この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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213.平凡なら。

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 そもそも、平凡とはなんぞや。

 僕らは考えたら、初めっから‥おかしかったよ。
 そもそも、平凡ってのがどんなのかは分からないんだけどね。
 少なくとも、僕は僕の思うままに‥ただ我が儘に‥色々して来た。(若い時って‥皆そんなもんだと思う! )
 魔法の実習中に空間魔法を練習するフタバちゃんを見たとき、
 へ~この子、空間切り取りの才能あるな。
 って思った。
 属性は氷だったからきっと、氷系の子と組んで練習した方が良いんだけど僕は‥無理やり僕と組ませた。
 なんて言って誘った? ‥全然覚えてないんだよな。

 彼女は普通の子みたいに
「は? なんでお前と‥」
 とか‥そういう無駄な時間を僕に使わせなかったのが‥助かった。
「貴様が‥? 最悪だ! 」
 とは言われたが‥抵抗はされなかった。諦めがいい方なんだろう。
 魔力の「相性がいい」ってのはお互い逢った瞬間から分かって。
 それは‥将来的に「共同体を組むことになるだろう」って分かるぐらいに‥僕らは明らかに相性が良かった。
 勿論ね、他にも相性がいい子がいて、その子と組むことになるかもしれない。僕らには気が付かない「それ」を気付かせて、提案してくれるのが協会だ。協会はそういう‥魔力の相性の良いものをマッチングしたりもしてくれるんだ。(あの頃は協会の判断を「客観的な観点から」とか思ってたけど‥真実は、協会の都合と思惑によりマッチングされていたんだもんな‥。全部協会の手の上で転がされてたに過ぎなかったって思うと腹が立つね)
 だけど、僕は「絶対この子と組まなければ」って思った。その為に、教会の職員に対する根回しも抜かりなかった。‥勿論全部僕の独断だ。
 フタバちゃんには悪いことをした。
 もし僕があそこで声を掛けなかったら‥フタバちゃんは今頃もっと別の人生を送っていたかもしれない。
 ‥空間魔術の才能があったから、結界を極めて、ヒールの聖女を助けて救世の女神って呼ばれてたかも。‥そんな未来もあったかもしれないのに‥って時々思うんだ。

 (過ぎた過去のことを言っても仕方が無い)
 少なくとも過去の僕に「人の将来を慮る」優しさなんてなかった。人に対する優しさどころか‥あの頃の僕には「破壊願望」しかなかったんだ。
 ‥若い頃ってそんなもんじゃない? (多分)
 極論が「むしゃくしゃする。もう、いっそ滅びてしまえばいいのに‥世界なんて‥」だよね? 

 そんな、若さに溢れてた当時の僕は、自分の事ばっかりで、人の気持ちなんて分からなかった。
 考えようともしなかった。こうしよう、って決めたら、努力とごり押しで何とかなる‥ってけっこう無茶苦茶していた、と思う。
 ‥人の意思さえお構いなしだったんだ。
 だけど、そんな僕にフタバちゃんは
「どういう計画がありますの? まさか、なにも決めずに私に話しかけたわけでは無いですよね? 」
 って、言ったんだ。
 (今思えばそれも大概おかしいが)それは僕にとって問題ではなかった。
 (当時の)僕はそんなフタバちゃんを変に思うどころか‥「目的が無きゃ誘わないってはじめっから分かってるところも、気に入った」とか‥思ったんだ。(何様だ。当時の僕。魔王か何かか)
 僕は‥僕たちはってあえて言わせてもらおう‥無駄な時間ゼロで‥それこそ自己紹介すらせずに新魔法の練習に入った。

 それが、
 空間を切り取って(フタバ)、感電させて(コリン)閉じ込めて‥浮かせて、凍らせて(フタバ)‥落下させて粉々☆だ。
 
 それはね。確かにいいんだ。百発百中だしね。だけど、分かるよね。
「だけど、敵をおびき寄せるのに手間がかかる」
 んだ。
 それで、何かいい魔法ないかな~って探してた時に目についたのが‥ロナウだった。
 ロナウは、当時闇の属性なんて自覚してなかった。だけど、とにかく‥器用だった。器用なコイツだから‥何かに使えるんじゃね? って声を掛けたに過ぎなかった‥ってわけ。
 
 ロナウのことに気付いたのは、もともと魔力の相性がいいから‥だったんだけどね。
 相性がいい奴同士ってのは、「会えば」何となくわかるんだ。逆に会わないと分からない。だから、在学中に相性のいい人に会えない人っても少なくないんだ。
 だから、協会側が都合のいいようにマッチングできるってわけ。
 魔力の相性なんて相性度50%を超えてたら「相性いい! 」ってなるからね。それっ位なら性格やら属性やら見てたら他人でもマッチングできる。
 僕とフタバちゃん、ロナウみたいに「凄く相性のいい人」を知らない人ならその位で十分、「運命だ! 」って満足できる。
 で、そうやってマッチングさせた共同体に、協会側は、「君たちはこういうのが向いてるようだから‥今後、こういう風な共同体にしていけば? 」ってさりげなく、提案をする。勿論、協会に都合のよいように‥だ。
 だけど、その通りにする人間はあんまりいなかった‥。
 なぜなら、魔力の相性は良くても、性格の相性はそうでもなかったとか‥そういう他の問題があったから。それに、魔術士は皆自分勝手だからね。そう協力して‥って風にはならなかった。
 だけど、協会にしてみたらそれでもよかった。「サンプルはいくらでもいる。成功例があればみっけもん」位の感覚だったんだろう。
 僕らは‥つまり実験台だったってわけだ。

 話が外れたね。
 ロナウ勧誘の経緯について‥だ。
 僕とロナウの魔力の相性は‥フタバちゃんと僕よりよかった。
 フタバちゃんと僕が80%位で、ロナウと僕とは90%超だったと思う。だから、ロナウも「運命! 」って騒いだんだと思う。こんなに相性がいい人間と出会うのは‥ホントに稀なことだって思う。
 つまり、逢った途端、ビビっと来た。
 そのビビ! を、ロナウは運命の恋だと思い、僕は「これは使える! 」って思った。
 ロナウのことを調べると、魔術の才能もあるし、どうやら凄く器用らしい。「僕らの合わせ技に使える魔法を覚えてもらえばいい」‥って思った。
 ‥なんて言って誘ったのかはやっぱり覚えていない。
 だけど、その後ロナウは僕に懐いてたから、‥別に脅した‥とかじゃない様だ。それなら別に何の問題もない。
 ※つまり、ここでコリンはロナウに「営業用スマイル」で話しかけちゃってるんだ。それで、一目惚れしたロナウが「運命だ! 」ってなった‥ってわけ。
 ロナウは思ってたのと違ってめちゃくちゃ‥メンドクサイ奴だったけど、初めは僕も騙し騙し‥煽てたり、褒めたりして‥結構気を遣ってた‥と思う。
 で、出来上がったのがあの‥
 影を引っ張ってフタバちゃんの射程距離内に連れてくる‥って技だ。

 合わせ技が完成して、僕にとってはこれ以上ない位満足だったんだけど‥「平凡な」「普通の」人たちなら‥こんなこと考えなかったのかな‥って思う。
 相性のいい人に会って感激して、「一緒に考えていこうね」「一緒だったら出来ることもきっと増えるね」って友情を築いて行けたのかも。
 もしくは、あんなに性格が合わないメンバーなんだから始めっから「おまえらと一緒にやることなんて、ねえ」って‥形だけの共同体だけ組んで、何の活動もしなかったのかも。
 普通の人なら‥
 
 自分の事、異常だとかは自分では分からない。だけど、「過激か」「人に優しいか」とかで考えると‥過激の部類に入るのかも‥とか。
 自分の事分析できるようになったってのは、凄い成長したなって思う。
 僕は‥もうすっかり大人だ。あの頃の「若気の至りイエーイ」なやばい奴じゃない。
 ‥それで、まあ‥今のところはいいんじゃないかな‥と思ったり。
 それに、自分の事平凡って言うやつに限って平凡じゃない(フタバちゃんなんかがそう)ってあるあるだし。

 僕は、平凡かどうかは分からないけど、人に迷惑を掛けない範囲内で暮らしてるからそれでいい‥って思うんだ。
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