この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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161.エサにかかった小魚をエサに反対に釣り客を釣ろう‥って程奴らはアクティブじゃない。(side コリン)

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 朝、事務所に来たフタバちゃんたちは開口一番
「探したんだぞ! 」「探しましたのよ!  」
 ってすごい怒られた。
 フタバちゃんたちには昨日のうちにザッカさんから僕の無事を伝えてもらってたけど‥僕の顔を見るまでは安心できなかったらしい。
 それについては‥ごめんとしか言えない。それに、有難う‥。
 で、三人「無事でよかった」って抱き合う‥展開にはならなかった。
 特にフタバちゃんは、僕が謝っても、怒り冷めやらぬ‥って感じだった。
「コリン! ホントにあなたわかってますの!? 貴方は自分を過信しすぎてますわ! 」
 凄い形相で胸倉をつかむとか‥貴族の子女にあるまじき行いだと思う!! ロナウもちょっと引いてるぞ!!


「なぜコリンはあの人と話そうって思いましたの? 」
 って(ちょっと怒りが落ち着いた)フタバちゃんからも昨日のナナフルさんと同じことを聞かれたので、昨日と同じようなことを説明した。
 フタバちゃんもロナウも魔法使いだからあっさり理解してもらえた。
「なるほどねえ。コリンは、あの人が私たちののまいたエサにかかった小魚だって判断したのね? 」
 フタバちゃんが僕の目をじっと見る。
 ‥怖い。
「それで、勝手に!! 一人で!! それを確かめに行った‥と」
「‥はい‥」
 顔は笑ってるけど‥目は笑ってない。
 ホント‥怖い。
 僕はなんだか居心地が悪くなって、フタバちゃんから目をそらしたくなった。
 だけど、そらさなかった。‥そらしちゃダメだって思ったんだ。
 人に言われると‥自分の行動がいかに軽率かってことが改めて分かったから。
 恥ずかしいし、情けないけど‥僕は反省しなきゃならないし、この僕を心配してくれる「いい友達」の説教を真面目に最後まで聞く義務がある。
 ‥そもそも、フタバちゃんが僕が逃げるのを許してくれそうにないしね!
「だけど、それもエサだって考えませんでしたの? エサにかかった小魚を引き上げようとしている釣り人を海の中に引き込もうと‥もっと大きな魚が海の中で待ち伏せしてるかも‥って考えなかったのですか? ‥それに引っかかってたら、悲劇というよりむしろ馬鹿過ぎて笑えませんわよ? 」
 もっともです。
 ほんと、反論する言葉は無いです‥。
 重ね重ね、本当にすみません。
「魔薬を使ってない = 正常な判断が出来、自分の意思で敵の駒として働いている = 敵の罠ではない って判断とか‥乱暴だわ。ホント単純すぎて情けないですわ。脳筋ってホントに恐ろしいですわ‥父様にもそういうところありますの。剣を交えたらわかる。とか変な確信とか‥ほんとやめて欲しいですわ‥」
 フタバちゃんは付け加えて‥ヤレヤレって顔をする。

 もう勘弁して~!!
 シークさんザッカさん!  「もっと言ってやって」って顔で見ないで~。ナナフルさん‥優しい笑顔で見てないで助けて~!!


「それで? あの人と話して何か分かりましたの? 」
 フタバちゃんがふう、と小さくため息をついてから聞いた。
 それはそれってことなのだろう。
 あの行動は許せないけど、
 それはそれとして
 僕が知り得た情報を話せ、ということだろう。

「あいつはあのあたりの魔薬の管理を任されている感じだった。売り込み側は他にいて、あいつは売り先が決まった時にその売り込み側に魔薬を供給するだけの役割。
 つまり、あいつの仕事は在庫管理ってわけだね。
 今回僕に近づいたのは「自分の在庫管理に間違いはない」だけど近頃「魔薬らしいものを持っている? らしい怪しい三人組がいる様だ」「お前、落としたんじゃないか、在庫はあっているのか?! と上司に聞かれ‥もしくは怒られた」から、あいつが直接僕らを見に来た‥って感じらしい」
 あいつのポジションを説明するとロナウの顔色が変わった。
「まったくコリンは‥! ホントに無事でよかったよ‥」
 って青い顔をしている。フタバちゃんは更に呆れたって顔で僕を見て、ため息をついた。
「小魚の後ろにしっかり大きな魚が控えてる感じね」
 フタバちゃんはそう言って僕を睨んだけど、僕にはそうは思えなかった。

 ‥なにかね、奴らはそんな「細かい」奴らじゃないって思うんだ。

 奴らについての推測
 奴らは「魔力の感知が出来ない」もしくは「分からない」。
 奴らは、それ程部下を細かく管理していない。

 ってこと。
 一つ目については、アンバーの話を聞いている時から気になってた。
 Q:「なぜ」アンバーが魔薬を摂取せずにごまかせたか。
 A :それは、奴らが「分からなかったから」ではないか? 
 シークさんと同様だ。シークさんには、奴の魔力が分からなかったって言ってた。
 シークさんは魔力はあるし、魔法の使える素質はあるけど、魔法をちゃんと学んでいないから使えない。‥あとね、魔法ってただ使える‥ってだけなら、独学でも学べないことは無いんだ。だけど、きちんと時間をかけて「正規のプログラム」で学ばないと、他人の魔力とかがわかるようにならないんだ。ただ使えるだけで「分かって使っている」とは言えないって感じかな。
 それが何が悪いかっていうと、「察知」→「予測」→「攻撃」っていう効率のいい使い方が出来ず、来た攻撃を条件反射的に躱すって戦い方になる。備えができないってことだな。
 シークさんが殺気を感じ取って他人の気配やら位置を判断して攻撃に備える‥ってあれと同じ。
 僕らは戦闘に関しては素人だから、人の殺気なんか感じ取れない。やっぱりああいうのって修行をしたり、普段から意識していないとわからないんだと思う。あとは‥緊張感かな。戦士は常に緊張感をもって‥周りの気配なんかに気を張ってる。そういうのは魔術士にはない。魔術士って普段から割と危機感は薄い方だと思う。戦わなければいけないって状況になることが戦士に比べてずっと少ないからね。
 あとは‥その人が生まれ持った性質の違いかな。戦士には緊張感を持っている人が多い傾向があり、魔術士には少ない。僕は自分のそういうところを自覚してるから、自動攻撃システムをつけてるんだ。
 僕はね、端っから魔術士が戦士とやり合って勝てるなんて思ってないの。だって、速さも力もかないっこないよ。だから、魔術士が冒険者としてパーティーを組む場合は後衛が一般的なんだろうね。
 ‥魔術士同士のパーティーてのは、あんまりおススメじゃないよ。
 本人たちは攻撃系と防御系の魔術士が組んだら最強だな! って思ってるのかもしれないけどね‥。気付かれる前に奇襲攻撃! ‥っていっても、一発で仕留めないとアウトだよね。
 ああ、脱線した。‥とにかく何が言いたいかというと、
 教育機関ではなく独学で魔術を学んだ彼らに、他人の魔力を察知する能力は無く、結果、自分たちは魔薬で操っていると思っているが、実は魔薬で操れていない手下もいる‥って話。

 二つ目については、アンバーがいい例だと思う。
 僕は最初、「アンバーは、実は糸をつけられて敵の組織に泳がされてるのかも」っておもってたけど‥どうやらそうでもないらしい。さっき言ったみたいな「アンバーを追っている様な魔力」を感じたこともないし、‥探されてる様子もない。それはこの辺りに情報網を張り巡らせているナナフルさんたちもいっていた。(だからこそ置いてもらえているんだろう。ナナフルさんたちはいい人たちだけど、そこら辺はきっちりしている)
 なぜか?
 ‥探したり、追ったりすると、足がつくから。だから、捨てておく。
 ただそれだけ。
 それ程重要な情報は持たせてないから‥だろう。

 彼らの組織について僕が予測しているのはこうだ。
 悪の組織の構成は、計画を考えた悪人(悪の親玉と呼ぶことにしよう)と他数名(悪の幹部)以外は全部捨て駒の「悪の手下(その他大勢)」で、悪の手下の失敗に備えて監視係がいる‥って感じ。
 監視係は手下たちを監視して、問題があれば随時悪の幹部たちに報告して、悪の幹部の判断により手下は処分される‥ってかんじかな~。魔薬を持ってる手下が敵(警察とか)の手に渡った際は、手下は見捨ててブツ(魔薬)だけ回収してくる‥ってのもこいつらがしてるかも。
 悪の親玉はきっと手下の顔すら見たことがない。そして、手下の生死に対して塵ほどの関心もない。
 そんな感じ。

 多分大きく間違ってはいないと思う。
 アンバーの立場は‥悪の幹部の直属の手下‥って感じかな? 悪の幹部ではなく、手下ほど下っ端でもない‥中途半端なポジション。
 
 だけど、アンバーは他の手下同様切り捨てられ‥現在も探されているって感じではない。
 なぜか。
 アンバーはそれほど「いろんなマズいこと」を知らないから。そして、探し、目立つより放っておくほうが良い、と判断されたから。
 ‥比較的上の立場にいたアンバーでさえもこうなんだ。‥下っ端なんかもっと適当な扱いされるのだろうな‥って思う。

 あいつ(黄色チャラいの)‥大丈夫かな。
 あいつの役割は「在庫をきちんと管理する」「在庫の存在を誰にも知られないようにする」ってことだけ‥。
 重要なポジションでは‥ない。
 今回僕と接触したことが監視係にバレたら‥あいつは問答無用で消されちゃうかもしれない‥。
 勿論、ブツ(あいつが管理してた魔薬だ)だけ回収して‥だ。
  
 人の命を何だと思っているんだろう。
 そもそも‥
 薬で人を思い通りに動かす‥なんて考える奴が「道徳的考え」をもっているわけないか‥。
 ホントに‥はらわたが煮えくり返る。

 絶対奴らは近いうちに消してやる‥。
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