188 / 310
186.一人じゃない。
しおりを挟む組織の人間に付いて広場を出ると、そこは海外の街、或いはファンタジーゲームの中の様な場所だった。召喚された他の女性達や、比奈や美咲はキョロキョロと周囲を見回して感嘆の息を吐いていた。だが萌香にとっては特に珍しい光景じゃ無い。異世界で旅をしていた時に、もっと不思議な光景を見て来たからだ。だから街並みよりも気になったのは他の人間だ。組織に属して居ない人間達。隠れるように路地裏や民家らしき建物の窓から何人かがこちらの様子を伺っていたが、皆一様に暗い顔だ。
(やっぱり組織、ヤバい奴らっぽいな。)
黒髪の男が言っていた、組織に属して居ないソロプレイヤー、少人数で組んでいるプレイヤー。その誰もが薄汚れた格好だ。対して先程広場に居た組織の人間の装備や格好は小綺麗で、顔色も良かった。
組織が上手く回っているのなら、それもおかしな事ではないかも知れないが、それなら薄汚れて顔色の悪いソロプレイヤーや、少人数チームのプレイヤーに説明がつかない、1000人居るらしいプレイヤーの内、組織に属しているのは半数にも満たない400人。それが不可解だ。そんなに良い組織なら皆入る筈だ。組織の話を聞いた限りは、他に大人数で組んでいる者達も居なさそうだ。それは、組んでもメリットが無いからじゃ無いだろうか?それに先程から感じる視線は、気の毒そうな視線だった。
(……組織、……大方、初心者を騙して、何かやってんだろうな、だから男女を分けたって事でしょ?…………、女は性処理にでも使う気?…………、男は、なんだろう………、労働力?)
萌香の考えはそう間違って居ないと思う。先程から黒髪の男がチラチラと比奈を見ている。その視線は豊かな胸元に向いていた。
(きも…………)
◇◇◇◇◇◇
「はーい、皆さん。いらっしゃーい。リーダーもおかえりなさーい♡」
着いたのは、大きなホテルのような建物だった。そこから綺麗な格好の女性が4人出て来て、笑顔で出迎えてくれた。それを見てホッと息を吐く召喚された女性達。顔を顰めていた美咲の表情も和らいだ。それを見て萌香は呆れた。
(…………馬鹿だな。こんなの見え見えの罠じゃん。安心させて油断させる為のさ。…………でも普通の人なら騙されるのかな、昔の私みたいに…………)
「ただいまー。食事の用意出来てる?新人さんの歓迎会だし、飲み物とかも沢山用意して有る?今回結構大人数だから、無いなら俺が買いに行くけど?」
黒髪の青年が4人の内の一人、金髪の女性の肩を抱いて言う。
「勿論、ちゃんと準備してるよ~、直樹君♡」
「ありがと、ミミ。んじゃ皆を広間に案内してくれる?」
黒髪は直樹と言うみたいだ。
「はーい♡じゃ、皆さん、うちらについて来て、食事もお酒もあるよー♡」
そう言って金髪女性はニコニコとして萌香達に声を掛けて、手招きして居る。
「…………なんか、大丈夫そうだね。比奈、行こ」
そう言うと、美咲はさっさと比奈の手を引いて金髪の女性達について行った。比奈は何度か困った顔で振り向いたが、そのまま引っ張られて行ってしまった。
萌香はため息を吐く。
(安心したら、こっちをまた無視?…………はあ。…………名波さん。嫌いなタイプだわ)
◇◇◇◇◇◇
広間に案内されると良い匂いが漂っている。豪華な机の上にはご馳走が並んで居た。
(用意周到すぎて怪しすぎ。でも誰も疑って無い。はあ…………、危機感無さ過ぎ…。あーイライラする。)
女性は萌香を含めて全部で18人。その中には年配の人や、成人している大人の女性も居るのに、皆ご馳走に目を輝かせている。
(…………、本当危機感の無い馬鹿女ばっかり…………、騙されて、搾取されても自業自得だよ…………、あーあ。気分悪い。来なきゃ良かったな。)
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる