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閑話 その頃の‥(アンバー)
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「世の中には性善説と性悪説があります。人は元々善なのか悪なのか。
‥私は性悪説支持者です。
良心や、無償の愛なんて、私は信じません。
私にはありませんし、私のほんの近しい‥周りにそんなのを持った人も見たことはないからです。
‥多くの人は、弱い人や‥いや、全ての「守らなければならない人」を守り養っていかなければならないって思い込んでいる。
だけど‥それは立場だったり、責任感から来る義務意識に他ならないって思うんです。
母性本能然り、ノブレスオブリージュなんてそれの最たるもんですよね。
人は‥他人を意識するから「そういう義務意識」を持つだけで、自分勝手が許される環境下だったら、絶対そんな気持ちになんてならないですよ」
魔術士がそう言って、かっての上司に攻撃用ロットを向けた。
「私には協会に対する帰属意識も、貴方にたいする尊敬の気持ちも全然ないです。
あるのはギブ&テイクの事実だけ。
お金を貰ってるからここで働いてる‥それだけです。
貴方がしたことによって、私を「今後の給料を約束できない状況」に追いやるのであったら、私は迷わず貴方をここから追い出すことを選びます」(※ 魔術士は、長台詞も大好き! )
そう付け加えた彼女に、他の魔術士も頷く。
それを言われると上司も
「今まで給料を払い、育ててやった恩を忘れたのか! 」
とは言えなくなっちゃてる。
‥そもそも、協会で働いてる魔術士は「育ち切った状態」で協会はその労働力を給料を対価に貸してもらっていただけだし。
何もいえないよね。
せめて、信頼関係とか恩を感じる様な関係が彼らの間にあればよかったんだろうけど‥それもなかったようだ。
結果、協会は中から破壊されて‥悪の親玉であった協会幹部たちはことごとくぼこぼこにされ(※ 魔術士は、口喧嘩も喧嘩も大好き! )‥警察にしょっ引かれていった。
外‥つまり、魔薬販売ルートやら教育部門もそんな感じ。
仲間同士で罪の擦り付け合いやら「情報を出すから減刑してくれ」みたいな裏切りも結構あったみたい。
今回同時に逮捕の手が回ったから情報が流れて逃げる者が出たってことはなかった。
まあ‥情報が流れても庇ったり、助けに行ったりとかは絶対なかっただろう。
せいぜい、自分のみを守る為に1.まず逃げる。2.人のせいにするって感じかな~。奴らに仲間意識とかない。
‥見苦しいね。
それにしても‥
性悪説支持者ですって言い切った彼女のキツイ表情。
あれは‥ちょっと怖かったね。
でも‥実際、性善説支持者なんているのかねえ。
人は生まれた時は全員善人なんです。だけど、社会が悪かったりとかして‥悪人になってしまう人もいる(ニュアンスとしてちょっと違うかもだけど、俺はそう理解している)。それが性善説で、その反対が性悪説。
性悪説の場合は「元々悪なるこころが普通なんだけど、悪なるこころに負けない人も稀にはいる」とかなのかな?? 性悪説でいう「もともとの悪」って言う「悪」は、「弱い心」みたいな意味なんだって。
別に生まれつき、全員悪人って言ってるわけでは無いらしい。
でも、自分の秘めたる欲求ってそもそも悪だよね。
「いいことしたい! 皆を助けたい! 」
って思ってる奴より、
「いい暮らししたい、他人を出し抜いても‥! 」
って思ってる奴の方が多いって思うし、‥自然な気もするよね。
ってか‥普通そうじゃない? 「皆の幸せを祈ってます」なんて‥偽善だよね?
俺も、性悪説一択。元もとはいいこころを持ってた‥とか、ないない。そんなこころじゃ、世の中渡っていけない。
だけど、そんなこと勿論だけど普段からわざわざ考えることない。
それをわざわざ口に出して言った彼女に「へ~」って思った‥って言うか‥。興味を持った。
魔術士って面白いなって思った。
そういえばコリンやフタバちゃん、ロナウもそういうところあった。
普段はあんなに短気だし、脳筋(特にコリン)なのに‥ロナウなんか「何も考えてないよ~」って顔してるのに‥
「魔術は「適当にやればできる」ってもんじゃない。種もまかないのに草ははえない。
魔法が使えない人は「魔法はそうじゃないの? 」って思ってるみたいだけど、そうじゃない。
種は「属性」だ。
だけど、属性があるだけじゃダメなんだ。
その属性から生えた芽を育てるのが「理論」。
理論を展開することによって、芽が成長して魔術になるのであって、気合じゃ育たない」
って魔術について語ってた。
魔術の理論をより理解できてる者がより高度な魔術を使うことが出来るってフタバちゃんがそれに補足した。
属性の本質、人間‥自分の本質‥。
魔術士はいつも色んな事を考えている‥らしい。
俺が「ホントか? 」って顔をしてたら(自分では分からないけど、‥多分そんな表情をしていたんだろう)
「理論って‥マニュアルみたいなもんなんだ。誰が使っても、いつ使っても同じ魔術になるように、マニュアル化するって感じかな? 「こういう感じ」とか‥人には説明できないでしょ。魔法は「こういう感じ」って‥ふわっとてて、魔術はマニュアル化されてるって感じかな?
「こういう感じ」人によっても違うわけじゃない。それに同じ人でも、今日の「こういう感じ」は明日の「こういう感じ」とは違うかもしれない。
それじゃ、ダメなわけ」
って苦笑いしてロナウが言った。
その言葉にコリンが頷き、
「だから、アンバーたちが「拉致被害者のさと」で教わってたのは、魔術じゃなくて魔法って感じなのかもな。
辛うじて「こういう風に使う」っていうのはレクチャーされてても、「それはこういう意味です」っていう理解はしてない。だから何となく、フィーリングで使ってる」
って付け加えた。
たしかにそうかも、って思った。
確かにさとの連中の使う「魔術(?)」は威力や効果に差があった。術者の機嫌が悪ければ、暴走したり「悪い」魔法になっていた。
闇属性の魔法だから‥余計にそういうのが如実に出たんだろう。
それをさとの大人たちは「魔力の暴走だ」って言葉で片付けてたけど、そもそも彼らも魔術の理論を理解してなかったのかも。
コリンから魔術を習ってる時は、魔術を習っているというより哲学の授業の様だった。
それが「こういう意味」を持ってるってことは、その時コリンからは聞いてなかった。(否、聞いたかもしれないけど、興味がなかったから記憶から抜け落ちたのかもしれない)
聞いたか聞いていないかは今となっては分からない。いずれにせよ。‥その時は、俺が「そういうことなのか」って「心から」理解しなかったってことなんだろう。心から納得しないとすぐ忘れちゃうよね。
‥あと、多分ロナウの方がコリンより説明が丁寧だし、上手い。きっと、ロナウは自分が納得できるまで何度もテキストを読んだんだろう。(フタバは理解が早い分、説明も下手)
コリンは、あれだ。普通に人に説明するのが向いてないタイプなんだろう。
あの後、ナナベルたちと別れて、何となくふらふら~って歩いてた。
なんか、コリンたちの顔見るのも‥なんか嫌だったんだ。
嫌いになったとかじゃなくっても、そう言うことあるじゃない。
ハーブティーやコーヒーじゃなく酒が飲みたい気分の時もある。‥そんな感じ。
幸い、俺は泊まる場所に困らない。
ふらっと酒場に行けば、いろんな女の子たちが一晩の寝床をこころよく貸してくれた。
そんな風にして暮らしてたんだけど、頭の片隅には‥コリンたちのことがあった。(ほんのちょっとだけど)
協会ぶっ潰す話‥どうなったんだろ。
協会をぶっ潰せば昔の仲間たちはどうなるんだろ。
昔の仲間‥コリンたちが「拉致被害者のさと」って呼んでたところで一緒に育ってきた仲間たちや、‥後輩たちだ。
‥路頭に迷うんじゃないだろうか。
俺も含めてやっぱり捕まっちゃうのかな‥。
とか、‥色々。
そんなこともあって、こっそり「協会うちこわし」の情報を仕入れて(別に裏のルートを使ったとかじゃない。フタバちゃんにこっそり聞いただけだ)見に行った。
こっそりと影から見守った。
その現場は‥
思ったより地味だった。
もっと
「協会長様をお守りしろ! 」
「協会長様にお会いしたいなら、我らを倒してから行け! 」
とかいう忠誠心たっぷりって感じの協会員が揃ってるって思ってた。
‥全然そんなんじゃなかった。
警察が来て、色々瞬時に理解して「そんなら、協会長を売った方がいいんじゃね? 」って判断した下っ端社員たちは「あっという間に」全員で協会長をはじめとした幹部たちを攻撃した。
あれだ。トカゲのしっぽ切りというより、トカゲのしっぽの反乱だ。切られる前に、自分で離脱して、本体が逃げない様に巻き付いた! みたいな感じ? ‥あれは、見事だった。
あんまりにあっけなかったから‥思わず唖然としてしまった。
所詮その程度の付き合いだったってことかあ‥。
そんな中、性善説の彼女の話を聞いて「魔術とは理論」ってのを思い出して、フタバちゃんに
「さとの連中にきちんとした魔術を教えたい。俺が先生になって教えるために‥もっと、魔術を習いたいんだけど、協力してもらえないだろうか」
って頼んだ。そんなこと頼むの図々しいけど‥今更でしょって割り切ることにした。
フタバちゃんはこころよく引き受けてくれて、
「どうせなら、さとの人たちもみんな一緒に教えてもらったらいいんじゃない? お金は、孤児の救済って名目で呼びかけたら貴族たちから集まると思うわ。
学校‥建物を建てるのは無理でも、青空学校で学べばいいんじゃないかしら?
私やロナウも時々お手伝いに行きますね」
って笑顔で言ってくれた。
仲間たちの救済は、一時的にお金を寄付してもらうだけじゃダメなんだ。
今後、彼らが「まっとうに」暮らせるために、彼らには知識や教養が必要なんだ。
たとえ、両親がいなくても、‥彼らがいずれ自分の家族を作っていけたらいい。過去は奴らに全て奪われたけど、未来は自分たちで切り開いていけるようにならなくてはならない。
その場限りとか、楽しければいいとか、もうそんなのこりごり
どうせ‥って未来を諦めてた。
「どうせ」明るい未来なんて待ってないから「その場が」楽しければいい。
勝手に諦めてた。
だけど、未来は全然終わってなんてなかった。
俺は、これからの未来を思い、少し楽しみな気もしたし‥それ以上に不安にもなった。
‥だけど、将来なんてものは本来不安を抱えてあたりまえだ。不安だから、何とかしようって考えるし、努力するんだろう。
魔力は属性があって初めて芽をだして、理論によって成長する。
何事も行き当たりばったりじゃダメってことなんだろう。
何んだか、今初めて自分の人生のスタート地点に立てた気がしたんだ。
‥私は性悪説支持者です。
良心や、無償の愛なんて、私は信じません。
私にはありませんし、私のほんの近しい‥周りにそんなのを持った人も見たことはないからです。
‥多くの人は、弱い人や‥いや、全ての「守らなければならない人」を守り養っていかなければならないって思い込んでいる。
だけど‥それは立場だったり、責任感から来る義務意識に他ならないって思うんです。
母性本能然り、ノブレスオブリージュなんてそれの最たるもんですよね。
人は‥他人を意識するから「そういう義務意識」を持つだけで、自分勝手が許される環境下だったら、絶対そんな気持ちになんてならないですよ」
魔術士がそう言って、かっての上司に攻撃用ロットを向けた。
「私には協会に対する帰属意識も、貴方にたいする尊敬の気持ちも全然ないです。
あるのはギブ&テイクの事実だけ。
お金を貰ってるからここで働いてる‥それだけです。
貴方がしたことによって、私を「今後の給料を約束できない状況」に追いやるのであったら、私は迷わず貴方をここから追い出すことを選びます」(※ 魔術士は、長台詞も大好き! )
そう付け加えた彼女に、他の魔術士も頷く。
それを言われると上司も
「今まで給料を払い、育ててやった恩を忘れたのか! 」
とは言えなくなっちゃてる。
‥そもそも、協会で働いてる魔術士は「育ち切った状態」で協会はその労働力を給料を対価に貸してもらっていただけだし。
何もいえないよね。
せめて、信頼関係とか恩を感じる様な関係が彼らの間にあればよかったんだろうけど‥それもなかったようだ。
結果、協会は中から破壊されて‥悪の親玉であった協会幹部たちはことごとくぼこぼこにされ(※ 魔術士は、口喧嘩も喧嘩も大好き! )‥警察にしょっ引かれていった。
外‥つまり、魔薬販売ルートやら教育部門もそんな感じ。
仲間同士で罪の擦り付け合いやら「情報を出すから減刑してくれ」みたいな裏切りも結構あったみたい。
今回同時に逮捕の手が回ったから情報が流れて逃げる者が出たってことはなかった。
まあ‥情報が流れても庇ったり、助けに行ったりとかは絶対なかっただろう。
せいぜい、自分のみを守る為に1.まず逃げる。2.人のせいにするって感じかな~。奴らに仲間意識とかない。
‥見苦しいね。
それにしても‥
性悪説支持者ですって言い切った彼女のキツイ表情。
あれは‥ちょっと怖かったね。
でも‥実際、性善説支持者なんているのかねえ。
人は生まれた時は全員善人なんです。だけど、社会が悪かったりとかして‥悪人になってしまう人もいる(ニュアンスとしてちょっと違うかもだけど、俺はそう理解している)。それが性善説で、その反対が性悪説。
性悪説の場合は「元々悪なるこころが普通なんだけど、悪なるこころに負けない人も稀にはいる」とかなのかな?? 性悪説でいう「もともとの悪」って言う「悪」は、「弱い心」みたいな意味なんだって。
別に生まれつき、全員悪人って言ってるわけでは無いらしい。
でも、自分の秘めたる欲求ってそもそも悪だよね。
「いいことしたい! 皆を助けたい! 」
って思ってる奴より、
「いい暮らししたい、他人を出し抜いても‥! 」
って思ってる奴の方が多いって思うし、‥自然な気もするよね。
ってか‥普通そうじゃない? 「皆の幸せを祈ってます」なんて‥偽善だよね?
俺も、性悪説一択。元もとはいいこころを持ってた‥とか、ないない。そんなこころじゃ、世の中渡っていけない。
だけど、そんなこと勿論だけど普段からわざわざ考えることない。
それをわざわざ口に出して言った彼女に「へ~」って思った‥って言うか‥。興味を持った。
魔術士って面白いなって思った。
そういえばコリンやフタバちゃん、ロナウもそういうところあった。
普段はあんなに短気だし、脳筋(特にコリン)なのに‥ロナウなんか「何も考えてないよ~」って顔してるのに‥
「魔術は「適当にやればできる」ってもんじゃない。種もまかないのに草ははえない。
魔法が使えない人は「魔法はそうじゃないの? 」って思ってるみたいだけど、そうじゃない。
種は「属性」だ。
だけど、属性があるだけじゃダメなんだ。
その属性から生えた芽を育てるのが「理論」。
理論を展開することによって、芽が成長して魔術になるのであって、気合じゃ育たない」
って魔術について語ってた。
魔術の理論をより理解できてる者がより高度な魔術を使うことが出来るってフタバちゃんがそれに補足した。
属性の本質、人間‥自分の本質‥。
魔術士はいつも色んな事を考えている‥らしい。
俺が「ホントか? 」って顔をしてたら(自分では分からないけど、‥多分そんな表情をしていたんだろう)
「理論って‥マニュアルみたいなもんなんだ。誰が使っても、いつ使っても同じ魔術になるように、マニュアル化するって感じかな? 「こういう感じ」とか‥人には説明できないでしょ。魔法は「こういう感じ」って‥ふわっとてて、魔術はマニュアル化されてるって感じかな?
「こういう感じ」人によっても違うわけじゃない。それに同じ人でも、今日の「こういう感じ」は明日の「こういう感じ」とは違うかもしれない。
それじゃ、ダメなわけ」
って苦笑いしてロナウが言った。
その言葉にコリンが頷き、
「だから、アンバーたちが「拉致被害者のさと」で教わってたのは、魔術じゃなくて魔法って感じなのかもな。
辛うじて「こういう風に使う」っていうのはレクチャーされてても、「それはこういう意味です」っていう理解はしてない。だから何となく、フィーリングで使ってる」
って付け加えた。
たしかにそうかも、って思った。
確かにさとの連中の使う「魔術(?)」は威力や効果に差があった。術者の機嫌が悪ければ、暴走したり「悪い」魔法になっていた。
闇属性の魔法だから‥余計にそういうのが如実に出たんだろう。
それをさとの大人たちは「魔力の暴走だ」って言葉で片付けてたけど、そもそも彼らも魔術の理論を理解してなかったのかも。
コリンから魔術を習ってる時は、魔術を習っているというより哲学の授業の様だった。
それが「こういう意味」を持ってるってことは、その時コリンからは聞いてなかった。(否、聞いたかもしれないけど、興味がなかったから記憶から抜け落ちたのかもしれない)
聞いたか聞いていないかは今となっては分からない。いずれにせよ。‥その時は、俺が「そういうことなのか」って「心から」理解しなかったってことなんだろう。心から納得しないとすぐ忘れちゃうよね。
‥あと、多分ロナウの方がコリンより説明が丁寧だし、上手い。きっと、ロナウは自分が納得できるまで何度もテキストを読んだんだろう。(フタバは理解が早い分、説明も下手)
コリンは、あれだ。普通に人に説明するのが向いてないタイプなんだろう。
あの後、ナナベルたちと別れて、何となくふらふら~って歩いてた。
なんか、コリンたちの顔見るのも‥なんか嫌だったんだ。
嫌いになったとかじゃなくっても、そう言うことあるじゃない。
ハーブティーやコーヒーじゃなく酒が飲みたい気分の時もある。‥そんな感じ。
幸い、俺は泊まる場所に困らない。
ふらっと酒場に行けば、いろんな女の子たちが一晩の寝床をこころよく貸してくれた。
そんな風にして暮らしてたんだけど、頭の片隅には‥コリンたちのことがあった。(ほんのちょっとだけど)
協会ぶっ潰す話‥どうなったんだろ。
協会をぶっ潰せば昔の仲間たちはどうなるんだろ。
昔の仲間‥コリンたちが「拉致被害者のさと」って呼んでたところで一緒に育ってきた仲間たちや、‥後輩たちだ。
‥路頭に迷うんじゃないだろうか。
俺も含めてやっぱり捕まっちゃうのかな‥。
とか、‥色々。
そんなこともあって、こっそり「協会うちこわし」の情報を仕入れて(別に裏のルートを使ったとかじゃない。フタバちゃんにこっそり聞いただけだ)見に行った。
こっそりと影から見守った。
その現場は‥
思ったより地味だった。
もっと
「協会長様をお守りしろ! 」
「協会長様にお会いしたいなら、我らを倒してから行け! 」
とかいう忠誠心たっぷりって感じの協会員が揃ってるって思ってた。
‥全然そんなんじゃなかった。
警察が来て、色々瞬時に理解して「そんなら、協会長を売った方がいいんじゃね? 」って判断した下っ端社員たちは「あっという間に」全員で協会長をはじめとした幹部たちを攻撃した。
あれだ。トカゲのしっぽ切りというより、トカゲのしっぽの反乱だ。切られる前に、自分で離脱して、本体が逃げない様に巻き付いた! みたいな感じ? ‥あれは、見事だった。
あんまりにあっけなかったから‥思わず唖然としてしまった。
所詮その程度の付き合いだったってことかあ‥。
そんな中、性善説の彼女の話を聞いて「魔術とは理論」ってのを思い出して、フタバちゃんに
「さとの連中にきちんとした魔術を教えたい。俺が先生になって教えるために‥もっと、魔術を習いたいんだけど、協力してもらえないだろうか」
って頼んだ。そんなこと頼むの図々しいけど‥今更でしょって割り切ることにした。
フタバちゃんはこころよく引き受けてくれて、
「どうせなら、さとの人たちもみんな一緒に教えてもらったらいいんじゃない? お金は、孤児の救済って名目で呼びかけたら貴族たちから集まると思うわ。
学校‥建物を建てるのは無理でも、青空学校で学べばいいんじゃないかしら?
私やロナウも時々お手伝いに行きますね」
って笑顔で言ってくれた。
仲間たちの救済は、一時的にお金を寄付してもらうだけじゃダメなんだ。
今後、彼らが「まっとうに」暮らせるために、彼らには知識や教養が必要なんだ。
たとえ、両親がいなくても、‥彼らがいずれ自分の家族を作っていけたらいい。過去は奴らに全て奪われたけど、未来は自分たちで切り開いていけるようにならなくてはならない。
その場限りとか、楽しければいいとか、もうそんなのこりごり
どうせ‥って未来を諦めてた。
「どうせ」明るい未来なんて待ってないから「その場が」楽しければいい。
勝手に諦めてた。
だけど、未来は全然終わってなんてなかった。
俺は、これからの未来を思い、少し楽しみな気もしたし‥それ以上に不安にもなった。
‥だけど、将来なんてものは本来不安を抱えてあたりまえだ。不安だから、何とかしようって考えるし、努力するんだろう。
魔力は属性があって初めて芽をだして、理論によって成長する。
何事も行き当たりばったりじゃダメってことなんだろう。
何んだか、今初めて自分の人生のスタート地点に立てた気がしたんだ。
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