この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

文字の大きさ
上 下
268 / 310

261.彼女がアンバーに会うまでの話。(side コリン)

しおりを挟む
 ナナベルは小さくため息をついて、口を開いた。
 言いたくはないけど、しぶしぶって表情。
 そうだよね、自分の「転落記」とか望んでする奴いない。
 だけど、全然話したくないってわけでもないんだろう。誰かに聞いて欲しい。‥話すけど、ツッコミは無用でお願いしますって感じかな?
 黒歴史自慢してるわけじゃないしね。

「初めは‥家を出たわ」
 ぼそ‥とナナベルが話し始めた。
 ‥ああ、家出ね。
「そしたら、お姉さまの件でちょっと親しくなった男が近づいて来たの」
 お姉さまの件‥
 ああ、「お姉さまに相応しくない男」を排除するために雇った男ってことね。
 なんでこのタイミングで‥とか疑わないのは、流石箱入り娘ってとこだよね。普通は疑うよね。
「なんで私が家を出たの知ってるのよ! 」
 とか思うよね。
 ‥ってことは、「その男」は白い姉の仕込みかな? いや‥その考えは早計かな。
 白い姉なら、‥もっとうまくしそうな気もする。
 このタイミングには‥来ない。
 ‥まあ、そのことは‥今は置いておきますか‥。
「‥それで? 」
 あ、アンバーも思いっきりツッコミたい顔してる。
 そうだよね。
 ツッコミどころ満載だよね。
 でも、突っ込んだら話が進まないからね。アンバーもそれは分かったんだろう。何も言わなかった。(ただ単に突っ込むほどの興味がなかった‥とかではないだろう)
「別に‥ただ行くところもなかったからまあ‥何となくいいかなって一緒について行った。
 だけど、別にその男と特別な関係になったとかじゃないわよ」
 ‥いや、そこはどうでもいいけど。
 ああ‥アンバーloveなナナベルさんにとってはアンバーに誤解されたくないから重要だよね。
 貴族としても重要なんだろう。
 女性としてもってのが一番大きいのか。
 ‥それを言うなら考えなし過ぎないか? ‥でも、それ程「どうしようもなかった」って考えたら‥なんかかわいそうだな‥。
 常識で考えたらやらないようなこと。そんな判断すらできなくなる程‥「どうしようもなかった」。
 それ程の無力感‥かあ。
 (お姉さんの結婚のことは)やり切った。
 だけど‥自分の手には何も残らなかった無力感‥。
 ホント‥今すぐ行って、白い彼女殴ってやりたいな! 
 僕は感情的になってたんだけど、
「そこでは何をなさってたんですか? 」
 フタバちゃんは落ち着いた感じで聞いた。
 別に付き合ってるわけでもない男と二人、家を出た女が何をするんだろ? って‥多分、純粋な疑問。
 その男と特別な関係になったとかじゃないってあらかじめ聞いてるから聞ける質問だよね。
 聞いてなかったら‥下世話な質問になっちゃうよね。
 まあ‥確かに、気になるっちゃなるよね。
 その男の真意とか‥。
 ナナベルさんが首を傾げる。
「何って? 」
 何か気になる? って顔してる。そして、「ああ、二人きりだったと思ってるの? 」って納得したように頷いた。
「何も? 別に二人で住んでたわけじゃないし。二人だったら絶対行かなかったわ。
 その男の仲間たちが住んでるところにお邪魔したの。
 そこで何をしてたってわけでもないわ。
 ただ、「お嬢さんみたいな強面の美人がいてくれたら、俺たちにも箔がつくから」って言われて、それならまあ‥いいかなって」
 ケロッとした顔でナナベルさんが言った。
 二人きりじゃなかったから大丈夫って話? いや、ゴロツキは‥沢山いる方が余計怖いと思いますが‥。
 恐るるに足りないような三下ばっかりだった‥ってこと‥かな?
 その三下がナナベルを家に招き入れのは「貴族がバックについてるから下手に手出しはできないでしょ? 」って他を牽制する為。
 虎の威を借るキツネってやつだな。
 ナナベルさんは奴らに「虎」として招き入れられた。
 それが、ナナベルさんの奴らにとっての利用価値。
 そして‥ナナベルさんは居場所を手に入れた‥。
 まあ‥Win-Winの関係ってこと?
 ‥全部仕込まれた感満載だけど‥まあ、本人が納得しているなら?  
「‥そんなの利用されてるだけじゃないですか」
 フタバちゃんは、めちゃ不機嫌な表情。
「だけど‥私には‥あの時の私には他には何も出来なかったわ。
 もうどうでもよかったし。
 私に冷たい両親のことも、伯爵家も、‥私自身のことさえ‥どうでもよかった。
 ‥もしかしたらお姉さまの事もあの時には、もうどうでもよかったのかもしれない」
 フタバちゃんが悔しそうな顔で俯く。
 彼女の苦しみ、悲しみ‥でも何も出来ない自分に対するもどかしさ‥そんないろんなことを考えてる‥表情。
「私を誘拐して金をとった方が早い‥とか「大きな犯罪」には手を出さないような‥安い不良たちだった。
 硬いパンとジャガイモがあったらいい方な、チープな暮らし。
 だけど、伯爵家にいる時よりずっと楽しかったの。
 そんな時、ニックがペリドットに会ったの。
 二人は同郷だって言ってた。
 ペリドットと一緒に居たのがアンバーだった」 
 ニックって何だ? 一緒にいた男だよな。
 そこで、僕ははっとした。
 メンバーには色の名前がついていた。
 ‥そう思ってた。
 売り子は‥シアン、マゼンタ、パープル‥。
 だけど‥違った。アンバーは色の名前じゃなくて‥琥珀‥宝石の名前だ。
 そして、ガーネット(魔薬の在庫管理係)、アンバーそして‥ペリドット‥。
 あれか? 立場とかで名前の付け方が決まってるってことか? 
 宝石の名前は色の名前よりランクが上で、普通の名前は、色の名前以下だ。
 ‥だから何って話だけどね。今は‥関係ないけど、さっきの話からそれが分かった。
 今は‥ニックがペリドットと同郷って話。
 同郷って‥例の「拉致の里」か? 
 ペリドットとニックが会ったのは、果たして偶然なのか? 
 僕が彼女の次の言葉を待っていると‥
「その先は俺が知っている」
 口を開いたのは、アンバーだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

処理中です...