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170.コリンとフタバちゃん。
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あの森は‥そういえば魔素線上の森とよく似ていた。
そう思って地図を見ると‥魔素線(予想)上にある様な気がする。
あの時‥なぜ気付かなかったんだろうか‥。
自分が常にもっと「アンテナ」を張っていたら‥気付いたのだろうか?
否、‥自分はそんなに頭が回るタイプじゃない。
「学生時代のことなのですが‥コリンは、土中の含有濃度は調べたんですか? 」
フタバがメモ帳を取り出してコリンに尋ねた。
顔はもう、真剣そのもの‥っていうかちょっと鼻の穴膨らんでるか? って感じ。つまり‥前のめり‥って奴だな。普段なら「そんなはしたない‥」って絶対しないような顔のフタバにロナウは苦笑いだ。
フタバもコリンと同様「研究者気質」なんだ。(マットサイエンティスト気味‥ってところも同じだ)
「そこに考えが‥当時は及ばなかった。さっきも言ったように、当時は魔獣の方にしか興味が無かったから‥」
コリンは本当に残念そうに項垂れる。
「アンバーのいた‥アンバーが勤務してた森を調べて分かったんだけど、土中の魔素濃度が普通よりだいぶ濃かった。あの森の周りの魔素濃度は通常と変わらない感じだったから‥多分、あれは大気中に漂っていて雨などで土中に浸透したわけでは無いと思う。あれは、太古から土中に眠っていた魔素なんじゃないかと思う。‥勿論それを確証する術はないんだけど」
コリンは残念そうだったけど、
「そこら辺には私は興味は無いですわ」
フタバはちっとも残念そうじゃなかった。寧ろ「それはいいですから」って風に話を遮り
「それで、その土中の魔素は大気としてその辺りに放出されているわけでもなさそうだってコリンは思ったんですよね? それなら肉食の動物だって草食の動物だって等しくその魔素を呼吸によって取り入れますものね。
コリンは、それは土中に根を張る植物によって吸い上げられ‥植物体内に運ばれ蓄積され、それを食べた草食動物の体内に入ったと予想した。
あってますか? 」
コリンに今までの話を纏めて‥自分の理解が正しいか、確認を取った。
コリンが頷く。
「植物が吸い上げ、気体として大気中に廃棄されずに‥成分として植物の中に固定されているようだった。だけど、そのことによって、葉の色が変わる等植物に見掛け上の変化はなかった。(勿論成分分析する等のスキルはコリンにはない)
あくまで見掛け上は‥
植物にとってあの「高濃度の魔素」は毒性はなかったって感じだったよ」
毒性は無かったが、では栄養剤的効果はあったのか?
残念ながら当時のコリンにはその考えは浮かばなかった。
フタバが「成程‥」と小さく‥唸る。
「成分分析とか‥僕には出来ないけど、出来る人に頼むとか‥実際はもう少し調べようはあったかもしれないけど‥‥どちらかというとあの頃の僕は植物より魔獣の方に興味があったから‥調べなかった‥」
コリンはもう一度そう残念そうに呟く。
「‥そうですか」
フタバは自分の手帳にサラサラとペンを走らせ、手帳を閉じた。
「‥今は昔のことを後悔している場合じゃありませんわ。
今は、今の話をしましょう。
昔そういう研究をしていたから、今回このことに気付けた。それでいいではないですか。
今重要なことは‥
そういう場所で魔薬の生成が行われてた‥ってことですね。
連中はその場所が「特別な場所」だって分かってた‥ってことでしょうか? 」
手帳から視線をあげて真剣な表情のままコリンを見上げる。
「それだよ。そこは‥僕も気になってた。
でも、この地図を見る限り‥選んでるって思うのが普通だろうね。
初めはたまたま「あれ、ここって成長早くない? 」って気付いて、僕と同じ様に「そういうと‥ここの魔獣変じじゃない? 」ってなって‥「成長速度が速い特別な森がある様だ」っていう認識にたどり着いた‥ってかんじかな? 」
もしくは、初めから「この森は特別な森だ」って知ってた、か。
「成長速度の違いに気付くってことは、通常の成長速度を知ってるってことだよね。森を魔薬の原料の栽培場所に選んだ者たちは、その薬草を栽培したことがあるってことだよね」
ロナウの言葉に、コリンはアンバーを振り向いた。
「村でも育てられてたな。誰が育ててたとまでは知らないけど」
アンバーが答える。
「‥成分。あの薬草の成分は通常の場所で育てた場合と‥違うんだろうか? 単に成長が速いだけなんだろうか? 」
ただ単に、より広い場所を求めて森に栽培場所を移しただけ?
もしかしたら
特別な場所が分かったから、場所を移動させた?
特別な森は、ただ単に植物の成長速度が速いだけ?
それとも、
「特別な場所」で育った植物は通常の場所で育つ植物とは違った成分を持っている?
そこまでは‥全然頭が回ってなかった。
目で見ても分からなかったけど‥分析すればわかるかも?
アンバーなら‥分析が出来るかも‥?
「場所の選定をした経緯‥。
特別な場所を奴らはどうやって知り得たか。
奴らがもし、知っていてあれらの場所を選んだのだとしたら‥
‥奴らには相当な土地勘があるのかもしれない」
「いや‥それ以前に‥本当に奴らはあの場所が「特別な場所」だって気付いているのか」
「成分‥」
独り言のように呟いて、あとは黙ってしまったザッカと、コリン、フタバ。
「どうやら‥調べることが増えたみたいだな」
ふう‥とため息をつくアンバー。
心配そうに四人を見つめるナナフル、シーク。
そんなメンバーをロナウはどこか居心地悪そうに見つめるのだった。
そう思って地図を見ると‥魔素線(予想)上にある様な気がする。
あの時‥なぜ気付かなかったんだろうか‥。
自分が常にもっと「アンテナ」を張っていたら‥気付いたのだろうか?
否、‥自分はそんなに頭が回るタイプじゃない。
「学生時代のことなのですが‥コリンは、土中の含有濃度は調べたんですか? 」
フタバがメモ帳を取り出してコリンに尋ねた。
顔はもう、真剣そのもの‥っていうかちょっと鼻の穴膨らんでるか? って感じ。つまり‥前のめり‥って奴だな。普段なら「そんなはしたない‥」って絶対しないような顔のフタバにロナウは苦笑いだ。
フタバもコリンと同様「研究者気質」なんだ。(マットサイエンティスト気味‥ってところも同じだ)
「そこに考えが‥当時は及ばなかった。さっきも言ったように、当時は魔獣の方にしか興味が無かったから‥」
コリンは本当に残念そうに項垂れる。
「アンバーのいた‥アンバーが勤務してた森を調べて分かったんだけど、土中の魔素濃度が普通よりだいぶ濃かった。あの森の周りの魔素濃度は通常と変わらない感じだったから‥多分、あれは大気中に漂っていて雨などで土中に浸透したわけでは無いと思う。あれは、太古から土中に眠っていた魔素なんじゃないかと思う。‥勿論それを確証する術はないんだけど」
コリンは残念そうだったけど、
「そこら辺には私は興味は無いですわ」
フタバはちっとも残念そうじゃなかった。寧ろ「それはいいですから」って風に話を遮り
「それで、その土中の魔素は大気としてその辺りに放出されているわけでもなさそうだってコリンは思ったんですよね? それなら肉食の動物だって草食の動物だって等しくその魔素を呼吸によって取り入れますものね。
コリンは、それは土中に根を張る植物によって吸い上げられ‥植物体内に運ばれ蓄積され、それを食べた草食動物の体内に入ったと予想した。
あってますか? 」
コリンに今までの話を纏めて‥自分の理解が正しいか、確認を取った。
コリンが頷く。
「植物が吸い上げ、気体として大気中に廃棄されずに‥成分として植物の中に固定されているようだった。だけど、そのことによって、葉の色が変わる等植物に見掛け上の変化はなかった。(勿論成分分析する等のスキルはコリンにはない)
あくまで見掛け上は‥
植物にとってあの「高濃度の魔素」は毒性はなかったって感じだったよ」
毒性は無かったが、では栄養剤的効果はあったのか?
残念ながら当時のコリンにはその考えは浮かばなかった。
フタバが「成程‥」と小さく‥唸る。
「成分分析とか‥僕には出来ないけど、出来る人に頼むとか‥実際はもう少し調べようはあったかもしれないけど‥‥どちらかというとあの頃の僕は植物より魔獣の方に興味があったから‥調べなかった‥」
コリンはもう一度そう残念そうに呟く。
「‥そうですか」
フタバは自分の手帳にサラサラとペンを走らせ、手帳を閉じた。
「‥今は昔のことを後悔している場合じゃありませんわ。
今は、今の話をしましょう。
昔そういう研究をしていたから、今回このことに気付けた。それでいいではないですか。
今重要なことは‥
そういう場所で魔薬の生成が行われてた‥ってことですね。
連中はその場所が「特別な場所」だって分かってた‥ってことでしょうか? 」
手帳から視線をあげて真剣な表情のままコリンを見上げる。
「それだよ。そこは‥僕も気になってた。
でも、この地図を見る限り‥選んでるって思うのが普通だろうね。
初めはたまたま「あれ、ここって成長早くない? 」って気付いて、僕と同じ様に「そういうと‥ここの魔獣変じじゃない? 」ってなって‥「成長速度が速い特別な森がある様だ」っていう認識にたどり着いた‥ってかんじかな? 」
もしくは、初めから「この森は特別な森だ」って知ってた、か。
「成長速度の違いに気付くってことは、通常の成長速度を知ってるってことだよね。森を魔薬の原料の栽培場所に選んだ者たちは、その薬草を栽培したことがあるってことだよね」
ロナウの言葉に、コリンはアンバーを振り向いた。
「村でも育てられてたな。誰が育ててたとまでは知らないけど」
アンバーが答える。
「‥成分。あの薬草の成分は通常の場所で育てた場合と‥違うんだろうか? 単に成長が速いだけなんだろうか? 」
ただ単に、より広い場所を求めて森に栽培場所を移しただけ?
もしかしたら
特別な場所が分かったから、場所を移動させた?
特別な森は、ただ単に植物の成長速度が速いだけ?
それとも、
「特別な場所」で育った植物は通常の場所で育つ植物とは違った成分を持っている?
そこまでは‥全然頭が回ってなかった。
目で見ても分からなかったけど‥分析すればわかるかも?
アンバーなら‥分析が出来るかも‥?
「場所の選定をした経緯‥。
特別な場所を奴らはどうやって知り得たか。
奴らがもし、知っていてあれらの場所を選んだのだとしたら‥
‥奴らには相当な土地勘があるのかもしれない」
「いや‥それ以前に‥本当に奴らはあの場所が「特別な場所」だって気付いているのか」
「成分‥」
独り言のように呟いて、あとは黙ってしまったザッカと、コリン、フタバ。
「どうやら‥調べることが増えたみたいだな」
ふう‥とため息をつくアンバー。
心配そうに四人を見つめるナナフル、シーク。
そんなメンバーをロナウはどこか居心地悪そうに見つめるのだった。
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