この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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164.君は昔から凄く僕の役に立ってたって言われてこんなにうれしくなかったことは無い。

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「僕、何でもやる。僕が出来ることは少ないだろうけど、‥何でもやる」
 ロナウが真剣な顔でアンバーを見つめた。
 アンバーが少し驚いた顔をした後、ふ、と微笑む。
「‥ありがとう」
 口の端を上げただけの‥微かな微笑だったけど、ロナウはぽああっと明るい顔になった。

 アンバーに笑ってもらえた。

 それだけで、それこそ「空すらも飛べるような」気持ちになった。

「ロナウは‥役に立つ。
 刃物と何とかは使いよう‥って言う。
 ‥別にロナウのことを「何とか」だって言ってるんじゃない。
 なんでも、「betterもしくはbestな」使いようがあるって話だ。
 昔っから、
 ロナウは僕の役に立っていた。
 だから、‥自分を卑下することは無い」
 コリンがにこりと微笑んで‥ロナウを励ました。
「コリン‥っ!」
 ロナウが感激した顔でコリンを見上げる。
 フタバは‥首を傾げている。
 さっきの言い方‥褒めたのか? 褒めたようには聞こえなかったんだけど‥
 って「ひっかかって」いる。
 それに‥
 コリンがロナウを褒めるか? 
 とも。
「ロナウがコリンの役に立ってた? どう役に立ってましたの? 」
 フタバが首を傾げてコリンに聞く。
「‥あれは、ロナウにしかできないことだったから‥」
 ふふ、ってコリンが苦笑いする。
「? 」
 再び首を傾げるフタバ。

「教会では、魔法で学生同士が喧嘩するのは禁止されてたじゃない? だから、皆僕に嫌がらせする際、子供がする様な悪戯を仕掛けるしかなかった。
 私物を隠したり(← コリンは知らなかったのだが、半分はコリンのファン)
 急に突飛ばされたり、無理やり押し倒したりもされた。僕は力が強いから大丈夫だったけど、力が弱かったらきっと大怪我させられていただろう。(← ほぼ、コリンの熱狂的で危険なファン。コリンは強姦目的で襲われて押し倒されたとは思っていない)
 負けはしないが、そんなのをまともに相手するのも馬鹿馬鹿しい。体力と時間の無駄だ。‥それに、やっぱり気が悪い。なら、魔法でちゃちゃっと‥片づけたいど、魔法での喧嘩は禁止されている。
 ならどうするか。
 ‥そいつの魔力をちょっと‥洒落ならない程度に抜き取ってやったらどうだろうか?
 そう思ってね。
 いい考えでしょ? 
 魔力切れって半端なく苦しいよね」
 ころころと笑うコリン。
 魔力切れの恐ろしさを知っているためにゾッとするロナウ、フタバ、アンバー。
 ナナフルやザッカ、シークはピンとこないって顔をしている。
 だけど
 ‥酷いことなんだろうな、コリンが楽しそうな顔してるから‥
 とは思っている。

 ホントに、コリンは敵に回したくない。

「‥でも、貴方、そんな能力無いじゃない。魔力吸引。そんな能力持ってるのは‥」
 フタバが訝し気な視線をコリンに向ける。
 ロナウに頼んで? あの頃はロナウはコリンにメロメロだった。頼めば嫌とは言わないだろう。‥だけど、コリンはロナウを相手してなかった。
 でもそれはフェイクで?? 二人は影で結託していたのだろうか??
 ロナウをチラリと見たらロナウが首を振った。
 コリンがにやり、と笑う。
「そうだよ。ロナウだけ。
 悪食の能力を持ってるロナウにしかそんなこと出来ない。
 そして、ロナウだけじゃ、人物を特定して、周りにバレずにそんなこと出来ない。
 人物を特定して、その人間だけを結界内に囲んで、その人間の魔力を吸引する。
 その為に必要なのは、
 フタバちゃんだ」
 ロナウだけでなく、自分も??
 フタバはますます混乱したような顔になる。
 コリンはにやり、ともう‥びっくりするほど冷たい‥綺麗な顔で笑った。

「僕は、フタバちゃんとロナウの力をずっと使ってたんだ」

「なんでそんなこと!? 」
 あんまり驚き過ぎて、その言葉が出たのは随分経ってからだった。
 ロナウは‥
 まだ固まっている。
 無理もない。
 ザッカやナナフル、シークは眉をしかめ、アンバーだけは「あれ? 」って顔をしている。
 コリンはけろりとした顔で、
「なんでそんなことしたの? ってききたいの? そうするのがbestだって思ったから。
 なんでそんなことできるの? って聞きたいんだったら‥、僕が共同体のリーダーだから。
 ‥共同体のリーダーはね。
 共同体のメンバーの力を無許可に使うことが出来るんだ。
 共同体はメンバーたちの力を合わせた、「合わせ技」で戦うから。
 それは、知ってるでしょ? 」
 それは‥
 知ってる。
 リーダーはチーム全体の命を預かる。だから、リーダーは常に冷静な判断力と決断力が要求される。(コリンは冷静ではないが、常に迷わず相手を確実に倒す‥行動力を持っている。それは、判断力やら「考察に基づいた‥」というより、野生の勘だ)そして、メンバーはその判断総てをリーダーに一任する。あれこれ自我を出せば‥チームは乱れる。

 無我の境地で、リーダーに身命を任せる。

 その時の感覚は‥まるで洗脳でもされている様だ‥と思ったことがあるが‥
 さっきのコリンの口調だとまさか‥ホントに‥意識を乗っ取られてる‥ってことか? 
 だけど、そうだとしても‥
 ‥リーダーは私欲の為にその力を使ってはいけない。それは当たり前のことだ。
 だのに?? 
 ああ、それは‥コリンだから、倫理観だとかそういうの今更言っても無駄か‥
 だとしても‥
「だけど、共同体を組んだのは卒業する間際じゃない。なのに? 」
 なぜ?
 フタバが首を傾げた。
「リーダーの仕組みが分かったから。だから、僕は仮の共同体を組んで君たちの力を借りてたんだ」
「‥! 」
「‥?! 」
 コリンが無茶苦茶なのは知ってる。
 もう何も驚かないって思ってたけど‥流石にそれは‥
「学生の可愛らしい知的好奇心だよ。分からないことを知りたい。知ったら‥使いたくなる。しかも、使われた本人は使われても仕方ないことを僕にしている。
 ‥何の問題もない。
 フタバちゃんとロナウには悪いことしてるわけだけど‥、「使った分だけ経験値が増え、魔法は上達する」。だから、フタバちゃんもロナウも実践経験はなかったはずなのに、あんなに魔法の腕が上達していた。
 そして‥
 なぜ二人に魔法の無許可利用がバレなかったか‥。魔法を使ったのはフタバちゃんとロナウだったけど、魔力は僕の魔力を使っていたから。
 二人は魔力を使うこともなく、経験値だけをゲットしていたという‥二人にとって損になることはなにもないよね? 」
 だからいいじゃん? 
 っていってるの??
 そっか~。ありがとね~
 って私たちが言うとでも‥思ってるのか??
 流石にそれは‥
「‥え‥? 」
 ドン引きだ。
 こいつは‥ヤバすぎる。
 そこらの悪人なんて足元に及ばない位の‥悪人だ。
 
 ドン引きして俯いている二人に、コリンが話を続ける。
 まるで「聞いてなくても問題ないけど、一応言っておくね」って感じで。
「共同体のリーダーってね。「相性のいい魔術士同士で結成された共同体の中で、素質、性格ともに一番リーダーに向いているであろうと教会が認めた人」だって教えられてきたでしょ? あれはね、‥実は違うんだ」
「‥‥」
 だよね。違うと思うわ。
 コリンは性格が‥ヤバすぎるよね。知識と技術は歴代最高でも、人間的には歴代最悪のレベルだよね。‥教会はこのコリンのヤバさには気付かなかったんだよね。でも、仕方が無いよ。‥私たちも今まで「ここまで」とは思ってなかったもの‥。
「能力、魔力量、人柄を考慮して、共同体のリーダーをまず魔術士協会が選定されるんだ。そして、彼らが所属している教会、学校等の職員がそれを受け2年間彼ら‥魔術士協会が選んだ候補生‥を観察して、リーダーにふさわしいかの審査をするんだ。
 そして、最終的に職員が承認すれば彼はリーダーと認めらえ、リーダーとしての特別な魔法‥「伝統的な魔法」を伝授するんだ。
 その「特別授業」を入学して間なしにいじめられて旧校舎に逃げ込んだ僕は‥偶然目撃した。
 なんてことない、普通に魔法の個別授業だ。だけど、どんな魔法かなんてわからなかった。今まで見て来たどんな本にも載っていないような魔法だったから。そして、呪文は古代文字だったから‥呪文を聞いても分からなかった。見たこともない魔法でも、呪文を聞けばだいたい検討位はつくからね。
 なんの授業かは分からない。だけど、厳かな雰囲気と、緊迫した雰囲気に‥なんだか僕も緊張して‥胸が締め付けられる様な気持ちになった。
 あれは‥感動に近いような感情だった。
 数日後に、あの時のあの授業を受けていた青年が新たな共同体のリーダーだって皆の前で発表されて、あの授業がリーダー研修なるものだと知った。
 さて、あそこでは‥どんな魔法が伝授されていたんだろうか。
 ‥それからだ。僕が古代文字を独学で学び始めたのは」
 ‥すべての始まりはそんな「ちょっとした偶然から」だったわけか。

 しかし‥感動したんだろ? なら
「自分もそんな授業が受けられるような‥人に認められる人間になろう(キラキラ)」← 善良で真面目な人の発想。
 って思わないのがコリンってわけだ。
「どんな魔法なんだろ。‥使えないかな(ヒヒヒヒ)」← 邪悪で不健全な人の発想。
 とか‥思っちゃうんだ‥。

 ロナウとフタバは息をのんでコリンの話を聞いていた。
「そして、研究の結果、あれはやっぱり古代の魔法で、意味的には「我ら一丸となって世界の平安の為に‥」みたいな感じの‥闇魔法だった。
 そりゃそうだよね。
 精神系の魔法は、現在でも圧倒的に闇魔法が多い
 光魔法にもないことは無い。だけど、「皆が穏やかで幸福な気持ちになる」程度の軽い奴だ。聖女の祈りなんかがそれにあたる」
 闇魔法‥。
 ロナウがゴクンと唾をのみこんだ。
「勿論、善良な先生方はそれが闇の魔法であることに気付いていない。ただ、昔からの慣習に基づいて「伝統的な魔法」を継承しているに過ぎない。
 言うならば「古の神の言葉」を伝えているんだ。そして、それは神聖で、「晴れがましいこと」だから、継承を受ける側も「これがどういう呪文なのか」とは考えない。ただ、感動して‥厳かに‥継承される。
 殆ど全ての人間は気にしない。
 だけど、‥気にする人間がいないわけでは無い」

 それが、コリンであり‥
 きっと「悪の組織」に関わる人間だった‥
 というわけ。

「僕以外にも、呪文を解明し、協会の誓約に乗っ取らずに‥無法に仮のリーダーになる方法を見つけ出した人間がいた。僕は‥魔薬の話を聞いた時、実はそれを一番に思いついた。
 ‥若気の至りとはいえ、僕は犯罪を犯してきた。
 だから、僕は‥僕が一番この犯罪を許してはいけないんだ」
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