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閑話 その頃の‥(ザッカさんとナナフルさん)
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「コリンは頑張ってるかなあ。‥いや、頑張ってるのは分かってる。‥無事かなあ。病気とかしてないかなあ‥」
そうため息をつくことが多かったのは、「お母さん」ナナフルではなく、「親父」ザッカの方だった。
ナナフルは苦笑いして
「コリンなら大丈夫だと思うよ。‥っていうか、病気してないかって心配はいらないと思うよ」
「流石に病気になった‥とかあったらこっちに連絡来るでしょ。連絡がないってことは無事ってことだよ」
って、その度に答えて、ザッカを慰める。
そう、ザッカのこの呟きは今初めてってわけでは無い。
一日中(※ コリンが「三年ほど帰れません」って連絡してきた直後は一日中ため息交じりに呟いてた)って話ではないけど、それこそ
「この穴‥そういえば昔コリンに落とし穴に落とされたな‥」
とか、何がきっかけになるか分からないんだ。
ふとした折に思い出すって奴だ。
子を持つ親みたいな心配。
ナナフルはその度に苦笑するも、優しく微笑んでザッカの呟きに付き合ってあげるんだ。
‥こんな‥当たり前で小さなことが幸せだなあ
って思う。
ちらりとザッカを見ると、
「‥ちゃんと食べてるかな」
今回はいつもより長く呟いている。
因みに今回のきっかけ(トリガー)は、朝食のソーセージだった。
ザッカはソーセージをじっと見つめて
「ソーセージ‥コリン好きだったよなあ」
って呟き、今に至る。
そして、その後は絶対
「きっと、誓約士協会の連中なんて仕事ばっかりで「ご飯なんてお腹が満たされたらそれでいい」って感じで‥栄養にこだわってなんかいないんだ。‥育ち盛りなのに、きっとパンと薄いスープの適当なご飯しか食べさせてもらってないんだろうな‥可哀そうなコリン」
に繋がるんだ。
ナナフルもこれは心配なんだ。
「‥コリンいっぱい食べるからねえ‥きっとお腹を空かせてるだろうね‥」
因みに‥これは当たってる。(コリン談)
魔力が多いコリンはいっぱい食べないとダメなんだ。「‥硬いパン一個と薄いスープいっぱいでお腹が満たされるか! せめてスープに肉を‥! 」って、これが一番不満なんだって。
因みに肉は‥たまに入る。
魔素補給の為に魔物肉を。安いし、うまい。通称「にゃんこう」。Cランクの肉、C肉。‥正式名称ホントに何だろう。
絶対あれ、新人誓約士が「おい、食堂が肉を所望してるから取って来い。小遣いでるぞ」ってパシらされて取ってきたんだろう。(コリン近況報告終了)
多分、ザッカとナナフルも誓約士の食事事情がここまで酷いとは思っていないだろう。
ザッカとナナフルはため息をついて、今度は
「「寝てるかなあ」」
って声を合わせる。
「コリンは仕事に熱中すると寝食を犠牲にするから‥。ああ、そういえば‥仕事に夢中になって研究室に籠って飲まず食わず寝るのも忘れて衰弱死‥とか‥心配。
だって、お世話になってる先輩も誓約士で‥きっと同じ様な人種なわけなんだから‥」
止める人間が存在しない。
ナナフルがため息をつくと、
軽いノックの音の後、ひょこんとフタバが顔を出して
「‥私が誓約士協会に問い合わせておきますね」
くすくす笑いながら言った。
「フタバ! 」
「お願いね! 」
ザッカとナナフルが目を輝かせてフタバを見た。
「お願いされました」
にこっとフタバが笑う。
フタバはロナウと正式に結婚が決まってから、以前より優しく微笑むことが多くなった。
フリーの魔術士をしながら、今は子爵の叔父さんの仕事を手伝っている様だ。
「ロナウは、父さんの騎士団に入りました」
とロナウの近況報告をする。
「ちゃんと出来てる? 怪我だらけになってない? 」
ナナフルが苦笑いしると、フタバも苦笑いして
「あれで剣の腕は確かなんですよ」
って言った。
その顔が幸せそうで、ザッカとナナフルも微笑んだ。
「丁度良かった。今日はシークが顔を出す日なんだ。この前顔を出した日に、近々難易度の高いクエストを受けるっていうから、「その前に顔を出せ」って言っておいたんだ。
保存のきく肉と野菜を買ったから持たせてやろうと思って」
ってご機嫌な顔でザッカが言うと
「ええ、そうナナフルさんに伺ったものですから。ご一緒させていただきますね。もうすぐロナウも来ますよ」
ってフタバが頷いた。
「私も携帯用の調味料セット持ってきたんです。シークさんはお料理が上手だから、こういうのあると便利かなって」
「流石フタバね」
ふふってナナフルが微笑む。
因みに、調味料‥香辛料や塩は値が張るから庶民にはそう買えない。(せいぜい塩)食卓が単調になるのはそれが原因ともいえる。
コリンが以前そんな話をしたら
「煮込み具合を気をつけたり、肉でだしを取るだけで随分違うぞ? 肉だけじゃなくて、食材にはそれぞれ味があるしな」
ってシークが言っていた。
「肉の臭み取りや、灰汁取りも大事だな」
とも。
それを言われたら、コリンはもう何も言えないんだ。
黙って悔しそうに俯いて
「‥僕は一生シークさんに美味しいもの食べさせてもらうんだい‥」
って呟くってのがいつものパターン。
因みに
フタバは、
「コックがいるからそこら辺は大丈夫」(※ 叔父さん家に行って食事が明らかに豪勢になった)
ロナウは、
「別に食にこだわりはない。外で働いてたら、昼食は外食する(※ 庶民の良く行く安い食堂や屋台)ことが多いかな。結構おいしいよ」
アンバーは
「外食(※ 同じく庶民の良く行く安い食堂や屋台。女の子に奢ってもらうことが多かった)が多いかな~。あと、干し肉。市場でいっぱい買っておいて置いとくんだ。お腹が減ったらすぐにつまめて便利だしね。
森にいた時は魔術士たちと魔物を捕って焼いて食べてたな。
さとにいた時? ‥何食べてただろ、そういえば。‥別に「腹減った」とか常に思ってた‥とかではなかったと思うんだけど‥」
って言って皆を心配させて、
ザッカは
「だいたいいつも同じメニューだけど‥別に飽きるとかないし、問題はない。ナナフルがいるだけで美味しさは二割増しだ。‥二割じゃないか、五割? 」
ってのろけて皆に「どうでもいいわ」と言う顔をされて、
ナナフルは眉を寄せてザッカを見て、(ここで皆「あ~あ、ザッカさんお仕置き決定だな。「そういうこと人前で言われるの恥ずかしいから嫌だ」ってナナフルさんがいつも怒ってるのに‥」って思うんだ)
「でも、シークの作る食事は美味しくって「あ~美味しいもの食べると幸せになるんだ~」って初めて思った」
って言ってシークを照れさせてた。
あの頃の‥幸せだった時を想い出す。
「ここにアンバーとコリンがいたらよかったんだけどな」
ボソリと呟いたザッカにフタバが
「アンバー様なら協会取り壊しの前に私を訪ねていらっしゃいましたよ。皆に知られたくなかったようですので皆様にはお知らせしなかったのですが。もういいかなって思いまして。
取り壊しを自分の目で確認したいっておっしゃられてましたよ。
その後、魔術をきちんと学びなおして、さとの後輩‥孤児たちに教えたいっておっしゃっておられたので、場所と先生の手配をさせていただきました。
え? お金ですか? 「孤児に教育を」って貴族たちに呼びかけたら、結構集まりました。ノブレスオブリージュって奴です。
そのお金で先生の手配と教材、場所の手配は十分できました」
ほう‥とザッカとナナフルが感心してフタバを見上げる。(フタバは立っていて、二人は座っている)
「俺たちには会いたくないって感じなのか? アンバーは」
ザッカが心配そうな表情でフタバに聞くと
「アンバー様は「‥今まで自分はなんて適当に暮らしてたんだろうって思うと‥なんか恥ずかしくなった。今は、皆に会いたくないけど‥そのうち会いに行く」って言っておられましたよ」
ふふとフタバが言った。
「‥アンバーにも思うところがあるんだろう。そっとしておいてあげよう」
ほっとザッカが胸を撫ぜおろす。
「でも、いつかは皆が‥昔と同じように笑顔で集まれたらいいね」
ナナフルは優しい視線を窓の外に向けた。
その時まで‥
それぞれが精一杯幸せに生きていこう。
そうため息をつくことが多かったのは、「お母さん」ナナフルではなく、「親父」ザッカの方だった。
ナナフルは苦笑いして
「コリンなら大丈夫だと思うよ。‥っていうか、病気してないかって心配はいらないと思うよ」
「流石に病気になった‥とかあったらこっちに連絡来るでしょ。連絡がないってことは無事ってことだよ」
って、その度に答えて、ザッカを慰める。
そう、ザッカのこの呟きは今初めてってわけでは無い。
一日中(※ コリンが「三年ほど帰れません」って連絡してきた直後は一日中ため息交じりに呟いてた)って話ではないけど、それこそ
「この穴‥そういえば昔コリンに落とし穴に落とされたな‥」
とか、何がきっかけになるか分からないんだ。
ふとした折に思い出すって奴だ。
子を持つ親みたいな心配。
ナナフルはその度に苦笑するも、優しく微笑んでザッカの呟きに付き合ってあげるんだ。
‥こんな‥当たり前で小さなことが幸せだなあ
って思う。
ちらりとザッカを見ると、
「‥ちゃんと食べてるかな」
今回はいつもより長く呟いている。
因みに今回のきっかけ(トリガー)は、朝食のソーセージだった。
ザッカはソーセージをじっと見つめて
「ソーセージ‥コリン好きだったよなあ」
って呟き、今に至る。
そして、その後は絶対
「きっと、誓約士協会の連中なんて仕事ばっかりで「ご飯なんてお腹が満たされたらそれでいい」って感じで‥栄養にこだわってなんかいないんだ。‥育ち盛りなのに、きっとパンと薄いスープの適当なご飯しか食べさせてもらってないんだろうな‥可哀そうなコリン」
に繋がるんだ。
ナナフルもこれは心配なんだ。
「‥コリンいっぱい食べるからねえ‥きっとお腹を空かせてるだろうね‥」
因みに‥これは当たってる。(コリン談)
魔力が多いコリンはいっぱい食べないとダメなんだ。「‥硬いパン一個と薄いスープいっぱいでお腹が満たされるか! せめてスープに肉を‥! 」って、これが一番不満なんだって。
因みに肉は‥たまに入る。
魔素補給の為に魔物肉を。安いし、うまい。通称「にゃんこう」。Cランクの肉、C肉。‥正式名称ホントに何だろう。
絶対あれ、新人誓約士が「おい、食堂が肉を所望してるから取って来い。小遣いでるぞ」ってパシらされて取ってきたんだろう。(コリン近況報告終了)
多分、ザッカとナナフルも誓約士の食事事情がここまで酷いとは思っていないだろう。
ザッカとナナフルはため息をついて、今度は
「「寝てるかなあ」」
って声を合わせる。
「コリンは仕事に熱中すると寝食を犠牲にするから‥。ああ、そういえば‥仕事に夢中になって研究室に籠って飲まず食わず寝るのも忘れて衰弱死‥とか‥心配。
だって、お世話になってる先輩も誓約士で‥きっと同じ様な人種なわけなんだから‥」
止める人間が存在しない。
ナナフルがため息をつくと、
軽いノックの音の後、ひょこんとフタバが顔を出して
「‥私が誓約士協会に問い合わせておきますね」
くすくす笑いながら言った。
「フタバ! 」
「お願いね! 」
ザッカとナナフルが目を輝かせてフタバを見た。
「お願いされました」
にこっとフタバが笑う。
フタバはロナウと正式に結婚が決まってから、以前より優しく微笑むことが多くなった。
フリーの魔術士をしながら、今は子爵の叔父さんの仕事を手伝っている様だ。
「ロナウは、父さんの騎士団に入りました」
とロナウの近況報告をする。
「ちゃんと出来てる? 怪我だらけになってない? 」
ナナフルが苦笑いしると、フタバも苦笑いして
「あれで剣の腕は確かなんですよ」
って言った。
その顔が幸せそうで、ザッカとナナフルも微笑んだ。
「丁度良かった。今日はシークが顔を出す日なんだ。この前顔を出した日に、近々難易度の高いクエストを受けるっていうから、「その前に顔を出せ」って言っておいたんだ。
保存のきく肉と野菜を買ったから持たせてやろうと思って」
ってご機嫌な顔でザッカが言うと
「ええ、そうナナフルさんに伺ったものですから。ご一緒させていただきますね。もうすぐロナウも来ますよ」
ってフタバが頷いた。
「私も携帯用の調味料セット持ってきたんです。シークさんはお料理が上手だから、こういうのあると便利かなって」
「流石フタバね」
ふふってナナフルが微笑む。
因みに、調味料‥香辛料や塩は値が張るから庶民にはそう買えない。(せいぜい塩)食卓が単調になるのはそれが原因ともいえる。
コリンが以前そんな話をしたら
「煮込み具合を気をつけたり、肉でだしを取るだけで随分違うぞ? 肉だけじゃなくて、食材にはそれぞれ味があるしな」
ってシークが言っていた。
「肉の臭み取りや、灰汁取りも大事だな」
とも。
それを言われたら、コリンはもう何も言えないんだ。
黙って悔しそうに俯いて
「‥僕は一生シークさんに美味しいもの食べさせてもらうんだい‥」
って呟くってのがいつものパターン。
因みに
フタバは、
「コックがいるからそこら辺は大丈夫」(※ 叔父さん家に行って食事が明らかに豪勢になった)
ロナウは、
「別に食にこだわりはない。外で働いてたら、昼食は外食する(※ 庶民の良く行く安い食堂や屋台)ことが多いかな。結構おいしいよ」
アンバーは
「外食(※ 同じく庶民の良く行く安い食堂や屋台。女の子に奢ってもらうことが多かった)が多いかな~。あと、干し肉。市場でいっぱい買っておいて置いとくんだ。お腹が減ったらすぐにつまめて便利だしね。
森にいた時は魔術士たちと魔物を捕って焼いて食べてたな。
さとにいた時? ‥何食べてただろ、そういえば。‥別に「腹減った」とか常に思ってた‥とかではなかったと思うんだけど‥」
って言って皆を心配させて、
ザッカは
「だいたいいつも同じメニューだけど‥別に飽きるとかないし、問題はない。ナナフルがいるだけで美味しさは二割増しだ。‥二割じゃないか、五割? 」
ってのろけて皆に「どうでもいいわ」と言う顔をされて、
ナナフルは眉を寄せてザッカを見て、(ここで皆「あ~あ、ザッカさんお仕置き決定だな。「そういうこと人前で言われるの恥ずかしいから嫌だ」ってナナフルさんがいつも怒ってるのに‥」って思うんだ)
「でも、シークの作る食事は美味しくって「あ~美味しいもの食べると幸せになるんだ~」って初めて思った」
って言ってシークを照れさせてた。
あの頃の‥幸せだった時を想い出す。
「ここにアンバーとコリンがいたらよかったんだけどな」
ボソリと呟いたザッカにフタバが
「アンバー様なら協会取り壊しの前に私を訪ねていらっしゃいましたよ。皆に知られたくなかったようですので皆様にはお知らせしなかったのですが。もういいかなって思いまして。
取り壊しを自分の目で確認したいっておっしゃられてましたよ。
その後、魔術をきちんと学びなおして、さとの後輩‥孤児たちに教えたいっておっしゃっておられたので、場所と先生の手配をさせていただきました。
え? お金ですか? 「孤児に教育を」って貴族たちに呼びかけたら、結構集まりました。ノブレスオブリージュって奴です。
そのお金で先生の手配と教材、場所の手配は十分できました」
ほう‥とザッカとナナフルが感心してフタバを見上げる。(フタバは立っていて、二人は座っている)
「俺たちには会いたくないって感じなのか? アンバーは」
ザッカが心配そうな表情でフタバに聞くと
「アンバー様は「‥今まで自分はなんて適当に暮らしてたんだろうって思うと‥なんか恥ずかしくなった。今は、皆に会いたくないけど‥そのうち会いに行く」って言っておられましたよ」
ふふとフタバが言った。
「‥アンバーにも思うところがあるんだろう。そっとしておいてあげよう」
ほっとザッカが胸を撫ぜおろす。
「でも、いつかは皆が‥昔と同じように笑顔で集まれたらいいね」
ナナフルは優しい視線を窓の外に向けた。
その時まで‥
それぞれが精一杯幸せに生きていこう。
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