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162.ガーネットは、案外小魚じゃなかった。
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「つまり、悪の組織は思った以上に役割が細分化されていて、下っ端を捕まえたところで知り得る情報は驚くほど少ない‥と。
で、今回知り得た情報は「ガーネット」はこの辺り担当の魔薬の在庫管理係で、売り子は他にいる。売り子の名前は、貴族担当の名前が「シアン」で商人担当が「マゼンタ」でその他が「パープル」。
‥私たちがこの先意識していかなければいけないのはシアンという人間ね」
‥変わっていなかったら‥だけど。
今回私たちと関わったことが知れれば消されてしまうかもしれない。‥奴らはそれくらい簡単にするだろう‥。
‥だけど、それを「止めなきゃ」って思うほどお人よしじゃないし正義漢でもない。‥そもそもそんな情がわく程黄色チャラいののことを知っているわけでもない。
ただ‥普通の人間だから気持ちのいいものではない。
その程度。
フタバがふう、と小さくため息をついた。
自分は、そう「いい人間」ではない。
もう一度、小さく‥短くため息をつくと、コリンが少し首を傾げて「どうした? 」とフタバを気遣った。
コリンも‥そういい人間ではなかったね。
フタバは苦笑いした。
自分たち魔術士は、‥でもそうではないと魔術士でいられない。
魔術によって傷つく人がいる。人を傷つけたくない‥。
そんな気持ちを持っていては、魔術士なんてやれないし‥そもそも、魔術士はそんなこと考える人間なんていない。生まれつき「自分は人(魔法を使えない人間)と違う」という驕りと「人と違う自分には人と違うことをする必要がある」責任感をもっている。誰でも、だ。
その後、
悪い人間に育てられれば、奢りだけが育ち。清らかな人間に育てられれば、責任感だけが育つ(このタイプの人間は自分を犠牲にしてでも責任感で魔力を「人の為に」使おう‥というタイプが多い。聖職者になるのがこのタイプ)
そして、「正しい人間」に育てられれば、両方がまんべんなく育ち‥魔術と共存して生きていく人間になる。職業としての魔術士や、コリンの様な誓約士なんかがこのタイプ。(フタバは職業としての魔術士。建築現場で岩を粉砕する際に土砂が周りに飛び散らないように結界を張る際などに呼ばれる等一日契約の仕事が殆ど)
「コリンが予想している監視係なるものがホントに居たら‥ガーネットは消され、もしかしたら他の売り子たちも替えられたり‥最悪消されたりするかもしれないのよね? 」
フタバはさっき自分の中に浮かんだ予想を口にした。
他の者とちょっとした罪悪感を分け合いたかったわけでは無い。
ただの、確認だ。
だけど、それをわざわざ聞かされることは、皆にとっても気分のいいことではないだろう。
一瞬だけでも、死んでいく者をこころに留める‥。
それっ位の「気遣い」位してやってもいいだろう。
‥それが、自分に出来る精一杯の配慮だ。
そして、そういう行為が無いといけないと思う。
自分たち以外どうでもいい。‥それじゃ、奴らと同じだ。
「それは‥大丈夫だと思う。
そうならないように、目くらましと幻覚の魔法をかけておいた。
あそこまでの高度な魔法は奴らには見破れないと思う」
目くらましと幻覚の魔法?
姿を消す魔法じゃなくて? コリンはその手の魔法も得意だったと思うけど。
第三者にはコリンと黄色チャラいのがいないように見えればさえいいのではないのか?
「どんな目くらましと幻覚の魔法をかけてたの? ‥言い換えた方が分かりやすいわね。
周りには貴方とガーネットはどういう状態だったの? 」
フタバが首を傾げてコリンに尋ねた。
コリンがふふっと微笑む。‥質の悪い笑いだ。
「ガーネットが僕を口説いて僕も満更じゃないよ~って感じに周りからは見えるようにしておいた。僕たちの話している話の内容は周りには聞こえない。周りは黄色チャラいのが僕を口説いてて、僕がそれに「え~」って困ったような、でも満更でもないような顔で応じてる‥そういう風にしか見えなかったと思う。
‥そんな様子を幻覚とはいえシークさんに見られたくなかったから、シークさんに結界内に入ってもらったんだ」
それがあの「僕には護衛がついてる」って言ってシークをガーネットに見せたあのタイミングだ。
フタバが「は? 」って顔でコリンを見る。
なんだそのアホみたいな魔法‥。
それ‥必要か? まあ‥必要な時もあるかもしれないけど‥あの時それがbestな方法だったか?
「そんな目くらましと幻覚の魔法‥一体なんの為に覚えたの? 」
フタバが呆れたような顔でコリンを見る(全くヤレヤレ‥って感じの優しさが含まれた‥系の「呆れた」ではなく、完全に馬鹿にしている感じだ)
「魔法ならなんでも知りたいっていう‥知的好奇心から」
コリンがにこっと笑う。
「‥相変わらず変人ね‥」
「そんな話今はどうでもいいじゃない。フタバちゃんってば、緊張感が無さすぎるよ」
はあ、とコリンがわざとため息をついてフタバを見る。
‥この年中緊張感がない奴にそれを言われる日が来るとは‥。
フタバはそっと目を伏せる。
「‥‥‥」
‥いや、止めよう。気にした者負けだ。悔しがるとか‥時間の無駄以外何物でもない‥。
「シアンって男にはどうやったら会えるかしら‥」
さっさと話を本題に戻すことに決めたフタバが聞くと、コリンが満足そうに微笑んで(コイツ!! )
「あっちから接触してくれるようにガーネットに頼んでおいたよ」
得意げに胸を反らしながら言った。
「どうやって? 」
ロナウが口を挟む。
「え? どうって‥僕の色仕掛け? 」
「‥へえ? ホントは? 」
コリンが丁寧に微笑んで彼的には「色気がある」顔をして言ったのだが、皆にあっさりスルーされた。
コリンの色気がある顔なんて、コリンの怒り顔同様‥誰にも「伝わらない」。
黙ってたら氷の人形の様な美貌のコリンは「意識しない」通常の無表情の方がずっと「怖い」し、「色気がある」ってことを、自覚していないんだ。
皆そう思っててても、「絶対伝えない」って決めてるんだ。
「‥シークさんの脅し‥」
ぷう、と顔を膨らましてコリンが言った。
カワイイ‥。ホントにコリンはここに来て、表情が豊かになった。
フタバは思ったが、実は違う。
コリンはもともとからこういう性格だったけど、教会で皆にあんな態度を取られたから、すっかり拗ねてしまい‥教会の皆にあんな態度しか見せなかっただけなのだ。
だけど、そんなことは学生時代だけの付き合いのフタバとロナウには分からない。
「ふぅん‥。まあ、どっちでもいいや。シアンと会うんだったら‥うまくやらないとね」
疑いを持たれて会う前に消されてはかなわない。
どういう付き合い方をするか決める前に、その男とまず会えないといけない。
会って正確にその男の人となりを判断しないといけない。
‥とはいっても、
「でも、まあ‥シアンという男はガーネット以上に重要度はない。‥捨て駒だな」
ぼそり、とザッカが呟いた。
「そうだね」
ナナフルが頷くと、周りの全員が同意した。
「ガーネットは在庫を管理しているから、魔薬を卸している人間とつながりがある確率がある」
フタバが机に大きな紙を広げ
「その前に整理してみようか‥」
と相関図を書き始めた。
→ 魔薬の生成の管理
悪の親玉 → 悪の幹部 → 魔薬の在庫管理
→ 魔薬の顧客管理
「悪の幹部の仕事は‥私が思いつくのは、こんな感じだわ」
それを覗き込みながらロナウが頷いて
「あとは生成に関して、材料の在庫、労働者の数等の情報管理も必要だね」
付け足すと、
「そこまで上が管理してるかどうかは分からないな。ただ「必要な量を必要な時期までに集めろ」って命令されただけだな」
アンバーが首を傾げて言う。
「商品にもならないような粗悪な魔薬で労働力を操って魔薬を生成して、幹部に収めるって感じか‥。で、終わったら「魔獣にやられた」って周りには思わせるように‥労働力を始末し、魔力の気配が消えるまで生成場所を立ち入り禁止にする‥ってかんじかな」
コリンがあの場所で思ったことを言い、確認を求めてアンバーの方をチラリと見るが‥アンバーとてそんなことまで知らない。アンバーは悪の幹部ではないどころか‥会ったことすらない。
「悪の手下時代」のアンバーは単なる魔薬の為の薬草の育成場所と魔薬の生成場所の現場監督兼ボディーガードにしかすぎなかったから。
「‥そんなもんだろうな」
としか言えない。
「それで? フタバちゃん」
コリンがフタバが相関図を書いた理由を聞く。
フタバは「私が予想するのはね」と言いながら何個かの仕事を相関図に書き込む。
「魔薬の生成の管理の下には、魔薬を生成する手下。アンバー様は以前この仕事をされておられた。生成現場の現場監督ですわね。そして、魔薬の在庫管理の下には、魔薬の量をエリアごとに管理している手下。その一人がガーネット。アンバー様と違い、ガーネットはエリアマネージャーって感じですわね」
ガーネットよりアンバーの方が上、って言いたいんだろうけど‥別に悪の組織での立場が上でも‥どうでもいい。
アンバーとコリンは苦笑した。
フタバは話を続ける。
「ガーネットはだけど、魔薬の顧客管理の下についてる‥エリアごとに顧客を管理している手下から直接魔薬の発注を受け、魔薬を渡している。
それはつまり‥
ガーネットは、私たちが思う以上に重要なポジションだ‥ってことじゃない? 」
「! 」
フタバがコリンを見、コリンがはっとした顔をする。
‥あの黄色チャラいのが‥重要なポジション‥。
黄色チャラいのが凄いっていうより、組織の統制がとれてないからそこら辺の管理が適当になってる‥って感じもしないでもないが‥。
手下に多くのことを知らせたくないって思うなら、間に一人人を置く。顧客の数だけガーネットに伝え、ガーネットから魔薬を受け取り、エリアごとの担当者に渡す人間を‥だ。
以前はいたのかそれはよくわからないが、現在はいない。そして、ガーネットが直接エリアごとの担当者と会って魔薬を渡している。
そして、ガーネットはエリアマネージャーとして悪の幹部にそのエリアの在庫数を報告している。
もしかしたら、悪の幹部の顔を知っているかもしれない。間にエリアごとの在庫をまとめて管理し、悪の幹部に報告するだけの人を置いているかもしれない。
ガーネットは直接的には知らなくても、ガーネットを通じてその人間に接触さえ出来れば、悪の幹部に繋がれる‥。
「ガーネットを何とか見張る手立てがないものかね~」
仲間にするんじゃなくて、
情報源として‥何とかして首に鈴をつけられない物か‥って思うザッカ組だった。
で、今回知り得た情報は「ガーネット」はこの辺り担当の魔薬の在庫管理係で、売り子は他にいる。売り子の名前は、貴族担当の名前が「シアン」で商人担当が「マゼンタ」でその他が「パープル」。
‥私たちがこの先意識していかなければいけないのはシアンという人間ね」
‥変わっていなかったら‥だけど。
今回私たちと関わったことが知れれば消されてしまうかもしれない。‥奴らはそれくらい簡単にするだろう‥。
‥だけど、それを「止めなきゃ」って思うほどお人よしじゃないし正義漢でもない。‥そもそもそんな情がわく程黄色チャラいののことを知っているわけでもない。
ただ‥普通の人間だから気持ちのいいものではない。
その程度。
フタバがふう、と小さくため息をついた。
自分は、そう「いい人間」ではない。
もう一度、小さく‥短くため息をつくと、コリンが少し首を傾げて「どうした? 」とフタバを気遣った。
コリンも‥そういい人間ではなかったね。
フタバは苦笑いした。
自分たち魔術士は、‥でもそうではないと魔術士でいられない。
魔術によって傷つく人がいる。人を傷つけたくない‥。
そんな気持ちを持っていては、魔術士なんてやれないし‥そもそも、魔術士はそんなこと考える人間なんていない。生まれつき「自分は人(魔法を使えない人間)と違う」という驕りと「人と違う自分には人と違うことをする必要がある」責任感をもっている。誰でも、だ。
その後、
悪い人間に育てられれば、奢りだけが育ち。清らかな人間に育てられれば、責任感だけが育つ(このタイプの人間は自分を犠牲にしてでも責任感で魔力を「人の為に」使おう‥というタイプが多い。聖職者になるのがこのタイプ)
そして、「正しい人間」に育てられれば、両方がまんべんなく育ち‥魔術と共存して生きていく人間になる。職業としての魔術士や、コリンの様な誓約士なんかがこのタイプ。(フタバは職業としての魔術士。建築現場で岩を粉砕する際に土砂が周りに飛び散らないように結界を張る際などに呼ばれる等一日契約の仕事が殆ど)
「コリンが予想している監視係なるものがホントに居たら‥ガーネットは消され、もしかしたら他の売り子たちも替えられたり‥最悪消されたりするかもしれないのよね? 」
フタバはさっき自分の中に浮かんだ予想を口にした。
他の者とちょっとした罪悪感を分け合いたかったわけでは無い。
ただの、確認だ。
だけど、それをわざわざ聞かされることは、皆にとっても気分のいいことではないだろう。
一瞬だけでも、死んでいく者をこころに留める‥。
それっ位の「気遣い」位してやってもいいだろう。
‥それが、自分に出来る精一杯の配慮だ。
そして、そういう行為が無いといけないと思う。
自分たち以外どうでもいい。‥それじゃ、奴らと同じだ。
「それは‥大丈夫だと思う。
そうならないように、目くらましと幻覚の魔法をかけておいた。
あそこまでの高度な魔法は奴らには見破れないと思う」
目くらましと幻覚の魔法?
姿を消す魔法じゃなくて? コリンはその手の魔法も得意だったと思うけど。
第三者にはコリンと黄色チャラいのがいないように見えればさえいいのではないのか?
「どんな目くらましと幻覚の魔法をかけてたの? ‥言い換えた方が分かりやすいわね。
周りには貴方とガーネットはどういう状態だったの? 」
フタバが首を傾げてコリンに尋ねた。
コリンがふふっと微笑む。‥質の悪い笑いだ。
「ガーネットが僕を口説いて僕も満更じゃないよ~って感じに周りからは見えるようにしておいた。僕たちの話している話の内容は周りには聞こえない。周りは黄色チャラいのが僕を口説いてて、僕がそれに「え~」って困ったような、でも満更でもないような顔で応じてる‥そういう風にしか見えなかったと思う。
‥そんな様子を幻覚とはいえシークさんに見られたくなかったから、シークさんに結界内に入ってもらったんだ」
それがあの「僕には護衛がついてる」って言ってシークをガーネットに見せたあのタイミングだ。
フタバが「は? 」って顔でコリンを見る。
なんだそのアホみたいな魔法‥。
それ‥必要か? まあ‥必要な時もあるかもしれないけど‥あの時それがbestな方法だったか?
「そんな目くらましと幻覚の魔法‥一体なんの為に覚えたの? 」
フタバが呆れたような顔でコリンを見る(全くヤレヤレ‥って感じの優しさが含まれた‥系の「呆れた」ではなく、完全に馬鹿にしている感じだ)
「魔法ならなんでも知りたいっていう‥知的好奇心から」
コリンがにこっと笑う。
「‥相変わらず変人ね‥」
「そんな話今はどうでもいいじゃない。フタバちゃんってば、緊張感が無さすぎるよ」
はあ、とコリンがわざとため息をついてフタバを見る。
‥この年中緊張感がない奴にそれを言われる日が来るとは‥。
フタバはそっと目を伏せる。
「‥‥‥」
‥いや、止めよう。気にした者負けだ。悔しがるとか‥時間の無駄以外何物でもない‥。
「シアンって男にはどうやったら会えるかしら‥」
さっさと話を本題に戻すことに決めたフタバが聞くと、コリンが満足そうに微笑んで(コイツ!! )
「あっちから接触してくれるようにガーネットに頼んでおいたよ」
得意げに胸を反らしながら言った。
「どうやって? 」
ロナウが口を挟む。
「え? どうって‥僕の色仕掛け? 」
「‥へえ? ホントは? 」
コリンが丁寧に微笑んで彼的には「色気がある」顔をして言ったのだが、皆にあっさりスルーされた。
コリンの色気がある顔なんて、コリンの怒り顔同様‥誰にも「伝わらない」。
黙ってたら氷の人形の様な美貌のコリンは「意識しない」通常の無表情の方がずっと「怖い」し、「色気がある」ってことを、自覚していないんだ。
皆そう思っててても、「絶対伝えない」って決めてるんだ。
「‥シークさんの脅し‥」
ぷう、と顔を膨らましてコリンが言った。
カワイイ‥。ホントにコリンはここに来て、表情が豊かになった。
フタバは思ったが、実は違う。
コリンはもともとからこういう性格だったけど、教会で皆にあんな態度を取られたから、すっかり拗ねてしまい‥教会の皆にあんな態度しか見せなかっただけなのだ。
だけど、そんなことは学生時代だけの付き合いのフタバとロナウには分からない。
「ふぅん‥。まあ、どっちでもいいや。シアンと会うんだったら‥うまくやらないとね」
疑いを持たれて会う前に消されてはかなわない。
どういう付き合い方をするか決める前に、その男とまず会えないといけない。
会って正確にその男の人となりを判断しないといけない。
‥とはいっても、
「でも、まあ‥シアンという男はガーネット以上に重要度はない。‥捨て駒だな」
ぼそり、とザッカが呟いた。
「そうだね」
ナナフルが頷くと、周りの全員が同意した。
「ガーネットは在庫を管理しているから、魔薬を卸している人間とつながりがある確率がある」
フタバが机に大きな紙を広げ
「その前に整理してみようか‥」
と相関図を書き始めた。
→ 魔薬の生成の管理
悪の親玉 → 悪の幹部 → 魔薬の在庫管理
→ 魔薬の顧客管理
「悪の幹部の仕事は‥私が思いつくのは、こんな感じだわ」
それを覗き込みながらロナウが頷いて
「あとは生成に関して、材料の在庫、労働者の数等の情報管理も必要だね」
付け足すと、
「そこまで上が管理してるかどうかは分からないな。ただ「必要な量を必要な時期までに集めろ」って命令されただけだな」
アンバーが首を傾げて言う。
「商品にもならないような粗悪な魔薬で労働力を操って魔薬を生成して、幹部に収めるって感じか‥。で、終わったら「魔獣にやられた」って周りには思わせるように‥労働力を始末し、魔力の気配が消えるまで生成場所を立ち入り禁止にする‥ってかんじかな」
コリンがあの場所で思ったことを言い、確認を求めてアンバーの方をチラリと見るが‥アンバーとてそんなことまで知らない。アンバーは悪の幹部ではないどころか‥会ったことすらない。
「悪の手下時代」のアンバーは単なる魔薬の為の薬草の育成場所と魔薬の生成場所の現場監督兼ボディーガードにしかすぎなかったから。
「‥そんなもんだろうな」
としか言えない。
「それで? フタバちゃん」
コリンがフタバが相関図を書いた理由を聞く。
フタバは「私が予想するのはね」と言いながら何個かの仕事を相関図に書き込む。
「魔薬の生成の管理の下には、魔薬を生成する手下。アンバー様は以前この仕事をされておられた。生成現場の現場監督ですわね。そして、魔薬の在庫管理の下には、魔薬の量をエリアごとに管理している手下。その一人がガーネット。アンバー様と違い、ガーネットはエリアマネージャーって感じですわね」
ガーネットよりアンバーの方が上、って言いたいんだろうけど‥別に悪の組織での立場が上でも‥どうでもいい。
アンバーとコリンは苦笑した。
フタバは話を続ける。
「ガーネットはだけど、魔薬の顧客管理の下についてる‥エリアごとに顧客を管理している手下から直接魔薬の発注を受け、魔薬を渡している。
それはつまり‥
ガーネットは、私たちが思う以上に重要なポジションだ‥ってことじゃない? 」
「! 」
フタバがコリンを見、コリンがはっとした顔をする。
‥あの黄色チャラいのが‥重要なポジション‥。
黄色チャラいのが凄いっていうより、組織の統制がとれてないからそこら辺の管理が適当になってる‥って感じもしないでもないが‥。
手下に多くのことを知らせたくないって思うなら、間に一人人を置く。顧客の数だけガーネットに伝え、ガーネットから魔薬を受け取り、エリアごとの担当者に渡す人間を‥だ。
以前はいたのかそれはよくわからないが、現在はいない。そして、ガーネットが直接エリアごとの担当者と会って魔薬を渡している。
そして、ガーネットはエリアマネージャーとして悪の幹部にそのエリアの在庫数を報告している。
もしかしたら、悪の幹部の顔を知っているかもしれない。間にエリアごとの在庫をまとめて管理し、悪の幹部に報告するだけの人を置いているかもしれない。
ガーネットは直接的には知らなくても、ガーネットを通じてその人間に接触さえ出来れば、悪の幹部に繋がれる‥。
「ガーネットを何とか見張る手立てがないものかね~」
仲間にするんじゃなくて、
情報源として‥何とかして首に鈴をつけられない物か‥って思うザッカ組だった。
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