この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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184.子供じゃないって主張する僕は、ホントにただの子供だった。

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「凄い眼鏡があるから夜も平気だから、夜に行われているであろう取引現場を押さえられる? 何言ってるんだ。そんなこと許すはずないだろ! 」
 あの後、ザッカの元に帰って眼鏡の報告と、今後の方針について話し合っているわけだけど‥
 コリンは、さっきから後悔し通しだ。

 ‥相談なんてするもんじゃないなあ。なんでもかんでも、「ダメだ」「危険だ」しか言わないじゃないか。僕は危険に陥るほどダメな子なんかじゃないぞ。

 って内心で不満たらたらだ。
 ザッカははじめっからあの通り、「ダメだ! 」「危険だ! 」って激怒しまくって、話もまともに聞いてくれない。シークも腕組みをして、怖い顔をしている。きっと、ザッカの意見に賛成なんだろう。

 まったく、この人たちは‥過保護すぎるよね!! 過保護って言うか‥頑固すぎるって感じ?! なんでもかんでも反対してさあ! ‥話位聞いてくれてもいいじゃないか。
 僕は‥

「僕は‥そんなに役に立たない‥? 」
 なんか‥悔し過ぎて涙出て来た。
 話しを聞いてくれなくて悲しい‥ってのもあるけど、それより、自分が認めてもらえないのが悔しい。
 今まで随分頑張ってきたつもりなのに‥認めてもらえない。

「そんな話をしてるんじゃないだろう!? 」
 ザッカはコリンの涙にちょっとびっくりしたような顔をしたけど‥「いやいや、涙なんかに流されないぞ」って呟いて‥怖い顔に戻した。
 そんなザッカの態度に‥
 コリンは更に悔しくなった。
 
 ‥相談なんかするんじゃなかった! 
 もういい‥帰ろう。

 コリンが涙を拭って立ち上がろうとした時、
「ザッカ。コリンに謝ってください」
 今まで黙って話を聞いていたナナフルが、今日初めて口を開いた。
 そのナナフルの声は‥
 すっごい、冷たかった。
 表情なんてもう‥全ての感情が落ちちゃったって位無表情だし、冷たい。
 完璧に怒ってる顔。
 ‥ちょっとやそっとじゃ許さない‥って顔。
 なんなら、ちょっと嫌いになりましたよって感じの‥冷たい表情。
「え‥ナナフル‥? 」
 ザッカがナナフルを振り向く。
 信じられない‥って表情、と、あと‥凄く傷ついた‥って顔。

 大好きなナナフルにそんな顔で見られたんだ。無理もない。僕も怒ってるけど‥ちょっと同情しちゃう‥
 コリンは眉を寄せて‥二人を見比べた。

「最低ですね。初めから無理とか決めつけて、話も聞かないとか‥ホント信じられない。ダメ上司の典型ですね。
 コリンは大事な仲間でしょ? ‥有能な、大事な社員でしょう? 
 父親気取りはいいですけど‥
 いえ‥父親としても最悪ですね。
 全否定とか‥あり得ないですよね!? 」
 ‥ナナフルさん‥ありがとうございます。だけど‥ザッカさん、もう、死にそうな顔してますよ‥。
 ザッカさん、きっとナナフルさんに捨てられたら‥ショック死しますよ‥?
「ナナフル‥ゴメン‥」
 ザッカが、恐る恐る‥って感じでナナフルのご機嫌を伺うように‥謝る。
 そして、
 それが(その態度が)更にナナフルの機嫌を損ねた。
「私に謝ってどうするんですか? そもそも、何に謝ってるんですか? ‥私が怒ってるから取り敢えず謝っとけ‥ってことですか? ますます最低ですね。私のこともなめてるんですか? 」
 目が‥
 虫けらを見る様だ。
 ザッカは‥
 もう、何も言えなくなって、プルプル震えて、ナナフルを見上げてる。アレだ、犬だ。犬の目だ。飼い主に、「捨てないで‥」って訴えてる目だ。

 でも、あいにく僕は犬好きじゃないから、そんな目を見ても「可哀そうに~。大丈夫だよ~ごめんね~。捨てないよ~」って思わない。そもそも、犬とか飼おうって思ったことない。「拾って~」って訴える目をする犬だって「くらっ‥カワイイ!! 」ってなって、拾っちゃったりしない。捨て犬はちゃんと動物愛護団体に預けて、「いい飼い主見つかるといいな」って願う。その一択だ。僕に飼われるなんて、犬が気の毒だ。
 将来、シークさんと小さな家でカワイイ犬を飼って‥って生活? 
 別に憧れてないなあ。
 シークさんが犬が好きって言うんだったら、「犬っぽい使い魔」位作ってあげる。警護が出来て、攻撃能力も高い優秀な奴。で、人に媚びないやつ。人に絶対癒しとか与えないタイプの奴。
 ダメなの。犬にもね、人権‥っていうか‥犬権ってあるよね? 。そんな犬を癒しを求める為だけに飼う‥とかあり得ないでしょう。何様って感じじゃない?! 
 傲慢だよね。
 犬は家族? そういうことはあると思うよ。人間と犬だから‥って愛情や友情が芽生えないとは限らない。だけど、皆が皆そうじゃない。「捨てないで‥」って飼い主を見上げる犬はきっと、飼い主のことを「飼い主」としか思ってないよ? 友達だったら「なんで別れるんだよ! 事情があるなら言えよ! 一方的にお別れとか言われて、納得できるわけないだろ!? 」って怒るだろうし、話し合いするもんだろ?! お互いが納得するまで話し合うべきだろ?! 。(← 話し合い? 犬と? )その結果、殴り合ったり‥なんかがあって「お前がそこまで言うなら仕方が無い。‥これからは俺とお前とは別々の道を歩もう。今まで楽しかったぜ」ってなるんだ。友達ってそういうもんだろ?! (※ コリンの友情観は殴り合いに始まり、終わるときも殴り合いで終わるって感じ。アンバーとの友情も殴り合いにより始まった)
 ‥そうとも限らない‥かも‥う~ん。
 友情にも「惚れた方が負け」じゃないけど、より好きな方が‥負けだ。惚れたら‥弱くなる。その結果、立場が強い弱いはでてくるわな‥。
 問題は、あれだ。
 初めっから、立場を決めたうえで付き合うっていう‥「飼育」は僕は嫌いだって話だ。

 ナナフルさんとザッカさんの場合は、別にザッカさんがナナフルさんに飼われてる‥ってわけじゃない。ザッカさんはナナフルさんの事激しくloveだから、捨てられたら‥死んじゃうって感じで‥ああいう風に成ってるんだ。
 う~ん。初めは対等な関係だったけど、片方(ザッカ)の好きが好きすぎて、依存関係になっちゃって、犬っぽくなった‥ってことか。それは‥飼育とは違うな。
 ‥話が脱線した。

「私が何に怒ってるかわかりますか? 」
 ナナフルがザッカを見る。(表情は相変わらず絶対零度のままだ)
 半泣きのザッカがコリンを振り返って、
「すまなかった! コリン。お前が心配で、‥お前にちょっとでも危険なことをさせたくなかったんだ! 」
 がばっと勢いよく頭を下げた。
 今度は、
 取り敢えず謝ってます、って感じじゃない。‥ホントに反省してるって感じだ。
 多分、‥ちょっとはそういう自覚があったんだろう。
 もしくは‥言われて、‥そう気付いた‥んだろう。
「‥それくらい‥分かってますよ。心配してくれてるんだろうってことは‥分かってます。
 だけど、心配してるだけで、僕の事全然信用してないし‥話も聞いてくれなかったから‥ちょっと‥ムカついてただけです」
「コリン‥」
「信用してください。僕の事。
 僕の力‥もっと見てください。見たうえで、言ってください。
 僕は、お飾り人形なんかじゃない」
 僕の事、心配してるって言葉で、何もさせてくれないザッカさんは、「キレイなだけ」って決めつけてホントの僕を見ようとしなかった奴らと同じだ。
 それは許せない。
 だけど、‥心配してくれてるってことは分かる。
 心配だから、少しでも危ないことさせたくないって気持ちも‥分かる。
 「危ないことする」って分かってるような話を聞きたくない‥って気持ちもわかる。
 聞いてもどうせ「やめろ」っていうのは分かってる。だから、聞くまでもない‥んだろう。
 だけど‥
 コリンが俯いて、眉をひそめていると
「悪かったコリン。それと‥相談しに来てくれてありがとう。考えたら‥コリンがここで「もうこいつらには何話しても無駄。どうせ聞いてくれないし反対するだけ」って思ってしまうのが‥一番怖いことだった。
 これからは俺たちもちゃんと聞くから、これからも‥相談してくれ。
 それで、どうすれば一番安全で確実か、考えよう。
 ホントに、‥すまなかった」
 シークが謝った。
 普段無口な彼には珍しい「長台詞」に、コリンが驚いていると
「それな~。
 シークは流石にコリンの事わかってるなあ。コリンって「もう相談なんてしない」ってへそまげて‥無謀な特攻‥タイプだもんね~。
 ザッカたちが気が付かない様だったら、「あんな奴らに相談しても無駄だ。でも、一人で判断するのは無謀なだけだ。俺ならお前の話ちゃんと聞くよ」って俺が慰めるところだったんだけどね~。流石ナナフル。影の実力者だね」
 くすくす笑ってアンバーが口を出した。
 そして、座ってるコリンの前にたち、ふわり‥と頭に手を置き、
「なんでもかんでも自分でやんなくてもいいのよ。
 コリンこそ、周りをもう少し信頼したら? 周りを頼ったら? 
 過保護で何もやらせないザッカも悪い。だけど、何でも自分でやっちゃって、周りに心配ばっかりかけてるコリンもやっぱり悪い。
 周りの心配も「無理もないかな」ってことを‥コリンはもう少し分かった方がいい。
 コリンは、今まで無茶しすぎて来た。そして、その度に危ない目にもいっぱいあって‥だから、ザッカが心配するのも‥無理がないって思う」
 優しく微笑みながら言った。(流石美形のアンバーだ。そういう仕草が半端なく似合う。フタバだったらその仕草と微笑でノックアウトしていただろうが‥コリンは大丈夫みたいだ。全然、気にしていない)
 う‥
 痛いところを突かれたコリンが黙る。
 アンバーは今度はぽん、と少し強めにコリンの頭をはたくと
「コリンはまず、その無鉄砲なところを直せ。
 それから‥出来ないことを恥ずかしいって思うのも、止めた方がいい。
 コリンには出来ることがいっぱいあるじゃないか。出来ないことがある位どうだっていうんだ。
 普通だよ。完璧に何でも出来る人間なんて、いない。
 出来ないことがあるのは‥別に悪いことじゃない。「自分には向いてないことだ」って分かってるなら、今はそれでいい。
 苦手なことしようって頑張る姿勢‥苦手なことを克服しようと策を練る‥って姿勢はいいことだけど、今は敵が悪すぎる。
 ここは、‥今は‥得意な奴に任せた方がいい」
 ちょっと、強い口調で言った。
「‥‥‥」

 ザッカさんが僕の事信じてないだけでなく、
 僕も周りの人たちを信じてない?
 ‥そうかもしれない。
 いつも、僕なら出来る。僕は出来る‥。
 って歯を食いしばってやってきた。
 皆でやろう。なんて‥思えば(口だけでなく、心から)思ったこと‥なかったかもしれない。
 ただ、馬鹿にされたくない一心だけで今まで頑張ってきた。
 ‥本当に誰かを信用して、その誰かと一緒に‥って考えたこと‥なかった。

 情けない。
 ‥ホントに、情けない。
 独りよがりで、暴走して、迷惑かけて、助けられて、心配されて、「心配ばっかりして信用してくれない」って逆ギレして‥。
 ホント、僕はなんて‥

 子供なんだろう。
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