この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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185.自分の知らない自分のこと

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「例えば、アンバーは自分の悪いところだとか、いいところだとかちゃんとわかってるのか? 」
 あの後、そんな話をした。

 ザッカがアンバーに聞くと、アンバーはははっと‥困ったように笑った。
「そりゃね。分かってるつもりだよ。だけど、人から言われて気付くこともあるし‥
 きっと、自分の事だって自分では全部は分かっていないんだろうな、って思う。
 寧ろ‥自分の事だからわからないってこともあるかな。
 他人が自分の事を分かってくれるってことは期待しない。「どうせ誰にも理解されないんだ」なんて‥拗ねるほど自分大好きじゃない。だけど、全然見られてないか‥っていうと、それは違う。
 他人が‥例えば戯れに付き合った女が言った「貴方ってそういうところあるわね」も‥「そんなわけないだろ」って決めつけたりはできない。少なくとも、相手には「そう」見えたんだから、そういうところもあるかもしれない‥ってことだからね」
 って、ちょっと眉を寄せて言う。
「まあ‥なあ‥自分の事って案外分からないよなあ」
 ってザッカはうんうん‥と納得したように頷いたけど、コリンはちょっと赤面して‥

 戯れに付き合った女と‥「貴方ってそういうところあるわね」

 この言葉を頭の中で反芻していた。
 戯れに付き合った女と「そういう話」をする機会って‥つまり‥「そういうことした」‥後ってことだよね‥。
 ひゃ~なんか‥アンバーってばさらっとそういう話しちゃうんだ‥。ここにはナナフルさんもいるのに! ナナフルさんに聞かれたらアレだな~とか思わないのかな~。
 恥ずかしい~。
 ‥でも、ザッカさんは‥特に気にしてないみたいだ。
 もしかして‥そういう行為の後って‥僕の考えすぎ?? 付き合ってる二人は、「いつでも」そういう話するのかな?? いつでもそういう話する機会があるのかな??
 いや‥
 するかな。普通にお茶飲んでるときに‥「貴方って、ちょっと揚げ足取る癖あるわよね」って‥話になる??
 ‥なるな。普通になる‥。
 え~恥ずかしい‥僕ってば恥ずかしい!! なんでもかんでもヤラしい様に考えるとか‥思春期の子供か!? 欲求不満か?? 
 アダルト~な雰囲気で
「貴方って、イジワルだわ。だけど‥セクシーね」
 とか
「貴方って危険な人‥貴方の目を見てたら吸い込まれそうだわ」
 ‥みたいなことが「そういうところあるわね」だとしか思わなかったぞ!? ヤバい~恥ずかしい~!
 ‥そうだよね、そういう時にした話は‥盛り上がっていい雰囲気の中でしただけの話だから‥「そういうところもあるかも」‥って自らを省みる切っ掛けにはならないよね! 
 うん。違った。僕が間違ってた。
 ‥いや、でも‥実のある話もするかもしれない。
 女:「ねえ‥。あの子と私どっちが好き? あの子は貴方の顔しか見てないけど‥私は違うわ。ちゃんと、貴方の事見てる」
 アンバー:「へえ、君には俺はどんな風に見える? 」
 ‥って話になるかもしれない。
 で、
 女:「顔は笑ってても目が笑ってないわ。貴方は‥計算高い人だわ」
 アンバー:「(困った様な顔をしながら)‥不器用なだけだよ(やべえ、それがバレるとは‥俺はまだまだだな)」
 ‥自然だわ。あり得るあり得る。実のある話を「そういう‥良い雰囲気の時」にする時だってある。
 うん。
 コリンは一人で納得してうんうんと小さく頷く。

 良い雰囲気‥
 
 それを考えた時、また顔が熱くなった。
 アンバーにキス‥そういえばされた事がある。‥いかにも慣れてます‥って感じのキス‥。きっとあれを上手いっていうんだろう。凄い自然な感じで‥全然嫌じゃなかった。なんか‥気持ちがいいと思いさえした‥。
 アレだ。相手に照れる隙を与えない‥って奴。あと、物足りないって思わせないけど、「くどい! 」とも思わせない絶妙な濃度(濃度?? )つい、もっと‥って言っちゃいそうになるくらいの絶妙な時間‥
 つい、唇に手を当て‥チラリとアンバーを見てしまった。
「コリン? 」
 ナナフルに心配そうに見つめられ、コリンははっとする。
「なんか百面相してたけど‥どうかした? 」
「断じて何にもないです。ちょっと、人から自分はどういう風に見られてるのかなって思って‥恥ずかしい気持ちになってただけです。自分にはわかんない自分とか‥恐怖でしかないですよね」
 慌てて言い訳したけど‥我ながら何言ってるか分からない。
 何言ってんだ。
「そう? 」
 ナナフルは首をちょっと傾げ、アンバーは‥ニヤニヤしてる。
「スケベ」
 声は出さなかったけど、唇の動きだけでそう言った。
 ‥お前! 僕の心を読んだのか!!

「どうした? コリン、真っ赤な顔してアンバーを睨んだりして‥。今は喧嘩をしてる場合じゃないぞ。アンバーもコリンを揶揄うな」
「「は~い」」
 コリンとアンバーが「いい返事」をする。
 (いい返事はしたけど‥コリンはその後、またちょっとアンバーを睨んで、アンバーは相変わらずニヤニヤとした顔をしていた)
 ザッカのありがたい言葉に、この話は有耶無耶になった。(有難うザッカさん!! )
 恥ずかしくって‥あと、なんか後ろめたくって‥シークさんの方が向けないよ!!
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