この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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155.大事なのは適材適所。

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 さあ‥ロナウ。この観客を味方につけてみろよ? 

 味方‥じゃないか。
 味方になってくれなくていい。
 理解者‥も迷惑だ。
 ただ、ここでこんなことがあったってことを「記憶してくれればいい」だけ
 拡散は‥違う。
 ここに居る人間が全部「記憶してくれる」だけでいい。
 拡散されて‥万が一でも「マズい相手」に知られるのはマズいからね。
 ‥そんな大ごとにする気はない。

 だけど、ただ記憶させるだけじゃない。面白おかしく見せる‥じゃダメなんだ。ここにいる観客たちに「こう記憶してほしい」ってことがらを「正しく」記憶させなければいけない。
 下手に「伝え忘れ」があったら、観客はその「足りない情報」を推測るだろ? 情報が足りない‥ということで興味を惹きつける‥とかどうでもいいんだ。
 ただ明確に「こう! 」って伝えないといけない。
「こういうことじゃないか? 」
 っていう‥憶測が加わったら、下手な伝言ゲームと同じで‥最後には全く違う話になってしまう。

 それってなかなか大変だ。
 それも‥観客に説明して聞かせるんじゃない。
 ミューラー君に説明するという形で‥観客に「また聞き」させるんだ。
 ミューラー君は言うならば今この場所にいる舞台役者‥ロナウのパートナーになるわけなんだけど、ミューラー君は‥「さくら(ロナウの味方)」じゃない。‥それどころか、ロナウの言うことを頭っから否定している‥「馬鹿らしいことを言ってる」‥って思ってる人間だ。ロナウの思っているようには動いてくれない。
 ロナウの話に対して好意的ではないから。
 そんな人間が「‥そういうこともあるかもしれない」「それもいいかもしれない」って納得させらることができたら、立派なもんだ。
 
 だけど、それってかなり難しい。
 納得させたり理解させる‥ってのは、聞く側の努力やら信頼が無いとなかなかできないもんだと思う。

 学校だったら、聞き手は生徒ってことになる。生徒は先生の話を「理解しよう」って思って聞く。そこには生徒の側の先生に対する信頼と聞く努力が必要となる。
 先生の「理解させなきゃ」って努力だけじゃないんだ。

 じゃあ‥
 信頼関係が無い相手に「こう記憶してほしい」ってことを記憶させる方法は? 

 ‥きっとあるんだろうけど、いま「ここ」で必要なのはその技術ではないし、そんな時間は掛けられない。
 かける必要も無い。
 そもそも、話をきかせなければいけないのは、「聞く耳持たないミューラー君」じゃなくって、周りの人間だから。

 ミューラー&ロナウで観客に話を聞いてもらっているのではない。
 ミューラー対ロナウの喧嘩を通して、観客に話をまた聞きさせているんだ。
 喧嘩をしていても、流石魔術士だ。止めようなんて思ってる奴らはいない。(だって自分に関係ないから)
 それどころか、「何か面白いこと言ってないかな」って思って聞いてる。
 魔術士ってそんな奴らばっかりなんだ。
 審判気取りで
「ああ、ミューラー君の言っていることも一理あるな」
 とか、
「ほう‥テイナー君はなかなか面白いこと言ってるね」
 とか「無責任に」わいわい言って‥面白がってるんだ。

「それ、どういうこと? 」
 って足りない部分を作らないように‥言いたいことを言う。
 ロナウが自分から言うんじゃなくて、(皆の疑問は)ミューラーが代わりに聞いてくる。(ミューラーはロナウに否定的だから、どうにかしてロナウの揚げ足を取ろうとしてるからね)それを聞いて、皆は納得する。(ミューラーは納得なんてしないだろううけど、だ)
 そして、ロナウがミューラーの口撃を正確に受け止めて、正確に答えられ‥観客の満足を得られたら‥
「テイナー君はなかなかしっかりしてるじゃないか。ミューラー君は‥ベネット嬢に振られた腹いせでイチャモンをつけてるだけだ。
 ‥小さい男だよ」
 ってなる‥。

 はずだ。
 だけど、「それだけ」。好奇心を満足させて「なるほどね~」ってだけ。
 誰もその話に乗ろうとか思う奴はいない。(逆に乗られても困る)


 さて、バトルはまだ終わっていない。

「なんだそのふわっとした計画は! そんなものがビジネスとして成り立つわけがないだろ! 」
 と、ミューラー君。
 そうそう。社会をなめてるのか? って野次馬。
 まだミューラー君勢が有利。
「商品の価値、使い方と、売り先を誤らなかったら、僕は十分ビジネスとして成り立つと思ってるよ」
 でも、劣勢でも余裕な表情のロナウ。
 フタバがにこって、婚約者に微笑みかける。
 かっこいいわ~って顔して。(← もちろんそれも演技)
 ミューラー君、ダメージ1ポイント。
「売り先! ベネットさんのお父さんの人脈ってことは‥ベネットさんのお父さんの知り合いなんだよね?! そもそも、知り合いに迷惑を掛けたらベネットさんのお父様に迷惑になるんじゃないのか?! 」
 とミューラー君。(よし、よくこらえたね! ミューラー君! )
 もっともだ。よく言ったミューラー君。と野次馬。
 ロナウがフタバを振り返ると、
「問題はないわ」
 とフタバが首を振る。
 ミューラー君、ダメージ1ポイント。(← ミューラー君は結構打たれ弱い)
「‥っ! そもそもそのこれから売れるであろう希少な商品ってなんだよ!? 」
 とミューラー君。
 ‥皆気になってるけど‥それは‥でも言わないんじゃないか? だって「これから出て来る」商品なんだから他人には言わないだろう。
 残念な奴を見る目をミューラー君に向ける野次馬。ミューラー君ちょっと劣勢になってきた。周りの変化を感じ取ったロナウは苦笑いを「作り」ミューラーを見る。
 フタバがロナウに一歩近づき、その腕に自分の腕を絡ませ
「お義父様の知り合いは‥別にお友達だけじゃないわよ? ほとんどがロナウと同様‥お義父様と何とかして接点を持ちたい‥その為には何としてでも成果が欲しい‥って方々ばかりよ。
 ロナウはそんな方々に提案をするだけ。無理に売るわけでは無いの。判断をするのもその方。
 お義父様もそれについては了承しているわ。お知り合いの方についても‥「それで成果が得られるならばやってみろ」って自分とは関係ないって立場をとってるの」
 にこ、っとフタバが微笑んでロナウと向かい合って微笑みあう。
 ラブラブ~って感じで。
 ミューラー君、ダメージ10ポイント越え。
 で、
 ゲームオーバー。
「よくわからんが。ミューラー。お前が付け入る隙はないのは分かった。
 これは、ベネットさんとテイナーの問題であって、お前がどうこういうことではない」
 って結論で、終わり。
 ‥って初めからそうなんですけどね。
 皆さんに「テイナー、ヤバいことやってるんじゃね? 」「関わり合いになりたくないな」って言われなくてよかったです。違法性は匂わせたくないですからね。

 商品はめちゃくちゃ違法だけど。

 そして、「俺も一口乗らせてくれ」って言われなくてホントに良かったです。
 怪しまれるちょい手前‥関わり合いになりたくないが、ちょっと興味はあるな。動向を見ていよう‥っていうちょうどいい加減。
 ロナウだから「一口乗らせて」ってならない‥ってのもある。だって、ロナウだもん。
 きっとこれ、ザッカさんやナナフルさんがやってたら「ちょっと興味ある‥」ってなっちゃってたかもしれない。
 コリンが言ったら?
「‥騙してるんだろ」
 ってなってたね!! 絶対!!

 大事だよね! 適材適所!
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