナナフルさんを助けてあげて!! 
 ‥あの、優しく正しく美しい人がこれ以上不幸になりませんように‥。
 そう強く望んだ私たちだった。
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