この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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160.敵が味方になる‥とかは信じてない方です。(side コリン)

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 あくまでも、あんたは僕に脅されて喋らされただけなの。
 僕ね、
 そんなにおめでたくないから、敵として出会ったけど、話をしたらいい奴だったから仲間になる‥とか考えたりしないの。
 敵だけど、‥憎めないし、あそこにいたらあんたの為にならないからこっちにこいよ! ‥とかいう程お人よしでもない。
 だから、あんたは裏切ったとか思わないでいいんだ。 
 あくまでも、僕があんたなんかよりずっと実力者で喋らないと命の保証がなかったから喋ったに過ぎないんだから。
 あんたは‥悪くない。恥ずかしいことでもない。だって、命は何よりも大事だ。
 忠誠心とか奴らに対して持ってないだろうけど‥あんたにだってポリシーとかプライドとか‥あるわけじゃん? 雇用主に対して忠誠心は持ってないけど、「自分で」やると決めたことはやる‥とかはあるわけじゃん?
 プライドが命より大事だとか‥そういうのやめた方がいい。
 みじめでも、悔しくても、苦しくても‥生きてた方がいい。生きてて、僕にいつか勝ってやる‥! って努力したらいい。その方があんたにとってもずっといい。
 僕があんたに対して思う事はそれだけ。
 あんたはただの情報源で、それ以外のなにものでもない。

 ‥例え、あんたが機密漏洩の罪で組織に追われたり‥殺されたって‥僕は気にしないことにする。

 敵があれこれあって‥実はいい奴で‥味方になるとか‥でも、ないことはない。
 だけど、色々疑わなきゃいけないし、リスクを伴うし、いいことないよ。
 ‥キリがないし‥面倒だよ。
 袖振り合うも他生の縁‥に「こういう出会い」はカウントしない方がいい。
 って思ったけど‥そういえば、アンバーもそうだった。
 って改めて気付いたり。

 ‥まあ‥アンバーは特別ってことで。
 僕は多少の後味の悪さは、こころに無理やりおしこめることにしたんだ。


 あの後、僕たち‥シークさんと僕は情報を聞き出して、黄色チャラいのを開放してあげた。因みに、黄色チャラいのの名前はガーネットというらしい。奴が名乗ったわけでも、僕が聞きだしたわけでもない。アンバーが知ってたんだ。
 ロナウとフタバちゃんはあのまま家に帰ってもらった。
 今は久し振りにザッカさんたちとシークさん、アンバーで机を囲んでいる。
 夕飯はナナフルさんが用意してくれた。
 あったかいスープを飲むと、ほっとして、自分が実はすごく気を張っていた‥ってことが分かった。
 警察とバーディーを組む誓約士だったら‥自分が尋問しないにしても‥きっとああいった場面に多く立ち会うんだろう。‥僕にはそれは向いていないな‥って思った。
 甘いんだろうね。

「あいつは‥村でガーネットと呼ばれてるのを聞いた‥気がする」
 アンバーが言った。
 村、とはアンバーが攫われて暗殺者として育てられていた場所のことだ。地図に載っている場所ではなく、‥もしかしたら今は違う場所が村になっているかもしれない。‥そういった場所だ。
 自分が育った場所を「ふるさと」って呼べないアンバーたちが気の毒で、‥そんなきっかけを作った犯罪者たちに対する怒りが弥増いやました。
 それはここに居る全員の感情だったらしく、ナナフルさんはきゅっと眉を寄せ、ザッカさんは大きく‥不機嫌そうなあため息をついた。
 ただ、シークさんの表情は変わらなかった。
 シークさんはまだ‥自分を許せていないのだろうか? そう思ったら胸がぐっと苦しくなった。
「‥知り合いってわけじゃない。他の二人はガーネットとあの頃から一緒にいた奴らだな。確か‥コバルトとシルバーだったっけ。奴らも友達同士とかじゃない。ただの同期みたいなもんだ。あそこは友達同士で遊びながら一緒に育つような‥そういう普通の場所じゃない」
 この頃フタバちゃんたちに見せていた「王子様然」とした笑顔じゃない、出会った頃の‥表情の読めない笑顔で話すアンバー。
「あそこに同じような境遇の子供がいるな‥そう思う位だ。それどころじゃないから。‥俺は覚えもよかったし、何より薬に支配されてなかったから周りが良く見えていた方だと思うけど、‥周りの奴らはそれどころじゃなかったって思う」
 ‥昔のことを思い出したくないんだろうってすぐに分かったけど、アンバーにホントに話す気が無かったら適当に流しただろう。それをしないってことは‥話しておかなければいけないって思ってるってこと。
 それだけ、僕たちを信用してくれてるってこと。‥信用かどうかは分からないけど、アンバーが僕たちに協力してくれようとしてるってのはわかる。
 アンバーが僕たちに協力してまで‥過去と決着をつけたいんだってことがわかる。
「‥皆色の名前なんだね」
 シークさんが入れてくれたお茶を一口飲み、僕が思ったことをそのままいうと、アンバーが苦笑いして
「呪の定番だな。支配する側が支配される側に名前を付けるのってさ。俺の名前もガーネットも勿論‥奴らがつけた名前だ」
 って教えてくれた。
 名前を考えるのが面倒で、適当に色の名前をつけたってことだろう。
「使い捨てだからっていって、適当にもほどがあるよな」
 アンバーが苦笑いして言った。
 あのときは、アンバーもまだ子供で魔力も少なかったから、あっさり名前を奪われてしまったらしい。
 黙り込んだ僕たちに
「親の顔さえもう覚えてないし‥別にどうでもいい」
 アンバーは言ったけど、いつかアンバーのホントの名前を取り戻してあげられたらいいなって思った。

 そして改めて、
 憎むべきは目の前の黄色チャラいのなんかじゃなくって、奴らだって思った。
 黄色チャラいのを助ける術は唯一、奴らを根絶やしにすることだけだって‥思った。


「コリンは何でアイツと話をしようって思ったんだ? 」
 勝手な行動をザッカさんにしこたま怒られた後、アンバーに聞かれた。
「アイツは、魔薬で操られてなかったから」
 僕が言うと、アンバーは
「まあ‥そうだな」
 と‥ガーネットの様子を思い出すようなそぶりを見せてから言った。
「どういうこと? 」
 ナナフルさんが首を傾げ、シークさんも頷く。
「あそこにいたアンバーとコリンにはガーネットが魔薬で操られてなかった‥って分かったってことだよね。シークにも分かった? 」
 ナナフルさんがシークさんに確かめるとシークさんが黙って首を振った。
「魔薬って、一般的な薬と違って「人工的な魔力」を体内に入れるものなんです。だから、魔法使いが魔薬を使用すると使用者の持っている魔力とは違う魔力が足された‥不自然な状態になるんです。
 自分の魔力プラス不自然な魔力。
 詮索の魔法が使えない僕にはそれがどういったものかまでは分からないけど‥不自然な魔力がプラスされた変な魔力だなってことは分かる。
 魔薬を知らない魔法使いなら、「魔道具でもつかってるんだろう」って思うかもしれない。
 だけど‥僕は魔薬の魔力を知っている。あの森で感じたから‥覚えているんだ。
 あの‥気味の悪い魔力は忘れられない。他の人より僕はそういうのに敏感なんです。‥皆に分かることではないと思います。
 
 ‥だけど、奴からはそういう不自然な魔力を感じなかった」
 魔力が分かるとか‥魔法使いにしか分からない感覚だ。
 魔法使いではないナナフルには完全に理解は出来ないが「そういうもんなのだろう」と理解することにした。
「検索したら、中毒状態もしくは被毒状態ってでるんだけど、コリンは検索が出来ないからな」
 アンバーがふふとコリンに笑いかけた。
「け! 」
 コリンが拗ねて、毒づく。
 そんな‥ありきたりな光景。


 アンバーには‥もう苦しんでほしくない。僕らと馬鹿なこと言って笑って‥なんでもない当たり前の幸せな生活を送ってほしいって思う。
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