この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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226.次の目標が決まりました。

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 ザッカさんが意図したわけでは無かったんだけど、
 さっきの会話は、ブレスト(ブレーンストーミング)みたいな感じだったんだ。
 ブレストっていうのは、会議に参加した人々が自由な発想で意見を出し合い新しいアイデアを出し合うっていう手法だ。その原則に、人の意見を否定しない、質より量でたくさんの意見を出す‥とかがあって最初にそれをメンバーに伝えないといけないんだけど、そこはザッカが何となくフォローした。
 なんていっても、本来のブレストみたいに「今から何々について話し合います」とか、議題を決めて話し合ったわけでは無いから、そこら辺はちょっと変えながら‥って感じだ。
 
 会議って言いながら、主に発言をするのがロナウとコリンだけっていうシンプルなもので、更にちょっと雑談みたいだった(フタバはちょこちょこしか口を出してなかったわけだけど、ザッカ的には、フタバも発言者の一人だった)
 だけど、司会進行役のザッカが手綱を握ったことで、今回の会議はちょっとした収穫があった。
 協会の内部事情なんか部外者であるザッカたちには調べにくいことの話も聞けた。協会(表)がらみの発想なんかは実際の加入者の方が出やすいだろう。
 ザッカは、そういう雑談やなんかを邪魔しない様に、フタバが話を広げることは歓迎するが、話を「脱線してる」とか決めつけて中断させたり、「それは違う」って批判したりしない様に‥だけに集中した。内容の記録は、書記のナナフルが全部メモしてるから安心して任せている。
 ナナフルは、速記も得意なんだ。
 
 結局あの後もう少しロナウとコリンが発言し、ナナフルが「ちょっとお茶にしましょう」とブレストの終了を宣言した。
 お茶を飲み一息ついた後‥
「何となく、協会の本質とつつくべき弱点みたいなものが見えた気がする」
 ぼそりとフタバが呟いた。
「つつくべき弱点とは? 」
 コリンがフタバを見る。フタバは頷いて
「収入減を絶てばいいのよね、つまり」
 真剣な顔で言った。

 ‥そりゃね。

「まずは、魔薬の販売を邪魔したいですわね。‥その為に、まず今の顧客から消していく。中毒になって固定客になるのだけは、絶対に避けたいですわ‥。それから‥これから顧客になる人間の特定も同時に進めていく‥」
 フタバが真剣な表情で言った。
「消すって‥」
 ロナウが青い顔でフタバを見る。
「‥殺すって意味じゃないですわよ? 買わない様にさせるって意味ですわ? 勿論」
 ‥信じていいんだろうか‥。フタバちゃんって‥なんとなく得体が知れないからなあ‥。
 ってロナウとコリンは苦笑いだ。
 ナナフルもアンバーもそこまでフタバを「得体が知れない」って思ってないらしく、にこにこしながら聞いているだけだ。(ナナフルたちに危機察知能力が低いのではなくて、多分、ナナフルたち自身も得体が知れないからだろう)
 ザッカは、結構何があってもどーんとしている。それは、シークも同じだった。(シークは今ここにはいないけど)
 フタバは「失礼ですわね~」ってにこにこ笑いながら、
「顧客が中毒になると、ずっと固定の収入があるわけですし‥」
 と話を続け、
「それ以上に怖いことは」
 と、そこで表情を険しくした。
 周りが息をのみ、フタバの次の言葉を待つ。
「魔薬の中毒患者が、協会の使い勝手がいい無償労働力となる恐れがあることですわ。
 例えば、協会は‥協会にとって都合の悪い魔術士を魔薬中毒者に殺人をさせることもあるかもしれない。魔術士同士の殺人は(対魔法使い以外の)法律に問われないですから」
 周りの空気が一度下がった気がした。
「だから、魔薬使用者が魔薬をやめるように‥消さなきゃならないんですわ」
「魔法陣の破壊だね」
 コリンが苦笑いしながら聞くと、フタバが頷いた。
 そして、ふふっと微笑むと
「それこそ、私たちの共同体の得意技じゃない。
 マークして、カット‥「集めて凍らせて、バーン! 」よ! 」
 腰に手を当てて、得意顔のフタバ。
「え‥それって‥
 やっぱり‥大量殺戮宣言?? 」
 真っ青になる周囲。
 ‥さっき、殺さないっていったじゃないか~‥
「え? 」
 こてんと可愛く首を傾げるフタバ。
「魔薬服用者を集めて凍らせて‥」
 ‥最後まで言えない‥。
「違いますわ~!! 勿論、魔法陣を集めて‥ですわ! 」
 もう! とフタバが頬を膨らませて抗議する。
 コリンは呆れたって顔でフタバを見る。
「‥魔法陣を摂取した人間から取り出すことは出来ないぞ? 」
 シャルルの時も、目を合わせながら、シャルルの中にある魔法陣を破壊した。取り出して破壊できるなら、あの場で向かい合って時間をかけて破壊しなくてもよかっただろう。それを知っているロナウも頷く。
 その事実を初めて知って驚き‥そして、さっきの自分の発言に改めて青くなるフタバ。
 と‥
「‥いや‥待てよ‥
 ロナウなら‥
 魔法陣は魔力の塊‥。
 保有者とは別の魔力を識別してその魔力だけ吸収したら‥そして、それを破壊すれば‥」
 コリンが俯いて‥独り言を呟く。
 そして、ぱっと明るい表情で顔を上げると

「ロナウ! 今回の共同体、ロナウがリーダーになれ! その前に、お前、魔術士紋を取り直せ。魔術士じゃなかったら共同体が組めないからな。
 ああ、騎士紋を取り消したくなかったら、二つとも保持できる技術を身に着けろ。
 大丈夫だ! お前の魔力量なら問題ない! 」
 満面の笑みで言うのだった。

 いや、それ。
 簡単に出来ることじゃないから! それに、アンタだけ納得してないで周りに説明お願いします!

 あまりのことに‥
 苦笑いも出来ないロナウだった。
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