この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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251.期間限定と生涯もの(side コリン)

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 学生時代って、期間限定だから我慢できてるような、狂気じみた時間だよね。
 あと何年我慢すれば卒業できる。
 そう思えるからこそ‥ってところはある。
 知らない奴らと同じ場所に押し込められて、別に要らない様な勉強‥勿論自分が要らないって思うだけでホントはいる勉強だ‥を詰め込まれる。
 自分のペースで‥とか、自分の好きな方法で‥が許されない雰囲気で、レベルの違う人間相手に時に悔しい思いをし、時に馬鹿馬鹿しい‥って感情を抱く。
 ‥そもそも、合わないって思う人間と同じ時間を共有するとか‥もう拷問でしかない。
 僕に負けて悔しいなら、僕を害するなんて馬鹿なことを考えずに努力すればいいって思う。
 そもそも、試験の意味って「理解できてるか」ってことを確認することだ。
 間違ったら「理解できなかったな」って気付けばいいし、理解できてなかったら後々困るから復習すればいい。
 ‥それだけのことだ。
 別に勝ち負けとか‥そう重要じゃない。あれは、競争したり点数化した方がモチベーション上がる‥やる気出るって奴の為のバロメーター的な奴だ。
 普通の試験的なものはそんな感じだったけど、実技で自分が知らないような魔法を成功させてた奴なんか見たら悔しかったなあ
「僕も出来るようになるぞ! 」
 ってなった。
 それだけだよ。別に、「僕より出来る奴キライ」とか‥そいつに喧嘩売ったりしない。
 僕にとって重要なのは、「誰か」が新しい魔法成功させたってことで、誰がってことじゃない。
 その誰かなんて覚えちゃいないんだよ。
 ホント、魔法が全てだった。
 ‥今思えばちょっともったいなかったかな。
 色んな人がいて、それぞれ皆「学ぶべきもの」を持ってただろうに、僕は見ようともしなかった。
 確かに色んなこともあったけど、‥それだけじゃなかったのに‥、ロナウやフタバちゃんや数人のクラスメイト(ゴメン名前は憶えていない)親切な先輩‥僕を心配して陰ながら助けてくれている人もいたのに、だ。見ない振りして、気にしなければ楽だって思い込んで‥僕は周りの音を全部シャットアウトして暮らしてたんだ。
 だけど‥そんな繊細なところもあるかと思えば、傲慢で
「魔法じゃ誰にも負けないぜ! 」
 って信じてた。
 臆病で、強がりで、傲慢。

 それが僕の教会生活3年間の「総て」だ。
 自己嫌悪で‥自分や自分の周りにいた全部の人の記憶全部消しちゃいたい。
 こういうのって、若気の至りって奴なのかなぁ‥。
 きっと、皆もそう変わらないだろう‥。
 というか‥もう「あの時はあの時」って過ぎ去った過去として‥思い出すこともないかも?

 だけど、この前同窓会に行って‥同級生(といっても、名前も知らない人だ。もしかしたら話したこと位あるのかもしれないけど‥記憶にない)が先生と話してるのが、聞き耳立てたわけでは無かったけど、耳に入ってきた。
「初めは友達出来るかなって思ったけど、まあ‥二人だけだけど生涯ものっていってもいいような友達もできたし、今魔術士として仕事で来てるのも全部先生と教会のおかげです」
 って言った同級生に対して先生が
「教会に通わせてくれた親御さんに対する感謝も忘れてはいけませんよ」
 って言った。それだけ。
 だけど‥その「何気ない会話」を聞いて、僕は何て言うか‥衝撃を受けたんだ。
 この人は、僕よりずっと真摯に学生生活を送ってたんだって‥。
 僕みたいに「魔法を学ぶ手段」としてだけじゃなく、学生として周りの皆と切磋琢磨して‥っていう、「普通の」学生生活を夢見て教会に入り、友達が出来るかなって不安になったり、そうして出来た友達に対して「生涯もの」って思ったり。
 そういう‥当たり前の感性。‥僕には無かった当たり前の感性をもって学生生活を送ってきたんだ。
 これでこそ学生って生活を送ってきたのだろう‥って。

 そう言えば‥そんな学生の方が多くってそれの方が寧ろ当たり前なんだよな‥って。
 衝撃は受けたよ。
 僕は今まで「そんな当たり前の学生」ではなく、一人で何足掻いてたんだ‥って。
 だけど‥今改めて考えても‥
 僕は「そんな当たり前の学生」にはなれなかった。
 
 人の生き方は自分の人生には関係ないって思って今まで生きて来たけど、‥あんな選択する必要が無かった多くの学生はやっぱり‥羨ましいね。

 僕にとって学生時代は、黒歴史で、切り取ってしまいたかった過去だった。
 僕はそれを「思い出ボックス」に放り込んで、蓋をした。
 そして、時々‥見たくないものは見ない様にしながら‥必要な情報(学んだ知識とかね)だけを抜き出して生活に利用してきた。
 ロナウとフタバちゃんもそう。
 「思い出ボックス」に入ってたものを「使えそう」って出して来たに過ぎなかった。
 
 期間限定の「あのとき限定」だった「お友達」が‥今では、「生涯もの」って言える友達になっている。

 らしくないなあ。

 フタバちゃんの家に向かいながら、僕は苦笑いするのだった。
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