この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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259.赤い彼女、アンバーに再会する。(side コリン)

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 アンバーがどんなつもりだったかってことは別として、赤い彼女はアンバーのことが好きで、アンバーと彼女は一時期付き合っていた(っというか、一方的に彼女はアンバーに貢がされてた)
 若かりし頃、今よりもっととがってた‥というかクズだったアンバーは彼女を一方的に捨てた。
 僕だったら絶対「許すまじ」ってなるだろうけど‥もしかしたらもしかしたら‥アンバーにまだ未練があったら‥来てくれたらいいな‥って思ってた。
 いや
 それは‥
 ないな。
 あるのは、恨みつらみだな‥

「アンバー! 貴方どういうつもりなの! 今頃よくも私の前に顔を出せたわね! 」
 被っていたフードをちょっとずらしてアンバーにだけ顔を見せながら赤い彼女が言った。
 アンバーだけ‥といいながら、その顔は隣にいた僕にも見えたわけで‥
 僕は‥その顔を見て‥つい目を見開いてしまった。
 真っ白な形のいい卵型の顔。緩やかにウエーブのかかった燃える様な赤い長い髪。アーモンド形の吊り目がその印象をちょっとキツイ感じにしてるけど‥誰が見ても「美人」としか分類できない。
 成程‥「赤いバラ」とは、よく言ったものだ。(実際に会うまでは「またまた~赤いバラとか‥実際はそんなでもないでしょ~?? 」って思ってたけど‥)
 わ~。
 ちょっとナナフルさんに似てる~。パーツのどれかが‥って感じじゃなくて、何となく‥雰囲気? こっちはナナフルさんよりずっと派手な感じなんだけど‥

 兄妹って言われたら、そんな気がする‥って感じ。

 アンバーは
「そこまで美人ってわけでもない。ちょっと育ちが良さそうって位。高飛車で、キツイ性格の女」
 って言ってたけど‥
 高飛車っぽいけど、‥思った程性格悪くなさそう。
 というか‥
 ナナフルさんに似てるから凄い好感持てる。
 癇癪起こすって程じゃない‥一生懸命喋っちゃってか~わいい、って感じだし。
 確かに「悪ぶってる大したことない普通の子」って感じ。
 ‥でも、この人はナナフルさんのお母さんを殺した人の娘なんだよね‥。
 それを考えると‥ねぇ‥。
 見掛けで判断するのは、良くない。
 何も知らない僕が見た目で判断して
「いい人そうじゃない? 」
 っていうとか‥絶対に間違ってる。
 僕だったら絶対嫌だ。
 例えば僕が本当によく知っていて‥その上で心から苦手な人がいるとして、その人の上辺だけしか知らない「知り合い」が
「なんであの人の事そんなに苦手なの? 」
 とか僕に聞いたりとかしたら‥絶対凄い腹が立つ。
 ‥貴様に何が分かるんじゃーっ!
 って思うに違いない。
 実際には僕にそんな人はいない(腹が立ったらその地点でボコってるから)だけど‥反対ならいる。
 そうは見えないだろうけど、ホントにイイ人。‥僕はそんな人を知っている。
 その人の事をろくに知らない人が
「ただの偽善者じゃない? 」
 とか、まして
「下心があるんだろ」
「点数稼ぎじゃね? 」
 って言ったら‥絶対腹が立つ。
 絶対、秒でボコってしまうだろう。

 ろくに知らない人間が、見た目だけで判断するのは絶対良くないって話。

「お嬢さん? 別に俺は貴方の前に顔を出したわけではありませんよ? わざわざ「情報を集めて」会いに来たのは貴方ですよ? 」
 アンバーが(今となっては懐かしい)妙に気取った‥女たらしな感じの‥「よそいきの」口調で言った。
 いや~。その顔、その雰囲気、魔術士にはきっと堪らないんだろうな~。まわりが皆真っ赤になってるよ。
 女の子たちなんてもう‥気絶しそうになってる。
 そうか~思えばフタバちゃんがアンバーに一目ぼれしたのって‥フタバちゃんが魔術士だったからなのか。
 ロナウは‥(思えば)あの時から進化型の騎士だったし、僕は誓約士だ。
 普通の魔術士より「ちょっと拗らせてる」僕らには刺さらなかった‥って奴なんだろう。
 ってことは‥
 悔しそうに口をとがらせて‥わかりやすいくらい真っ赤になってる目の前の子‥赤い彼女も魔術士だって事かな?
 雰囲気から見たら‥属性は火って感じだよね。
 貴族だし、魔術士を職業にしてるかどうかは分からない。
 平民と違って自分の食い扶持は自分で稼がないといけない‥ってことはないだろうから。
 フタバちゃんもロナウも貴族だけど、二人は事情があるから‥って感じだよね。
 魔術士の傾向‥ってのはあるんだけど、やっぱり人それぞれ事情があるから、なかなかテンプレ通りって訳にはいかないって話。(でも、まあ「だいたいこう」って傾向はあるんだよ)
 ‥そう思うと、人の事情なんてそう見た目や肩書からじゃ分からないってホント思うよね。
 因みに、
 さっきアンバーが「わざわざ情報を集めて」って言ったけど、勿論赤い彼女をおびき寄せるためにエサをまいたんだ。一見隠してる情報風にしてね。そこら辺のさじ加減は‥アンバーがやった。
 さて‥その赤い彼女なんだけど‥ 
 さっきから真っ赤になったままだ。
 これ‥絶対、マジで怒ってない。アレだ。拗ねてるって感じ。
「~~! お嬢さんって! 貴方、私の名前を覚えてないんでしょう! 忘れてしまったっていうより‥あの時から覚える気すらなかったって感じよね! 」
 うわ~アンバー最悪。ってか、お嬢さん! そんな男の事よく好きになったよね! 恋は‥盲目って奴でしょうか??
 僕がこころの中でツッコミを入れていると、アンバーはニヤッと‥例の魅力たっぷりの黒い微笑を浮かべ、赤い彼女に一歩近づいた。赤い彼女の顔がますます赤くなる。(そりゃあ、もう爆発しそうなくらい! )
「名前は‥覚えてますよ? ナナベル‥エンヴァッハ伯爵令嬢? 」
 アンバーが赤い彼女の耳元でボソッと言った。
 赤い彼女の目が見開かれる。
 僕と‥フタバちゃんの目も。
 アンバー! それを言うか!
「俺がそういうこと‥調べないと思います? 僕が貴女から手を引いたのは、貴女に家族のマークがついてたからです。‥面倒なのは、ごめんです」
 いや、嘘もそこまで流暢に言うと、真実に聞こえるな。
 まるで、‥背景が煩わしそうだったから離れました。別に捨てたわけじゃないですって風に‥聞こえるね! 
 いやいや
 アンタただ単に捨てただけじゃん。絶対深い意味とかないじゃん。家族のマークとか‥適当に言っただろ。ってか‥カマかけ? 
 ‥さて、赤い彼女‥ナナベルはどう出るか(しかし、ナナベルってナナフルさん(ザッカさんの母ちゃんがつけた名前)に似てるな。ナナフルさんって元々は違う名前だったらしいけど‥元々も、そんな感じの名前だったのかな? ‥聞いたような気がしないんだよね‥。(※ ちなみに元の名前はフュージ今のナナフルさんのイメージに合わなさ過ぎて、ザッカが封印している))
「家族のマーク? お母さま? 私が何かしでかますんじゃないかって監視してるの!? あの人は‥私の言うことなんて何も信じてくれないんだから‥っ! 」
 ‥お母さんキライって感じ? ふぅん? ってか、お母さんの方も嫌ってる‥のかな? だって、心配してたら迎えに来てくれるよね。監視だけさせといて放ったらかしとかしないよね。
「そこまでは知らない。だけど、覚えがあるなら‥そうなんじゃない? 。貴族と揉めるとか面倒だから嫌だ」
 アンバーが冷たく言った。
 顔はさっきと同じ笑顔なのに、声は凄く冷たい。
 だけど‥ホントに冷たいんじゃなくて「無理に突き放したような」口調で話している。‥これ、大人の駆け引きとかいう奴かな? 
「ナナベル様」
 フタバちゃんがナナベルにそっと歩み寄る。
「あちらでお話しませんか? 。お互い会っていたことが知られるとマズい立場ですので場所を変えましょう」
 フタバちゃんも社交界に出ていないとはいえ、貴族。そして、ナナベルは社交異界では超有名人、きっと彼女のことを知っている貴族もここに居るだろう。
 ナナベルは目を見開いてフタバちゃんを見た。フタバちゃんは小声で
「‥ジェラルナン家のフタバ・ジェラルナン・ベネットと申します」
 と、自分の名前を明かした。
「ジェラルナン子爵家の? でも、ベネットって? 騎士爵の家よね? 」
 ナナベルが首を傾げる。
「ベネット家は生家で、成人後ジェラルナン子爵家に養子に入ることになってます」
「ふうん? 」
 ‥やっぱり、こういう名前の付け方は珍しいんだね。
 因みに、成人後ジェラルナン家に正式に養子に入ったら
 フタバ・オーエンフィールド・ジェラルナンになるらしい。オーエンフィールドはジェラルナン家がある地名なんだって。
 まあ‥そりゃいいや。
 そうこうしている間に二人は移動している。場所を変えるっていってもんね。
 ここからはフタバちゃんにお願いし‥いいのかな? 僕も隠密スキルでついて行った方がいいのかな?
 でも、ここ‥アンバーとロナウに任せて放っておいて平気か? まあ‥ザッカさんもいるし‥大丈夫か。
 
 ‥ここは、他の皆にお任せして‥僕もついて行くことにします。
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