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231.悪いことはやるもんじゃない。
しおりを挟む 見た目は丁度カゲロウの様な魔虫だ。
トンボの様な透明の羽をもち、でも、トンボ程しっかりとした身体を持っていない。
儚くって、弱弱しい小さな虫‥それがカゲロウだ。
小さいといっても蚊よりずっと大きいし、蚊と違って飛行時に嫌な音を立てない。蚊と違って人に被害を与えないし。
「名前は、‥影ロウにしよう。影ロナウってのもいいかも」
ってつまらないギャグを言うコリンをフタバが「人の名前で遊んではいけません」って窘める。
フタバは結構いいやつなんだ。
フタバは、「そうですね‥」って虫を‥魔力を纏わせた指でそっとつかみながら首を傾げ、新しい名前を考案する
「カゲロウって虫はでも、既にいて、音だけでは判別できないから‥影ロナウにしましょう」
‥ふりをして、コリンのつけた名前を採用した。
‥訂正。
全然いい奴じゃなかった。
影ロナウは、黒い透明の羽で夜の闇に紛れて飛ぶ。
それが音もなく薬草にとまると、虫が触れたところからまるで炭化したように黒くなる。
その間、ほんの二・三秒。
その行為を何度か繰り返すと、自身も黒い粉になり崩れっていく。
目を凝らしても見えにくいその虫は、小さく弱く、捕まえようとして力を入れれば黒い粉になり消える。
そして、その粉も跡形もなく消えていく。
夜生まれた数百という影ロナウは、夜の間活動して、朝を待たずにすべて黒い粉に成り、消えていく。
朝、違法薬物を育てている男たちは、原形を保ったまま炭化して枯れている植物を目にして絶句するってわけだ。
初めは原因すら分からないだろう。
虫に食われていると思う者はいないだろう。誰かが引っこ抜いた‥とも違う。
近いのは、「近くで火を焚いてその熱で枯れた」って状況だけど、それにしては、火を焚いた跡もないし、被害箇所が集中していない。しかも、熱で枯れたにしては縮れてもいないし‥綺麗過ぎる。
ちょうど花炭の様な感じで、「その形のまま炭になった」状態‥。
「魔法なのには違いないな。魔導士が瞬間移動で現れて魔法で焼き払っているのか? 人の目を盗んだ‥短時間での犯行か? 」
そう思って身張るが、侵入者は現れない。
‥実は夜に現れてるんだけど、影ロナウは小さいし、見えにくいからやっぱり見つけづらい。そして、影ロウによる被害も‥黒いから見えにくい。
小さな炎があがるわけでもないし、噛み跡がつくわけでもない。
そうこうしているうちに薬草園が全滅して、被害報告と、「多分このような虫が原因であろう」という予測だけが他の薬草園に伝達される。
そして、苦労のかいあって影ロナウの存在に気付く者たちも出て来るだろう。
だけど、夜じゅう虫を追いかけまわしても、捕まらないし、捕まえてもすぐに炭の粉になる‥。
ホントの虫じゃないから、殺虫剤も効かないし、エサや光でおびき寄せられない。
まさに、成すすべがない。
だけど、勝手に違法薬物を育てている奴らにその被害を訴える先はない。
「‥悪いことはやるもんじゃないね」
法を尊ぶ正しい人・ナナフルがしみじみと言った。
「完璧だ。完璧すぎる。放っておいても勝手にしてくれるってのが気に入った‥」
コリンがさっきのフタバと同じように虫をつかんでうっとりとした表情をする。
皆が苦笑いする中、
「粉になって、証拠が残らないのが素晴らしいですわ」
共同制作者のフタバがまるで花が咲くように微笑む。
やっぱりこの二人は「根っからの悪人」だよな‥。
この件が終わったら、絶対縁を切ろう。平凡な顔で平凡な頭脳しか持たない僕は、平和で平凡な人生を送りたい。
‥この二人と関わっていたら、この先も被害を受けるのは目に見えている‥。
そう言った「平凡な」ロナウの左の上腕には、魔術士紋。
元の魔術士紋は、右の上腕だった。
それは進化型の騎士紋に変わった。
左右の上腕に騎士紋と魔術士紋がついてる男が「平凡」であるわけがない。
見るからに「普通じゃない」「なんか事情がある」「やべえ奴」で、平凡なお嬢さんならちょっと尻込みしちゃう様なタイプ。
魔術士紋と誓約士紋は「見るからにエリート」だけど、騎士紋と魔術士紋は「見るからに血の気多い奴」。
‥顔は確かに平凡なんだけどね。
(だからこそ‥って感じだ。顔は平凡だのに実は「やべえ奴」最悪だ)
自分がやべえって思ってる悪友に、「やべえ奴」にされちゃった(そしてそれに気付いてない)ロナウに「平凡で」「平和な」明日はあるのか??
可愛い恋人は出来るのか??
‥なんて、コリンやフタバには興味すらないのだった。
そして、「どうせこの件が終わったら婚約は白紙」って簡単に思ってるフタバがこの先「そんなはずじゃなかった!! 」ってなる羽目になるのは‥あの「お義父さん」に話した地点から分かってることなのだった。(フタバはまだあのお義父さんの怖さを十分わかっていない)
トンボの様な透明の羽をもち、でも、トンボ程しっかりとした身体を持っていない。
儚くって、弱弱しい小さな虫‥それがカゲロウだ。
小さいといっても蚊よりずっと大きいし、蚊と違って飛行時に嫌な音を立てない。蚊と違って人に被害を与えないし。
「名前は、‥影ロウにしよう。影ロナウってのもいいかも」
ってつまらないギャグを言うコリンをフタバが「人の名前で遊んではいけません」って窘める。
フタバは結構いいやつなんだ。
フタバは、「そうですね‥」って虫を‥魔力を纏わせた指でそっとつかみながら首を傾げ、新しい名前を考案する
「カゲロウって虫はでも、既にいて、音だけでは判別できないから‥影ロナウにしましょう」
‥ふりをして、コリンのつけた名前を採用した。
‥訂正。
全然いい奴じゃなかった。
影ロナウは、黒い透明の羽で夜の闇に紛れて飛ぶ。
それが音もなく薬草にとまると、虫が触れたところからまるで炭化したように黒くなる。
その間、ほんの二・三秒。
その行為を何度か繰り返すと、自身も黒い粉になり崩れっていく。
目を凝らしても見えにくいその虫は、小さく弱く、捕まえようとして力を入れれば黒い粉になり消える。
そして、その粉も跡形もなく消えていく。
夜生まれた数百という影ロナウは、夜の間活動して、朝を待たずにすべて黒い粉に成り、消えていく。
朝、違法薬物を育てている男たちは、原形を保ったまま炭化して枯れている植物を目にして絶句するってわけだ。
初めは原因すら分からないだろう。
虫に食われていると思う者はいないだろう。誰かが引っこ抜いた‥とも違う。
近いのは、「近くで火を焚いてその熱で枯れた」って状況だけど、それにしては、火を焚いた跡もないし、被害箇所が集中していない。しかも、熱で枯れたにしては縮れてもいないし‥綺麗過ぎる。
ちょうど花炭の様な感じで、「その形のまま炭になった」状態‥。
「魔法なのには違いないな。魔導士が瞬間移動で現れて魔法で焼き払っているのか? 人の目を盗んだ‥短時間での犯行か? 」
そう思って身張るが、侵入者は現れない。
‥実は夜に現れてるんだけど、影ロナウは小さいし、見えにくいからやっぱり見つけづらい。そして、影ロウによる被害も‥黒いから見えにくい。
小さな炎があがるわけでもないし、噛み跡がつくわけでもない。
そうこうしているうちに薬草園が全滅して、被害報告と、「多分このような虫が原因であろう」という予測だけが他の薬草園に伝達される。
そして、苦労のかいあって影ロナウの存在に気付く者たちも出て来るだろう。
だけど、夜じゅう虫を追いかけまわしても、捕まらないし、捕まえてもすぐに炭の粉になる‥。
ホントの虫じゃないから、殺虫剤も効かないし、エサや光でおびき寄せられない。
まさに、成すすべがない。
だけど、勝手に違法薬物を育てている奴らにその被害を訴える先はない。
「‥悪いことはやるもんじゃないね」
法を尊ぶ正しい人・ナナフルがしみじみと言った。
「完璧だ。完璧すぎる。放っておいても勝手にしてくれるってのが気に入った‥」
コリンがさっきのフタバと同じように虫をつかんでうっとりとした表情をする。
皆が苦笑いする中、
「粉になって、証拠が残らないのが素晴らしいですわ」
共同制作者のフタバがまるで花が咲くように微笑む。
やっぱりこの二人は「根っからの悪人」だよな‥。
この件が終わったら、絶対縁を切ろう。平凡な顔で平凡な頭脳しか持たない僕は、平和で平凡な人生を送りたい。
‥この二人と関わっていたら、この先も被害を受けるのは目に見えている‥。
そう言った「平凡な」ロナウの左の上腕には、魔術士紋。
元の魔術士紋は、右の上腕だった。
それは進化型の騎士紋に変わった。
左右の上腕に騎士紋と魔術士紋がついてる男が「平凡」であるわけがない。
見るからに「普通じゃない」「なんか事情がある」「やべえ奴」で、平凡なお嬢さんならちょっと尻込みしちゃう様なタイプ。
魔術士紋と誓約士紋は「見るからにエリート」だけど、騎士紋と魔術士紋は「見るからに血の気多い奴」。
‥顔は確かに平凡なんだけどね。
(だからこそ‥って感じだ。顔は平凡だのに実は「やべえ奴」最悪だ)
自分がやべえって思ってる悪友に、「やべえ奴」にされちゃった(そしてそれに気付いてない)ロナウに「平凡で」「平和な」明日はあるのか??
可愛い恋人は出来るのか??
‥なんて、コリンやフタバには興味すらないのだった。
そして、「どうせこの件が終わったら婚約は白紙」って簡単に思ってるフタバがこの先「そんなはずじゃなかった!! 」ってなる羽目になるのは‥あの「お義父さん」に話した地点から分かってることなのだった。(フタバはまだあのお義父さんの怖さを十分わかっていない)
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